VOCALOID×包丁さんのうわさ ~路頭の花と歌姫達~   作:kasyopa

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管理権とか未成年後見人とか知らない。調べてみたけど解んね。
いや、もう、難しいんだからね! うん!

今回は、ゴールデンウイーク前日回です。時期が違い過ぎるけど気にしない。
そして、優希と夏奈子の2side回です。

ゆっくりしていってね!


第14話 新しい居場所

Side 水生夏奈子

 

お父さんやお母さん、土地関係の業者の人達と話し合って時が経ち、もうゴールデンウィーク。

私はついに今は亡きおじいちゃんの家の管理を任されることになった。

 

その間はドタバタしてて、包丁さん達を呼び出すことが出来なかった。

でもこれでやっと杏ちゃんを呼び出すことが出来る。

 

と、その前に。

 

『もしもし』

「あ、優希! ゴールデンウイーク空いてる? 空いてるよね!」

『いや、父さんと母さんが帰ってくるんだが……』

「あれれ、そうなんだ」

『でも付き合えなくはないな。どうせお前のことだから明日ぐらいに』

「夕方じゃぁねー。流石優希、よく解ってる。じゃあ明日のお昼過ぎ駅に集合ね!」

『はいはい』

 

優希がお父さんとお母さんが帰ってくるというのに、無理してでも行こうとする理由が分からなかったけれど。

細かいことは気にせずに私は既に用意されている包丁と紙を机の上に置く。

 

あれからというものの、ルカが来て、葵ちゃんが来て、笹ちゃんが来て、私の生活は激変した。

一人寂しく暮らす生活から、会話のある生活に。

会話のある生活から、子供を見る生活に。

子供を見る生活から、家族を見る生活に。

 

そういっても過言でないほど、私の生活は激変したのだ。

楽しい。嬉しい。充実した毎日を送れたことに本当に感謝している。

 

その万感を込めて、私は久しぶりにいつもの言葉を口にした。

 

「包丁さん、切ってください」

 

 

Side 遥 優希

 

 

突然の夏奈子の電話になんら戸惑うことなく対応し、俺は皆にそのことを告げた。

行き先は不明。何日かかるかもわからない。もしかしたらゴールデンウイークを全て使うかもしれないと。

 

「でもさマスター、ゴールデンウイークにお父さんとお母さん帰ってくるんだよね?」

 

レンの言葉が胸に刺さる。

実はを言うと、これまでの間あの電話を皮切りに俺は二人と全く連絡を取っていない。

理由は申し訳なさだ。もうかなり時間が経つが、いざ電話を取るとあの時のことを思い出してかけられず、の繰り返し。

二人は俺を大切に育ててくれた。それを解っていながらいくら気が滅入っていたとはいえあんなことを言ってしまった。

だから、そこから感じる負い目が結果として、極論として二人と顔を合わせたくないのだ。

 

他者からすれば馬鹿みたいだと思われるだろう。でも、俺からすれば二人は偉大な人であり、一種の目標であり、夢でもある。

それからか二人の前ではどうも、リンやレン、夏奈子達の前で見せていた俺ではいられない。

 

「すまんな、両親の戻ってきた時のお祝いは後にさせてくれ。ちょっと俺に考えがある」

「そうなんだ。なら大丈夫かな?」

「………」

 

リンやレン、マキは納得してくれたが、ゆかりの指摘の視線とミクの心配の視線が痛い。

単純に、今思ったこと。

 

「(相談相手を、作らないとなぁ)」

 

そう思いつつも、俺は一人で買い出しに行くと言ってその場から逃げるのであった。

 

 

 

「いらっしゃいませー。あ、優希さん」

「町谷さん。こんにちは」

 

『Wonder Cafe』。

中々の頻度でここには訪れていた。

リンとレンを連れてないときも、気分転換によく利用している。

お蔭様で常連となって顔も名前も覚えてもらっていたり、ちょっとしたサービスを受けたりもしている。

 

