「坂上、ここはやめよう」
「どうしたんだ坂本。綺麗なお姉さんがいっぱいなんだぞ」
欲望に忠実なバカ二人が殴り殴られ停滞している2年Aクラスの出し物『メイド喫茶 ご主人さまとお呼び!』の前。
どっちがご主人様なのか若干微妙だがそこは気にせずスルーしていこう。世の中スルースキルは大事なのだ。
「何してるのさ、雄二、竜」
「二人とも、何してるの?」
「男同士が絡んだって気持ち悪いだけよ」
「「誰がだッッ!!」」
少し遅れてやってくるSクラスのメンバー達。ちなみに静真は店番中。客はほとんどいないのだが。
「そっか。ここって坂本の大好きな霧島さんのいるAクラスだもんね」
「坂本君は、『つんでれ』なんですよね」
さらにやってくる二人があられもないこと(注:本人談)を言う。雄二は全力で否定するが、事情をよく知らない3人は『霧島さん』という単語に首をかしげる。
「霧島さんって、あの、霧島さん?」
「成績優秀才色兼備の?」
「学年主席のあの霧島さんが?」
上から、明久、優希、穂乃香である。
そして3人全員が、
「「「こんなゴリラを?」」」
「誰がゴリラだ!?」
毒を吐く。
「ほら、さっさと行くわよ」
「あ、待って優希ちゃん」
「お前ら!?」
挙句はリアクションすらスルーときた。まあ、雄二だし大した問題ではないんだけど。
「……お帰りなさいませ、ご主人様にお嬢様」
「わっ」
さっそうと音もなく現れた黒髪の美少女。いきなり現れたその少女、霧島翔子に、穂乃香は一瞬驚いて声をあげてしまう。
「………チッ」
「今夜は帰らせません。ダーリン♥」
ひゅーひゅー。
「奥さん、聞いた?ダーリンですって」
「あらあら、熱いわねぇ」
いきなりおばさん口調で冷やかし始める明久と竜が、雄二の拳の餌食になるがスルー。
そんなバカどもを無視して、穂乃香たちは翔子に案内されて席に着く。
「……こちら、メニューになります」
「……私、ふわふわシフォンケーキで」
「あ、私もそれで」
「ウチも」
「私もそれでお願いします」
「葉月も!」
いつの間に!?今の間に。そんなやり取りが一瞬展開される。
全員がAクラスお勧めのメニューにしたところで翔子が、
「……ご注文を確認します。ふわふわシフォンケーキが6つ、メイドとの婚姻届が一つ、おいしいメイドが一つ。以上でよろしいでしょうか。しばらくお待ちください」
と言い残して言った。
「おい待てよろしくねえぞ!?」
「逃がすか坂本ォ!!」
「待て雄二ィ!!」
いつの間にか向こうで乱闘を繰り返している3バカだったが、
『ここの接客の仕方は最高だなぁ!!』
『Fクラスのバカどもとは次元が違うぜ!』
そんな怒号が聞こえ、一時休戦となる。