【完結】チートでエムブレム   作:ナナシ

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幕間3

 マルス率いる解放軍はディール要塞の制圧に成功した。

 この地で王子はマケドニアの王女ミネルバとマリアの両名を保護。後に二人はマルス軍へ正式に加入することになる。

 指揮官として、また竜騎士として有能なミネルバを得たことにより、マルス軍の戦力はさらに高まった。

 

 ディール要塞制圧から三日後、港町ワーレンから出立したコーネリアス軍・ハーディン軍がマルス軍と合流する。

 「いよいよアカネイア奪還か」

 要塞に集結した解放軍を見た者達はそう呟いたという。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

1.辿り着く者達

 

 

 森と山に囲まれた古城、ドルーア城。そこは現在アカネイア大陸を支配している地竜王が座する場所。

 

「……ガーネフが死んだか」

 

 グラスにそそがれたワインをゆっくり味わいながら、地竜王メディウスは下から上がってきた報告書を流し読みする。

 それには『ガーネフ司祭 ディール要塞で死亡を確認』という内容が記されていた。

 報告書を読み終えたメディウスは紙の束をテーブルの上へ放り、グラスに残っていた酒を一気に呷る。

 

「マルス、あの小僧め。やっと確信した。あの小僧は間違いなく『奴ら』と繋がっておる……!」

 

 グシャリ、とグラスを握り潰す。グラスを持っていた左手が負傷するがメディウスは気にすることなく怒りをあらわにする。

 報告書を持ってきた男──ゼムセルは、メディウスが見せた怒りに戸惑いを覚える。あの地竜王に鬼気迫る形相を浮かばせる『奴ら』とは一体……?

 ひとしきり罵詈雑言を述べた後、メディウスは部下を一瞥する。その視線には竜人族を束ねる王としての凄みがあり、常人では耐えられない圧力があった。それは竜人族であっても例外ではない。

 ゼムセルは逃げ出したい衝動に駆られながらも、なんとかその視線を受け止める。

 

「……そういえばゼムセル。貴様には──他の同胞達もそうだが──教えてなかったな。『奴ら』のことを」

「……王よ、我ら竜人族を束ねる偉大な主よ、よろしければお教え願えまいか。『奴ら』とは一体何者なのです」

 

 ゼムセルの問いにメディウスは「ふん」と忌々しげに鼻を鳴らす。

 

「このアカネイア、いや、この世界とは異なる次元に存在する者達。『資格有る者』のみその空間に入ることが許され、資格無き者は干渉することすら許されない。古くは神話の時代から存在し、歴史の節目には必ず現れる謎の集団。その集団こそ──」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 その頃のマルス様。

 

 

「……む、マルスよ。そなた何をしている?」

「あ、父上。今ですね、資料を使ってこの剣について調べてるのですよ」

「この剣? ……!? ま、マルス、その剣をどこでッ!?」

「どこって、ドーガが倒した魔道士から入手したらしいですが。父上、もしかしてこの剣を御存知で?」

 

「ばっかも~ん! そりゃファルシオンだッ!!」

「ゲゲェー! ふぁ、ファルシオン?!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「秘密の店、ですか」

 

 竜騎士ルーメルはマケドニア王ミシェイルの言葉に乾いた笑みを浮かべる。

 場所は変わってマケドニア。執務室らしき部屋にミシェイルとルーメル、それと文官らしき男が数名。

 

 <秘密の店>。その名はここアカネイア大陸にとって特別な意味が込められていた。

 時代の節目、さらに言えば戦乱に満ちた世に現れる<秘密の店>。それを味方に引き入れた軍こそが戦争を制すると言われている。

 実際100年前にあった戦争の裏に<秘密の店>がアカネイア側に組していたという事実もある。

 

「天使の衣、パワーリング、竜の盾……所謂マジックアイテムと呼ばれるアイテムを始め、一流の腕を持つブラックスミスですら製作が困難なサンダーソードなどの希少武器を取り扱っている店──噂話でそう聞いたことがあります」

