第5話にしてようやく描かれるという事実!(←すごくどうでもいい)
上空へと飛翔する、一つの光。
その光は先ほど『ゲート』を作り出した光とは違い、とても神々しく美しい光。やがて眩い輝きが収まると、ウルトラマンギンガが出現した。
ギンガはすぐさま両腕を頭部に持って行き、クリスタルを紫色に光らせる。放たれる光、ギンガスラッシュがキングパンドンを絡め捕る紐を消し飛ばし、落下を始めるキングパンをギンガは優しく受け止める。
ゆっくりと地面にキングパンドンを下ろすギンガ。
そしてすぐさま両手に光を集めビルの上にあるゲート発生機を破壊。上空にあるワームホールは禍々しくゆがみ始めたのを察知し、ギンガコンフォートでワームホールの浄化にあたる。
ギンガコンフォートの光を飲み込んだワームホールは、光の浄化を受けて消滅。キングパンドンの救出に成功した。
☆☆☆
風を切る音が聞こえ真姫はすぐさま凛に声を飛ばす。
「左によけて!!」
真姫の声を聞いた凛は左に転がるように避け、風を切り迫る鞭を躱した。
そのタイミングで上空に光が上り、ウルトラマンギンガがキングパンドンの救出に成功する。
「なるほど、これがあなた達の目的だったのね」
少し感心した声を上げるユーカ。
正直、早めに気付かれると思っていた真姫は、この作戦が無事に成功したことにホッとする。凛の方も真姫が鞭の風を切る音を聞き取れること、加えて凛自身の運動神経のおかげで軽傷で済んでいる。
凛の方はギンガの登場に驚きと、待ちわびたヒーローの登場に喜ぶ少年の瞳をしていた。
「西木野さん西木野さん! あの巨人なに!? 誰!?」
「ウルトラマンギンガ。大丈夫、私達の味方、そしてアンタの目論見を阻止する光の戦士よ!」
得意げに宣言する真姫。ほぼ受け寄りの知識だが、そんなことは気にしない。このまま勢いをこっちに持って来て波に乗りたいのだ。
だが、ユーカが鞭でコンクリートを強くたたき、場の流れを静寂に染める。
「まったく、油断したわ。女の子を傷つけたくないから手加減してたけど、こうなったら仕方ないわ」
ユーカは鞭をしまうと、もう一つのスパークドールズ、そしてダークダミースパークを取り出す。
「本当なら、私はライブするつもりはなかったのだけれど、やるしかないわね」
ユーカは、何の躊躇もなくスパークドールズをリードした。
『ダークライブ! テレスドン!!』
☆☆☆
ッドン!! と土埃を上げて出現するテレスドン。
『お前』
『これで勝ったと思わないでね。まだ勝負はついていないから』
ユーカがそう告げると、テレスドンが駆け出す。
ギンガのそばにはキングパンドンが横になっているため、ここで迎え撃つわけにはいかない。一歩遅れてギンガも駆け出すと、テレスドンとの取っ組み合いになる。
しかしそれは一瞬、ギンガはすぐに右腕を振りかぶると殴りつける。膝蹴りの追撃を放ち、さらに右ストレートでダメージを与える。
よろめき、後ろに下がって行くテレスドン。
距離を詰めよろうとするテレスドンだったが、ギンガの蹴りが腹部に突き刺さる。
頭部を掴み背負い投げの要領で投げ飛ばす。
テレスドンの反撃を許さない猛攻、先ほど何度もコンクリート上を転がされたお返しと言わんばかりの猛攻に、テレスドンの体力はどんどん削られていった。
元々、テレスドンは重量級怪獣であり動きの素早さではギンガに負けている。ギンガもそれがわかっているのか、接近戦での取っ組み合いを避け、素早い一撃を叩き込んでいく戦法をとっている。
だが、
『やるわね。でも──』
ユーカの口元に浮かぶ不敵な笑みが消えることはない。
不審に思っていると、ユーカはその手に持つダークダミースパークを己の胸に突き刺した。
ユーカの行動に驚くリヒト。
『うあぁ、ああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
呻き声を上げるユーカだが、次第にその声は叫び声に変わっていき、さらに先ほどギンガが壊したゲート発生機から不気味な光がテレスドンへと伸びていく。
リヒトの視界に映るユーカは、苦しいのか声を上げ髪が大きく乱れている。それでも、己の体に突き刺したダークダミースパークを抜くことはしない。
ダークダミースパークがすべて体の中に入ると、ユーカの体が大きく揺れ、サングラスが外れる。
『──!? お前、目が!?』
サングラスが取れたその下には、本来あるはずの
目を見開いて驚くリヒトだったが、その次に起きた変化がリヒトの警戒心を高めた。
グチュグチュと音を立ててテレスドンの姿が変化していく。土色の体が銀色に変化、より硬くより強靭に進化する。瞳も赤く染まりその体がより生物に、いや、クリーチャーのように禍々しく変化していく様は、見ていてあまり気分のいいものではない。体の構造そのものが変化しているといっていいだろう。
