【完結】チートでエムブレム   作:ナナシ

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マルス  「○○バグはまかせろー」
メディウス「やめて!」


1章

1.アカネイア暦595年(憑依から一年後)

 

 

 

 マルスとして目覚め一年経った頃。私は一つの疑問を解消すべく行動を起こそうとしていた。

 ……今はアカネイア暦595年。まだメディウスは復活していないはず。あの疑問を解消するチャンスは戦争前の今しかないのである。

 

 そんな訳で、いま私は父上──コーネリアス王の下へ訪れている。

 

「ちちうえ、ちちうえ!」

「ん? おぉマルス、そんなに慌ててどうしたのだ」

 

 両手をわたわた可愛らしく振りながら駆け寄る私を、父上はニッカリと男臭い笑みを浮かべながら優しく抱き上げ、そのまま肩車へ。

 アリティア王である我が父コーネリアスは、これぞ武人と言わんばかりの筋肉を誇るハイパー・マッチョメンであった。

 

 そんな父上の目に視線をヒタッとあわせ、私は〝お願い〟する。

 

「ちちうえ、おねがいをもうしあげます!」

「ん? よいぞ、私に出来ることならばな。……それにしても、ふふ。貴族らしい、丁寧な言い回しをするようになったな。偉いぞマルス」

 

 頭をグリグリされる。父上の手のひらはゴツゴツしているから優しく撫でてるつもりでも微妙に痛い。

 しかし馬鹿正直に「いたい」と言って不興を買うわけにはいかない。私は痛みに耐えながら、

 

「ちちうえ、わたしはマケドニアのドラゴンナイトを見てみたいのです!」

 

 ショタッ気のある女性が見たら鼻血ものの、自分の容姿を最大限活かした極上の笑顔を浮かべながら「マケドニアへ行きたい」とお願いした。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 それからひと月後、私はジェイガン達家臣一団をお供にマケドニアへと旅立った。

 マケドニアへはカダイン、ラーマン神殿、グルニア王国と陸路で南下し、グルニア港から船でマケドニア港へ、それから首都へ向かうとのこと。

 掛かる日数、実に3週間。 長い、長いよジェイガンさん!(←八つ当たり)

 

 これだけ時間(と旅費)をかけたからには何としても〝アレ〟が出来るかどうか確認したいところだ。

 

 そんなこんなで3週間後。我々は無事にマケドニアへと到着した。この国には2週間ほど滞在する予定である。

 

 初日、二日目は旅の疲れを癒すためひたすら休んだ。

 三日目、マケドニアの国王陛下と、その息子ミシェイル王子の二人とマケドニア城で謁見。堅苦しい会話を一時間(うへぇ…)ほど交わした後、私とミシェイルは部屋から退室。「こちらへどうぞ」と王子に連れられ、ミネルバ王女 マリア王女の居る部屋へ案内された。

 ……まさかここで彼女らと知己を得ることになるとは思ってもいなかった。ミシェイル王子とも友好な関係を結ぶことが出来、僕満足!(もう古い?)

 

 しかしここで満足している場合じゃねぇ! 私がマケドニアへ出張った目的は、ミシェイルと友情フラグを立てることじゃなく、王女姉妹と恋愛フラグを立てることでもないのだから。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 ──夜中。もうすぐ春も終わるというのに肌寒いその時間。

 私は家臣のアベル、カインの三人で〝とある場所〟を目指していた。

 

 目指していた場所はすぐに見つかった。あとはここら一帯を……

 

「アベル、カイン、シャベルは持った?」

「「ここに!」」

 

 クールなイケメンヴォイスがシンクロする。腐の字が聞いたら悶絶すること確実である。

 

「よし……じゃあ、掘るよ!」

「「応ッ!」」

 

 袖を捲くり気合を入れる私と、同じく袖を捲くりシャベルを構えるアベルとカイン。

 今ここに、〝はねばしのかぎ〟を探す戦いが始まった……!

 

 

 

2.財宝バグ

 

 

 

 私がふと疑問に感じたこと。

 それは『宝箱から物を取り出すときに現れる4つのボタンとファンファーレみたいな音』であった。

 

 私は父上に連れられて砂漠の国カダインへ行くことが多い。

 そのため、カダインへ行く時は必ず全身を覆い隠す専用のマントを持っていく。(砂漠で生肌を晒すなど自殺行為そのもので、マントは必須)

 

 そのマント、普段は大き目の宝箱に入れて部屋の隅に置いてあるのだが。

 ……以前宝箱からマントを取り出した時、『パパラパパラパパパパー♪』という軽快な音と同時に4つの小さいボタンが出た。

 その音は一秒も経たずに聞こえなくなり、ボタンも10秒ぐらいで消える。

 だから最初は放置していた。特に害は無さそうだったし。

 

 しかし、ある日ふと思い出す。

 

「あれ……もしかしてあの音って、アイテム手に入れた時に流れる音じゃね?」

 

 そう。そうなのだ。

 ファイアーエムブレム紋章の謎(SFC版)で宝箱等からアイテムをGETした時に流れる音なのだ、あれは!