「その噂ならば俺も知っている。そして反乱軍───いや、マルス軍の様子を見る限りそれは正しかったようだ」

 

 まるで<秘密の店>とマルス軍が繋がっていることが確定しているかのような態度のミシェイルに、ルーメルは乾いた笑みを浮かべることしか出来なかった。

 ミシェイルとその腹心達は、ディール要塞へ偵察に出ていたルーメルの報告、それとこれまでのマルス軍に関する情報から『マルス軍は<秘密の店>と密接な関係にある』と結論付ける。

 沈んだ表情を見せる家臣達に、しかしマケドニアの王は不遜な笑みを浮かべた。

 

「ふん。ルーメルよ、何を臆している。この俺が──マケドニアの王ミシェイルが、あの小僧に遅れを取ると思っているのなら大間違いだ。奴らへの対処方法など幾らでもある」

 

 <秘密の店>へ自由に出入り出来る(と思われる)マルスの暗殺、マジックアイテムの効果が切れるタイミングを狙った電撃作戦、軍資金が無くなるのを待つetc……。

 

「アイテムの効果が切れるのを待つ、軍資金が無くなるのを待つ。この二つは策として機能することを期待するのは無理だろう。

これまで挙がってきた情報によれば100本単位でサンダーソードを揃え、200人前後の歩兵をマジックアイテムで強化している。

そしてあのガーネフ、忌々しいマフーの守りを“ただの手槍”で貫通し殺したドーガというアーマーナイト。奴もマジックアイテムで強化されていたという事実が確認された。

……これらの武器、アイテムを揃えるのに最低でも100万、いや、200万以上の金が必要になる。国家予算レベルの大金が動いている計算になるな。そしてマルスはどのような方法でかは不明だが金を用意し店から購入、アイテムを揃えた。その金をどうやって用立てたのかはやはり不明だ。

……あるいは、奴は<秘密の店>と何らかの契約を結び、武器やアイテムの購入に金を必要としていないのかもしれん。

まあそれはどちらでも良い。問題はマルス軍がいつでもあの店の装備、アイテムを大量に用意出来るという事実だ。

よって、マルス軍に対する有効な策、一番現実的な策はマルス、あるいはマルス軍に居る<秘密の店>に出入り可能な者の暗殺となるだろう」

 

 ミシェイルは愛飲している葉巻に火をつけ「もっとも、今はまだこちらも動かんがな」と続ける。

 

「なぜです? 奴は危険です、それこそあのドルーア以上に。排除が可能でしたらすぐに動くべきでは?」

「……ルーメル、どうやら今の貴公は視野狭窄に陥っているようだ。反乱軍があの店と繋がっている可能性が高いゆえに焦りを覚えるのも無理はない。が、マケドニアの将たる貴公が冷静さを欠き大局を見渡せなくなるような無様は許されんぞ?」

 

 失望のため息をついた後ミシェイルは語り始める。

 

「聞け、ルーメル。時代は武力による戦争から新たなステージへと移ろうとしている。……マルスが、あの小僧の勢力がそうさせてしまった。

 いいか。これから我がマケドニアはグルニアと共に──」

 

 マケドニアの王が語るその言葉は、これから始まるであろう新たな戦のあり方をルーメルに予感させた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 その頃のマルス様。

 

 

「マルス王子、あれは一体……?」

 

 竜石を使いドラゴン化したバヌトゥ(ステUPアイテムで魔改造済)が歩兵(ステUPアイテムry)を山に向かってポンポン投げている光景を見て、ミネルバはマルスに訊ねる。

 投げ飛ばされてる兵士達は「飛んでる!飛んでるぜ~!」と嬉しそうに悲鳴(?)をあげながら山の向こうへと消えていく。

 マルスはミネルバの問いに笑顔で答えた。

 

「ええ、いま新しい戦術を考えていましてね。これはまあ、練習というヤツですよ」

「戦術。戦術ですか──」

 

