細菌系の奴に襲われ、高熱と腹痛にやられ一週間ほど執筆を休ませてもらいました。まあ、今回の話をかいている中で描写が思いつかず筆が止まることが多かったのも原因だと思います……。
まだまだ未熟者ですが、これからも頑張っていきたいので最後までお付き合いよろしくお願いします。
それでは「第四奏」スタートです。
力が解き放たれ、巨大化したカオスジラーク。その歩みは確実に『西木野総合病院』へと向かっていた。
「真姫! 真姫!」
真姫の父・真二は真姫の母・織姫に支えられながらも、そのボロボロの体を引きずって真姫の名を叫ぶ。
しかし、カオスジラークはその歩みを止めることはない。真二の叫びなど無視して歩み続ける。
真二は何度も自分の娘の名前を叫び続ける。叫ぶたびに体に痛みが走るが、歯を食いしばって耐える。化け物になってしまった娘に自分の声を届かせるために、真二は叫び続けた。
一方の織姫は、真二の体を気にしながらも目の前の光景にショックを受けていた。どうして娘が化け物になってしまったのか? 何度も娘の名前を呼ぶ夫の声は、娘にどうして届かないのか? そもそも、今目の前で起きていることは現実なのだろうか? 目の前の光景が受け止めきれず、そんなことを考えてしまう。
しかし、これは現実。決して夢などではない。
そして、この現実を、今目の前の状況がどれだけ危険なのかを一番理解している希は、焦る心を無理やり落ち着かせていた。
(りっくん……!)
この状況を解決できる力を持つリヒトは、家からまだ出てこない。まさか家の中で襲われ、やられてしまったのではないだろうか。そんな考えが、ふと頭を横切る。
そんな中、ぐるりとカオスジラークが三人の方に振り返った。
『────っつ!?』
三人の体に緊張が走る。
真二が何度呼んでも反応しなかったカオスジラークが、突然振り返ったのだ。驚くなというほうが無理である。
希はその行動に警戒心を高めるが、真二は違った。自分の声が届いたのだと勘違いをし、安堵してしまう。
だが、本当はそうではない。その赤い瞳が、確かな憎悪の意志をもって真二を睨みつける。
「真姫……?」
真二もその異変を感じ取ったのか、真姫の名を呟く。
カオスジラークは真二を見ながら、その手を口元へもっていく。
──そして、カオスジラークの口からエネルギー光弾が放たれる。
その瞬間、三人の体に緊張と『死』が走る。
恐怖なんて感じる暇はない。迫る光弾に、何かを感じている時間などなかった。
『死』という概念が、明確な形となって三人に迫る。
そして──、
──光が三人を守った。
突如現れた眩い光に三人は腕で顔を覆う。光は徐々に人型をかたどっていき、半透明だったその姿をはっきりとさせていく。
その背中で三人を守ったのは、クリスタルが特徴の光の戦士──ウルトラマンギンガだった。
真二と織姫はギンガの出現に驚き、そして希は彼の登場に心を躍らせた。
ギンガは一度三人を見回し、希を見る。
『わりぃ、打ちどころ悪くてダウンしてた。後は任せろ』
首にかけている勾玉を通し、リヒトの声が希の脳内に響いてくる。姿は見えないが、聞こえて来た声にはしっかりとした強さを感じる。
『お願い』
希が返すと、ギンガは頷いた。
ギンガは立ち上がると、カオスジラークに振り返る。構え、カオスジラークの出方を窺うと、一つの違和感を感じた。その感覚の正体を探るべく眼を細めると、カオスジラークの中──インナースペースに真姫がいることに気づいた。
『西木野!? なんでお前がそこにいるんだよ!?』
リヒトの視界に映る真姫は、ダークダミースパークを両手で持ち、虚ろな瞳で見つめていた。リヒトは何度も「西木野!」と叫ぶが、真姫は全く反応を示さない。
だが、リヒトはその瞳で見た。何かをつぶやく真姫にささやくかのように隣に浮かぶ、闇の幻影を。
『パパのせいだ。パパのせいで私は「夢」で苦しんだ』
『そうだよ、真姫ちゃん。君がそこまで苦しんだのはお父さんのせいだ。さあ、そのまま進んで病院を壊しちゃおうよ』
