VOCALOID×包丁さんのうわさ ~路頭の花と歌姫達~   作:kasyopa

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光の速さで一足お先に。
とりあえず、田舎でほのぼの出来るといいんだけどな。うん。
今回からまた、前・中・後編の長いお話になります。

そして、包丁さん勢が動き出す。

次回は次週!


第15話 断てぬ縁 前編

Side 遥 優希

 

 

駅に着いたはいい物の、当の考案者である夏奈子がいない。

ついでに言うなら、こちらはリンとレン、そしてミクしかいない。

理由は以下の通りだ。

 

ゆかり『お二人が戻ってきた時に誰もいないとなると、味気ないじゃないですか』

マキ 『そもそも私達優希さんの両親のVOICEROIDだからね』

 

そういった理由で二人は家に残り、結果としてリンとレン、ミクというこのまえと何ら変わらないメンバーで再び駅前に立って待ちぼうけ。

 

「夏奈子さんまだかなー」

「もうちょっと待ったら来るかもね」

「電車の時間は大丈夫でしょうか……?」

 

各自思い思いのことを口にする。

リンとレンは中学生らしく大人しく夏奈子の事を待っていたり、互いにお喋りしていた。

ミクは落ち着きなく回りを見渡したり、駅にある時計を見たりとそわそわしている。

 

「ミク、何をそんなに焦ってるんだ?」

「いえ、ただ乗り遅れたらと落ち着いていられなくて」

 

ここ最近はミクも大分、いやほぼ人間らしく個性が出てきた。

変わったのは、春の時だったろうか。

一人彼女が桜を見に散歩に行っていたときのことだと思う。

 

「心配するな。あいつのことだから本気で不味くなったら携帯に連絡してくる」

「そうですか。ならよかった」

 

ほっと溜息を吐いて俺の近くに歩み寄る彼女。

元からそばにいたのだが、時計を確認したりあたりを見渡していたりとそれで自然と間が空いていたのだ。

 

「最近いい方に変わったな。ミク」

「優希さんのお蔭です。それに、リンちゃんレン君、奏さんやそのミクさん、その家庭自身と触れ合ったお蔭です」

 

俺達だけでなく、奏達も少なからず影響している。

そしてそれに対して感謝の言葉を述べている。

 

そうか、と言って彼女の頭を撫でると嬉しそうに目を細め、えへへ、と声を漏らした。

 

「あー! お姉ちゃんずるい!」

「マスター! 僕も撫でて!」

 

二人に気付かれたので両手で二人ともの頭を撫でる。

二人はお互いに視線を送りながら笑っていた。

 

そんなことをしていると、やっと待ち人が現れた。

 

「ごめん優希、待った?」

「いや、それほど待ってない。話してたらあっという間だ」

「ルカさんご無沙汰してまーす!」

「ちょ、リン! そんな言い方失礼だよ」

「いいのよレン。ミクも久しぶり」

「ご無沙汰してます。ここ最近はお忙しかったようで……」

「済んだことよ。とりあえずもうすぐ電車の時間だから、早く行きましょう?」

 

ルカの一言で皆が動き出す。

俺も向こうから連絡が来ず学校でもかなり忙しそうにしていたので、多少なりとも心配していたのだが彼女の家の前を通るたびに騒がしくも楽しげな声が聞こえてきて、それが俺を安心させた。

 

「そういえば最近お前の家が騒がしかったな。あれはなんなんだ?」

「え? あ。えっとねー……親戚の子達が遊びに来ててさー……あはは」

「そうか」

 

嘘丸出しの雰囲気だが、あながち間違っておらず詮索しない方がいいと思った俺は適当に聞き流すことにした。

 

「優希の方こそ、ゴールデンウイークにお父さんとお母さんが帰ってくるんでしょ?  どうしてOKくれたの」

「ちょっとな」

「……ふーん」

 

夏奈子も俺と同じ何かを感じたのか、詮索はしてこなかった。

 

「……親戚の子の事、聞かないんだ?」

「聞いてほしいか?」

「できればね。話題切り出しやすいからさ」

「じゃあなんでいきなり俺を誘って行こうと思ったんだ? 親戚が来てるなら親族水入らずで行けばいい物を」

「そ……そういう風に聞いてくるんだ」

「それに、その親戚の子とやらはどこにいるんだ」

 

それを聞いて急に口籠る彼女。流石に問いただし過ぎたか。

 

「(あの、優希さん)」

「ん? どうしたミク」

 

