VOCALOID×包丁さんのうわさ ~路頭の花と歌姫達~   作:kasyopa

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後半部分、というかこの話の末部分はテンションダダ下がりです。
制作意欲が消えた。まぁ、プロットできてますんでね。
この先4話分ぐらい!! ふははははは!!!

更新が遅れて申し訳ありません。
現在21話を執筆中でございます。
なんか変態的志向に向かってるんだけど大丈夫かな…


第17話 断てぬ縁 後編

Side 水生夏奈子

 

 

「へぇ、今までこんな風に書いて呼んでたんだ」

 

椿ちゃんが感心したかのように紙を手に取って読み始める。

簡単な話は夢の中で聞いているだろうけど、実際に見たことはない。

だからそれがより一層感心を高めたのだろう。

 

「それで私に何か用? 最近ペースがおかしいようだけど」

「あ、それなんだけどね。この家……この場所について何か知ってないかな?」

「この場所……ああ、なるほど」

 

牡丹さんと同じような反応をして頷くと、彼女は話し始めた。この場所……いや、正確にはこの場所の主について。

 

 

 

「ここには先祖から続く力を持った神主の家系が居て、その家系はこの町に私達の存在を広めていたの」

 

「その家系はあくまで私達を、『病を切る存在』だということを公言した。包丁を御神体として丁神社を無病息災と謳い建てた人物もこの家系のだと、その末裔が話していた。無論、包丁供養祭……今も行われてるみたいね。には積極的に参加していたようだけど」

 

「ただその末裔の祖父が神社を移したことで、そこの神主にはならなかったの。力もあったのに自ら身を引いた。この地に残りたいとね」

 

「その代わり若いうちは代わった神主の代わりに私達を呼んで、当時不治の病と言われた病気を切っていた」

 

「流石に血は薄れていくし、代々生まれるのは男で呪術師としての素質は落ちていったのだけれど」

「ちょっと待って、それじゃあ元々丁神社はここにあったってこと?」

「そう。立地から参拝客が徐々に減っていったのと、土砂崩れとかの天災の関係を考慮して場所を移したらしいわ。神社は神の社と書くから、神の拠り所が失われたら元も子もないと思ったんでしょうね」

 

「で、その末裔は自分の家系が呪術師であり神主であったことを隠していたの。あくまで自分の子に自分の望む道に進んでほしいとね」

 

「だからこの地は丁という町の中では私達と関係が濃い場所でもあるわ」

 

一通りの話を聞いて、私はまた一つ疑問が浮かぶ。

 

「ねぇ椿ちゃん、その末裔って」

「そもそもあなたに会った時に気付くべきだった。普通の真人間が私達の世界に夢であろうと干渉することがあるはずがないって」

 

「貴女がその末裔の孫ってことをね。代々受け継がれた水生の血統と素質を見事に継いだ人間だと」

 

男は肉体面が優れており、女性は精神面が優れている。

それだからか、昔から巫女という存在や神子という神聖で神に近い存在は女性と決まっていた。

また、生贄で女性が多いのもそんな意味があるのだと思う。

代々男の家系と言っていたけど、確かにそうでおじいちゃんはお父さん方のおじいちゃんなのだ。

その中で私が女として生まれたから、そ呪術師としての素質もある程度回復したのだろう。

 

「で、椿。単純な質問なんだが、水生家とはどれくらいの付き合いになるんだ」

「覚えてないわ。何せ大分昔からだもの」

 

それがこの地で何度も行われていたのだ。人とカミサマの交流が。

 

「自分の本当の立場が解った? 水生夏奈子」

「………」

 

私のご先祖様は代々神主の家系で、呪術師としての素質もあって、それが今の私にも宿っている。しかもご先祖様達は包丁さんと密に関係している。

こんなことがあるだろうか。こんなことが。

自然と頬の筋肉が緩む。口角が上がる。楽しい。嬉しい。これ以上嬉しいことがあっただろうか。

私の今までやってきたことはご先祖様のやっていたことと同じで。

お父さんは知らないけど、今はいないおじいちゃん達は同じようなことをしていたのだ。

厳密に言えば違うんだけど、でも同じこと。

私はご先祖様達やおじいちゃんが、償うことが出来なかった罪を清算している、

 