もうすでに、ユーカの姿は見えない。
地上にいる真姫と凛も、テレスドンの体が変化していくグチュグチュという嫌な音に、不快感をあらわにして耳をふさぐ。
体の変化が終わると、その重くなった巨体を揺らして具合を確かめると、ユーカの声だけが聞こえてくる。
『あら、こっちはすぐに対応するのね。あのハットのおじさま、こっちには力を入れたのね』
『ゲート』の力とダークダミースパークの力でパワーアップした、と捉えていいのだろうか。明らかにテレスドン──この場合、パワードテレスドンと呼んだ方がいいだろう──から感じる気配が強くなっていた。
元々『ゲート』にその効力を組み込んでいたのか、どういった原理でパワーアップしたのかリヒトが知ることはできないが、先ほど以上に集中して戦わなければいけないことは確かだ。
パワードテレスドンは先ほど以上にゆっくりとした足取りでギンガに迫るが、ギンガはパワードテレスドンの寸前で飛び上がり、一回転して背後を取る。
横蹴りを叩き込むが、先ほど以上に体の皮膚が強化されているのか、硬い感触が返って来る。
二撃、三撃。
と、拳も交えて背後を攻撃するがダメージになっている気配がない。
硬くなった体を回転させ、頭部がギンガの体を襲った。その威力はまさに鈍器で殴られたような威力を秘めており、ギンガは体から火花を上げ後退する。さらに口から放つ『マグマ熱線』がギンガを襲い、大きく後ろに吹き飛ぶ。
ビルを巻き込んで倒れるギンガ。
さらにマウントを取るかのように覆いかぶさって来るパワードテレスドン。テレスドンの体が強化されたからなのか、その重さはより重くなっており退けるのは一苦労だ。
パワードテレスドンはその口先をギンガの体に叩きつけ火花を散らせる。鈍器で殴られる衝撃がギンガの体を次々と襲っていくが、何とか折りたたんでいた膝を伸ばしてレスドンを蹴り飛ばす。しかし、その重たい巨体が飛ぶことはなく、横に倒れてずれるといった方が正しいだろう。
ギンガはすぐに横に転がりテレスドンの下から抜け出す。
あの体の硬さは厄介だが、動きの速さではこちらが有利なのは変わらないみたいだ。先ほどと同じように手数での勝負に出ようと考えたギンガは、まだ立ち上がっていないテレスドンに飛び乗り、逆にマウントを取ることで連続して手刀を振り下ろす。両手を合わせて叩き付けるが、その固い皮膚を通してダメージを与えられているかは不安である。
テレスドンはその体を揺らしてギンガを振り落とすと、立ち上がり態勢を整える。ギンガも転がることで距離を開け、追撃を逃れるのと同時に体勢を立て直す。
両者は動くことなく、しばらく距離を保っていた。
☆☆☆
両者の攻防に、真姫と凛は息を飲む。
目の前で繰り広げられる巨大な戦闘に、その圧倒的なスケールにただただ息を飲むしかなかった。
一応戦いの余波に巻き込まれないように距離を取ってはいるが、それでもその巨体が欠けるたびに震える空気が恐ろしかった。
「……あれ? 星空さん?」
ふと、隣に先ほどまでいた凛の気配がなくなったことに気が付き辺りを見回す。凛の姿を見つけた時、彼女はキングパンドンの方へ走り出していた。
「何やってんのよ!?」
凛の行動に心臓が止まるのではないかと悲鳴を上げる真姫は、急いでその背を追いかける。
同時に、まるでそれが合図かのようにギンガとパワードテレスドンの激突も再開された。
ギンガが走るたびに地が揺れ振動が伝わってくるが、それを踏ん張って耐える真姫は何とか凛に追いついた。凛はキングパンドンに向かって必死に『かよちん!!』と叫んでいる。きっと花陽の安否が気になるのだろう。何度も必死に叫んでいるのだが、キングパンドンの方から(花陽の方からの)反応はない。未だに倒れているままだ。
「かよちん! 返事をして! かよちん!!」
「星空さん……」
諦めずに叫び続ける凛。
当たり前だ、親友が怪獣になってしまったのだ。そのショックは計り知れないだろう。真姫が怪獣になってしまった時も、父親が必死に叫んでいたことを思い出した真姫は、どうにかして凛の言葉が花陽に届かないかと願った。真姫の時も聞こえていたのだ、きっと聞こえているはずなのに。
と、願っていると。
『──』
「──え?」
聞こえた。
微かにだがどこからか小さな声が聞こえてきた。
一体どこからなの? と辺りを見回す真姫。だが、周囲に真姫達以外の人影はなく誰も見当たらない。
「星空さん、ちょっと静かにして」
「西木野さん何を言って──!!」
「いいから!!」
強い口調で凛を黙らせると、全神経を耳に集中させる。ギンガとテレスドンの衝突の音が大半を占めてしまうが、何とかその音以外の音を探す。
どこだ? どこから聞こえる?