無邪気な少年のような声が、リヒトの耳にもしっかりと聞こえてきた。虚ろな瞳の真姫は、無邪気な少年の声に「うん」と頷くと、ギンガを無視して病院へと向かう。
『待てッ!』
ギンガはカオスジラークの進行を止めるべく、跳躍すると空中で一回転し、カオスジラークの前に降り立つ。
『ここから先にはいかせない!』
『何君? 邪魔だよ』
『邪魔なのはお前だ! 西木野は返してもらう』
リヒトはその瞳で黒い幻影を睨みつける。真姫の隣にいる黒い幻影に瞳はない。だがもし瞳があるならば、リヒトとの睨み合いになっているところだろう。
『予定変更だよ、真姫ちゃん。まずは目の前の邪魔者を消そう』
幻影の声に促され、真姫はダークダミースパークから視線を上げる。虚ろな瞳の真姫と、リヒトの瞳が交差する。
『西木野!!』
『……』
リヒトが呼ぶも、真姫は反応しない。その虚ろな瞳のまま、
『ふふっ』
突然笑った。
『にしき──』
突然笑ったことに疑問を持ったリヒトは真姫の名を呼ぼうとするが、それより先にカオスジラークが動いた。口より光の矢が連続して放たれた。
ギンガは素早く左腕を伸ばし、バリアを展開することで攻撃を防ぐ。光の矢が途切れた瞬間、ギンガは駆け出す。カオスジラークへと迫ると、両肩を掴み動きを封じる。
『西木野! 俺の声が聞こえるか!?』
『無駄だよ、誰の声もまきちゃんには届かない』
リヒトの声に答えたのは真姫ではなく幻影。カオスジラークはギンガの腕を振り払うと、その拳を振るう。ギンガは素早くそれを弾くと、
『お前には聞いてない!』
リヒトの一喝と共にギンガから拳が飛ぶ。ギンガの拳はカオスジラークの腹部を捉えたが、そのダメージはカオスジラークだけでなく真姫の体も襲った。「やっぱりか」とリヒトが声を漏らす。
このことはある程度予想できたことだ。リヒトだってギンガにライブ中はダメージフィードバックが起こるのだ。怪獣にライブした真姫にも同様の現象が現れるだろうと、リヒトは考えていた。さすがにすべてのダメージがフィードバックすることはないが、それでもギンガの攻撃が確かに真姫の体にもダメージを与えることが分かった。
今の攻撃はそれを確かめる意味もあり、それほど強くは放っていない。そのためか真姫の体に大きなダメージとなることはなかった。しかし予想が的中してしまった。こうなれば、攻撃を躊躇してしまう。さらに言うならば、ギンガの必殺技である『ギンガサンダーボルト』、『ギンガファイヤーボール』、そして最大級の技である『ギンガクロスシュート』が封じられたようなものだ。威力の高いこの技は、決め手にはなるが確実に大きなフィードバックとなって真姫を襲うだろう。『ギンガスラッシュ』は威力が他の技に比べ低いため、遠慮なく使うことはできる。しかし決め手にはならない。
だが、打つ手がないわけではない。真姫の体の安全を考えたうえで打てる手が一つだけある。
(だけど、そのためには真姫の意識を呼び覚まさないと。今の状況じゃうまくいくかわからない。その為には)
ギンガは一度視線を希たちの方へ向ける。だがそれはやってはいけないことだった。
隙が生まれ、カオスジラークの攻撃が飛んできた。振り抜かれる拳だったが、ギンガはギリギリのところで躱す。真姫を助けるための作戦を希に伝えようにも、カオスジラークの攻撃がそれをさせない。
真姫のことを考え、ギンガはカオスジラークから迫る攻撃をすべて避け、受け流す。
放たれる拳を掌で弾き、蹴りは腕で受け止める。振り抜かれた腕を右腕で受け止め、絡め捕るように腕を捻ると脇の間に挟み、カオスジラークの左腕を封じる。
動きを封じ、鈍ったところで左掌を引き掌底を放つ。腹部目掛けて放たれた掌底は、カオスジラークの腹部に深く突き刺さり、カオスジラークの体がくの字に曲がる。大きく後ろによろめいたところを、両手を引き絞り追撃する。だが決して拳で攻撃はしない。掌で押すように追撃をする。
攻撃の手を躊躇はしてしまうが、攻撃しなければカオスジラークの体力を削ることが出来ない。ならば、真姫の体に大きな衝撃となってフィードバックしないような攻撃をすれば良い。掌底や掌での攻撃ならば、真姫に大きなダメージなく体力を削れるのではないか。そう考えたリヒトは、真姫の体を気遣いながら攻撃の手に出た。
