三つの軌跡   作:大猫子猫

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復活


誕生の造花

 あぁぁ…………。

 

 痛いすごく痛い。

 

 手もお腹も脚も、身体中の全てが痛い。

 

 痛い、痛い、痛い。

 

 血……血がどんどん溢れ出ている。

 

 どこもかしこも紅くて、濡れて、真っ赤で、ドロドロしてて、温かくて、でもどんどん冷たくなってくる、気持ち悪い。

 

 耳元で誰かがうるさく叫んでいたけど、段々と聞こえなくなってきてる。

 

 体の感覚もなくなってきて、少しずつ消えていってるみたいで……消える?

 

 私……わたしは死ぬ? こんなところで、こんな嫌な気分のまま、消えてしまう?

 

 

 

 …………嫌だ。

 

 

 いやだいやだいやいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやいやだいやだいやだいやだ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 いやだ死にたくない死ぬのは絶対にいやだ。

 

 イタイのもいやだ消えるのもいやだ。

 

 死にたくない死にたくない死にたくないイタイのもいや。

 

 お願い誰か助けて死にたくないの助けて助けて。

 

 どうして? どうしてこんなことになっちゃったの?

 

 イタイよイタイよ血がどくどくしてるよ

 

 お願い助けて誰かだれ……ママ。

 

 助けてママあたし死にたくないの。

 

 イタイのもいや血もいや死ぬのもいや。

 

 元気になりたいのこんなボロボロで気持ち悪いのなんていや。

 

 ママ助けてもうこんなのはいやなのだからママ。

 

 イタイのなんていらないいつもみたいにおいしいごはん食べさせてよ。

 

 そしたらあたし元気になるからこんなイタイのも消えちゃうから。

 

 イタイイタイイタイおなかすいたイタイイタイイタイイタイイタイイタイ。

 

 だからだから……だから…………あぁ――――――――。

 

 

 

 …………ねぇ……ママ……。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――ナイゾウガタベタイ――――――――。

 

 

 

     ◇◇◇

 

 

 

「――え?」

 

 それは、なんの前触れもなく起きた。

 その異変に気付いたものはたった一人だけ。他の者は意識の大部分を戦闘に向けており、また当人たちが戦線から離脱していたこともあって、特別妖気読みに長けた存在がいない以上、小さな妖気の乱れなど誰も気付く要素がなかったからだ。

 それらの要因が重なり、結果的に……対象に最も近かったシャーリーのみしか気付くことができなかったというのは誰にも攻めることが出来ず。

 

 そして彼女自身も――――腹部が貫通するまで気付くことができなかったという点は、本人の経験値不足によるものなので致し方なったのであろう。

 

 シャーリーは自身が抱えていたはずの人物を呆然と見る。

 今まであったはずの女性的な面影は様変わりし、そこには筋肉と骨格が流動し、変形し続ける肉体。……そして頭から飛び出て自身を貫く太い髪の束があった。

 

「ク、ラ……リッサ?」

 

 言葉を放つごとに口から血が噴き出てくる。

 異形と化した相手はその言葉に答えることもなく、ビキビキと妖気を迸りながら声にならない咆哮をあげる。

 

 

 

「――――――――!!!――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 覚醒した。

 

 

 

     ◇◇◇

 

 

 

 突如発生した巨大な妖気に、私は思わず意識を一瞬その方向へと反らし、そして続けて聞こえてくる咆哮で完全に振り返てしまう。

 その結果、視界と意識から敵を完全に認識しないこととなり、戦闘中においてそれは自殺行為に他ならないが……そんな初歩的な懸念さえ抜け落ちてしまうほど、今の私には余裕などなかった。

 

「なっ……嘘でしょ!?」

 

