「………」
「なんか、ゴメン。本当に……」
Sクラス校舎の窓から顔をのぞかせた優希と竜は、鉄人によって連行されているFクラス生徒を見ると、ちっとも試召戦争での事が生きていないと落胆し、明久が
「……色々、問題あるだろ。準備時間に野球とか」
「それがクラスのほぼ全員が参加してるって言うから凄いわよ……」
竜と優希はFクラスのどうでもいいところで発揮される団結力に驚いていたが、所詮自分の欲望の為の団結力でしかないので結構簡単に話題からいなくなる。
「Fクラスのことを言っていても、何も始まりませんよ。それよりも、珍しい御客人です」
静真がFクラスに注意が行っている二人に言うと、Sクラスの教室にとある人物が入ってくる。
それは、意外……というか、本来ならここには絶対に来ないであろう人物だった。
「よ、吉井、その、久しぶりね」
島田美波の突然の来訪は、Sクラスを大きく動かすこととなる。
☆
「なるほど。それで姫路瑞希さんの為に協力してほしいと……」
「無茶言ってるのは分かってるわ。けど、瑞希はFクラスのこと凄く気に入ってるし、なんとかしてあげたいのよ」
美波の話の内容を要約するとこうだ。
試召戦争で最終的にAクラスに負けたFクラスは、3ヶ月間の宣戦布告と設備のランクダウンという罰がかせられた。『座布団』と『ちゃぶ台』が『ござ』と『みかん箱』になってしまったわけだが……本来ならAクラスの高級設備で勉強している筈の姫路瑞希の両親が黙っていなかった。
ただでさえ(成績的にも人格的にも)最低のクラスメイト。瑞希の成績向上を促せないとクラスメイトと、最悪の学習環境は、瑞希の両親に『転校』の二文字を思い浮かべさせるには十分だった。
ただ、瑞希としては思い入れのあるFクラスを離れたくはなく、(どう考えてもバカで屑で最低の)クラスメイトをバカにされたことに激怒し、清涼祭中に行われる『召喚大会』で父親を見返したいそうだ。ただ、それでも劣悪の設備に変わりはないため、清涼祭の売り上げで設備を買うことにしたのだが……
「ああ、もともとの設備悪いし、客はいんねーのか」
オブラートに包むこともせず竜のダイレクトアタックッ!美波の
……くだらないことを言ってないで話を戻すと、Fクラス設備じゃある程度の設備を変えるくらいに売り上げを伸ばすのは厳しいということである。
ここまで来てまず美波に喰いついたのが優希である。
「……島田さん、調子よすぎよ。この前の試召戦争じゃ私達のこと散々言ってくれた癖に、困ったら泣きつくの?少なくとも、私はそんなにお人好しじゃないわ」
優希の言うとおり、美波は試召戦争時に(主に穂乃香がメインだが)暴言罵倒や頬をぶつなどの暴力行為までやってしまっている。そんな相手に普通なら頼み事なんてできるわけがない。
「俺たちが姫路をかばってやる理由もないしな。こうなっても不自然じゃないだろ。悪いが第3者の視点から見れば、間違いなく転校を進める」
「それは、そうだけど……」
竜も優希と同意見で、今の環境を考えればこの現象は当然だといい、普通なら転校を進めるとまで言う。瑞希本人からすればクラスメイトや(クラスは違うが)明久と離れることに強い抵抗があって当然だが、瑞希の両親は病弱な彼女の体を危惧してそう言っているのだ。『屑のクラスメイト&最悪設備』か『普通の設備&普通のクラスメイト』、お客様はどちらになさいますかと聞かれれば十人中十人が後者に行くだろう。
「身勝手だってのは分かってるの。けど、あんなに悲しそうな瑞希をほっとけないのよ。お願い、いや、お願いします!協力してください!」
美波は無茶な要求だと分かっていても、大事な友達を諦めることができず、Sクラスの5人に向かって土下座までする。
ここまでされると、今回は美波が純粋な気持ちで動いているのでSクラスとしても断りづらくなってしまう。
「あの、私は良いと思う……」
「穂乃香?」
そんな美波を見て、(おそらくこの中の誰よりも美波と敵対しているであろう)穂乃香が声を上げる。
「いい……の……?」
「うん。友達の為に土下座までするその気持ち、嘘じゃないと思うから。それに、人が本当に困ってるの見て見捨てるなんて、私にはできないから」
「か……すみ……うぅ……」
美波は、あれだけ言って、さらに頬を叩いたりもしたのに、自分や瑞希を助けようとしてくれる穂乃香の優しさに触れ、悟った。この少女には、どうやっても勝てなかったんだと。
たとえあの時試召戦争で美波が勝っていても、きっと明久と穂乃香は結ばれていただろう。自分は何一つこの少女に勝ててないと、再認識させられる。
「穂乃香でいいよ、美波ちゃん。一緒に清涼祭、頑張ろうね」
………ちなみに、今回も出番が少ない明久と静真である。