しかし、あくまで避けるのと受け流すのをメインに、打撃技は最小限にとどめる。カオスジラークの攻撃をいなし、勢いを利用して地を転がすなど、自爆させることで着々とカオスジラークの体力を削って行った。
リヒトは全神経を集中させカオスジラークの攻撃に視線を走らせる。ことりほどの動体視力と空間把握能力はないため、完璧には追うことはできないが、ギンガのスペックと『光の異空間』から受ける恩恵が、リヒトの集中力を高めていた。
すでに何度目かの攻防を終えたギンガとカオスジラーク。突き出された拳を受け止め、背負い投げの要領で転がすように投げる。
両者の間に距離が開く。
カオスジラークは起き上がると、エネルギー光弾を放つ。ギンガはバリアで防がず、エネルギー光弾をすべて叩き落す。最後の一撃を叩き落とした瞬間、カオスジラークより放たれた光の鞭がギンガの右腕に絡みつく。
カオスジラークはギンガを倒そうと鞭を引っ張るが、ギンガは倒されまいと縛られている腕に力を入れ踏ん張る。力比べになる両者。互いに倒されないよう鞭を引っ張り合っている中、先に仕掛けたのはカオスジラークだった。
鞭に電撃を流し始めたのだ。
鞭を伝いギンガの体へと流れ込んできた電流は、ギンガを苦しめる。電撃のダメージを受けたギンガは踏ん張る力を弱めてしまい、体が宙へ浮く。叩きつけられるように倒れるギンガ。起き上がろうとするが、右腕を捕られているためすぐには起き上がることが出来ない。膝たちの状態になったところで、カオスジラークからの追撃が入った。再びギンガの体が一回転し、背中から叩きつけられる。
『くそっ』
悪態をつくリヒト。
ギンガは絡みついている鞭を解こうとするが、電流がそれをさせない。さらに、追撃としてエネルギー光弾と光の矢がギンガに向けて放たれる。
ギンガは自由である左手を使い、それらを防ぐ。バリアを解除すると、すぐさま左腕を頭部に持っていきギンガスラッシュを放つ。ギンガスラッシュを受けたカオスジラークはよろめく。右腕に絡みついていた鞭も消滅し、閉じたり開いたりすることで調子を確かめる。
そしてリヒトは真姫へと声を飛ばす。
『西木野!』
『私が苦しんだのはパパのせいだ。パパのせいだ。パパのせいだ。パパのせいだ。パパのせいだ、パパのせいだ』
まるで呪文のように繰り返し呟く真姫。その隣に浮かぶ幻影は真姫の横を浮遊しながら、真姫の耳元に囁く。
『そうだよ真紀ちゃん、君が苦しむのはお父さんのせいだ。だから復讐しよう。壊しちゃおう、君の「夢」のじゃ魔になるものすべて』
『そう、「夢」のじゃまになるモノは壊せばいいんだ。全てケイセンケイセン壊せばいいんだ』
『……そこまでして、お前の叶え対「夢」ってなんだよ』
リヒトが率直に思った疑問、それを口にした途端真姫の囁きが止まった。
リヒトはそれを不審に思った。今まで誰の声も届いていなかったはずなのに、まるでリヒトの言葉に反応したかのように囁きが止まったのだ。もしかしたら今放ったリヒトの言葉に、『闇』に囚われてもなお真姫が反応を示す『キーワード』が入っていたのかもしれない。
それは何だ? リヒトは先ほど言った言葉を思い出す。先ほどの言葉に入っていて、今の真姫の心に響く『キーワード』を見つけるのは、そう難しいことではなかった。
『──じゃあ、お前の「夢」ってなんだ?』
真姫に確かな反応があった。
それを頷けるかのように、黒い幻影に動揺が走ったのだ。
『え? そんなっ、僕の声以外が聞こえるはずないのに!? どうしてアイツの言葉が!?』
『お前はしばらくどいてろ』
高速でカオスジラークへと接近したギンガは、後ろへ振りかぶった拳を突き出す。同時にリヒトの突き出した右手に握られているギンガスパークが輝きを放つ。ギンガの拳はカオスジラークの
「西木野」とリヒトが真姫の名を呼んだところでギンガスパークが輝きが増した。その輝きは、真姫の持つダークダミースパークと共鳴を始め、『西木野真姫』の意識を浮上させていく。