少し不振がるような顔でこっそりと耳打ちし、俺を見るミクに対して違和感を覚える。

それも夏奈子の方に。正確には夏奈子の後ろの方に視線をちらちらと送りながら。

 

「(えっと、言いづらい話なんですが)」

「(気にするな。大抵言いたいことは解る)」

「(あ、そうなんですか?)」

「(ミクははっきり解ってるんだろうけどな。俺は全くわからん)」

「(なら言うんですけど……夏奈子さん、何か憑いてる感じがするんです)」

 

今もその場所に少し怖い物を見るような目でその方を見ている彼女。

挙動不審な様子からミクの言葉はすんなりと信じることが出来た。

 

「ん? どうしたのミクちゃん」

 

しかしそれが逆に夏奈子に違和感を覚えさせてしまったのも事実。

 

「あ、いえ。なんでもありません」

 

すぐさま俺の元を離れ、3人の会話に混じるミク。

その様子に夏奈子は首を傾げていた。

 

「で、質問には答えられるか?」

「あ、うん。それで親戚の子が田舎育ちだから、私のおじいちゃんの家に住まわせてあげようって思って」

「お前それ見捨てるのと同じじゃないのか?」

「それはないよ。その子達は自分達でしっかり生活できるもん」

「生活できる、ねぇ」

 

どうも腑に落ちない点が多いが、納得しないといけない気がしたのでそれ以上何も言わないようにする。

首を突っ込んだら戻れない何かをを感じたから。

 

「詳しい説明は向こうに行ってからするから。というわけで」

 

切符売場に到着して、会話は終了となった。

 

 

Side 水生夏奈子

 

 

「……親戚の子の事、聞かないんだ?」

 

妙なところで会話が途切れてしまい、私は自分の言いたいことが言えずじまいになってしまった。

それでもう一回、ある程度詮索してくれそうな言葉を述べた。

 

「聞いてほしいか?」

「できればね。話題切り出しやすいからさ」

「じゃあなんでいきなり俺を誘って行こうと思ったんだ? 親戚が来てるなら親族水入らずで行けばいい物を」

「そ……そういう風に聞いてくるんだ」

「それに、その親戚の子とやらはどこにいるんだ」

 

そこまで聞いてくるか、というほどにまで聞いてくる優希。

流石に容赦ないなぁ…

 

返す言葉に戸惑っていると、ミクちゃんが優希に耳打ちしていた。

何を話しているのかは解らないけど、彼女がちらちらと私の方を、私の足元の方を見るのに気づいてようやくどういうことを話しているか解った。

 

「ねぇ夏奈子さん、あの緑色の髪の子もしかして」

「(うん。たぶん見えてるか、感じてるかのどっちかだね。どう思う? 牡丹さん)」

「感じてはいるけど見えてはないね。笹がずっと見てるね」

「………」

「ねー笹ー。杏つまんないー」

 

昨日包丁さん達が散り散りになった時に解ったことなのだが、カミサマ化した包丁さん達は他の人達には見えていないみたいで。

ただそれでも霊感の強い人や何かある人は見えたり感じたりするのだろう。

その『例外』にミクちゃんが該当しているわけで。

 

「(杏ちゃん、なら私達の乗ってる電車と追いかけっこする?)」

「え? 追いかけっこ!?」

「「「っ!」」」

 

その言葉にそこにいる包丁さん全員が反応する。

 

「(うん。私達は電車……動く四角い鉄の塊に乗るから、それを杏ちゃんが追いかけるの。もちろん、止まったらその近くで待っててね?)」

「夏奈子さん、それはあんまりやめておいた方が……」

「(でもこうでもしないと杏ちゃん退屈だし……)」

「で、私が見る役になるわけね。こっちに来てこういう役回りばっかりなのね」

「(あ、あはは……牡丹さん、お願いします)」

「そもそも夏奈子は何で私に対して敬語なのね。私達より年上なのね、甘藻と同い年なのね」

 

どうしてそこまで解ったのだろうか。呼び出された包丁さんは呼び出した者の情報を全て見透かす能力でもあるのだろうか。

 

「(それはね、精神年齢、かな)」

「………」

 

それで妙に納得したかのように、呆れるかのように、私に話しかけてくることはなかった。

とりあえず、さすがにミクちゃんの視線が気になるので話しかけることにした。

 

「ん? どうしたのミクちゃん」

「あ、いえ。なんでもありません」

 

そう言ってミクちゃん向こうで話している三人の元により、会話に混じる。

 

