VOCALOID×包丁さんのうわさ ~路頭の花と歌姫達~   作:kasyopa

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※長いですが、熟読してから本文に入って下さい。

・これは、VOCALOID物および、『包丁さんのうわさ』の二次創作です。

今回は夏奈子がメインです。優希が旅行に行ってる時の、夏奈子サイド。
ちょっと趣向を変えてセルフクロス回です。
準レギュラー予定の『包丁さん』を召喚します(ェ

※この回は『包丁さんのうわさ』に関する『重大なネタバレ』及び、『グロテスクな描写』が含まれております。
※また今回は導入部分となりますので、VOCALOIDの存在がもはや外野クラスです。
『包丁さんのうわさ』がメインとなっておりますが、その点もご注意ください。

クロスに抵抗のあるお方、『包丁さんのうわさ』のネタバレは嫌だというお方は回れ右をお願いします。
そんなのを気にしない人、読んでやんよ!って方はこのまま下にお進みください。

というわけで、『VOCALOID ~家族と共にある日々~』×『包丁さんのうわさ』、始まります。


第09話 噂を信じた者(前編) ※前書必読

Side 水生夏奈子

 

 

夜。

優希の携帯と家に連絡するも、忙しいのか受話器を取ることもなく。

私は仕方なく別の日課である、某動画サイトでいろんな動画を見る。

そんな中、一つ気になるものを見つけた。

 

「包丁さんのうわさ……?」

 

サムネを見れば、ホラーゲームなのは一目瞭然。感じからしてフリーゲームだろうか。

怖いのは苦手だけどなにかそそられるものがあったので、とりあえず再生回数の多い実況動画を見ることにした。

 

 

 

「………」

 

私はいつしかその世界観にのめり込んでいた。

何故か、その理由は解らないけどその独特の世界観は私を虜にしていた。

全部見終わって溜息を一つ。

 

「怖かったけど、面白かったー」

 

第一声は小学生並みの感想だというのを、口にしてから自分で実感する。

包丁さんのうわさ、もうちょっと調べてみようかな。私の見ていた動画も結構な再生回数行ってたし、独自の記事がつくられていてもおかしくない。

時計を見れば11時を回っていた。休日とはいえもう寝る時間なのだが、私の興味は自分自身の眠気を覚ましており、作中の恐怖と相まって到底眠れそうになかった。

そう止まれば自分の気の向くまま赴くままに調べるだけ。

さっそく私はマウスを手に様々なサイトで、包丁さんのうわさの情報を巡る。

 

どこのサイトでも、やっぱりその作中で使われていた包丁さんの呼び出し方、包丁さんの特徴、真名、本名が載っていた。一部反転しないと見られない処理をしてあった場所があったけど、本家を知っている私に怖いものはない。

また、いろんな包丁さんが載っているサイトも見つけた。

そんな中、こんな記述を見つけた。

 

『包丁さんは物理的なものでもそうでないものでも、切ることが出来る』

 

実況動画の中ではそんな物理以外の物を切ってる模写ってあったっけ、そんなことを思いながらその文章とにらめっこしていた。

実況動画はプレイしなくてもその作品のストーリーが分かってしまうのが最大のネックであり、最大の利点でもある。

それゆえに、最後の最後までやるプレイヤーは少ない。本当の隠し要素は自分で見つけてこそ初めてその意味を発揮するのだ。

……その手助けを攻略Wikiとかにお願いすることもあるけど。

 

「これは、私自身がプレイしてみるしかないよね!」

 

眠くて重たい瞼を擦りながらも、私は配布先のサイトに飛び込んだ。

 

正直、未来の自分からすれば今を思えば、ここでやめておけばよかったのかもしれない。

この後起こるであろう出来事になんてまったく予想がつかないのだけれど、起こってから後悔するよりも起こる前にやめて、やめたことを後悔した方が絶対いいに決まってるから。

ただ、無知は罪という言葉が実感できる出来事が起こらない限りは。

 

 

//////////////////////////

 

 

全部、終わった。タイトル画面に二人目の包丁さんが出てきた。

エンディングも、収集するアイテムも、おまけのストーリーも全部。

これで、あの解らなかった文章の意味が分かった。

包丁さんの元々の存在意義と、なぜ彼女が呼び出した者も殺める理由。

 

