「えっと……吉井明久です。よろしくお願いします……」
前に出た明久は名前を名乗って頭を下げるが、4人からの反応は無い。
「(……どうすればいいんだよ!?)」
明久は途惑いながらもSクラスの4人を見る。
さっき鉄人に質問をしていた眼鏡をかけた賢そうな少年。
顔も目も、こちらを射抜くかのように見つめ、ぶれることはない。
うるさいと明久を注意した雄二以上に野蛮な雰囲気がある少年。
あくびをして話を聞いていないかのようだったが、片目を開け、やはり視線を外すことなくこちらを見つめ……というか、睨んでいる。
男子の一人を竜さんと呼んでいた女子は興味深々に明久の方を見ている。
座席にして明久の前に座っていた少女だけが顔を真っ赤にしてうつむいている。
「(……いや、本当にどうすればいいんだろう?)」
「気軽にダーリンと呼んでください♪」くらい言おうかと思ったが、FクラスならまだしもこのSクラス(おまけに鉄人の前)でそんなことをを言うのはまさに自殺行為。
で、何の変哲もないただの自己紹介になってしまった。
「そう硬くならなくてもいいですよ。吉井明久君」
「え?」
「僕たちは、君がどういう人物であってもSクラスに歓迎します。君のような人物も、また必要とされるべき人材なのですよ」
「えっと、どういう意味ですか?」
「……君が観察処分者であるということを気にする必要はないということです」
ちょっとずれた眼鏡をかけなおす少年。
さすがに明久のバカさ加減に一瞬驚いたようだった。
「あー、そう言うわけだ。仲良くしようぜ、吉井。わかんねーことがあったら何でも聞いていいからよ」
「あ、ありがとう」
もう一人の少年も、明久の手をとりぶんぶん振り回すと今度は明久の肩をたたくなど、友好的……というか、べたべたしすぎなだけである。
「私も、よろしくね。観察処分者って言うくらいだし、どんな奴かと思ったけど、結構礼儀正しいいい人じゃない。1年間よろしくね、吉井君」
「よ、よろしく」
興味深そうに明久を見ていた女子生徒も明久と握手を交わすと、
「私、君みたいな人、好きかもな」
「えぇ!?」
「冗談よ。でも、君のこと、嫌いじゃないから」
からかうように微笑む。
良く見ればスタイルもいいし、胸……これ以上はセクハラになるのでここでは言及しませんっ。
「ほら、穂乃香も。自己紹介しなさいよ」
「あ、あぅぅ……」
いや、僕みんなの名前聞いてないんだけど。という突っ込みを出かかったところで押さえる。Sクラスではあまり不用意なことは言わない方がいい。
「……
「うん。よろしくね。霞さん」
「……///」
明久が返すと、穂乃香は顔を真っ赤にして自分の席に戻ってしまう。
頭の上に?を浮かべる明久だった。
「吉井明久君。僕は七尾静真(ななおしずま)と申します。1年間よろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします」
身長もかなりあるうえに雰囲気も大人びている。これで同い年とは信じられないものである。
「俺は坂上竜《さかがみりゅう》だ。竜って呼んでくれていいからな!」
「じゃあ、僕も明久でいいよ。竜」
「おう、よろしくな。明久」
ちなみに竜が穂乃香に恨めしそうに見つめられていたのには誰も気づかない。
「じゃあ、私もかな?私は
「よろしく、小井草さん」
再び優希と握手を交わし、自己紹介も終わったので自分の席に着く明久。
「どうやら、吉井もうまくやっていけそうだな。まあ、ここなら心配ないとは思っていたが……。では今日一日の予定を確認する。今日は―――」
鉄人の話はあまり頭に入ってこなかったが、なんだかんだでSクラス(ここ)の人たちは良い人たちだ。そう思った明久だった。
ただ一つ、確信したのは――――――
「てつz……西村先生。日程表もメイドさんが持ってくるんですか!?」
「ああ、なんだか堅苦しいんだがな……」
ここはやっぱり常識を学べそうな場所ではないということだった。