VOCALOID×包丁さんのうわさ ~路頭の花と歌姫達~   作:kasyopa

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前前々回、前々回、前回ともにお付き合い頂いた読者、閲覧者の皆さま、ありがとうございました。
これからはVOCALOID日常パート、包丁さんのうわさストーリーパートという構成で進めていきます。
いうまでもなく、日常パートは優希メイン、ストーリーパートは夏奈子メインとなります。優希は包丁さん呼ばないよ? ほんとだよ?



第12話 一段落

Side 遥 優希

 

 

夏奈子、ルカと別れて俺は皆と自分の家に入る。

玄関を開けると中から家独特の匂いが帰ってきたことを実感させた。

畳の匂いもいい物だが、やはり自分の家の方が落ち着く。

 

「お茶を淹れましょうか?」

「いや、俺が淹れるよ」

「なら私手伝いますね。リンちゃんとレン君はゆっくりしててください」

「「はーい」」

 

リンはリビングのソファーにダイビングして、顔をクッションに埋める。

レンはそのせいでソファーに座れず、仕方なく肘掛けに座ってテレビをつけた。

 

「あ、マスター私ホットミルクがいい!」

 

思い出したように顔を上げて台所に向かって大声を出すリン。

それに手を振って答える。

 

「ミク、牛乳出してきてくれ」

「解りました。あ、私の分もお願いします」

「解った」

 

味噌汁とかを作る鍋とは別に、ホットミルクを作るために買った鍋を用意する。

俺は人に出すホットミルクを作るのにレンジは使わない。鍋で温めて作るのだ。

特に理由はない。いや、厳密には人の手をかけるというのが大きな理由なのだが。

やはり機械より人の手。それだけで味も変わる。

それは母さんの教えで分かっていた。父さんも何かそんなことを言っていたような気がするが、もっと別の事だった気がする。

 

「わざわざ鍋で温めるんですね」

「ああ」

「優斗さんが言ってましたよ。誠意を込めた物には何にでも自分の思いが乗ると」

 

その言葉で思い出した。父さんは確かにそういっていた。

だから仕事にも趣味で作る作品にも、誠心誠意込めてそれに取り組んでいた。

 

「そういえばゆかりもマキも、父さん達の旅行に付き合っていたわけじゃないんだな」

「確かに購入されたのは旅行中でしたが、最初期は私達に接客の仕方や営業等の仕事について教えられました。それからしばらくして私達も裏表共の仕事に就くことになり、しばらくは二人のお仕事の関係に手を染めていたんです」

「なるほどな」

「それからしばらくお慕えして、今に至ります。色々と急な出来事だったので、ご連絡することが出来なかった事を謝る、と優斗さんが言ってましたよ」

「そうか。……なんか悪いことしたな、俺」

「そんなことはありません。優希さんのお蔭でお二方の考えも少しは変わったんですよ」

「二人が?」

「はい」

 

俺がリンとレンを購入した結果がこういった結果を生んだのなら、折角の親婚旅行を癒せないものになってしまったのなら、申し訳ないと思っていると。

俺が両親を変えたというのは信じがたい話だ。

だがそれをすぐに察したゆかりは話してくれた。

 

俺がリンとレンを購入して、人に似て人にあらず者と触れ合うようになり、そういった者達への理解を深めようとしたこと。それが最高潮になった結果が二人、つまりゆかりとマキの購入に至ったということになる。

ミクはその話を聞いて心底安心していた。何を考えていたのかは俺には解らない。

今は企業の上層にそのことで軽い相談をしているらしい。

でもその話はVAWCの存在もあって順調に進んでいるようで。

 

「二人もなんだかんだ言って、大変なんだな」

「今はずいぶん落ち着いたと言ってますよ。優希さんが生まれた頃から」

「やっぱり我が子の存在は大きいのか」

 

複雑な気もするし、そうでない気もする。

自分もしっかり勉学に励んで二人の道を継ぐとしよう。

到底両親が勉学だけの人間を二人の企業に入れようとはしないが、な。

 

 

 

4人家族から5人家族(厳密には6人家族から8人家族)になった俺達は、少々困った問題が起きた。

そう、食べ物の問題だ。

いや、野菜や肉、お米などの材料となる物の量には全く影響はないのだが、パンやお菓子等の元から量が分れているものだ。

パンは何とかなる物の、これからマキが来ることも考えて量を増やしておかないと。

後は、量が少なく大きいお菓子をあまり買いにくくなることか。

それを二人に伝えると唯一リンからブーイングをもらった。

 