それをパソコンのメモ帳にそのことを書き終わって、私はベッドにもぐりこむ。

 

「かわいそう……」

 

何を考えているんだろうか。所詮空想の存在でしかないのに。

ただ、試してみようかな。そんなことを思いながら私の意識は眠りに落ちていった。

 

 

**********

 

 

真っ暗い校舎。

私は全力で『何か』から逃げていた。

息を切らせて階段を上る。上がり切って体力は限界になり、その場で座り込んでしまった。

それは駄目なことだってわかっているのに。「してはいけないこと」なのに。

 

ひたり、ひたりと冷たい足音が迫ってくる。

正面から。私は追いかけられていたはずなのに。

もしかして回り込まれた…!

 

「鬼ごっこはおしまい?」

「っ?!」

 

白いワンピースに茶色い長髪。白い生地に赤いリボンとフリルのついたヘッドドレスを付けた少女が、包丁を持って私の前に立っている。

座り込んでいる私と彼女とだと、彼女の方が視線は上にある。

瞳のない白い目が私を捉えている。生きているのかも分からない、紙に描かれただけの存在のように思えるその姿は、彼女を目の当たりにした人物からどう思われていたであろうか。

 

脚がすくんで動かない。私はその姿から視線を外さずに腕の力だけで後に下がる。

それでも、まるで遊んでいるかのようにひたり、ひたりと音を立てながら私に迫ってくる。

手で振り払うこともできただろうけど、そこまで思考が至らなかった。

次の瞬間、手が空を切る。

 

「えっ―――――」

 

何故空を切ったのか。それに気付く前に私の世界は崩壊した。

全身に打撃を受けながら世界が、視界が目まぐるしく変わっていく。

そして背中に大きな衝撃が加えられてそれが終わる。

 

横たわる私。遠くで、それもかなり高い位置から見下ろす彼女。

そしてその間にあるのは階段。

そうか。私は階段でバランスを崩したんだ。踊り場で座り込んでいたんだ。

痛みはない。たぶん、脳内麻酔が必死になって分泌されているんだろう。

ああ、私は死ぬのか。痛みを感じない。それは死を意味する。私は助からない。

そう思って、歩みを進める彼女を最後に私の視界は黒に染まった。

 

 

********

 

 

「うー……寝不足だよー……」

 

洗面所の鏡に映る私の顔は変にやつれ、髪の毛もめちゃくちゃになっていた。

何故ここまでやつれているかわからない。何かひどい物を見た気がするけど、思い出せない。

 

「マスター、おはようございますって、どうしたんですかその顔と髪型は」

「おはようルカー……なんかわかんないけど……」

「とりあえずここまでとなると、お風呂に入ってください。私は後で入りますから」

「はーい……」

 

ルカは毎日朝風呂に入っている。

夜掻いた汗を洗い流し、体を温めて、朝のゆったりとした時間を過ごす。

それが車を買ってからのルカの日常になっている。

 

車を買う前は、ずっとずっと働きづめで、ちょっとアレな仕事もしていたりしてお金を稼いでいた。

そこまでする理由が解らなかったけど、買ってからはもうすっかり優雅なお姉さんって感じになっている。

私はそんなルカが大好きだ。

 

お言葉に甘えてお風呂に入らせてもらう。

シャワーで頭を洗って寝癖を直すことだけでなく、髪のケアもしっかりと。

お風呂に使って体を少しだけ温めて上がることにする。

また顔と頭を確認。よし、大丈夫。今日も元気!