輝きはそこでは終わらない。ギンガスパークの放つ輝きがリヒトの視界を覆っていき、さらにその輝きがダークダミースパークを通し真姫の意識を呼び起こし、二人を包み込んだ。
二人は、光の空間で対面していた。
リヒトは真姫の前に立ち、言う。
『もう一度聞くぞ。お前の「夢」は何だ?』
『私の……夢?』
リヒトに聞かれ、僅かながらに動揺を見せる真姫。
『そうだよ、
『それは……』
真姫は答えることが出来ないのか、言葉に詰まってしまう。リヒトはそこを見逃さず、まるで追撃するかのように言葉を発する。
『なんで詰まるんだよ。あるだろ? もう一つの夢を壊してまで成し遂げたい夢が。茜ちゃんみたいな人たち、お前が助けたいと思った人たちがいる場所を壊してまで!』
『私は……、私は……』
そこで真姫は自分が何をしようとしていたのかを理解する。敵に操られていたとはいえ、『病院』を破壊しようとしたのだ。それがどういうことを意味するのか、自分がどんなに恐ろしいことをしようとしていたかを理解し、真姫は大きな恐怖心に襲われた。
『違う、……私は……私は別に、そんなつもりは……』
真姫は強い後悔の念に襲われ、頭を抱えしゃがみこんでしまう。涙を浮かべ、肩を抱き震え始める。病院の娘である故、もし自分が病院を壊してしまった場合のことを想像してしまったのだろう。
そんな真姫を見て、リヒトは一息吐くと真姫に近づく。しゃがみこみ、真姫と視線を合わせる形をとると、右手を真姫の頭に乗せる。
『わかってる。本当は病院を壊したくないことくらい、俺は分かってるよ』
優しく微笑みながら、リヒトは真姫の頭を撫でる。撫でながら、リヒトは続ける。
『なあ、西木野。お前はさ、結局何がやりたいんだ?』
『……』
『病院を継いで医者になるのか、それとも音楽の道に進みたいのか。どっちなんだ?』
真姫の震えは止まっていた。今の彼女は何を思い考えているのか、それを探ろうにも顔はその前髪によって隠れているため、真姫の表情を読み取ることはできない。それでも、リヒトには真姫が考えていることが分かった。きっと、自分の心と会話でもしているのだろう。自分の本当に進みたい道、本当にやりたいことを、自分自身と向き合って考えている。
リヒトはすでに真姫の頭から手を放し、答えを待った。
『わからない』
真姫は絞り出すようにつぶやいた。
『わからないの。自分でも、本当に進みたい道が……どれなのか』
『……』
『医者の道か、音楽の道か。一生懸命考えた。どっちの道に進むのがいいのか……。でも決めれなかった。答えは一つしかないのに、最初から答え何て決まっているのに、その『答え』を出そうとすると胸が痛んで……』
真姫の頬から一筋の光が流れ落ちるのを、リヒトは見た。
『どうして、こんなに苦しまなきゃいけないの……』
『……それは、お前が両方の「夢」を大切にしているからだよ』
リヒトの言った言葉に、真姫『……え?』と言って顔を上げる。その瞳には涙が浮かんでおり、それを見たリヒトは自分が思い浮かんだ考えに確信を持ち、言葉を続ける。
『お前は、音楽の道も医者の道も、両方を大切に思っているんだよ。両方とも大切で、両方とも「やりたい」って思ってるから、お前は苦しんでんだ』
『両方、大切、だから……?』
『そう。医者の道も音楽の道も、両方を歩みたいって思ってんだよ、お前は』
リヒトに言われ、真姫は自然と心が楽になっていくのを感じた。『両方の道を歩みたいのか?』、そう自分の心に問いかけると、自然と『そうだよ』と言う声が返ってきた。それはつまり、リヒトの言う通り自分は『音楽の道』も『医者の道』も『歩みたい』と思っているということになる。
そんなの無理だ、出来るわけない、ただでさえ医者になるということは難しいのだ。音楽の道を歩んでいるひまなどない。様々な『無理』と言う考えが浮かび上がってくる。
それなのに、自分の心に両方の道を『歩む』と言う答えを出すと、とても心が楽になるのだ。まるで、自分の心がその答えを
『……そっか、私、二つの道を歩みたかったんだ』
真姫が呟くと、リヒトはフッと笑う。