「……よかった」

 

言葉に出して実感する。私は彼女達を守れる力がある。

これからも彼女達を、包丁さん達を見守ることが出来る。

これで私の包丁さん達を救い続けることが出来る。

それは自分の意志であり、使命なんだ。

 

「水生家の意志が、包丁さんの無意識が! 救済を望んで「こんなところでもネタはやめろ!!」」

 

優希に思いっきり叩かれました。

 

 

 

「でもこれで正当な包丁さん達の後継者って感じだよね」

「良かったですね」

「うーん、もうちょっと盛大に驚いてよー。ルカはさっぱりしてるなー」

「そもそも何でもない人がカミサマを4人も同時に呼び出せる時点でおかしいんです。そうなれば非科学的でもそういうことは少しでも疑いますよ」

 

優希に叩かれた患部をルカに冷やしてもらいながらも、居間でお昼寝している葵ちゃんと笹ちゃん、杏ちゃんにリンちゃんの様子を見ていた。

なんでも葵ちゃんの話を聞くと、向こうでは『お昼寝同盟』なる物があるらしく、その会長が彼女らしく。

笹ちゃんも同盟の一人なんだけど、杏ちゃんは違うらしい。

ちなみに包丁さんである3人は懐や帯に包丁を入れて隠している。

ただ、リンちゃんも含めた4人は流石に疲れたのか、運動して火照った体に、風が通り抜ける居間の、柔らかい畳という魔性の組み合わせによってすぐに眠ってしまった。

流石に皆そのままでは寒いだろうし、夜も近いから薄い掛布団はかけてあげたけど。

 

「よく遊んでよく寝る。発育のいい子供の代表的な例ですね」

「包丁さん達は成長しないけどね」

『すみませ~ん!』

「あ、は~い」

 

と、そんな何気ない会話をしていると玄関の方から声が聞こえてきた。

女の子の声だ。少なくともミクちゃんの声じゃない。そもそもミクちゃんならそんなことを言わずに入ってくるはず。

普通ここらへんに来るのはお年寄りのはずなんじゃ……と思って私は玄関に向かう。

 

「どちらさまですか~?」

 

声をかけながら玄関を開ける。都会の方じゃそれはいけない事なんだけど、田舎だから変な人はいないだろうと思って。

 

そこには茶髪の女の子が立っていた。見た感じ中学生から高校生ぐらいだろう。

一見すると普通の女の子、のような気がした。彼女の発言を聞くまでは。

 

「あの、包丁さんっていますか?」

「えっ!?」

 

思いっきりストレートだったから、逆に予想外で驚いてしまった。

それが大きな失敗だと気付くまで後数秒。

 

 

Side 遥 優希

 

 

一方その頃、俺は椿、牡丹、ミク、レンと夏奈子の祖父の墓参りに来ていた。

何故包丁さんのこの二人がついてきたのかは全くの謎である。

俺がどこに行くと言ったわけでもないのに付いてきた。

 

「夏奈子が末裔、ねぇ」

「腑に落ちない?」

「別に? 俺はそんなこと気にはしない。その時はその時さ」

「マスター、末裔ってどういうこと?」

「いや、夏奈子のやってるゲームの主人公が伝説の勇者の末裔だって話」

「へぇ~」

「あの、牡丹さんでしたっけ……?」

 

墓参りを終えて戻ろうとすると、ミクが口を開いた。

言葉通り視線は牡丹の方を見ている。

 

「そうなのね。それがどうかしたね?」

「あの、この度は優希さんを助けて下さってありがとうございます」

 

ぺこりと、責任を感じているようなそんなお辞儀。

それに対して大らかに笑う牡丹。

 

「気にすることはないね! 当然のことをしただけね」

「でも、あのままだと優希さんは」

「確かにあのままじゃひどいことになってたね。でも私達も人が死ぬのは見たくないのね。こればっかりはたるいなんて言ってる場合じゃないね」

「牡丹、私が来る前に何があったっていうの?」

「あー、それは」

 

