VOCALOID×包丁さんのうわさ ~路頭の花と歌姫達~ 作:kasyopa
前回からかなり時間が飛んでいますが、暖かい目と太平洋並みの広い心で見ていただけると幸いです。
Side 遥 優希
帰りの新幹線。
俺はリンとレンに窓際に譲り、通路側にミクと一緒に座っていた。
「ミク、今回は楽しめたか?」
「はい。とっても楽しかったです。奏さんや里香さん、そして私以外のミクさんにあえてよかったです」
「そうか。ならよかった」
「マスター、どうして言ってくれなかったの?」
「? 何がだ?」
「え? 奏さんとあそこで出会えたのってマスターの計画じゃなかったの?」
リンもレンも根も葉もないことを言ってくる。
毎度自分のことを隠しながら動いていたりして、サプライズをしている俺だからこそ、こういうことも言われるのだろうか。
「ああ、逆にそういうことが出来ればよかったんだがな」
「そういえば、リンが当てたのって確か行き先がランダムだったじゃ」
「あ、そうだった。したくてもできないよね」
「そういうことだ」
「ですね。でもよかったですね、あんなことがあって」
「そうだな」
途中、売店の人が通ったので自分も含めた四人のお菓子と飲み物を買って、少し会話がなくなっていた。
そんな中、誰かが声をかけてきた。
「あれ、誰かと思えば優希さんにミクちゃんにリンちゃんとレン君だ」
「あ、マキさんだー。あれ? でもなんで私達のこと知ってるんだろう……」
「あの旅館で働いてたんだから知ってるよ。ここで会うなんて奇遇だね」
「あ、えっと……」
ミクはマキと初対面なので、少し戸惑っている。
厳密にいえば違うのだが、熱暴走して情報処理ができなかったとみればおかしい話ではない。
「マキがいるってことは「私もいますよ」うおっ」
マキの隣にスッと音もなく現れたゆかり。流石の俺達もそれには驚いた。
マキとは対照的に大人しく、物静かな彼女は平然としている。
ただ、通路の邪魔になってはいけないのでと、自分の荷物を俺達の隣で空いていた自由席に置いて座った。
「マキちゃん、移動しないと通路の邪魔になりますよ」
「あ、ゆかりちゃんありがとう」
「ところでマキちゃん、どこに行くつもりだったんですか?」
「あ、そうだった」
大急ぎでこの車両から出ていったマキ。
その奇行にリンとレンは首を傾げ、なんとなくわかった俺とミクは苦笑の表情を浮かべた。
「そういえばお前達は昨日帰るんじゃなかったのか?」
「そうだったんですけど、お客様がいらっしゃったので一日引き伸ばされたんですよ」
「ゆかりさんもマキさんも大変ですね…」
「そんなことはないですよ。すべての事にやりがいを見つける大切さを学べますから」
「経験こそすべてか」
「はい」
やっぱりゆかりは、他のVOCALOIDやVOICEROIDにない何かを持っている。
似た個々を作らないように普通といえば普通なのだが。
最近のVOCALOIDである彼女らは何かミク達とは、クリプトン製のVOCALOIDとは一味もふた味も違う。
IAやゆかり、ラピス等がそうだ。
「そういえば、ゆかりさんとマキさんのマスターってどんな人?」
「そうですね。言ってしまえば、優希さんのご両親です」
「「「「………」」」」
ゆかりのあまりに衝撃的な告白を俺達は凍り付くのであった。
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ゆかりの話によれば、彼女達が発売されたのを皮切りに両親が購入したらしい。
ゆかり達が発売されたのは前と言っても、例の件が起こった後なので価格は高かった。
それでも母さんと父さんは購入したらしい。決してお金を持て余したわけでも俺に感化されたわけでもない。
二人には二人なりの俺達にはわからない理由があるのだ。
「で、その母さんと父さんが経営するところに配属されてたところを」
「優希さんのリンさんが旅行を引き当てたということで、行き先を操作してその行き先に私達を向かわせた。ということになります」
「ちなみにそれを仕向けたは」
「優斗さんです」
父さんか……かなり凝ったことをするもんだ。
これで俺達の行き先に予約が入ってなかったのも、二人が深く関係している旅館に行くことになったのも納得がいく。