 もう一度バヌトゥの方を見る。ヒョイ、ポン。ヒョイ、ポン。まるで作業のようにバヌトゥは兵士を山に向かって投げ飛ばしていた。

 

 新しい戦術っていったい………いやでもマルス王子にも考えがあって…………だがしかし……………。

 

 自分が持っていた常識と価値観。それが少しずつ壊されていく、あるいはズレていくことにミネルバは若干の恐怖を覚えた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 場所は再び変わり──グラ。

 

「………」

 

 グラにある砦の一つ、その廊下を一人の少女が歩いていた。

 年齢はまだ少女とも言うべき10代半ば。美しい曲線を描く眉に、矜持の高そうな瞳。王族のみが着衣を許される軍服を纏った彼女は腰までスラリと伸びる髪を揺らしながら客人が待つ部屋へと向かっている。

 彼女の名はシーマ。『メニディ川の戦い』で負傷した父ジオルが昨年死亡、彼女がグラの女王として即位した。いきなりとも言える彼女の即位に、しかし国民は熱意を持って歓迎した。

 まずシーマは父によって荒らされた国の再建に力を尽くす。そして即位から僅か一年でギリギリ滅亡を免れる程度の軌道修正に成功する。

 帝国の圧政下でなければ完全な再建も夢では無かった、とは国民達の声だ。それほどの偉業をシーマはこの一年で成し遂げた。

 

 もっとも、その偉業は彼女に協力した者が居たからこそなのだが。

 シーマは今日、その協力者の一人と会う予定だ。

 

 

 

「お待たせした──カミュ殿」

「お久しぶりだ、シーマ殿」

 

 室内へ入ったシーマを迎え入れたのは大陸最強と目され『黒騎士』という異名を持つグルニアの騎士 カミュその人だった。

 グラ王国再建のためシーマに協力した者、その一人が彼である。

 

 シーマは控えていた侍女に飲み物を頼み、カミュと向かい合わせになるように座る。

 侍女が一礼し退室する。紅茶を煎れに行ったのだろう。その間に二人は他愛無い世間話をしていた。

 それから数分後、紅茶を煎れた侍女が戻りテーブルに紅茶を並べる。その後彼女は「失礼します」と一礼し、再び退室した。侍女の気配が部屋から完全に遠ざかったのを確認した後、二人の話は本題へと入る。

 

「……この情報は確かなのでしょうか」

「こちらでも確認した。まず間違いないと思われる」

 

 シーマは渡された紙にもう一度視線を落とす。その紙には“ある人物名”と“ある組織名”が記されている。

 それを見て、シーマは顔を青ざめさせながら深く息をついた。

 

「まさか、アリティアのマルス王子とフォーチュンテラーが繋がっているとは……」

 

 呻くように呟く。彼女にとってそれは青天の霹靂とも言うべき事実だった。フォーチュンテラーはグラ王国復興へ多大な貢献をした組織。今ではフォーチュンの助力が無ければ国家運営が立ち行かなくなるほど深く依存している。

 その組織がアリティアの王子と繋がっているというのだ。王子がその気になれば何時でもグラを崩壊させることが出来ることが可能だ。そして最悪なことにグラはマルス王子に国を滅ぼされても文句を言えない立場にあった。何故ならグラは同盟国であったアリティア軍を卑劣にも裏切り、アリティア王国滅亡の原因となったのだから。

 彼女が頭を抱えたくなるのも当然だった。すでにグラは“詰んでいる”。シーマが愛する祖国グラの滅亡は時間の問題と考えても仕方が無かった。

 

「……シーマ殿、グラだけではない。我が祖国グルニア、マケドニア、果てはドルーア帝国にまで彼の組織は手を伸ばしている」

「──馬鹿なッ」

 

 いつの間にか席から立ち上がり窓から外を眺めていたカミュが苦々しくそう語る。彼のその言葉にシーマはまたも強い衝撃を受けた。

 