『二つの「夢」を掲げるなんて、以外の欲深いんだな』
そういうとリヒトは真姫の頭を乱暴に撫でる。「やめてよ」と言い真姫はリヒトの腕を払うが、リヒトはそのまま真姫の腕を掴むと立ち上がらせる。無理やりな形になり、真姫に睨まれるもリヒトは飄々とした様子で、しかし真のこもった瞳を真姫へまっすぐ向け続ける。
『いいじゃねえか、二つのでかい「夢」持ってんなら、両方叶えようぜ。お前のその大きな「夢」をさ』
そう言ってリヒトは右手を差し出してくる。この手を掴めば、真姫は今まで悩み、考えていた『夢』に『答え』を出し一歩進めるのかもしれない。
だが、どうしても『無理だ』と言う言葉が浮かび上がってしまう。そこには様々なことがあり、やはり家が『病院』であり、自分が『院長の一人娘』と言うことで継がねばならないという責任が真姫の心を大きく縛り付ける。
そして何より、どうしても『あの出来事』が真姫の『音楽』に対する一歩を、止めてしまう。
『……無理よ、私の家は病院なのよ? パパが許すはずがないわ。パパは私が病院を継ぐことを願っている。音楽は最初から反対しているのよ』
『……ホントにそうか?』
『そうよ。パパは最初から私の音楽をよく思っていなかった。だから──』
『──アレを見ても、本当にそう思うか?』
『──―え?』
リヒトに促され真姫が視線を横に向けると、父・真二の姿が映し出された。真二が映し出されたことに驚く真姫だったが、真二が必死に何か叫んでいることに気が付き耳を傾ける。
真二はボロボロの体を引きずりながら立ち上がる。途中何度も倒れそうになり母・織姫が支えようとするが、それを拒否し自らの力で立つと、真姫に言葉が都道と信じて叫ぶ。
『真姫! すまなかった! お前がそうなってしまったのは、私のせいなのだろう! 本当にすまなかった! ……私は、自分でも不器用な性格をしていると自覚している。だからあの日以降、娘であるお前にどう接すればいいのか、わからなくなってしまったのだ。声を掛けようにも、なんて声を掛けたらいいのかわからず、さらには仕事も忙しくなっていき、真姫と遊ぶ時間も減ってしまった。お前に声を掛けようとすると、どうしてもあの時言われた一言を思い出してしまい、委縮してしまうのだ。本当なら、コンクールも毎回行きたかったし、応援もしたかった。「がんばったな」とも面と向かって言いたかった。だからあの日、久しぶりにとれた休みを利用してお前の演奏を見に行き、改めて賞賛の言葉を送ろうとしたのだ。
だが、結局私は、ホールを出て行くという最悪な行為をしてしまった。それがどれだけ真姫の心を気付付けたのかも知らずに、本当ならすぐに謝るべきだったのだ。しかし、翌日お前から聞いた「医者になりたい」と言う言葉が嬉しく、そして同時に
私は、真姫のピアノが大好きだ! あの時ホールを出て行ったのはお前のピアノに
真二は深々と頭を下げた。
『……パパ』
『な? あんなに娘のことを思っている父親が、娘の夢を否定すると思うか?』
『……』
『話してみろよ、お前の歩みたい「夢」をさ』
『……大丈夫かしらね?』
『大丈夫だ。そもそもお前まだ一五、六歳だろ? 親に気を使ってグダグダ悩んでんじゃねえよ。「ワガママ」言って親に迷惑かけれるのが、子供の特権なんだから』
『何よそれ』と言って苦笑いになる真姫。『リヒトさんだってまだ一七歳でしょ? 私とあまり変わらないじゃない』
『今年で一八だ。お前より二つ年上の先輩としての意見だ。ありがたく受け取っとけ』
『何よそれ、意味わかんない』
フンッ、とそっぽを向く真姫だったが、そこには何か付き物が取れた様子が感じ取られ、自分の心に『答え』を出せた様子だった。真姫の様子の変化を見たリヒトは、小さく微笑み一息を吐く。後はリヒトの仕事だ。真姫を無事に『闇』から救い出し真二のもとに連れていく、そうと決まれば後は行動するのみだった。
しかし、リヒトがギンガスパークを取り出したところで、闇の幻影が再び姿を現したのだ。
『それで本当にいいのかい?』