「えー! それだとケーキ切る時も小さくなっちゃうのー!?」

「まぁ、そういう事にはなるな」

「ぶーぶー!」

「我儘言うな。それに日頃からケーキが食える階級でもないだろう」

「そんなことないよ! その気になれば食べれるだけのお金あるもん!」

「ケーキは毎日食べる物じゃないだろ」

 

「それにおいしい物はたまに食べるからおいしいんだ」

「あ、言われてみれば……」

「その時が来て本当に不満ならこっちで何とか対策取るから、その時が来るまでは落ち着いてくれ」

「でもゆかりさんの歓迎パーティーしたいし」

 

そのリンの言葉にレンとミクはうんうんと首を縦に振る。

俺からすれば、元から家族だったからその意識は薄かった。リンから言われて初めて意識したほどに。

 

「そうだな……言われてみればだ。だがそれはマキが来てからでもよくないか?」

「なんだかマスターいつもと違うね」

「うん。何か意識してるみたい」

「私もそう思う。なんとなく調子が出てない感じかな?」

「スランプに似た物でしょうか?」

 

4人から言われてしまう。多分俺らしくない。多分。

ゆかりが来てからまだ一時間と経っていないのに、何を考え、何を意識してるのだろうか。

 

「………」

「きっとマスター、旅行で疲れてるんだよ」

「そうですね。休んで来たらどうですか?」

「マスターあんまり体頑丈じゃないもんね」

「あれ? そうなんだ」

「うん。マスターのお母さんが一番そのことで気にしてるもん」

「美希さんも優斗さんもおっしゃってましたね。優希さんは体が弱いから体調は大丈夫かと」

 

こうも親以外から心配されたのは初めてかもしれない。

俺は大人しく言うことを聞いて自分の部屋に上がり、布団に倒れ込む。

体調を崩したのだろうか。それとも、今回の旅行で何かあったのだろうか。

 

「家族か……」

 

家族。改めてその言葉の意味を咀嚼する。

血がつながっていなくても、たとえ人でなくても、共に同じ家という屋根の下で、共に暮らすのであれば、家族。

父さんからの教えだ。中学ぐらいの時に教えてもらったことだ。

あの時は、どうだったろうか。二人は幸せだったろうか。

 

「そうか……なるほど」

 

今の俺は自分の行動に負い目を感じているのだ。勝手に自分で負い目を作って追いつめているんだ。

俺がリンとレンを購入した故に両親は変わった。

俺がこの世に生を受けた故に両親は変わった。

決定するのも、変更するのも、共に自分の意志が最終決定までを導く。

だからそのほかのものに影響されたとしても、判断は自分にある。だから言い逃れできない。

だが、その変わる考えを持たせてしまった、所謂きっかけを作ったのは紛れもない本人達以外の人物。

その人物がいなければ、その考えは生まれなかっただろうという可能性。

 

こうも変わって、二人は今幸せなんだろうか。

……こういう時、頼れるのは一人しかいない。

俺はある番号に電話する。

 

『……もしもし』

「もしもし、俺だ」

『オレオレ詐欺はまたにしろ。で、なんだ優希』

「ちょっと参った。二人のことで」

『ゆかりとマキ、って雰囲気じゃなさそうだな。二人とはどの二人のことだ』

「……二人のことだよ」

『………』

 

父さん。遥 優斗。

二人が親婚旅行に出かけるようになってから重い話をずっとしてばかりだ。

だが、そういう話は母さんにも夏奈子にもしたくはない。

理由は簡単。相手が女性だからだ。

男性が肉体面で器用であれば、女性は精神面で器用。だがそれは逆にそちらを多用し傷つくということにもなる。

精神面で怪我をすることはないが、気疲れなんて言葉があるくらいで疲れはする。

 

『……まぁ、お前の言う二人なんて元から解るがな』

「なら引っ張らないでくれ」

『もしもがあるだろう。だいぶ気疲れみたいだな。家族兼慰安旅行じゃなかったのか』

「お蔭様で。旅館の方にはしっかり連絡が入ってなかったみたいだけど」

『お前の名前を出せば入れたはずだが?』

「その点でもお蔭さま」

『そうか。で、話を戻すがどうした』

「……二人は、俺が生まれて幸せになったか。それを聞きたい」

 

その言葉を言った瞬間、相手の方から電話を切られた。

 

「……はぁ」

 

流石の父さんでも無理か、そういう質問は。

参っていると誰かが階段を駆け上がってくる足音がする。

誰かと思っていたらゆかりがドアをノックせず入ってきた。

 