リビングで待っているであろうルカに伝えるために、ドアを開け放つ。

 

「ルカ、上がったよ!」

「タオルで頭を包むのはいいですが、服を着てください」

「……ルカのエッチ」

「女同士、家族同士で何を言いますか」

「うーん、つれないなー」

 

今の私は文字通り、『頭隠して尻隠さず』ならぬ、『頭隠して他隠さず』だった。

 

 

 

「ねぇルカ、『包丁さんのうわさ』って知ってる?」

 

朝食を終えて、二人リビングでゆったりしていた時のこと。

私はソファの上で横になって雑誌を読む。

 

 

「……珍しいですね。マスターがホラーゲームの話題だなんて」

「やっぱり知ってるんだ」

「彼女達は存在を捻じ曲げられ、いつしか人の命を奪うようになった存在。ですよ」

「ずいぶん詳しいんだね」

「某動画サイトでは有名ですからね。自然と私達の耳にも入ってきますよ」

 

それ相応の年齢設定もされているわけですし。と続けるルカ。

やっぱり知ってるんだ。

それ相応の歳とか私にはよく解らなかったけど、そこのところは深く考えないことにした。

 

「でもさ、かわいそうだよね。作られた人間自身に裏切られるなんて」

「それは戦場でもあり得ることではありませんか。命という物がかかわってくると、根も葉もないことさえ信じるようになるのは、よくあることです」

「……つまりどういうこと?」

「彼女達の存在を変えたのは、憶測ですが戦国時代ではないかと」

「………」

 

戦国時代。日本で戦という古風戦争が繰り返され、日本全土を統一……いや、制圧しようとした時代。

相手の指揮官、王様を討てば相手の指揮、結束力は落ちるのは解っている。

そこをうまくついて、その時代包丁さんについて知っていた人物がいて、かたっぱしに相手を殺していった。

つじつまが合うと言えば合う。飢えが深刻化していたり川の洪水が深刻化していたりした時代も、その時代や前にもあったはず。

それこそ、神様が国を作ったりしたと言われるほどの昔でさえ。

そこで彼女達を生贄にして、災厄を抑えようと考えていて実行した人間がいてもおかしくはない。

 

「あまりそういったことは考えないことです。『ひとりかくれんぼ』や『くねくね』といった現実染みた都市伝説ではなく、あくまで空想の出来事なんですから」

「解ってる。解ってるけどさ」

「意識しすぎると、自らがその方向に染まってしまいますからね。気を付けて下さい」

「はーい」

 

朝風呂に入ったせいか、はたまた寝っ転がっていたからか、私は眠気に襲われる。

ルカが何か言ってる気がしたけど気に留めもせず、私はそれに従ってまた眠ったのだった。

 

 

*********

 

 

真っ暗な場所。横たわる私。目の前に広がる階段。そして裸足の足音。

視線を上げると、やはりと言うべきか『彼女』が階段を一段一段降りてきている。

私はこの状態を理解できなかった。

ただすぐに解ったのは、体が動かないこと。うんともすんとも言わない四肢。

動かせるのは眼球と首だけ。今やその首も動かすことがままならない状況なのだが。

 

「つまんないの。もうちょっと抗ってくれたっていいのに」

 

「このままじゃ、私が殺す前に貴女が死んじゃうでしょ?」

 

ベチャリと床についている手に何か触れている気がする。

紅い。それはまるで血のように。いや、これは血だ。

どこからか出血している。打ちどころが悪かったのだろう。

そんなレベルではないのだろうけど、でも、そうとしか思えなかった。

 

「貴女が私を呼び出さなかったら、こんなことにならなかったのにね」

 

「私達を知らなかったら、こんなことにならなかったはずなのにね」

 

風を切る音。頬に何か伝う感覚。たぶん血。頬を切ったのだろう。

それと同時にその血濡れた包丁から飛んだ血しぶきがかかる。

そして階段を降り終えた彼女は私の目の前に立つ。

包丁の腹の部分で横たわる私の体を転がして仰向けの状態にさせる。

 

天井と一緒に映る彼女の顔。

 

「一思いにやると怖くないからね。ある程度泳がせてたのに、詰まんないの」

「………」

「四肢を全部切り裂いて、最後に首を落としてあげよっか?」

「………」

「うん、それで私達の恐ろしさを思い知らせればいい。じゃあ、始めよっか」

 

「まずは右腕」

 

空を切る音。勢いよく飛んでいく肉片。

血が噴き出しているが痛みは感じない。

 

「………」

 

逆の肩に切り裂かれる感触。

宙を舞うそれは壁に激突して拉げる(ひしゃげる)音が聞こえてきた。

 

「……!」

 