 第一印象は〝増殖し続ける髪の束〟

 暗く黒い髪の毛の群れが、絡み合い浸食し、周囲を飲み込むかの如く縦横無尽に激しく拡大し続けていた。

 そして膨張が落ち着くと、多くて長すぎるその髪の中心に人間と比べて四倍ほどの巨躯を持つ、一体の巨人が現れる。

 肉体の形状はアンバランスで、首から上と下の対比が約1:2程となっており、腕は長く支え棒のように地面に触れ、足は力がないかのようにだらけている。

 

 ……そんなあまりにも化け物然とした姿だが、その顔は以前の彼女と似通っており、それ以前に肌で感じる妖気の質感が、大きさ以外全くの同一であることを嫌でも認識していた。

 

「あらあら」

 

 ()が隙だらけになったのにも関わらず、オリヴィエは行動を起こす素振りを見せずに、楽し気に声を漏らす

 

「立派に覚醒したわね……彼女」

 

 オリヴィエが言葉を発すると同時に、覚醒したクラリッサの髪の一部に明らかな異物があることに気付く。

 

「っ! シャーリー!!」

 

 自在に揺れ動く髪に腹部を突き刺され、力なく宙に浮かばされているシャーリーの姿がそこにあった。

 クラリッサは肉体を馴染ませるように僅かに肉体と髪を動かすと、鬱陶しそうに刺したままのシャーリーを投げ捨てる。

 

「――――っうっおおおぉおおぉ!!!」

 

 いつの間にかムカデから離れ、クラリッサへ接近したシンディーが剣を奔らせていた。それを見た私は、後で余裕そうに佇んでいるオリヴィエを優先順位から外し、前へと駆けだす。

 

「っんの! 馬鹿野郎がぁ!! 化け物退治に来たってのに、てめぇが化け物になってどうすんだよっ!!!!」

 

 シンディーは怒りとも悲しみともとれる叫びをあげながら我武者羅に剣を振るう。

 対するクラリッサは髪を動かして応戦するが、それは最低限のもので肉体の方はほとんど微動だにせず……まるでシンディーの存在自体が眼中にないような印象を受けた。

 キョロキョロと、まるで新しい肉体を確かめる様に全身を隈なく見る。そして最後につまらなそうに一言。

 

「――――ア――――お腹すいたー――――まずそうだけど……いっか」

「っ! ちっ!」

 

 ここでようやくクラリッサはその大きな瞳をシンディーに向けた。そしてそれと同時に防衛のためだった手段が攻撃用の武器となり、暴れ出す。

 本格的に稼働した髪がシンディーに向けて振るわれる。まっすぐ伸びてきた一撃目は何とか防ぐ、だが、その直後に大量の髪が上と左右から隈なく襲いかかる。その速度と量を完全に防ぎきることはできず、シンディーの身が切り裂かれた。

 

「ぐ、がっあ!」

 

 倒れ行くシンディーに向かって更なる追い打ちをかけようとする。その前に私はクラリッサの元に到達し、〝盾〟を使い、迫りくる髪を明後日の方向へと全て飛ばす。

 

「シンディー無事!?」

 

 呼びかけたが声は帰ってこない。しかし妖気はまだ残っており、苦し気なうめき声も聞こえてくるので深手は負っているようだが死んではいないようだ。シャーリーも同様の状態のよう。だけど、少なくともすぐさま戦闘可能になるほど回復するとは思えない。

 邪魔をされて憤りを感じたのか、それとも単に障害物の排除か、標的を私に変えて再度攻撃を行ってくる。

 今度は〝盾〟で弾くことはせず〝矛〟を使用して迫りくる髪を全て切り落とし、そのまま懐へと潜り込む。

 ……だができたのはそこまで。片腕を切断しようと動く前に、突如現れた蔓によってクラリッサは全身を捕縛され、そのまま引き離された。

 

「まあまあ、奮闘するのはいいけどね……残念だけどそこまでよ」

 