 それを理解すると『4つのボタン』の正体も判明する。

 

「赤、黄、青、緑……スーファミのコントローラーのボタンか!」

 

 4つのボタン。それは間違いなくSFCコントローラーのボタンであった。

 

 これは一体何を意味するのか。私は悩みに悩んだ。知恵熱出してぶっ倒れるという事態になるまで考えた。

 そして出した結論が……

 

「もしかしたら出来るかもしれない……財宝バグを!」

 

 

 

 財宝バグ。それは『 FE 紋章の謎 第二部 英雄戦争編 』で登場する『かくされたざいほう』を利用して出来る裏技──否、バグ技である。

 これはゲームバランスを著しく崩すバグ技なのでファイアーエムブレムを愛する者(エムブレマー)には不評だ。

 …が、ストーリーだけを楽しみたい、サクサクプレイをしたい、俺TUEEEをしたいというライトプレイヤーには概ね好評なバグ技だったりする。

 

 ではこの財宝バグとは何なのか?

 それは──入手した『かくされたざいほう』の使用回数をバグらせるというものである。

 例えば跳ね橋の鍵。これは一度使用すると消滅するという使い捨て仕様のアイテムだ。この鍵をアイテムバグでGETしたとしよう。

 …アイテムバグでGETしたその鍵は使用回数がバグり、何度でも使えるようになるのだ!

 

 その仕様は売買にも適応される。

 普通の跳ね橋の鍵は500ゴールドでしか売れない。

 しかし財宝バグで使用回数をバグらせた鍵は6万4千ゴールドで売れる。

 これだけ金があれば強力な武器等を沢山購入し、ゲームを有利に進めることが出来る。

 しかも跳ね橋の鍵を使った財宝バグは序盤で行うことが出来るため、ヌルゲーとなるのは確実であろう。

 

 ここでちょっと思い出して欲しい。

 この財宝バグ、『かくされたざいほう』ならば全てに適用されるということを。

 

 『 英雄戦争編 』の中盤MAP、マーモトード砂漠──通称 死の砂漠。

 アンリの道とも呼ばれるその砂漠に、大量の『かくされたざいほう』がある。

 そしてそこにある財宝は、ほぼ全てステータスUP用アイテム。

 

 ……エムブレマーが財宝バグを嫌う理由がここにある。

 マーモトード砂漠で入手出来るステータスUP用アイテムを財宝バグで入手した場合、カンストまで簡単にステータスUPすることが出来るのだ──

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「確かめなきゃ……」

 

 財宝バグ。もしそれが出来たのならば……

 しかしどこで確かめる? 私の記憶が確かなら、隠し財宝は全て危険な場所に……あ。

 あった、安全かつ確実に出来る場所!

 

「──マケドニア!」

 

 そう。マケドニアにある『かくされたざいほう』──跳ね橋の鍵!

 

 これが私が父上に我侭を言ってマケドニアまで来た理由である。

 財宝バグ。それが出来るか否か。

 答えは、間もなく出るだろう。

 ここ、マケドニアの地で──

 

 

◇◆◇

 

 

 

 パパラパパラパパパパー♪

 

 かくれたざいほう をはっけんした!

 

 はねばしのかぎ をてにいれた!

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

3.諸君。私は財宝バグが好きだ。財宝バグによって得られる資金が好きだ。

 

 

 

 サムスーフ山。いつの頃からか山賊や盗賊が多く巣くう山。

 近くの村々や旅人を襲い、金品を強奪する山賊達が跋扈する地帯。

 人はその山をデビルマウンテンと呼び、恐れた──

 

 

 

【───山賊達の砦】

 

「おい、聞いたか、例の噂」

「ああ……ガルダの海賊が全滅したってヤツか?」

「ああ。何でも青いマントを着た女顔の小僧が、薄気味悪ィ声を張り上げながら砦に一人で乗り込んで、そこに居た30人を皆殺しにしたって」

「なんだそりゃ? ないない、さすがにそれはないわー。一人で乗り込んで30人を? ないわー。それ完璧作り話だわー。」

「俺もそう思うんだけどよぉ。作り話にしちゃぁちょっと不気味すぎるんだよな……」

「なにがだよ」

「………けいけんち。」

「は?」

 

 

 

「ケイケンチ ヨコセ って叫びながらどこまでも追いかけてくるんだって。」

「なにそれこわい。」

 

 

 

「それとな」

「なんだよ、まだ何かあんのか?」

「そいつがいる組織つーか、軍な?」

「……おう」

 

 

 

「全員、キルソードとサンダーソード持ちらしいんだよ。」

「なぁちょっとここから逃げる準備しようぜ?」




マルス「鋼の剣はいらん。64(経験値)だけ置いてけ」
ゴメス「出番が無い上にこの仕打ち。
    こんなの主人公が取る態度じゃないですよ!」

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