奏と会えたのはたぶん父さんのうれしい誤算。たぶん。
「あ、因みにだけど私のマスターは美希さんで、ゆかりちゃんのマスターは優斗さんなんだよ?」
「え? 二人がマスターのお父さんとお母さんがマスター兼用じゃないの?」
マキの横やりにリンが食いつく。
俺もその発言が気になったが、それを察したゆかりが口を開いた。
「そうですよ。正直、私は優斗さんがマスターでよかったです」
「父さんと何かと雰囲気が似てるからか」
「ですね。美希さんには申し訳ないですが、彼女は私に合いません」
「そうなんだ? 私は逆に美希さん一筋だね、優斗さんはなんだか近寄りがたいっていうか」
「マキは本人が言う通り母さん寄りだな」
「でもやっぱり美希さんと優斗さんの間には入れないや」
「どちらかというと美希さんが積極的な気がしますが」
二人は父さんと母さんについて語った。
俺も二人が別々のマスターだと聞いた時から、父さんとゆかりを、母さんとマキをと合っているのではと思っていたことろで。
そうであっても、やはりゆかりとマキでは二人の中に入ることはできないようだ。
当然なのかもしれないが、それはそれですごいことだと思う。
「最近は旅行でお会いできていませんが」
「旅行って言っても別荘でのんびりスローライフだけどね」
「そういえば父さんも母さんもまだ帰ってきてないな……」
去年も一昨年も共にこの時期になると帰ってくるはずなのだが。
「今回は長く向こうにいるんだって」
「そうなのか」
「何故かはお話しできませんが、ゴールデンウイークにはお帰りになると聞いてます」
「そうか。それまで何事もなければいいが」
向こうに長くいるのも心を洗うにはいいだろうけど、その分向こうは治安的な問題がある。それに立場上狙われる可能性も大きいだろう。
それに加えて親婚(プライベート)旅行だから当然ボディーガードとかもいないわけで。
それにここ最近向こうからの連絡が全く来てないのも不安要素に含まれる。
「いいなー。私も南国の綺麗な海で遊びたいなー」
「私はどちらかといえば、日本の冬の雪降る中、ゆったりと火鉢のそばで温まりたいです」
「私はマキさんとおんなじ、真っ白な砂浜で走り回りたい!」
「僕はいいかな。秋に家でゆっくり読書してる方が」
「私は……そうですね、春に桜を見ていたいです。芽吹く蕾、花開きそして散る桜を」
「俺は冬だな。雪の降る中一人歩いていたい」
一人ひとり、思い思いの季節を述べていく。
そういえば、ミクがこんな風に自分の好きな何かについて言ったのは初めてではないだろうか。
「ミクちゃんと優希さんって正反対だね」
「え?」
「だって冬と春でしょ? 温かい季節と寒い季節」
「それをいうなら夏と冬ではないんですか? マキさん」
「んー、でもなんとなくね」
マキの指摘にミクは目を丸くする。
冬の反対は俺も夏と思う。冬が終われば春が来るのは当然。だが俺の考えでも春の反対は秋というのもおかしいし、夏というのも何かおかしい気がする。
だからマキの意見にも一理ある。だが彼女がそのことに焦点を当てた理由が分からない。
「マキさんはなぜその点について指摘したんですか?」
「え、ミクちゃん優希さんのこと好きなんじゃないの?」
「は?」「え?」
マキの口からさらりと飛び出した言葉の意味を理解するのには少しばかり時間を要した。
その証拠に俺もミクも呆けた声が漏れる。
「そんなことはないだろう」
「そうですよマキさん。私は優希さんを慕っているだけです」
そして思考が纏まった俺達は至極当然の様に言葉を返した。
「……ミクさん、それでは優希さんのことを好いているように聞こえてしまいますよ」
「どうしたんですか、ゆかりさん」
「慕う、とは相手を恋しく思うという意味もあるのです。恋しいの意味の説明は必要ありませんね?」
その問いかけにミクははっとした。言われて自分でも調べてみたのだろう。言われたことに驚いている以外の驚きも彼女の表情から見て取れた。
「お姉ちゃんはただ単に、憧れてるっていう意味で使ったんだよね?」
「うん、そのつもりだったんだけど……確かにゆかりさんの言う通り、昔の言い方や遠まわしに言えばその意味も見て取れますね」
「解ってはいましたが、他の人にいう時は誤解を生んでしまう可能性もあるので。こちらこそ勝手な言い分すみません」