「で、質問には答えられるか?」

「あ、うん。それで親戚の子が田舎育ちだから、私のおじいちゃんの家に住まわせてあげようって思って」

「お前それ見捨てるのと同じじゃないのか?」

「それはないよ。その子達は自分達でしっかり生活できるもん」

「生活できる、ねぇ」

 

優希の問いに真剣な瞳で答える。

私のやっていることは正しいのだと自分に言い聞かせて。

本当に正しいかどうかは、そうではないのだろうけど、今できる最良の策だと私は思っている。

 

「詳しい説明は向こうに行ってからするから。というわけで」

 

今ここで説明するわけにはいかない。でも、いづれ説明しなくちゃいけないから。

切符売場に到着して、会話は終了となった。

 

 

Side 初音ミク

 

 

皆切符を買って新快速というタイプの電車に乗り込む。

優希さんいわく、このタイプの電車は主要の駅にしか止まらないけれど、そこにしか止まらないから普通電車より早く目的地に着くらしい。

確かに一々駅に止まっていたら、減速、停止、発車、加速を何度も繰り返して、ずっと走っている物より遅くなるはず。

 

そんなことを考えてずっと電車に揺られる。優希さんの計らいで私は率先して席に座ることができた。

今でも、やっぱりつり革には抵抗を覚える。目の前に立っている優希さんも両手でつり革を持っていて、身の潔白を証明している。

ヘッドフォンからは最近の私達の曲が聞こえてくる。コメント、動画は頭の中で見ることが出来るから退屈はしない。

見ているのはもちろん週刊VOCALOIDランキング。最近の人気曲が分かるからだ。

歌えない私でも最近の曲のチェックは欠かさない。特に好きなプロデューサーさんの曲は定期的に検索をかけて新曲が来ていないか調べている。

誰が好きか……それは秘密。

 

「(あ、あの人の新曲一位になってる。よかった)」

 

それで頬が少し緩みながらも、夏奈子さんの方を見る。

今は感じないけれど、駅では確かに何かいた。でもそれが何かわからない。

当の本人は今外を見て微笑んでいた。まるでそこにある何かを見ているかのように。

私もその方向を見てみるけど、何もない。すごい早さで流れ去っていく光景だけ。

でも夏奈子さんはそこに何かあるように笑っている。

それが不審に思える。無論、夏奈子さん自身が不審ではなくその行動がなんだけれど。

 

「ミク、もうすぐ着くぞ」

「あ、はい。……あっ」

 

優希さんの言葉で立ち上がった時少し車内が揺れた。カーブに差し掛かったんだろう。

でもそれが原因でバランスを崩す。

 

「おっと」

 

軽く、優希さんにぶつかってしまう。偶然ながらもしっかりと受け止めてくれた。

 

「ありがとうございます」

「いや、気にするな」

 

やっぱり、優希さんには感謝してもしきれないことばかりだ。

電車を降りて駅から出る。丁(ひのと)と言う場所らしい。

私達の住んでいる場所と何ら変わらない田舎の光景が広がっていた。

その変わらない光景を割とすんなり受け入れられた私は優希さんの元に駆け寄ろうとする。

何故そうするのかと聞かれれば、出来るだけ彼のそばに居たいからだ。優希さんの傍なら私を守ってくれる。彼の手の届く範囲に居れば、私はもっと素敵な私になれると信じているから。

 

その一歩踏み出した直後。

 

「………」

 

乗り込む駅で感じた時と同じ、何とも言えない感じが。

そう、周りの空気の温度が下がったような、ヒヤッとした感じ。

ほんのちょっぴり。でもそれが大きな差に感じたのはどうしてだろう。

 

私は少し怖くなってその歩みを速めた。

 

 

Side 水生夏奈子

 

 

一番にゴールしたのは杏ちゃん。誰も見てないのを確認してから頭を撫でて褒めてあげる。

二番は葵ちゃん。三番は笹ちゃん。最後は牡丹さん。

 

皆にお礼の言葉を述べて、私達はバスに乗り込み、出来るだけ田舎に向かう。

そしてまた包丁さんの皆はバスとの追いかけっこ。

 

「あ、お祭りやってる!」

 

リンちゃんの声に反応して私も含めて皆が窓の外を見る。

点々と続く出店増えていき、ある神社を中心に賑わっていた。

 

「丁神社だって。神社だから何かを祭っているのかな?」

「しかし春に祭か。珍しいな」

「ですね。普通は秋や夏ですから」

 

俺の知ってる範疇だけどな、と優希が続ける。

 

丁神社……たぶん、うん。きっと。同名に決まってる。

おじいちゃんの故郷が丁町だってことも知ってた。

でもそれはただの同名の場所で、関係ないと思っていた。

 

でも、包丁さんはこうして今も存在している。なら、あの丁町があってもおかしくはないのだろうか?