「……はぁ」

「珍しいですね。溜息なんて」

「人間生きてれば悩みの一つや二つ出来ますよ」

「私より若い子に言われては、私もおしまいですね」

 

右手に持ったカップを左手のタオルで拭きながら、クスリと笑みをこぼす町谷さん。

 

「そういえばMEIKOとKAITOは?」

「VAWCに出ていますよ。二人には二人の仕事がありますから」

「そうですか」

「ご注文はどうされますか?」

 

カップを置いて俺を見つめる彼女。でも俺は目線を合わせなかった。

なんとなく恥ずかしい。母さんに似ているから。

 

「適当でお願いします」

「わかりました」

 

思いつかなかったときにいつも口にする。

これを言うと、町谷さんは本当に適当に何かを選んで淹れてくれる。

まぁ、はずれがないからこそこれを選ぶのだが。

 

「はぁ……」

 

肘をつき手を顔の前で組んで、目を閉じ俯いて溜息をまた一つ。

大分滅入ってきてる事が解るのだが、やめられなかった。

 

「追加料金でカウンセリングをお受けしますよ」

「と言いつつ無料で相談に乗ってるじゃないですか」

「落ち込んでいる人を見て幸せになる人は、この世にいませんからね」

 

「はい、出来ましたよ」

 

手を下して目の前に置かれたカップの中身を見つめる。

その中には、熱々のコーンポタージュが入っていた。

 

「あの、何かの嫌がらせですか?」

「いえ? 最後の一杯をお出ししただけですが」

 

ここのコーンポタージュは手間暇惜しまず、スイートコーンを裏ごしして作られているから相当おいしい。

まぁその分値段は少し張るが。

でももう梅雨の時期で熱くなるというこの時期に、これを出すのは少々悪意というか悪戯心を感じる。

 

でもせっかく出された物なので、俺は頂くことにした。

 

「大分気が滅入っているようで」

「………」

 

暑いのでスプーンで掬いながら飲んでいると町谷さんが口を開いた。

 

「少しでもいいですから、お話してもらえませんか?」

「……実は」

 

俺は両親に言ってしまったこと、それが原因で二人に合わせる顔がないことを伝えた。

 

「なるほど」

 

そう言って今度はグラスを磨き始める彼女。

考える時に止まっているといい考えが出ないということで、常に何かをしているのだ。

 

「単純に言ってしまうと、当たって砕けたほうが身のためですよ」

「ですよね。薄々気づいてはいましたが」

「それが出来ないならしばらく間を置いてみて、自分が覚悟できる様になってからでも何ら問題はないかと」

「そんなものですかね」

「でも、間を開けすぎればその分苦しくなりますからね」

 

ごもっともなことを言われて少しへこむが、へこんでいる場合ではない。

夏奈子とは最近顔すら合わせていないから、こちらの身を按じて誘ってくれた、ということはないだろう。

ただ、俺も今は少し間を置きたい。

夏奈子との旅行から帰ってきたらいずれ顔を合わすことになるだろうし、謝罪はその時にするとして。

 

「ありがとうございます」

「少しは楽になりましたか?」

「はい、多少は。元々答えなんて決まっていたんですがね」

「人に言われて気付くことなんていくらでもありますよ」

「相談の請負役の請負役さんに言われると、説得力ありますね。喫茶からバーに変えたらどうですか?」

「私は大人の相談より、子供の相談を受ける方が好きなんですよ。中々可愛らしいですからね」

「………」

 

やはり彼女も彼女だと思い、俺はまたコーンポタージュを飲むのであった。

 

 

********

 

 

買い出しを終えて家に向かう途中、通り道にある夏奈子の家から何かが暴れまわる音が聞こえてきた。

そういえば最近騒がしかったな。と思いながら、特に気に留めずその場を通り過ぎるのだった。

 

 

Side 水生夏奈子

 

 