右足。飛ぶことはなく、ただボトリと音がしただけ。

背中に、頭に濡れる感覚。相変わらず痛みは感じない。

 

「……!」

 

左足。包丁を突き刺し、裂くことによって切断される。

これで私の体から伸びているのは首だけとなった。

でもそれだけじゃない。それとはまったく関係ないことなのだが、気になったことがあった。

 

「………」

 

彼女は顔をしかめていた。見るからに不機嫌そうだ。

何故か。解らない。気まぐれな彼女のことなど、知る由もない。

 

「もっと苦しそうにしてよ。貴女の記憶に刻み込めないじゃない」

「痛くないの」

 

「私は痛くない。脳内麻酔っていうのかな」

 

私は口走っていた。

それに少し疑問に思ったのか、不思議そうに私を見つめてまた微笑む彼女。

 

「よくそんな状態で話せるね。普通なら出血多量で死んじゃうのに」

「だよね。私にもそれは解んないや」

 

まるでいつもと変わらない様子で話す自分自身に驚いている。

何故ここまで痛みを感じないのか。何故ここまで話せるのか。何故ここまで……

自問を続けた結果、私はある結論に至った。

 

「夢」

「夢?」

「そう。これは夢。うん、わかったこれは明晰夢なんだ」

「夢だったとしても、呼び出した人間はすべて殺すのが私の心情だから」

 

「さよなら。少しは楽しめたよ」

 

包丁を構える彼女に対して、私はある言葉を口にした。

 

「――包丁さん」

 

今まさに振られようとしていたその包丁とその構えが崩れる。

 

「「………」」

 

しばしの沈黙。時が止まったように思える。

 

クスッ。

でもそう思えたのはほんの一瞬だけで、彼女の、万能包丁さんが微笑むことで沈黙が破られた。

 

「おめでとう。貴女は私との遊びに勝った」

「えっ、でもさっき私が貴女を呼び出したって」

「半分嘘で半分ほんと。夢の世界って、完全に無意識の空間だからね。何か別の場所に繋がってもおかしくないし」

「つまり私の夢が包丁さん達の『場所』に干渉してるってこと?」

「そういうこと。だから私が手始めに遊んであげたの」

 

「それじゃあね」

 

彼女の包丁は空を切り、ピシャリと踊り場の壁に当たって張り付く。

自分を包丁で刺すことなく、その場から去っていった。

 

ただ、振っただけ? 何か切った気がし――――

 

 

*********

 

 

目が覚める。しっかりと夢のことを覚えている私は、最後に起きたことを理解しようと頭を回転させる。

どうもうまくいかない。寝起きだからだろうか。

落ち着いてから考える方がいいのか。

外を見ると、昼を越してもう夕方前になっていた。

とりあえず今は、不機嫌そうにこちらを見るルカをどうにかしないといけないかな。

そう思った私は素直にルカに謝ることにした。

 

あれ? 包丁さん達の場所? それが本当だとしたらまさか……

 




まず初めに。
『包丁さん』使用許可を下していただいた『たぶんおそらくきっと』の『神波裕太』様、ありがとうございましたぁ!!
うん、たぶん、きっと、見てると思うんだこの小説(震え声)
今は掲示板に貼ってないけど、貼る予定だから……公開処刑だから(震え声)

今週は予定通り更新できましたね(?)
ここ最近は、後書きも前書きも、本編作成中に記述することにしました。
ちなみにこれ書いてるのは4/22でございます。めっちゃ早い! 惚れる!
今回の文字数は5431。頑張ったって程じゃありませんが、夢の場面は結構力入れてます。
グロテスクかどうかは、読むお方の連想技術によりますが、まえがきに書いておきました。

というわけで、これ書き始めた時は普通にこれ単発にしようと思ったのですが、
前編になっちゃいました。
次は絶対終わる! はず!

『VOCALOID ~家族と共にある日々~』×『包丁さんのうわさ』
『噂を信じた者』後編。ご期待ください。


P.S. 感想はじゃんじゃん書いていってください!
   気づき次第、返信いたしますので。
   感想は作者全員にとって素晴らしい糧となります。
   誤字、脱字の指摘もお待ちしております。
   今まで『模写』の意味を『描写』と間違えるなんて……
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