彼女が椿に説明してる時、一つの影がこっちに向かってきているのが見えた。

遠くて姿はしっかりと捉えられないが、進路方向からしてこっちに向かってきているのは解る。

 

「レン、見えるか?」

「あ、ちょっと待って、どこ辺り?」

「上ってきた道の方を見ればいい」

「解った」

 

少し景色に見入っていたレンの反応が少し遅れた。

それが別に何と言ったことも起こさず、彼は上がってくる何者かを捉えていた。

 

「身長はマスターとおんなじくらいかそれ以上かな。男の人みたい」

「ならざっと高校生か高卒だろうな。でも誰が」

「………」

 

椿がへぇ、と面白い物を見つけたような顔をする。

 

「椿、知ってるのか?」

「ええ、ま、簡単に話したら夏奈子と本質的には同じだけど、過程がまるで違うわ」

「そうか。……本質は同じなんだな」

 

なら、包丁さんのことを知っているだろう。

少なからず俺より知識はあるだろう。

 

なら、実際に夏奈子と合わせて話し合いの場を持たせた方がいい。

さてどうしたものか。

 

「私達は……居たほうがいいかしら?」

「五分五分ってところねー」

「だな。俺が説明できなくなった時の代役を頼む。でも出来るだけ夏奈子の方に陽動してくれ」

「解ったわ」「解ったね」

「マスター、僕達は」

「お前達には後で説明してやるから、何もいうな。何を疑問に思ってもな」

「解った」「解りました」

 

さて、相手がどう切り出してくるか……それが勝負の分かれ目かもしれない。

坂道を息を切らせて上がってくる青年。彼はこちらを見て安心したような疑問が晴れたような表情をしていた。

 

「あんたが『包丁さん』を呼び出したのか?」

「生憎だが俺じゃない。この場所の主だ。詳しい話はそいつから聞いてくれ」

「でも……!」

 

ここで彼がある包丁さんを捉えた。椿だ。

先ほどまで俺の後ろにいて死角になっていたのだろう。

 

「久しぶり。元気してた?」

「どうしてその姿なんだ?」

「ここは『特別な場所』なのよ。だから何の苦も無くこの姿で居られるの」

 

そう言って笑みを浮かべる彼女。

その話を聞いて相手は何か思うことがあったのか、考え始める。

そんな反応をするということは結局、かなりこの町の事、包丁さんのことを調べていると見る。

 

「もう一つ聞きたい。なんでお前達はあの時バスを追いかけていたんだ?」

「それは私が答えるね。椿はその時点で呼び出されてないね」

 

牡丹が名乗り俺達の前に出てくる。

 

「この男が言った通り私達全員を呼び出したのは、この場所にいた者の子孫なのね。その子孫の考案でただ単に追いかけっこしてただけなのね」

 

特に年少組は動き回るのが好きだからねー! と付け足す。

確かにそれは事実なのだが、一つ俺は相手の発言で違和感を覚えた。

 

「ちょっと待て、あんたはカミサマの包丁さんを見ることが出来るのか?」

「? そういうあんたはカミサマの包丁さんが見えないのか?」

「まぁ、そういう事だな。呼び出してないんだから仕方ない」

「なら本当みたいだな……その呼び出した本人はどこにいる?」

「あの家にいるはずだ。勝手に移動してなければな」

 

もう日も隠れ始めてあたりが暗くなってきた。

ここまで田舎だと、鹿などの野生動物が山から下りてきてもおかしくないので、話がまとまったところで、その包丁さんをよく知る人物と共に山を下りるのだった。

 

 

////////////////////////////

 

 

家に戻ると、知らない人物が一人紛れ込んでいた。

 

「あ、優希お帰りなさい。その人は?」

「それはこっちのセリフだ。先に説明すると包丁さんのことを、一番よく知ってる人物とでも言っておこうか」

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は真田優秋(さなだ ゆうし)。でこっちが妹の…」

「真田美春です」

「俺は遥優希だ。よろしく」

「私は水生夏奈子。ここの家はおじいちゃんの家だけど、包丁さん達の新しい居場所になったらいいなって、それでこっちに来ました。よろしくお願いします」

「どういうことだ?」

「あ、お兄ちゃんその説明は私が……」

 

