バカとテストと召喚獣 ~たった5人のSクラス~   作:黒炉

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アマデウスさん、深紅のユウキさん感想ありがとうございました!


第34問

「あの、そういうわけで、穂乃香が会いたくないって言ってるんですけど……」

 

明久は自室から出ると、すぐに穂乃香の父親に言った。そんなことを言われれば、当然、顔は険しくなるものだ。だが、そうなる前から、明久はこの男に何となく好感が持てなかったのだ。それは玲も同じようで、必要最低限以外のことは話そうとしていない。

 

「……君の部屋に、失礼させてもらいます」

 

ただ一言、そういうと、穂乃香の父親は立ち上がり、今明久が出てきた部屋に入ろうとする。その瞬間、穂乃香の父親の目の奥を通して、何か嫌なものを明久は見た。

そして、穂乃香の父親が立ち上がると同時に玲が父親とドアの間に割って入る。その行動には父親も、明久も一瞬理解が追いつかなかった。

 

「どうでしょう、穂乃香さんが会いたくないというのでしたら、ここでお預かりしても大丈夫ですけど」

「……しかし、吉井君も年頃の男だしな」

 

玲が言いだしたことに明久は一瞬驚くが、穂乃香の父親の言い分を聞けばそれ以上は無理なはずだ。玲がどういう意図でそんなことを言い出したのか明久には理解できなかった。

 

「安心してください。アキ君が何かしそうになったら、とりあえず肋骨を砕いて止めるので」

「怖いよ姉さん!?」

 

と、相変わらずの玲の狂言にツッコミを入れる明久だったが、玲の目が冗談を言う目ではないのを見る。玲がふざけておらず、本気でこの男に穂乃香を渡さないようにしようとしているのを、ほぼ直感的に明久は感じ取った。

 

「……今は、少し穂乃香と喧嘩をしてしまっていてね。私としても、早く仲直りしたいのですよ」

 

それまでの鋭かった眼光が一転、やわらかなものへと変わる。玲に強硬な姿勢をとっても無駄だと感じたのだろう。実際玲の方が確実に強いだろうし。しかし、穂乃香の様子を知っている明久には、とても親子喧嘩なんていうレベルの問題ではないように感じた。あれは、意地を張っているというよりは、怯えているとか、逃げようとしているとか、そう言う類の物だった。

 

「失礼させてもらうよ」

 

玲の威嚇もなんのその、穂乃香の父親は明久の部屋のドアノブへと手をかける。玲は何とか止めようとしたが、実際にはそんなことはできないのである。関係を見れば、穂乃香の父親が穂乃香に会うことに何の問題もない。むしろ、それを邪魔している玲と明久の方が悪者の立場になるのだ。その背景に(たとえば、穂乃香が虐待などを受けていたとしても)現状では、玲に二人が対面することを邪魔するのは不可能なのだ。

 

「……穂乃香」

「おとう……さん……」

 

父親が入ってくるなんて考えていなかったのか、穂乃香の表情に驚愕の色が混じる。が、それはあくまで一部であり、明久には、いや、玲にも、その大部分が恐怖の色で占められているように見えた。

 

「帰ろう。母さんも心配している」

「…………」

 

問いかけに、穂乃香は答えない。

うつむいたまま、何も言わず沈黙の拒否をする。

 

「さあ、早く帰ろう」

 

沈黙の拒否を続ける穂乃香に業を煮やしたのか、穂乃香の腕を掴んで連れて行こうとする。腕を触れられた瞬間、穂乃香がそれを振り払う。

 

「いや!帰りたくない!」

 

穂乃香が拒否反応を見せた直後、それまで温厚だった、いや、温厚だったふりをしていた穂乃香の父親が本性を表す。

 

「……ッ。わがままを言うなッ!」

 

穂乃香の腕をつかむと強引に引っ張り、穂乃香をベッドから引きずりおろす。その光景を見た明久は、脳内で何かをシュミレートする前に、身体が動いていた。

 

「やめてください!嫌がってるじゃないですか!」

「邪魔するな。これは私たちの問題だ」

「目の前でこんなことされて、邪魔するなって方が無理でしょう!」

 

そもそも、並大抵のことではここまではならない。明久には、この男が穂乃香に日常的に何かをしているとしか思えなかった。

 

「……もう、いやっ!こんなの、嫌なの!」

「穂乃香!」

 

穂乃香と穂乃香の父親の間に明久が入り、二人の間に少しの距離ができる。突然の明久の登場でわずかに生まれた隙をついて、穂乃香は部屋から出ていき、そのまま吉井家からも飛び出してしまう。

 

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