初代観察処分者――――――――吉井明久
「……てつz……西村先生。これって教室なんですか?」
「気持ちは分かるが教室だ。それと今、『鉄人』と言わなかったか?」
明久は目の前に存在する大きな建物そのものが一つの教室であるという現実を認めることができず、鉄人に確認するが鉄人はあっさり教室だと言い切る。
「いや、これ、軽く新校舎と同じくらいありますよね?Sクラスどんだけ凄いんですか!?」
「Sクラスは2年にしかないからな。これでひとつの教室だ」
「でかっ!?」
「まあ、単教科の平均が600点だからな。こっちだ」
鉄人はさらっと恐ろしいことを告げると明久を連れてSクラス専用校舎へと入っていく。
「レストランに売店、最新のゲームにパソコン……?もう学校じゃなくなってる「吉井明久様、お荷物をお持ちいたします」うわっ!?」
中に入るや否や、目に飛び込んでくる教室とは程遠い施設の数々に明久が目を丸くしていると、後ろから声をかけられる。
「め、メイドさん?」
「Sクラスの生徒には一人一人に専属のメイドがつく。授業に必要な物を用意したり、服装の乱れを直したりだ。俺はここまでやる必要はないとおもんだがな」
「お、恐るべしSクラス……」
ここまでで既に教室からはかけ離れたびっくり施設なのだが、まだ本来の学び舎である教室部分に到達していない。
どんだけ凄いんだよここは。と明久が再度心の中で突っ込んでいると、
「ちなみに、この校舎は1階がホール。まあ売店やらなんやらがあって、2階が教室、3階が学生寮になっている」
「寮まであるんですか!?」
「並のホテルのスイートルームより豪華だぞ」
「……もう教室じゃないじゃん」
まったくもってその通りである。
「お前以外のSクラスの生徒は全員そろってるはずだ。お前もさっさと入れ」
「うわっ!?」
階段を上り、教室の扉の前(どこのお屋敷の門だよ。と突っ込みたくなるような豪華な装飾。)までくると、いきなり鉄人に背中を押されて扉を押しのけて中に入る。
ぶつけたおでこを撫でながら顔を上げると、4人の生徒がこちらを奇異の目で見ていた。
「ぼさっとするな吉井。さっさと席に着け」
「あ、は、はい」
鉄人に指摘されてあわてて立ち上がり、唯一空いている席に座ろうと歩き出したところ、
「お待ちください、吉井様。ネクタイが曲がっております」
「え?あ、どうも……」
どこからともなく現れたさっきのメイドが明久の服装を直し始める。
「(……なにこれすごい落ち着かない)」
当然である。
その後、明久が着席したのを見て、鉄人が口を開く。
「吉井も席に着いたな。今年のSクラスの担任は俺が務めることになった。知っているとは思うが、補習担当の西村宗一だ。よろしく」
「先生、いいでしょうか?」
「なんだ?」
鉄人があいさつを終えると、一人の男子生徒が発言許可を求め、立ち上がる。
「なぜ、吉井明久君がここにいるのでしょう」
「そのことなら、今から説明する。実はな、教師の間でも話し合ったんだが、吉井はどうしようもなくバカで不真面目で普通では更生しようのない不良生徒なので、Sクラスに入れて更生させた方がいいのではという意見が出てな」
「ちょ!?そこまで言いますか!?僕は平穏無事に学園生活を過ごそうと頑張ってるだけで」
かなり言われたい放題の明久は鉄人からの集中砲火に反論という名のツッコミをするが、
「吉井明久君、先生の言葉を途中で遮らないように」
「つーか、うるさいから静かにしてくれ」
「Sクラス(ここ)で騒がない方がいいですよー。竜さんキレると怖いから」
「お、落ち着きましょうよ、ね?」
自分以外の全員から集中砲火がやってくる。
「ご、ごめんなさい……」
Fクラスでは決してありえない光景である。
「それで、吉井を1年間Sクラスに入れて常識を学ばせようというわけだ」
明久としては、こんな教室離れしたところで常識が学べるのか甚だ疑問だった。
「分かりました。ご説明いただき、ありがとうございます」
「ああ。じゃあ自己紹介……と言ってもお前たち4人は去年から知ってるな。とりあえず吉井、お前からだ」
「ぼ、僕ですか?」
こんなびっくり箱で生活する人たち相手にどんな自己紹介をすればいいのか分からず、明久はうろたえながらも立ち上がる。
「よ、吉井明ひしゃでしゅ!よろひくおにぇがいしまひゅ!……もういや」
ドジとバカの融合体――――――――吉井明久