「ちょ、杏ちゃん! 大人しくして!」

「そうですよ杏! 大人しくするです!」

「落ち着け杏! 桔梗からも言われてるだろう!」

 

呼び出したはいいけれど、あることが原因で家中を暴れまわるようになってしまった杏ちゃん。

今では葵ちゃんと笹ちゃんがカミサマ化してまでして抑え込むという、当初予想されていたであろう状況になっている。

その原因は。

 

「お姉ちゃんのいうことは聞きたいけど、それだけはやだ!」

「だ、だから、向こうに行ったらすぐ脱いでもいいから」

「それでもチクチクしてやだー! キュッってするからやだー!」

 

包丁さん達は『穿いていない』。そう。すなわち下着をつけても穿いてもいない。

それは流石に色んな意味で危ないから、穿かせようとしているのだけれど合成繊維特有のそれと、下着特有のちょっと締め付ける感触が嫌らしい。

 

そもそも杏ちゃんは命令は絶対の子なんだけれど、私が丁寧にそのことを説明して。

達成できた時にはご褒美を、たとえできなくても慰めてあげるだけという条件で、簡単な命令をして短時間で教え込んだのだ。

そのお蔭で、命令を果たさないと折檻を受けると考える子から、

ご褒美を貰えると嬉しいから、褒められると嬉しいから命令を果たす子になった。

 

で、今は生理的に受け付けない問題となっているため、ご褒美も褒められることも受け付けなくなっている。

ちなみに葵ちゃんも笹ちゃんも、いやいやながらも穿いてもらっている。

ただ、カミサマ化したらそれは反映されないみたいだけど。

 

玄関に追いつめられた杏ちゃんは既にカミサマ化しているが、こちらには二人カミサマ化した包丁さんがいる。

二人とも年少組だけど、相手が仲のいい子だから大丈夫。

怖がらせないようにゆっくり近づいて、あともう少しで手が届くという時。

 

いきなり振り返って、玄関を止めている金具を切り裂いて無理やり道を作った彼女。

それに驚いて私達は再び逃げる杏ちゃんを追いかけるのが遅れた。

 

当然カミサマ化してるし、嫌がっているから全力で逃げるだろう。しかもこっちにも包丁さんがいるから、それから逃げるためにもまた全力で逃げるだろう。

こうなると二次被害を考えないといけなくなる。

 

「葵ちゃん! 笹ちゃん! 出来る限り二次被害を抑えて追いかけて!」

「はいです!」「わかった!」

 

その合図で二人は風になった。

 

「大変ですね。マスター」

「あ、ルカ……」

 

溜息を吐いてその場でへばっていると、後ろから声をかけられた。

 

「とりあえず、3人とも散り散りにしてよかったのですか?」

「え? 何が?」

「彼女達がまたこちらに戻ってこれるとは思いませんが」

「あ」

 

そうだ。当然ながらも数ある家の中で私の家を見つけるなど、家の形すら見ていない彼女達が出来るだろうか。

 

「それに加えて、田舎に置いておくにしても代わりに面倒を見てくれる包丁さんがいないじゃないですか」

「あ」

「とりあえず、もう一人呼び出すことにしましょう。でないと本末転倒ですからね」

「うん、そうだよね、うん……」

 

私は新しく包丁を用意して、別の紙に同じことを書いてすぐさま呼び出す。

 

「包丁さん、切ってください!!」

 

何の包丁を置いたのかは必至でやったから覚えてない。気配が一人増えて、目を開けると目の前にピンク色のチャイナ服を着た女の子がいた。

でも年長組を思わせる風格だ。彼女ならやってくれる! きっと! いや絶対!