黒い霧のようなものが集約していき、先ほどまで真姫の横で浮遊していた幻影は真姫の元へ現れると、その声をもって真姫へ問いかける。リヒトは先ほどギンガの攻撃で消し飛ばしたはずの幻影の出現に驚く。このままでは再び真姫が闇に囚われてしまう、そう思ったリヒトは幻影を消すために動こうとするが、
『(待つんだリヒト)』
脳内に響いてきたギンガの声に止められる。
『(ギンガ!? 待てってどういうことだよ!? このままじゃ西木野が!!)』
『(これは彼女の戦いだ。我々が踏み込んでいいことではない)』
『(西木野の戦い?)』
『(そうだ、彼女の、自分の心との戦いだ)』
ギンガに言われ、リヒトは幻影と対峙する真姫を見守る。
一方、幻影と対峙する真姫。
『本当にお父さんに話すのかい? 否定されるのがオチだよ』
『かもしれないわね』
『君を苦しめた罰はいいの? まだ君が苦しんだ分を返せていないじゃないか。もっと苦しめようよ、病院を壊しちゃおうよ』
幻影は真姫の目の前を漂いながら言葉を発する。真姫はまっすぐ幻影を見たまま、はっきりと告げる。
『嫌よ』
『──────え?』
『聞こえなかったの? 「嫌よ」って言ったの。もうあなたに操られる気はないわ、私は決めたの。自分の「夢」を。もう、迷ったりしないわ。だから──消えて』
はっきりと、明確な拒絶を、真姫は告げた。先ほどまで幻影の声に惑わされていた時とは違い、自分の意思をもって告げた真姫の姿に、リヒトは自然と笑みを漏らし感心した。
『なにを、言ってるのかな? 真姫ちゃん、よくわからないや』
『消えてって言ったの。後それから、その姿で私の前に現れるの、やめてくれる。私にとって空飛ぶクジラはね、勇気づけられるものなの。その大きな体で自由に、ゆっくりと大空を泳ぐ。そうね、思い出したわ、あの夢を見てた私は、その大空に憧れていた。どこまでも続く広い青空、その空のように自由に自分を表現できたらいいなと思ってた。ピアノを弾くとき、大空をイメージして自由に弾いていたわ』
そう、リヒトたちには
真姫は明確な『怒り』を含めて、告げる
『だから、私の心の象徴である
真姫の叫びと共に、真姫の体から光が放たれた。強い輝きを持った光、その光は真姫の意思の強さを表しているかのようだった。そして真姫の心の強さに比例していくかのように、その輝きはどんどん増していく。何時しか真姫の体を包み、溢れんばかりの光を放っていた。
その光はいつの間にか真姫の手に握られていたダークダミースパークにも変化を及ぼした。紫色に怪しく光っていたスパークは、光の輝きを吸収していき、その色を変えていく。
『バカなっ!? そんな、闇に堕ちた人間が「光」を手にするなんて──―』
幻影の言葉はそこまでだった。
ダークダミースパークはその色を光り輝く半透明の青色のスパーク、ギンガライトスパークに姿を変え幻影を吹き飛ばした。
『……すげえ』
リヒトはそのすごさを目の当たりにし、呆気にとられた。
だが、真姫の体が倒れそうになるのを見ると、すぐさま駆け出し倒れ込む真姫の体を受け止める。
『西木野! 西木野!』
『(大丈夫だ、気を失っているだけだ)』
『ギンガ……』
『(闇を光に変えるのは、並大抵のことではない。きっと彼女は気力をすべて使い果たし、闇から抜け出したのだろう)』
ギンガの言葉を受け、リヒトは自分の腕の中で眠る真姫を見る。
(ははっ、大した奴だよ、お前は)
リヒトはギンガスパークを取り出す。フェイスプレートは青から緑色へと変化し、その輝きをもって二人を包み込んだ。
♢ ♢ ♢
全身のクリスタルが緑色に変化したギンガは、その拳をカオスジラークから抜き取る。その手には光の球体が握られており、カオスジラークを蹴とばすとギンガは真二たちの元へ歩み寄る。
ギンガが近づいてきたことにわずかながらに身構える真二と織姫だったが、ギンガの掌に握られている光の球体、その中に眠っている人物を見て声を上げる。
「真姫!!」
ギンガは真姫を二人の元に下ろす。球体から解き放たれた真姫を二人は受け止め、もう離さないためにしっかりと抱きしめる。