美春と名乗った少女は優秋と名乗った青年に話をしていた。

 

「夏奈子、あの子は?」

「あれれ、優秋さんと知り合ってたんだ。優秋さんの妹さんだよ」

「そうか。で、何を話してたんだ?」

「うん、ちょっとね。あ、美春ちゃんも優秋さんももう遅いから泊まっていっていいですよ?」

「あ、いいんですか?」

「……それならお言葉に甘えさせてもらって」

 

確かに外は暗くなっている。今から帰ろうと思っても、逆に危険だろう。

 

「で、話を戻して、包丁さん達のことを話してたんだ」

「いや、それは解るが」

「それでね、包丁さん達って病気も切ることが出来るの」

「話には聞いたことがあるな。……で?」

「何の命令でも呼び出せる状態でほっといたら危ないって私が代わりに呼び出してるんだけど、逆に本当に必要としている人達からしたら呼び出せないと困るから、っていうのが美春ちゃんの言い分だったの」

「……でも、それだとどうしようもないじゃないか。命令は選べないんだぞ」

「そこで、丁神社にそういう願掛けをした人を助けるっていう話をしたの」

「それなら確かにそういうことしか持ち出さないな。それに命令も選別できる」

 

俺達の知らない内に創造のつかない域の会話が行われていたことに感心するも、ふと周りに包丁さんがいないことに気が付く。

 

「んー、わかめないのかしら」

「椿、少しは我慢するね。ここから海も店も遠いね」

「椿さんはわかめが好きなんですか?」

「好きとかそんな域じゃないのね。椿のわかめに対する愛は尋常じゃないね」

「………」

 

椿と牡丹、ミクが台所に立って晩御飯の支度をしていた。

 

「リンー! 起きないと夜寝られないよ!」

「うーん、後5分……」

「皆も起きないと夜寝られないから起きなよー!」

「う~ん、です……」

「ぐぬぬ……」

「むにゃむにゃ……」

 

レンはまだ居間で寝ている4人を起こそうと必死になっていた。

 

家族が多くなると、こうも賑やかになっていいものだ。

俺も、家に帰ったら父さんと母さんに謝って、温かい家庭に居たいと思うのだった。

 




次回から、クロスオーバーらしい話になります。
VOCALOID(ルカ以外)と包丁さん(牡丹以外)の、一組のお話。
5話位になるかなー?
でもぐだっちゃうかな? ま、いいかな。話題が伸ばせなければ、一話に二組出せばいい話だし!
次回は美春と優秋は出てきません。ありがとうございました。

独自設定説明

水生家について

以前は無力であったが、呪術的な儀式や修行を続けることによって自然と力を付けていき、遺伝によって素質が生まれた珍しい一家。
主に祈願成就や無病息災を取り扱う。
生まれてきた子供は男が多かったらしい。理由は不明。特に夏奈子の祖父の祖父の頃からは男しか生まれなかったらしい。
その呪術的な儀式の一つに包丁さんを呼び出すという物もあった。
包丁さんが存在する当時から彼女達とは縁のある一家でもある。
実はある一家の隠し子的存在から分岐した家。

夏奈子の祖父の家について

元丁神社跡地。そこに祖父の家が建てられているのだが、丁町のそれらの業者は建築にあたっておらず、誰が立てたのか不明。当然神社の方が大きかったので、残った地は庭になってたり、畑になっていたりする。盆地。
水田と麦畑、野菜や一部の果物を育てている畑だけでなく、乳牛の牛舎や鶏の小屋があったり、山の近くには川が流れていたりと、自給自足できる空間。
裏の庭には蔵が2つあり、裏山には祖父の墓がある。
包丁さん達の暮らす場所とほとんど変わらず、丁神社があった場所なだけあって軽い結界や何らかの力が働いていたりする。
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