とある学園の中で一番おえらーい妖怪が鎮座する一室、そして相対するは赤ゴリラ。一学園長および一研究者と一生徒(クラス代表)が睨みあっている
「「誰がゴリラ(妖怪)だ!!」」
地の文にツッコむなよ。これだから常識のない妖怪やゴリラは困る。
と、冗談(に聞こえる割と本気の台詞)はここまでにしておいて、文月学園長、藤堂カヲルと、Fクラス代表、坂本雄二にちゃんと話の視点を合わせよう。
「なるほど、確かに埃まみれじゃ体調を崩す奴も出るかもしれないさね」
「ああ。茣蓙やミカン箱は俺達の自業自得だから文句は言わねえ。新学期まであの設備で我慢するが、衛生環境は我慢云々でどうにかなる問題じゃないだろう。体調を崩して授業に出る回数が減れば、あんた達教師が最も恐れる『学力の低下』に直結することになるぜ?」
「…………」
雄二が切ってきたカードに、学園長が考え込む。
雄二はこの時点で、ほぼ勝ったと思っていた。いくら教育方針といえど、教育機関が生徒の健康的な安全も確保できないのでは論外だろう。Fクラスの底なし健康体どもが埃程度で体調を崩すとは思っていないが、世間がそれを認めるかと言えば答えは『否』だろう。
おまけに、仮に教室の汚さが原因で欠席が重なれば、ただでさえ難しい高校の勉強――――進学校である文月学園は進度も早く、授業の密度も濃い為――――など、あっという間に追いつかなくなるだろう。Fクラスの大多数は既に取り返しのつかない次元まで取り残されているが。
「(はっきり言って、衛生環境の問題さえ片付けてしまえば後は清涼祭当日の頑張り次第でどうとでもなる。学園側の手を借りないといけないのはこれだけだし、ババアが首を縦に振れば後はどうとでも――――――――)」
「却下さね」
「コンクリートに詰めて冬の北極海に沈めるぞクソババア」
想像と正反対の学園長の結論に、想定外とは思えないほど流暢に罵倒を返す雄二。さすが悪鬼羅刹、罵倒の切り返しのレベルも半端ではない。
「……アンタ、本当にお願いするつもりあるのかい?」
「当たり前だクソババア。こんなに丹精込めて罵倒してるんだ。俺のどこに誠意がないっていうんだ」
「それで誠意があるって思うのは被虐趣味の変態だけさね!!」
ただでさえ(Fクラスの中では比較的高い方だが)沸点の低い雄二は、その感情を表に出すことこそしないが、対ババア用罵倒爆弾を次々と学園長室に投下していく。
「とりあえず、理由を聞かせてもらおうか。俺は女子供は殴らねえが女妖怪なら殴るぞ」
「アタシも一応人間の女なんだけどねぇ……。理由はアンタがさっき言ったさね。汚い教室が嫌なら、振り分け試験でDクラスに入れるくらいの学力をちゃんとつけておけば、それで何の問題もなかっただろう。それこそ、あんた達の『自業自得』だよ」
「そうか。つまり自業自得な俺達に救いの手を差し伸べてくれると」
「後半15文字は完全にアンタの都合のいい脳内変換さね!?」
と、若干ペースは雄二の方に傾きつつあるが、学園長とて負けてはいない。
このあと数十分、雄二と学園長の罵倒の応酬が学園長室で繰り広げられることとなる。