その姿を見たリヒトは安堵し、いまだ健在のカオスジラークへと向き直る。しかし、カオスジラークは依代を失くしすでに満身創痍と言った状態だ。ふらついており立っていることも困難な状態であり、もはや向こうから攻撃する手など残されていなかった。
『まだだ!!』
だが、幻影は諦めている様子はなかった。最後の力を振り絞り、その姿を黒い霧のようなものに変化させ、真姫を取り込もうと迫る。
完全に油断していたギンガは『闇』となって迫るカオスジラークへの反応が遅れ、その脇をすり抜けられてしまう。
リヒトは「しまった!」と思い、迫りくる『闇』から真姫を守るべく真二は真姫を強く抱きしめる。
ギンガは『闇』の接近を阻止するべく技を放とうとするも、その先に真姫たちがいるため放つことが出来ない。
状況が一気に最悪へと転じる中、真姫の手に握られている『ギンガライトスパーク』が再び輝きを灯す。
そして────、
『──────────!!』
竜の咆哮が周囲にこだました。
その場に居る誰しもが「なんだ?」と疑問がる中、天空より銀色の鱗の竜が飛来し、猛スピードで『闇』へと迫った。銀色の竜は『闇』に噛みつくと、上空へと飛翔する。その行動はまるで真姫を守ったかのようにギンガの目に映った。
そして一瞬、銀色の竜と目があったギンガはその瞳から『止めを頼む』を言われたような気がしたため、あとを追いかけギンガも飛翔する。
雲を突き抜けたギンガ──いや、リヒトはその目の前に広がる青い世界に感銘を受けていた。本当なら、その世界をずっと見ていたいが、そう言う訳にはいかないと意識を敵へと向ける。
銀色の竜は『闇』を解放すると、その尾を薙ぎ払い『闇』の残された体力を奪う。『後は任せた』まるでそう言っているかのようなアイコンタクトを銀竜より受け、腕をクロスさせる。
リヒトとしては、あの『闇』のような状態の敵に『ギンガクロスシュート』が効くかどうかわからないと考えている。その為ギンガは、クリスタルを青ではなく緑色へと光らせる。右腕のクリスタルを撫でるように滑らせる。ギンガの手から七色のオーロラの光が放たれ、『闇』を包み込んでいく。
その光は、ギンガの持つ浄化技『ギンガコンフォート』の光だ。浄化技である『ギンガコンフォート』の淡い光が『闇』を包んでいき、断末魔を上げる暇もなく『闇』を消滅させた。
ギンガは銀竜の方へと向き直ると、銀竜は静かにギンガを見ていた。
『ありがとな、西木野を守ってくれて』
リヒトは先ほど真姫を守ってくれたことの礼を述べる。銀竜は特に反応を示すことなくその身をひるがえし去って行こうとする。そのやや無愛想な態度にリヒトは「おい」と思うも、逆に例が来たら来たで困惑するためこれで良かったのだろう。そう自己完結し、自分も地上へと戻ろうとしたところで、──竜がこちらに振り返った。
『──』
『──え?』
竜は短くリヒトの脳へ一言告げた。
竜はそれで満足したのか、地上へと去って行きながら光となって消えていった。
──そして同時に、真姫の手に握られていたギンガライトスパークの輝きも消え、しばらくしてギンガライトスパークも光となって消えた。
上空にとどまったギンガ──リヒトはしばらく呆然としていたが、ふっと小さく笑うと、
『ああ、任せとけ』
どこかへ消えてしまった銀竜へ誓いの言葉を放った。
銀竜がリヒトへ告げた言葉。
『──真姫を守ってくれてありがとう。そしてこれからも、彼女を守ってくれ。迫りくる「闇」から』
無印ギンガだと、普通にギンガの必殺技食らった人たちって、ダメージ食らってるんですよね。簡単に言えば黒焦げ状態になります。口から煙はいたり顔に炭が付いていたり。
さすがに真姫ちゃんをそんな目に合わせるわけにはいかないので、今回の戦闘描写は苦労しました。
最後に出てきた銀色の竜は、後半に控えているある一話に必要なためここに無理やりですが入れました。一応ちゃんと理由もあります。
さて、長くなりましたが次回で第4話は終了となります。なるべくすぐに上げたいと考えておりますのでお待ちください。
NEXT→「最終奏:歌姫の夢」
(16/02/28)
最終奏のタイトル変更に伴いこの部分も変更いたしました。