 移動してきたオリヴィエが自らの近くにクラリッサを引き寄せ、それと入れ替わるように、一人交戦していたローレンがムカデの全身を使った横薙ぎをモロに暗い、私のそばに吹き飛ばされてくる。

 

「ぐはっ!」

 

 そのまま勢いよく地面に激突しそうになるが、寸でのところで駆け付けたレイティアにより受け止められ、直撃だけは回避された。

 

「大丈夫か?」

「はあ……ぐっ、すまない。世話をかけた」

 

 意識こそはっきりしているがダメージは大きいようで、立ち上がるだけでも苦痛に顔を歪めている。

 

「ふふふ、万事休すってところかしら」

 

 オリヴィエの言う通り、クラリッサの覚醒によって状況は一変することになってしまった。

 先ほどまでは何とか戦え、勝機の光も決しても小さくないはずだった。――――だが。

 

 ……現在の戦力は六人中一人が敵となり二人が戦闘不能。残りも大なり小なり深手を負っておりボロボロだ。

 対する向こうは、満身創痍だが戦闘続行可能なムカデと、覚醒したてとはいえ無傷で妖気の大きさも決して無視できないレベルのクラリッサ。そして未だ損傷は軽微なオリヴィエの三体。

 状況は最悪で……絶望的だ。

 

「ふふ、それにしても元気一杯で頼もしそうな子ね」

 

 全身に巻かれた蔓を、クラリッサは鬱陶しそうに引きはがそうとするが、いくら暴れてもその拘束が解かれる気配は見えない。

 

「……ねえ、貴方の望みは何かしら? 教えてちょうだい。もしかしたら私なら叶えてあげられるかもしれないわよ?」

 

 その言葉にピクリとクラリッサは反応する。

 

「……お腹がすいた。お腹がすいたままだと死んじゃう。死にたくない。だからお腹いっぱい食べたい」

「ああ、なるほどね……分かるわ、その気持ち。でもね……ここで彼女たちを食べてもいいけどきっと美味しくないわよ? どうせなら満足して満たされたほうがいいでしょう?」

 

 子供に諭させるように丁寧に言い聞かせている。実際幾らか幼児退行しているようで、強気で皮肉屋な元々の印象は一切見られず、まるで子供のよう。そしてクラリッサは動きを止めて、オリヴィエの方に顔を向けた。

 その様子に満足したようで、オリヴィエはますます笑みを深くしていった。

 

「貴方、私たちの仲間にならない? もう少しだけ我慢すれば、好きなように好きな食べ物を沢山貴方にあげるわ」

「……本当?」

「もちろんよ。若くて新鮮な内臓をあげるわ。……そうだ。これが終わったらふもとの街へ行って歓迎会でもしましょうか。結構大きい街だからきっと満足すると思うわ。そこにある全てが貴方の食べ物よ」

 

 ……私たちからすれば不快感しか湧かない内容。しかしクラリッサは涎を大量に垂らしながら、目を輝かせていた。

 

「……わかった。言うこと聞くから食べさせて」

「交渉成立ね。歓迎するわ。――さて、こうして彼女はこちら側になったのだけれど……貴方たちはどうするのかしら?」

 

 オリヴィエはクラリッサから目を反らし、こちらへと向けてくる。

 満足げな笑みを浮かべて、愛おしそうに腕輪を撫でながら。

 

「なかなか妖気が大きい子を引き抜けて今すっごく機嫌がいいのよ。彼が帰ってくるのが本当待ち遠しい……きっと喜んでくれるわ。だからね……貴方たちにもチャンスをあげましょうか」

「チャンス……だと?」

 

 レイティアが訝し気に呟く。この状況下でチャンスと言われても素直に期待できないのであろう。

 しかし、このままでは何も打つ手がないのも事実で、それを理解してかそれ以上アクションを起こすことはなく静観している。

 

