バカとテストと召喚獣 ~たった5人のSクラス~   作:黒炉

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第7問

「FクラスがDクラスに宣戦布告、ですか……」

 

翌日、明久と穂乃香が登校する頃には、他の3人も3階の寮から降りてきていた。

鉄人からの日程確認で、FクラスがDクラスに試召戦争を仕掛けたことを知った静真は、眼鏡の奥の瞳を光らせFクラスの意図を考えている。

 

「Eクラスなら戦略次第ではEクラスを倒すことも不可能ではありませんが……なぜその直後にDクラスに戦争を仕掛けるのでしょう?」

「どうせ、Eクラス設備で満足できなかったんじゃないの?高みを目指して頑張るのは結構だけど、過ぎたよくは身を滅ぼすって言葉、知らないのかしらね」

「んなこたぁどうでもいいんだよ!その島田って奴、明久に手ェ出すなんて許せねえ!!」

「そうです!やっぱり今からでも西村先生に……!」

「ふ、二人とも、落ち着いて」

 

静真が考察していると、優希はFクラスの過ぎた欲望でしかないといい、竜と穂乃香は美波への怒りをあらわにし、明久がそれをなだめている。

 

「しかし、Eクラスと言え、上位クラスを倒せる手腕を持つ代表が、この行動は不可解すぎますね……。Dクラスを倒す秘策でもあるのでしょうか?」

「あ、それ、多分ムッツリーニかも」

「「「「ムッツリーニ?」」」」

 

Fクラスの戦力に疑問を抱いている静真に、明久はとある犯罪者予備軍の名前を出すが、Sクラスメンバーがそんな変態のことを知るわけもない。

 

「うん。保健体育が異様にできるけど、他は僕よりダメな人」

「……ああ、土屋康太氏ですか。彼の突破力なら、確かにDクラスを落とすことも容易そうです」

「ホントにFクラスにそんな奴がいるの?」

「うん。ムッツリーニは、総合科目の9割が保健体育だから」

 

本当に恐るべき点数配分である。極端をこれほど体現している人間はおそらく他に誰もいないだろう。

 

「そいつがFクラスなら、Dクラスにも勝てるってことか?」

「うん、多分」

「……もしかしたら、Dクラスの設備は目的ではないかもしれませんね」

「どういうことですか?」

 

静真はムッツリーニの存在を知ったことで、Fクラスの目的が別のところにあるかもしれないという一つの仮定にたどりつくが、穂乃香はまだ理解していないようで聞き返す。

 

「EクラスやDクラスとの試召戦争が、上位クラスとの交渉材料かもしれないということです」

「ああ……。他のクラスに攻め込まれたくなかったら……って言って、自分たちに有利なフィールドを作るってことね。やることが卑怯だわ……」

「作戦としては立派ですが、それは他クラスから攻め込まれれば一瞬で崩れる苦肉の策。代表はかなり頭の回る人物かと思いましたが……」

 

静真がFクラスの作戦は穴があるといい、Fクラス代表の頭の回転が速いわけではないのかと疑ったその時、放送機器からノイズの入った音が流れる。

 

『……が………す……ま……い……』

 

「放送?何かしら」

「さあな。聞いてりゃわかるだろ」

 

『船越先生船越先生、吉井明久君がSクラスの教室で待っています。教師と生徒の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです』

 

「誰だこんなふざけた放送してんのは!!」

 

放送の内容をはっきりと聞き取るや否や、竜が大激怒。

これには穂乃香だけでなく優希も黙っておらず、

 

「……!!静真、船越先生はどうにかするとして、早くこの放送流した人物突き止めるわよ!!」

「……私が船越先生に事情を説明しておきます。貴方がたは放送室を抑えてください」

 

静真は冷静に指示を出し、他の4人に放送室に行くよう指示するが、冷静に見えるその奥では、かなり頭にきているようで不機嫌さが明久にも伝わってくる。

 

「行きましょう吉井君。これがFクラスの仕業なら、ちょっと懲らしめる必要があるわ」

「やっていいことと悪いことがあるって、分からせないとな」

「大丈夫、いざとなったら私が守るから」

「う、うん……」

 

穂乃香に守るといわれても、ちょっと自分が情けなくなるだけの明久である。

 

 

 

               ☆

 

 

 

「見つけたぁ!テメェがさっきの放送流した奴か!」

「げ、Dクラスか!?」

 

