「アキ君、お帰りなさい」
「あ、うん、ただいま」
一瞬垣間見た修羅と、確かに聞こえたDEAD END宣告が嘘のように思えるほど綺麗な笑顔で明久を出迎える玲。
その様子に、警戒していた明久も一瞬気を抜く。
「そちらの方は?」
「え!?ええと」
「霞穂乃香です。よろしくお願いします」
「吉井明久の姉の玲です。愚弟がお世話になってます」
明久が何とかごまかそうとする前に穂乃香が自己紹介する。穂乃香の可愛らしい外見と、(比較的少ないものの確かに存在する)胸部の双山、そして、穂乃香という名前。どうやっても男とごまかすのは不可能だ。
実はこの姉、吉井玲は、姉弟という垣根を超えるほどに明久を(異性として)愛しており、そのせいなのか、明久の不純異性交遊(とかいいながら純粋でも却下)を禁止しているのだ。
おそらくさっきのDEAD ENDとは、穂乃香を家に連れてきたことへの刑のことだろう。
「そうですか。こんなところで話すのもなんですし、中へどうぞ」
「あ、どうも」
そう言って立ち上がる玲。バスローブ姿なだけあって放送コードギリギリである。これ訴えられるっしょ、間違いなく。プロデューサーとか、新田〇弘とか。
スタスタと歩いていく玲。その後ろで、玲に聞こえないように、穂乃香が明久に言う。
「(なんであの人バスローブ姿なの!?お風呂上がりなの!?)」
「(分かりません!)」
至極当然のツッコミである。が、それを本人の目の前でシャウトしないあたりは穂乃香の一般的な礼儀ってかツッコんだほうがいい気もするけど。
「(でも、あんまり怒ってないみたいだ。これなら、穂乃香が家に泊まるって言っても大丈夫かな)」
ふと、そんな淡い希望を持つ明久。
が、サタン玲に油断は禁物。
「ところでアキ君」
「何?」
「昨日の【検閲削除】ごっこの続き、どうしましょう?」
「やっぱり怒ってた―――――――――――――――!!?」
ちょっち不適切な表現があったのでピー音入りましたぁ。
まあそんな事実はないのだが、やっぱり明久と穂乃香を引き離そうとする作戦。満面の笑みでそんなえげつないことを言ってくるから恐ろしい。
「【検閲削除】ごっこ?でも、明久君の様子からして、お姉さん帰ってきてたの知らなかったんでしょ?」
「う、うん。そう、そうだよ。嫌だなぁ姉さん、変なこと言って」
こんなときでも冷静に頭を回す穂乃香ってやっぱどこかで頭のネジが2、3本飛んでるのかもしれない、と思う明久だが、今だけはこのネジの飛んでる穂乃香に感謝しよう。
「何言ってるんですかアキ君。昨日も私の夢の中でケダモノのように私を求めたじゃないですか」
「想像!?さっきのも想像なの!?ていうか妄想!?妄想は自分の頭の中だけにしてよ!!」
「……ごめんね、明久君。私、明久君のお姉さんに変態ってイメージ以外持てなくなっちゃった」
何気に毒を吐く穂乃香。ちなみに『お姉さん』が『お義姉さん』じゃないあたり、まだ穂乃香はFクラスの毒気にはあてられてないのだろう。