「じゃあミクちゃんは優希さんのこ「マキちゃんは黙っててください」うぅ」
俺の周りでは、夏奈子やリンのような明るく活発な女性と、ミクやルカといった落ち着いて物腰の柔らかい女性がとりまいている気がする。
それらに該当しないのはレン、友江さんのところのMEIKO、KAITO。友江さんは後者の人物像に該当するからここから除外。
「そういえばさ。お姉ちゃんが来て、もう2か月ぐらい経ったんだね」
レンが急に話題を変えてきた。
だが言われてみればそうなので、俺はその話題に乗ることにした。
「この時期は時間の流れがあっという間というな。一月行って二月逃げて三月去るって」
「なーにそれ?」
「一月から三月にかけては案外早く時間が過ぎるように感じるということわざですよ」
「あんまり有名じゃないみたい。そっか……私が来てもう2か月も経ったんだ」
あれからという物、特にこれと言って大きな出来事はなく、年始も皆で初詣に行ったりしただけで。
旅行という旅行は今回リンが当選したこの旅行が初めて。
今後の予定は一切ない。学校以外は。
「思ったんだが、ゆかりとマキはこの後どうするんだ?」
「私はこのまま優希さんのお宅にお邪魔します」
「私も優希さんの家に「マキちゃんは仕事のノルマ達成してないじゃないですか」そ、そこは美希さんのコネを」
「何を言ってるんだお前は。母さんは仕事と遊びを分ける人だから、そういう事は自分でやらなきゃならんぞ」
「ほら、優希さんのほうがよく解ってるじゃありませんか」
「うぅ……でも後ちょっとだし……」
「マキさん、あんまり後ろめたいことを背負って癒しに逃げても、本当には癒されませんよ?」
「……解った。私はノルマ達成したらすぐ行くから待っててね」
「まぁ私も鬼ではありませんから、何かあったらすぐ連絡してくださいね。応援にはいきますよ」
「ありがとうゆかりちゃん」
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駅に降りると見知った顔を見つけた。夏奈子とルカだ。
2人も俺に気付いたのか、今回は声を自重して駆け寄ってくる。
「夏奈子じゃないか。どうしてここに」
「水臭いなー。旅行に行くなら一言ぐらい言ってくれたらいいのに」
「言うとお前、一緒に行きたがるだろう」
ルカはリン・レン・ミクと何か話しているが、俺は夏奈子との会話に集中することにする。
「そんなことないって。あ、でもありえたかも」
「だろ? 今回は家族水入らずで旅行したかったんだ」
「その割には新しい子増えてるよね」
夏奈子は俺の背後に立っているゆかりとマキに視線を送る。
「優希も隅に置けないなぁ。今度は大人のお姉さんかぁ……」
「詳しい話は後でするから今は移動するぞ」
乗り口の前で大人数で会話するなど邪魔以外の何物でもないため、この場を離れて適当な喫茶店に入り注文を取る。
「で、説明してよ」
「二人とも俺の父さんと母さんの購入したVOICEROIDだ」
「私はVOCALOIDも兼ねてますが」
「私はVOICEROIDだけだね」
「うわーお……急すぎて私にも何がなんやら……」
夏奈子の適応力を持ってしても流石に追いつかないようだ。
「つまりは優希のお父さんとお母さんのVOCALOIDとVOICEROIDと知り合って一緒に来たってこと?」
「簡単に言うとな」
「どこで?」
「旅行先の旅館で働いてたところ」
「なるほどねぇ……」
「ちなみに私はこれから優希さんのお宅でお世話になります、結月ゆかりと申します。以後ご贔屓に」
「あ、あぁ、ご丁寧にどうも」
「私もこれから優希さんのところでお世話になる弦巻マキです。よろしくね、夏奈子ちゃん」
「うん、よろしくねマキちゃん」
「無論、ノルマを達成してからですが」
「あうー、簡単に誤魔化せないか」
「ノルマ?」
これ以上話がもつれこんでも大変なので、適当なところで切って詳しいことは後で話すことにしよう。
そう思った俺であった。
どうもお久しぶりです。また時間が空きましたが、今回は4,800!
頑張ったというか、元々話題があったのでこれだけ執筆することが出来ました。
次回は、ちょっとセルフクロス回となっております。
お楽しみに。
4/26 修正。クロス相手を伏せ。