そんな疑問と不安が私の頭をよぎる。

そう。ここがあの丁町だったとしたら……と。

 

 

Side ???

 

 

「あれ?」

 

神社がお祭りで賑わっていて、いつも以上に忙しいこのお仕事。

早く休み時間貰えないかなと思いつつも頑張ってお手伝いをしていると、不意に何かが目に映った。

鳥居の向こう側。何かが走り去っていった。

それも4つ。黄色の何かと、緑色の何か、青色の何かに、桃色の何かが。

あまりにも速過ぎて何か解らなかった。歩道は人で結構埋まっているというのに、それを難なく風のように過ぎ去って行った何か。

 

その何かに対して私は一つ思い当たる節があった。

切っても切り離せない。

気になって見に行ってみると、遠くの方で一台のバスを追いかけるそれらが、どこかに向かっているのが見えた。

 

「どうした美春、急に走り出したりして」

「お兄ちゃん、あれ見て」

 

一緒に手伝ってくれていたお兄ちゃんが私の奇行を疑問に思ったのか駆け寄ってきた。

私はバスに向かって指を指す。

 

「! あのバスを追いかけてるのか?」

「でもおかしいよね。普通ならあんなのすぐに追いつけるのに……」

 

もしあれが包丁さんであれば、バスなんて一瞬で追いついてしまうというのに、4つの影はまるで遊んでいるようにそれを追いかけている。

バスが信号に捕まった。でも中に乗り込もうとせずに4つの影は傍に集まっていた。

 

そのお蔭でその4つの影が誰か解った。

 

「「包丁さん!」」

 

それを確認した私達は駆け出していた。

 

「待て美春! タクシーを捕まえる!」

「解った!」

 

何故バスを追いかけるのか、それは呼び出した本人がいるからだろう。

でも乗り込もうとしないのは腑に落ちない。

でも、現に呼び出した人が居る。それも、四人も同時に。

 

お兄ちゃんがタクシーを捕まえてくれて、乗り込む。

 

「あのバスを追いかけてくれ! 早く!」

 

なんの躊躇もなくどこかの刑事ドラマで見たような言葉を吐き捨てるお兄ちゃんに驚きながらも、運転手さんは車を出してくれた。

信号はもう青に変わった。またバスが、包丁さん達が動き出す。

 

どうして……どうして……包丁さんが?

 

疑問が、私の頭の中を駆け巡った。




丁町と見て、ピンときた方はプレイヤーor実況閲覧者さんですね。
この『クロス包丁さんのうわさ』を書く当初は、美春と優秋(ゆうし)が出る予定はありませんでした。
でも、ここ最近は公式設定を徹底的に見ていると出さざるを得ない状況に。
ルカの13話の発言は何気なく使ったつもりでしたが、逆に伏線になっちゃいましたね。

次回は中編。お楽しみに。

~原作キャラクター簡易説明~

今回は、美春と優秋の二人です。


名:美春
説明:『包丁さんのうわさ』の主人公。苗字は真田。オヤカタサマー!とは何の関係もない。
   この作品での美春はトゥルーエンド側の美春。ノーマルエンド2じゃないのであしからず。
   あれからという物の、包丁さんの呼び出し方の抹消の為に兄と共に努力している。
   丁神社で巫女さんのアルバイトをしている関係か、事件後も他の包丁さんとも会ったことがある。
   そのアルバイトを機に、本来の包丁さんの役目を伝えているのも事実。
   年齢不詳。原作では少なからず中学二年生なのだが……

名:優秋
説明:美春の兄にして『包丁さんのうわさ0』の主人公。無論こちらもトゥルーエンド側。
   正しい役目だけを人々に伝え、それ以外の方法と呼び出し方を抹消しようとした第一人者。
   美春からは大分慕われているご様子。事件のこともあったからか、筋金入りの妹思い。
   その時が来れば、自分の命を代償にしてまでも妹を守ろうとする人。自己犠牲。
   料理もできて、勉強も出来る万能お兄さん。イケメン爆発し(ry。

どうしても、昔の貴重な文献等は抹消することが出来ないのです。
だから、正しい役目を伝え誤解を減らすように頑張る、二人。
年齢的には、『優秋>>優希=夏奈子>>美春』で行かせてもらいます。
皆そんなに差はないです。
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