 

「なんなのね、杏を呼び出したと思ったら今度は私を呼び出すとはね」

「お願いします牡丹さん! 今すぐこの家を覚えて、葵ちゃんと笹ちゃんと杏ちゃんを連れ戻してきてほしいんです!」

「ちょ、それは命令と違うね! それはまた別の話「それよりもお願いします!!」

 

額を床に打ち付けながらもお願いする。土下座とかスライディング土下座とかそんなの比じゃないくらいに。

どこかの名人さんも驚きの速度で頭を上下させる。

 

「そんなことやめるね! そんなことしても命令は変えられないね!」

「君が! 行く、まで! 叩く、の、を! やめ、ない……!!」

 

一室に響く音。もう目が回ってきた。額と鼻の頭が痛い。

 

「あーあー! 解った解った! 解ったね! 探してくるからもうやめるね!!」

「本当!?」

 

顔をあげて飛びつこうとしたところで視界が揺らぎ、私はその場に倒れ込んだ。

 

「マスター!」

 

ルカの声が聞こえる。でももうだめかもしれない。うん。私、頑張ったよね……

私は、そんなことを思いながら意識を失った。

 

 

//////////////////////////

 

 

それから私が目覚めたのは、牡丹さんが皆を連れ戻しルカが皆に晩御飯を振舞った後だった。

皆で一緒に食べたかったな、と思いながら一人ベッドの上で食べていると、杏ちゃんが葵ちゃん、笹ちゃんと謝罪に来てくれたのと、牡丹さんが挨拶に来てくれたのが嬉しかった。

 

「ついに明日かー……」

 

明日。旅行という名目でおじいちゃんの家に預けにいく。

それで、ある程度彼女達を現世でありながら現世から隔離できるだろう。

後は、私達がしっかり見て、守っていけばいい。

 

それでいいのだ。うん。それでいいはずだから。

 




今回のあとがきは説明の部分が多いので、短め。
町谷さんが久しぶりに登場しました。
サブタイトルでは、優希の新しい居場所。包丁さん達の新しい居場所。
という形になってますね。

包丁さん達、穿いてないし付けてないんですよ。
杏が嫌がったシチュには実は元ネタがあります。
ゴッドイーター、ゴッドイーターバーストで出てくるシオと言うキャラクターが、服を着るのを嫌がるシーンがあり、そこから。
次回は夏奈子の田舎に帰るお話。お楽しみに。

~原作キャラクター簡易説明~
今回は包丁さんを消化するため一気に5人! 桔梗、月桃、笹、杏、牡丹!
やはり媒体になる包丁は伏せたりもしてます。

名:桔梗
説明:原作では出てこない包丁さんの一人。媒体になっている包丁が原因か椿に続いて呼び出される確率が多い。
   ゆったり優雅なお嬢さんみたいな人。包丁さん達からはかなり慕われているご様子。
   隠れ怪力。怒らせると怖い。みんなのお母さん。年中組だけど。

名:月桃
説明:その媒体故に一度も人の命を救ったことの無い悲しい包丁さん。今では呼び出されることもないから余計に救えない。
   年中組さん。鬼のお面を作るのが趣味らしい。複数種類あるとか。
   無表情で、雰囲気がなんとなく皆から浮いている感じ。そんなことはないけど。

名:笹
説明:元気が有り余っていて暴走する上空回りするタイプの包丁さん。
   麺類が好きで、小麦を育ててまでして作って食べている。小麦を率先して利用するのはあと一人だけだが。
   葵に続いて案外しっかりしている年少組かも。ひなたぼっこ同盟会員。

名:杏
説明:笹と同じように元気っ子。精神は幼く、周りを引っ張りまわして遊ぶ包丁さん。
   その対象は葵が一番多いらしい。年中組だろうが問題なく巻き込みます。
   過去の関係上命令は絶対で、褒められるのが好き。やっぱり年少組。

名:牡丹
説明:包丁さんでは珍しい年長組。年少組の面倒を見るのが好きなご様子。
   服作りが趣味で、外見だけでなく機能面でもと様々なものを作る。
   語尾が特徴的なのは、そもそもこの人日本人じゃないから。
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