何事かと思う前に彼女は俺の前に歩み寄り、そして俺の視界がホワイトアウトした。

その前に見たのは、冷酷なまでに冷たい瞳とゆかりの表情。

右の頬に残る痛みと、部屋の左に置いてあるものが視界に移って何が起こったのか理解する。

 

「どうして叩いた」

「その理由は一番優希さんが解っているはずですよ」

「………」

「優斗さんから私に先ほどメールがありました。それを実行しただけです」

 

そういってゆかりは自分の携帯、淡い紫と紫色のチェック柄のカバーがしてあるスマートフォンを見せてくる。

そのメールの文章にはこう簡潔に書いてあった。

 

『優希を殴れ』

 

「あいにく私は上手い殴り方を知りません。ですので、私のやり方で『罰』を与えさせてもらいました」

「差し詰め代行人だな。父さんもうまくやる」

 

またホワイトアウト。またぶたれた。

理由、理由なんてどうでもいい。どうでもよかった。

 

「これ以上やると、私も手が痛いのでやらせないでください」

「解った。だから構えないでくれ」

 

まだぶつつもりなのか、手を上げているゆかり。

まるで相手に対して何も思ってないかのような影のかかった表情。瞳。

ここまで怖いゆかりは見たことがない。何がそうさせたのか。

彼女はこの文章だけでどこまで読み取ったというのか。

 

「……父さんには俺から謝っておく。親には愚問だったな」

「………」

 

それを聞くと何も言わずに部屋を出ていくゆかり。

俺はそれを見送って再び父さんへ電話をかけたのだった。

 

 

Side 結月ゆかり

 

 

皆さんの計らいで優斗さんの部屋で眠らせてもらうことになった。

そこまでせずとも、客間の布団でいいと言ったのだが、優希さんを含む4人から言われたため押し通すわけにもいかず、お言葉に甘えることにする。

ところでマキちゃんは大丈夫だろうか。

誰に対してもフレンドリーであること。いつまでも明るく逆に物事を軽く見ること。

彼女は彼女でいいところがあるのだが、何とも不安な部分がある。

私ならお客はお客、身内は身内と分けて対応し、多少のミスも重く考え対策を練るというのに。

もともと彼女はバンドのギターをやっており、それが今の彼女の性格と大きくかかわっているのだろう。

 

布団を敷いて、後は寝るだけ。そうなった時私の電話が鳴り始めた。

 

誰からだろう。画面を見れば、一番見慣れた人の名前。優斗さんだ。

 

『もしもし、ゆかりか?』

「はい。私ですよ」

『今日はすまなかった。お前にはああいう仕事は頼みたくなかった』

「仕方ないことです。優希さんはなんて仰ってました?」

『俺が悪かった、と。ありきたりな答えだな。50点と言ったところか』

「相変わらず厳しいですね」

『当然だ、自分の息子だからな。それだけだ。ありがとう、ゆかり』

「……いえ。こちらこそ、ありがとうございます。マスター」

 

そういって互いに微笑んで電話を切り、今日のことを思い出す。

 

『慕う、とは相手を恋しく思うという意味もあるのです。恋しいの意味の説明は必要ありませんね?』

『それからしばらくお慕えして、今に至ります』

 

「……少々不覚でしたか。まぁ、間違ってはいませんが」

 

今日はいつになくぐっすり眠れそうだ。そう思って私は目を閉じた。

 




ゆかりさん可愛い……というか、憧れるというか、なんというか……
いい人だよね。全部が。悪魔付き? 何を言っているんだ君は。
本来なら、優希と夏奈子の双方入れたかったんですが、優希が気疲れしたのでその話題を拡張したら4500行ってしまい、今回はこれだけで終了です。
夏奈子は夏奈子でしっかり書きたいからね。
しかし俺スタック溜めようとしてるのか超高速で執筆してるな…。
Yoshokiさんに負けないように(勝負してるわけじゃないけど)更新頑張るぞー!

メインタイトル(題名)を変更予定。包丁さん入ってきたからVOCALOIDってだけじゃねぇ…

P.S. この小説の為と、ニコ生でコメント読み上げさせるためだけに、マキさんを購入しました。
ゆかりさん、マキマキ共(片方でもOK)に「何かこれ読ませてみてー!」って台詞、文章がありましたら、そちらの方は活動報告の方にて受付しておりますので、SkypeID共々お知らせ頂けると、データをお送り出来ますのでお願いします。
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