【完結】チートでエムブレム   作:ナナシ

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マルス「経験値置いてけ!」
盗賊 「えっ!?」


オープニング

1.始まりはテンプレ。

 

 

 

 目覚めると、そこは見たことの無い部屋──洋室だった。

 風でふわりと揺れるカーテン、大人の身長大ほどある本棚、シンプルながらも高級感を感じさせるインテリアの数々。

 ……俺の部屋は右を見ればゲーム用テレビ、左を見ればパソコン、上を見ればクーラーと文明の利器に満ちた部屋であったはずだ。

 であるにも関わらず、いま俺が眺めているこの部屋は創作物などでよく見られる〝おファンタジー〟全開の素敵な部屋。……どういうことだ。

 

「──ん?」

 

 もしかして某国に拉致でもされた?などと頭を抱えていたら、パサリという音が聞こえた。音がした方向に視線を向けると、そこには大きなテーブルが。

 そのテーブルの上に何かがあった。音の正体はそれなのだろうか?

 気になったのでベッドから降りて──

 

「あれ?」

 

 そこでやっと気付いた。……背が縮んでる!

 プルプルと震える幼い、小さい手で、テーブルの上にあるもの……封筒を手に取り、中身を取り出す。

 封筒には二枚のカードと一枚の手紙が入ってた。カードを横に置き、まずは手紙を読んでみることに。

 ……手紙には日本語で、

 

『ちょりーッス! 俺、神様。 手違いで君を死なせちゃった☆ めんごめんご。 お詫びに転生させてあげるから許してちょんまげ!』

 

 そんな内容の謝罪文(?)が書かれていた。

 

「う、お……!?」

 

 手紙を読み終えた瞬間、全身に鈍い痛みが走る。10秒にも満たない苦痛の後、この身体の持ち主だった少年の記憶が一斉に蘇った。

 俺はガサッ、と手紙をテーブルの上に乱暴に捨て置き、震える身体を引きずって部屋の隅にある姿見の前へ移動する。

 そこに映っていたのは……

 

「は、はは……、俺、マルスに憑依しちまった……!」

 

 鏡に映っていたのは、ファイアーエムブレムの主人公『マルス』その人だった。

 

 

 

2.マルス、立つ。

 

 

 

 かつてアカネイア大陸を力と恐怖で支配していた竜族の王 メディウスが、今より六年前にドルーア地方にて復活。

 メディウスはドルーア帝国を再興すべく、竜族を集め始める。

 

 父王を暗殺し実権を握ったマケドニアの王ミシェイルはグルニア王国と共にドルーアとの同盟を表明。ドルーア帝国が復活した。

 

 翌年、ドルーアはアカネイアへ侵攻。後に暗黒戦争と呼ばれる戦いの始まりである。

 その二年後、アカネイアは滅亡。マルスの故郷アリティアは同盟国グラの裏切りを切っ掛けにドルーアに屈した。

 マルスは少ない家臣を連れて東国の島国タリスへと亡命する。

 アカネイア最後の王族ニーナもまた、何者かの手引きによりオレルアンへ逃れた。

 

 マルスがタリスへ来て二年。彼は老騎士ジェイガンの指導のもと少しずつ成長していった。

 家臣であり兄弟弟子でもあるアベルとカイン 重装騎士ドーガ 弓兵ゴードン等と共に、マルスは修行の日々を送っていた。

 そんなある日、マルスのもとにタリスの王女シーダがやってくる。

 彼女は必死の表情とともにマルスへすがり付く。

 

『ガルダの海賊が突然襲ってきてお城を占領したの! マルス様お願いします、お父様とお城の皆を助けて!』

 

 マルスは力強く頷き、戦いの準備を始めるよう家臣に告げる。

 タリス城奪還作戦。これが彼の初陣となる。

 

 マルスの祖国奪還の旅が、ここタリスから始まろうとしていた。

 

 

3.ガルダの盗賊 トッポ

 

 

 俺の名前はトッポ。ガルダ海賊団の見習い盗賊だ。いま俺は世話になってる組織の上司 海賊ガザック様の命令で村を襲っているところさ。

 ここタリス島には騎士団が無い。だから俺みたいな見習い盗賊でも簡単に村や町から略奪出来るから楽でいいぜ。

 

 元々俺はグルニア王国の騎士だった。……なぜグルニアの騎士様がこんな辺境に居て、しかも盗賊にまで落ちぶれたのかって?

 クビだよクビ、ロレンスとかいうクソッタレの上官にグルニアから追い出されたんだよ!

 クビになった理由は「アリティアで略奪行為をしたから」だってよ。

 ハッ、笑っちまうぜ! ドルーアと手を組んで色んな国を滅ぼしたグルニアが奇麗事をぬかすんだからな!

 

 グルニアを追い出されてから色々あった。そんでまぁ、今はここに落ち着いてるって訳だ。

 

 ……あー、やめやめ! 昔の話は思い出すだけでもイライラすらぁ!

 さっさと金を奪って本隊と合流するか。

 

 

◇◆◇

 

 

「……ん? なんだありゃ?」

 

 金目のものをあらかた袋に詰め込み、さぁ合流地点へ向かおうとした時。

 遠くから砂煙が見える。何者かが廃墟と化したこの村へ向かってきているのだろう。

 

「……」

 

 トッポは無言で剣を抜く。向かって来た者が誰か分かったからだ。

 あれはタリスの東の砦に住んでいる者の一人──マルスという名の小僧だ。

 

 マルスは周囲をキョロキョロと見渡している。まるで何かを探しているかのように。

 そして───

 

「───!」

「チィッ!」

 

 マルスとトッポの視線が重なる。どうやら彼はトッポを探していたようである。

 トッポは鉄の剣を構えて、マルス目掛けて駆け出す。増援を呼ばれる前に速やかにあの小僧を排除しなければならない──

 

「け───じゅ───」

「──え?」

 

 呟きが聞こえたのか、トッポは思わず足を止める。……今、この小僧はなんて言った?

 マルスは〝ニィッ〟と喜色満面の笑みを浮かべながら一部の傭兵に愛用されている剣──キルソードを構え、同じセリフを繰り返す。

 

 

 

 

 

「経験値よんじゅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛?!」

 

 

 

 経験値40。それが騎士から盗賊にまで落ちぶれた男が聞いた最後の言葉だった───




マルス「経験値 置いてけ!」
盗賊 「えっ」
マルス「なあ 40(経験値)だ!! 40(経験値)だろう!?
    40(経験値)だろうお前」
盗賊 「この人本当に主人公なんですか!?」
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