 

 

 二年前、グルニアとドルーアに深刻な問題が立ちはだかった。それは『食料危機』だ。

 麦を始めとする多くの畑が収穫間際に蝗害でやられてしまったのだ。

 この災害によりグルニアとドルーアの食料事情は悪化の一途を辿る。ドルーアは保管していた備蓄を放出しつつ占領下にあるアリティア・グラから強引に食料を徴収し何とかこの危機を乗り越えることが出来た。しかしグルニアはそうもいかない。グルニアの占領下にはアリティアのような豊かな国は無かった。

 グルニアも備蓄を少しずつ切り崩しながら何とか凌いでいたが、それとて限界がある。持って二ヶ月、それだけしか時間は残されて無かった。

 

 そんな時だ。『とある商人達』が彼らの前に現れたのは。

 

 『彼ら』はワーレンの商人達。この時代では珍しい“良心的な値段”で食料物資を売りにやってきた。

 見返りを何も求めず、低価格で食料を売り出す『彼ら』を怪しむ者は多数居た。しかし──

 

『ククク……とんでもない。窮した歴史ある国家を救済するためこの地で商売を始めた我々が悪党のわけがない。

我々は皆様に“低価格販売”という未曾有のチャンスを与えているのです。

赤字などは元より覚悟のうえ。この未曾有のチャンスを掴むか否かは貴方達次第。

我々の商品は非常にリーズナブル、良心的価格でございます』

 

 『彼ら』の言う通りこれはチャンスだった。国家の危機を乗り越える最大のチャンス。

 『彼ら』の取引を蹴り、国外追放しようものならグルニアは間違いなく終わっていた。故にこれはグルニアに訪れた未曾有の危機を乗り越える最大の、そして唯一のチャンス──

 

 最終的にグルニアは『彼ら』との取引を選択、蝗害によって生まれた食料危機を無事に乗り越えることが出来た。

 このことが後々彼らを苦しめることになるとは、その時想像もしていなかっただろう。

 

 

 

「では、……では、マルス王子は軍を率いて蜂起する前から打倒帝国のために動いていたということですか」

「そういうことになる」

 

 カミュの言葉にシーマはうな垂れる。黒騎士のこれまでの話がすべて正しいとすると、マルス王子の手の者がどれだけグラに、そしてドルーア帝国側に入っているのか。もはや想像するのも恐ろしい。

 カミュは視線を窓の外へ向けたまま話を続ける。

 

「シーマ殿。フォーチュンを国から排除してはいけない。……理由は分かるね?」

「はい。今この国から彼らを排除、追放したら……暴動が起きてしまう」

 

 フォーチュンテラーという組織はこの国に深く根ざしてしまっている。一般市民にとっての生活必需品(調味料など)のシェア独占、貴族の嗜好品(酒、葉巻など)のシェア独占。

 フォーチュンを追放するということはそれらを一気に失うことを意味する。その時に生まれる混乱はいかほどか、想像に難くない。

 そしてそれはグラだけではなく、グルニアも同様だった。この二国はすでにマルス王子とその配下の商人達の手によって“詰み”の状態となっている。

 

「戦争を──」

「え……?」

 

 カミュの呟き。その呟きにはどんな感情が込められていたのかシーマには分からない。

 

「──戦争をせずに勝敗が決まる。これが彼の、マルス王子の戦争か……」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 その頃のマルス様。

 

 

 ディール要塞で解放軍全軍が合流してから三日過ぎた。現在彼らはアカネイア奪還のため作戦会議を開いているところだ。

 

 要塞の中心部にある会議室。そこに解放軍で隊長格の者達が集まっていた。どうやらここで会議が開かれるらしい。

 進行役であるオレルアンの王弟ハーディンが立ち上がり、会議の始まりを告げる。

 

「ではこれより作戦会議を始める。司会、進行は私ハーディンが務めさせていただく。……それではまずマルス王子」

「はい!」

 