「そうね……力の差も戦力の差も分かってもらえただろうし、三分だけ時間をあげるわ。その間に自分の身の振りを決めなさい。覚醒するのか、それとも戦って死ぬかのか……あ、この子みたいに戦闘中に覚醒する可能性もあるからそれもそれでいいわね。仲間で相談しても構わないわよ。……だけどね、もしも逃亡するようなことがあったら――――原形もとどめないように確実に殺すから気を付けなさい」

「っ!? ぐ!」

 

 最後の言葉の端に混ぜ合わせた殺意と妖気が空気を軋ませる。

 緊迫しきったこの重圧、誰も身動きが取れず、オリヴィエに飲まれ切った中で次の行動を思案しなければならない。

 なんてことはない。与えられたのは猶予期間。

 死ぬか、戦って死ぬか、逃げて死ぬか、もしくは覚醒か、奴の認識はたったそれだけ。自分に害するものが全くないと信じ切っている選択肢。

 慢心しきった様子で余裕を隠さずに時間を与えている。その様子から見るに、戦力補充という奴らの目的以上に舐められているのを実感させられ、怒りを通り越して呆れてくる。

 

「……ローレン、二人の様子は?」

「あ、ああ。二人とも息が整っていてそこまで深刻な状態ではないようだ。だが三分で行動可能になるかどうかは……」

 

 辛うじて生きているような状態。なら二人の復帰は期待できない。回復を待つという手段も現実的ではないだろう。

 奴と同格であるという男の覚醒者はこの場にはいないが、楽観視は全くできない。

 おそらくここにいない理由は仲間集めだ。先ほどオリヴィエが一体引き連れてきたと同様に、戦力の増強を目論んで行動している可能性が高い。

 

 ……なるべく急いだ方が良い。最悪の場合、今この瞬間複数体引き連れて帰ってくる可能性だって否定できないのだから。このオリヴィエの勢力と男の覚醒者が引き連れてくる連中。その二つが合流したらもはや勝ち目どころか逃げることすら不可能だ。この状況も状況だから時間なんてかけてられない。

 

 ――しかし、猶予が与えられたこと自体は素直にチャンスだと思うべきだと思う。この時間内で打開策を見つけることが出来ればいいのだから。

 今なら制限はされてるが自由に動ける、傷付いた体を休める、考えることに集中することだって可能だ。

 オリヴィエの言葉を真に受ければ三分は手出ししてこない。その時間内で体力の回復と次の行動を模索することが出来れば、まだ勝機は潰えていない。

 そう三分時間があるんだ。その間に何か――三分……。

 

 

 ――――たったの三分。

 本当に見つけられるの? それだけの時間で? こんな状況下で?

 

 

 味方はボロボロ、敵はまだまだいける。

 我々に援軍なんてものは存在しない。敵は少なくともあと一体は確実にいる。

 

 ドクンドクンと心臓が跳ね上がり、体から絶えず冷汗が流れ、呼吸も乱れてくる。考えれば考えるほど最悪の想定しか浮かばない。

 

 どうする? 本当になにかないのか? この場をひっくり返すような奇跡みたいな、そんな一手。

 周りを見渡す。味方の戦力は自分を含めて五人。そのうちまともに動けるのは三人。その三人も連戦続きのせいで目に見えて疲弊しており、血だらけで息も絶え絶え。万全の状態な者は一人もいない。

 

 方や向こう。敵は三体で、配置はまず前方十メートル程にクラリッサがこちらをじっと見ており、その後ろでオリヴィエが佇んでいる。そしてムカデは二体の右側にいる。

 いわば向かい合っているような状態。取り囲まれているわけでもないので後方ががら空きだが、多人数戦が得意なオリヴィエとさらに10番台の覚醒者であるクラリッサが加わっている。例え全員がバラバラに逃げたところで、逃げ切れる可能性は楽観視しない方が良い。

 だけど正面から向かったところで良くてもジリ貧。ただの消耗戦だ。そのままズルズルと時間をかけた結果、敵の増援を許してしまうという可能性だってある。馬鹿正直に対峙するのは自殺行為だ。

