玲のグーを用いたビンタ(と言えるかどうかもかなり怪しいレベルになっていたが)を何とか体力で切り抜けた明久だったが、顔に小さなあざが出来てしまった。さらに一瞬でナース服に着替えた玲が手当て(と称した性的な悪戯)をするという怒涛のラッシュが展開されそうになる。穂乃香がいなければ、明久のシスコン認定はどうやってもぬぐえないものになっていただろう。
「あたた、ったく、姉さんもどうして(発想と行動の両方が)過激なんだろう……」
「過激って……それだけで済ましていいレベルじゃないよ?」
目の前で展開される姉と弟による珍しいDVに一瞬ついていけなくなった穂乃香だったが、即座に意識を取り戻し明久保護フィールドを展開。明久を守り抜いたのだった。実際は、それが玲の機嫌を損ねる一番の理由だったのだが、なぜかそれを言ったら全てが終わる気がして、明久は黙っていることにした。
「あはは……まあ、いつものことだから。姉さんに常識がないのは」
と、明久が笑いながら言った直後、
『アキくーん?姉さんちょっと分からないことがあるのでナース服でこっちに来てもらえませんかー?』
「ね?」
「割り切ってる明久君も凄いけど玲さんもとんでもない……」
超人玲恐るべし。フリー〇とかセ〇も涙目だよ。マジで。
「でも、お姉さんと仲良くないのはよくないと思うんだ。ちゃんと(自分の身を守るためにも)仲直りを……」
「え?別に僕は姉さんと仲悪いわけじゃないよ?姉さんだって、母さんに比べれば女神だし」
どんだけデストロイなんだよ吉井家。心の中でツッコむ穂乃香だが、決して口には出さない。出してはいけない。ここは外の世界とは違うんだ。常識を求めるな自分、郷に入っては郷に従え――――――!
「穂乃香、顔、アウトギリギリ。深呼吸、深呼吸」
「は――――――!?すぅ、はぁ、すぅ、はぁ」
明久のおかげでチェンジには至らず。そして自分の無力さを思い知る。
玲以上のデストロイマザーを相手に説得なんてできないと悟った穂乃香は、一瞬、明久に寮に入って貰おうかどうかと思案する。
が、それは一瞬で脳内却下した。
そもそも、これは暴力的な友達がいるとか、苛められているとか、そんな安い――――当人からすれば安くはないかもしれないが――――問題ではない。友達なら、今だけの縁で、将来会わなくなることもある。が、家族は違うのだ。ここでおかしな関係のままにしておいては、将来ろくな未来にならない。吉井家の場合は絶対といいきれる。悲しいけど。
それに、今自分が考え付いた方法は、明久を害から守るとか、そんな崇高な物ではない、ただの独占欲だと穂乃香は自己嫌悪した。暴力から守りたいと言って、明久を自分以外の誰の手も届かないところに隠そうとしている。それが明久の為だと言えるはずもない。形が違うだけで、自分も明久を自分の欲望を満たすための
考えれば考えるほど、穂乃香の回転の速い頭脳は悪い考えしか生み出さない。普段から人とのかかわり合いが少ない穂乃香に、いきなり恋人ができて、しかも守るだなんてことが、そもそも重荷だったのかもしれない。本来ならば極めて優秀なはずの頭脳が見せる悪いイメージが、穂乃香にひたすらプレッシャーを与え続け……
「――――――」
「え……!?ほ、穂乃香!?」
とある理由から、限界が近かった彼女は、その限界を超えてしまう。