竜があり得ない速度で放送室までダッシュしたため、逃げ切ることができなかった可哀想なFクラス生徒A。彼は雄二に利用されたにすぎないのだが。

 

「逃げようたってそうはいかねーぞ」

「や、やるしかないのか、試獣召喚(サモン)!」

「お?やんのか?試獣召喚《サモン》」

 

可哀想なFクラス生徒Aは竜をDクラス生徒と勘違いしてしまい、試召戦争を仕掛けてしまうが、竜はこの戦争には無関係なSクラス生徒であるために、普通ならFクラス生徒Aが戦死扱いになるのだが、竜は既に限界突破するほどに頭に血が上っているため、売られた戦争(ケンカ)を買ってしまう。

 

 

☆古典勝負☆

 

Fクラス 今井俊太  79点

 

      VS

 

Sクラス 坂上竜  639点

 

 

「え、Sクラス!?」

「どおりゃああ!!」

「あぎゃあああ!!」

 

可哀想なFクラス生徒Aこと今井は、表示されるクラスに驚くが、竜はそんなことにはお構うことなく今井の召喚獣を拳で貫く。当然、この点数差では召喚獣の残骸すらも残らない。

 

「戦死者は補習!!」

「げ、鉄人!」

「逃げるな!それから坂上、お前もだ」

「う」

 

鉄人は逃げようとする今井は捕えると、竜も補習だと告げる。

 

「お前はこの試召戦争には関係ないだろうが。罰として、お前も補習だ」

「……すいませんでした」

 

頭に血が上っていたとはいえ、ルールを破ってしまった以上罰則は当たり前。

自らの行為の責任を取ろうとする竜の行動は、Sクラスであるが故でもある。

 

「りゅ、竜!」

「竜、アンタ何してるの!?」

「竜さん」

 

遅れてやってきた明久、穂乃香、優希は、何が何やらさっぱり。竜は「ちょいと補習行ってくる」とだけ言うと、鉄人とともに鬼の補習室へと姿を消した。

ちなみに、それからしばらくして竜の悲鳴が聞こえたとか聞こえないとか。

 

 

 

               ☆

 

 

 

「そうですか。やはりFクラスが……」

「私、もう我慢できません。Fクラスに宣戦布告して、試召戦争をやめさせましょう」

「私も同感。いくら全員に与えられた平等な権利だからと言って、他人に迷惑をかけていいことにはならないわ」

「おう。仲間がここまでいいようにやられたんだ。黙ってるなんて出来ねえよ」

 

教室に戻り、事実を静真に報告すると、穂乃香、竜、優希の3人はFクラスを倒し、3ヶ月間宣戦布告できないようにするべきだと主張する。

静真も同じように考えており、学園側はこの手のトラブルに甘い為、ここまでFクラスの問題行為がある以上は、自らの手で権利を取り上げるべきだと考えていた。

唯一考えが違うのは明久。Fクラスにはかつてのクラスメートや大事な友達もいる。彼らの頑張りを自分の手でぶち壊してしまうことに耐えられるほど、明久は強くはない。

 

「………」

「吉井君……」

 

どうすればいいか分からず、ただ黙っているだけの明久の拳を、穂乃香が優しく握る。

 

「私は、戦うよ。吉井君の友達かもしれないけど、吉井君にあんな酷いことするなら。間違ってることは、素直に認めて謝らなきゃいけないもの」

「相手が間違ってたら、友達ならなおさら指摘してあげなきゃいけないのよ。間違いを見て見ぬふりをするのは、仲間のやることじゃないわ」

 

穂乃香と優希の言葉を聞いて、明久は考え始める。

1年時は、雄二やムッツリーニや秀吉とバカをやっていて楽しかったが(その頃から雄二と罪のなすりつけ合いなどはしていた)、一度もそれを止めようとは思わなかった。

今回の試召戦争で、雄二達がまた問題を起こしているなら、それを止めるのはSクラスの皆ではなく、彼らの友達である自分でなければいけないのではないか、と。

 

「……静真」

「何でしょう」

「……僕もやるよ。雄二達は、僕が止める」

「分かりました。我々Sクラスは、FクラスとDクラスの試召戦争が終わり次第、Fクラスに試召戦争を仕掛けます」

 

もともと開戦ムード100%の静真、竜、優希、穂乃香に加えて、明久も試召戦争を仕掛ける姿勢になったため、SクラスはFクラスに宣戦布告することに決定する。

 

 

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