 

 ダメだ考えろ、考えるんだ。何かあるはずだ、この状態でも行える何かしらの手段が。

 様々な案が脳内を駆け抜けるが、出るたびに最悪の想定をイメージさせられる。考えても考えても空廻っていく思考。

 何度やっても答えは同じ。もはや打つ手はなく、導き出される答えは死――――――――。

 

 

 

 

 

 ―――――――――いや。

 

 …………あった。一つだけ。この状況下でとれるたった一つの手段。

 だがあまりにもリスクが大きい。当たり前だ。これは練りに練った作戦ではなく偶然閃いただけの内容なのだから。その穴だらけな概要は普段なら私だって絶対に頷くことはなく、全ての動きに致死レベルの危険が纏わりつく。

 もはやこれは戦術なんて言えず、ただの博打行為だ。うまくいったら助かるが、一つでも失敗すれば全員が死ぬ。そんなハイリスクな行動だ。

 

 それに何より、一番気が進まないのは、私以外の誰かが犠牲にならなくてはならない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)という点。

 生死の有無は確定できないが、重傷を負うことはほぼ確定事項。そして作戦の立案者は別の役回りのせいでその貧乏くじを引く必要がない。そんなのを提案するのは――――。

 

「……アエラ、どうする?」

 

 ハッとして横を見ると、心配そうな表情を浮かべながらレイティアがこちらを向いていた。どうやら仲間の声に驚くほど、意識を深く集中させすぎていたらしい。

 ……そうだ、私には仲間がいるんだ。一人で黙々と自問自答するより、くだらない意見でも誰かと共有しよう。例え否定されても何かしらのヒントを与えられるかもしれない。

 

「ねぇ……一つ思いついたんだけど――――」

 

 

 

 

「――――なるほど、な。確かに無茶だが、一応形にはなっているし十分に不意を付ける。だが問題は我々の戦力数だな」

 

 この作戦で一番重要なのは最初の一撃だ。重要であると同時に一番危険度の高い役割。だがそれで終わりというわけでもなく、その後の追撃は必要不可欠であり、むしろそこからが本番ともいえる。そして私以外でその両方に適している人材は――――。

 

「……ふぅ、その二つなら前者の方が重要度が高いんだろう? なら、私がやるさ」

「レイティア……」

「気にするな。この作戦の要はお前にあるんだ。他に思いつけない以上、変に他を考えるよりも、その作戦遂行に全力を尽くすことにシフトした方が良い。……だが問題はその後だな、うまく行けるのか?」

 

 確かに、最初がうまくいってもレイティアが行動できなくなり、後は私とローレンだけ。正直全てがうまくいく可能性はあまりにも低い。

 しかし、レイティアが覚悟を見せている以上腹を括るしかないのかもしれない。作戦の立案者である以上、私も責任をもって挑まないと。確かに成功率は低いかもしれないが、少しでも成功の可能性があるんだったらそれに賭けるしかない。

 

 オリヴィエの宣告した残り時間も三十秒を切った。もはや時間もないので、急いでローレンに作戦を伝えようと考える。が、

 

 私が何かを言う前に、すでにローレンは歩いてくる。だが止まりはせずに私の横をそのまま通り抜けて、三メートルほど前まで移動してきた。

 息を荒くし、汗も絶えず流れ、全身を緊張させたようなおもむきで、そこに立っている。

 

 ――ピキ。

 

「……はぁ……はぁ……はぁ…………」

 

 ピキ、ピキピキピキ――――。

 

「ローレン……?」

 

 私の呼びかけに彼女は応じず、チラッと短く目を向けるだけ。

 

 そしてその目を見て私は――全てを理解した。

 




久しぶりにクレイモア原作を検索したら以前調べた時よりも大分作品数減っててなんだか悲しく…
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