 ハーディンに呼ばれたマルス王子が元気よく返事をし、すっくと立ち上がる。

 

「とりあえず三つほど作戦を考えてみました。

 作戦その一、ワープの杖を使い敵軍の食料保管庫へ潜り込み全ての食料を燃やし尽くす。

 さすれば敵軍の士気、抵抗力ともに下がり、我々は最小の被害で勝利が確定する。

 作戦その二、歩兵達にパワーリングを500個ほど使わせ遠距離から手槍で狙撃しアカネイアパレスを徹底的に破壊する。

 さすれば敵軍の士気、抵抗力ともに下がり、我々は最小の被害で勝利が確定する。

 作戦その三、アカネイアパレスの水源がある山をバヌトゥのブレスで残らず蒸発させる。

 さすれば敵軍の士気、抵抗力ともに下がり、我々は最小の被害で勝利が───」

 

 

『止めんか外道ッ!』

 

 

 ぎゅるるるッ! ぽぐぅ!!

 

 

 コーネリアス、ハーディン、ニーナのトライアングルアタック!

 マルスに ひっさつの いちげき!

 

 

 だんだんとマルスの扱い方を理解してきた三人でした。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 ずる……ずる……ずる……

 

 這いずる音が塔の内部に響く。

 ここはイード砂漠にある古代都市テーベ、その中央にあるテーベの塔。

 その塔内部を、一人の老魔道士が這いずる格好で塔の中心部へ向かって動いていた。

 

「ぐ、ぐぅ……お、のれぇ……!マルス……あの小僧めぇ……!」

 

 怨嗟の声をあげながらもぞもぞと動くその老魔道士は、なんとあのカダインの魔王ガーネフである。

 ディール要塞で頭部を手槍で貫かれ殺されたと思われたガーネフは、実は辛うじて生きていたのだ。

 死の直前で『闇のオーブ』の影響力が強いテーベへワープしたのが功を奏した。マフーの書がもたらす超再生能力、そこに『闇のオーブ』の力が加わりガーネフは見事肉体の再生に成功したのだ。

 今は無様に地面を這いずっているが、一週間もすれば完全に回復するだろう。

 

「マルス……!マルス……!あの小僧、必ずこのわしが、わしの手で殺す……!」

 

 口を開けば出てくるのはマルスへの憎悪。ディール要塞での敗北は、ガーネフの心に強い陰を落としていた。

 

 若りし頃のガーネフは正義感の強い若者だったと言われている。しかし、師である大賢者ガトーにはガーネフの心の弱さを見抜かれていた。

 故にガトーはオーラの魔道書と魔道都市カダインをもう一人の弟子ミロアへ委ねる。

 

 そして、それこそが全ての始まりだった。

 

 ガトーがオーラとカダインをミロアへ委ねたことを知ったガーネフは嫉妬に狂った。彼はガトーから『闇のオーブ』と闇の魔法『マフー』の生成方法が記された書を盗み出す。マフーを作り出す過程で『闇のオーブ』の影響を強く受けたガーネフは“正義感の強い性格”から“残忍な性格”へと豹変する。

 その後、復活した地竜王メディウスと結託、ミロアを殺害した。怨敵となっていたミロアを害した時、ガーネフは愉悦に顔を歪ませていたという。

 

 そして今。ガーネフにとってマルスとそれに従う軍はミロア以上の怨敵と認識されていた。

 彼はミロアの時を上回る憎悪をマルス達に抱いていたのである。

 

「あの小僧を殺せるのならば何もいらぬ……! 闇のオーブよ、わしの全てを持っていけ……! その代わり、力を……! このわしに力をよこせぇぇぇ………ッ!」

 

 誰も居ない塔の中を、ガーネフの憎悪に満ちた叫びが響く。

 アカネイア歴604年。古代都市テーベにて、暗黒竜メディウスを上回る『真の魔王』が生まれようとしていた──


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