と、神経を集中させていると、今度は確かに聞こえた。
『──どうして、私は弱いの』
(聞こえた!!)
声は上げない。すぐさま次にどこから聞こえているのか探すと、その手に持っていたギンガライトスパークから聞こえている。今、両手を耳に当てているのだが、確かにギンガライトスパークを持つ右手、つまり右耳の方にはっきりと聞こえてくる。
「聞こえた! 星空さん! これに向かって呼びかけて! これならきっと小泉さんに届く!」
「ホント!?」
「ホントよ!」
凛は真姫からギンガライトスパークを奪い取るかのように詰め寄ると、ギンガライトスパークに向かって叫ぶ。
「かよちん! 聞こえる? かよちん!!」
『どうして、どうして私は弱いの』
聞こえた。
凛の呼びかけに反応するかのようにギンガライトスパークが微かに輝いて行くと、凛にも花陽の声が聞こえてきた。
二人は顔を合わせると、互いに頷き合う。
「かよちん、聞こえる!? 凛の声が聞こえる!? 返事して!!」
「小泉さん! 聞こえているはずよ! このままだとあなたは『闇』に飲み込まれる!! お願い返事して!!」
二人は必死にギンガライトスパークを通して花陽に呼びかけるが、二人への返事が返って来る様子はない。どれだけ必死に叫ぼうと、返って来る言葉は一緒。
『どうして? どうして私は凛ちゃんや久乃千紗さんみたいに「強い心」がないの?』
「強い、心……?」
「どういうことにゃ?」
「どういうことって、あなたの名前が出てるじゃない。心当たりないの?」
真姫に問われ、うーんと首をひねって考える凛。必死に記憶を探るが、体の芯を揺らすほどの衝撃が二人の体を襲う。振り返ってみると、近くにパワードテレスドンが倒れこんでいた。追撃を仕掛けるためにのしかかるギンガだったが、その重量ある腕を振るいギンガを押し返す。
起き上がるテレスドンはその際に真姫と凛を見える。
その赤い瞳に見られ、二人の体は硬直する。
だが、テレスドンの背後を取ったギンガがその背中にのしかかり、地に伏せるテレスドンを無理やり立ち上がらせる。右腕を大きく振りぬきその頭部を撃ち抜く。
大きくよろめくテレスドン。
ギンガは一度真姫と凛に振り返り、それからキングパンドンを見てもう一度二人を見る。
そして、ゆっくりと頷いた。まるで「そっちは任せたぞ」と言っているような気がした真姫は、頷き返す。
真姫の意思が伝わったのか、ギンガはテレスドンの方へ振り返ると駆け出す。
怪獣はギンガが倒してくれるだろう。
自分達の仕事は、怪獣となってしまった花陽の心に問いかけ、正気に戻すこと。幸いキングパンドンが暴れる様子は見られず、この距離に居ても大丈夫だろう。安全だとはい言えないが、ギンガライトスパークで届くのは声だけ。花陽自身に現れる変化を感じ取るためにはキングパンドンに現れる些細な変化を見つけるしかない。
(でも……どうやって小泉さんを助ければいいの?)
ギンガから「任せたぞ」を言われた気がしてつい勢いで頷いてしまったが、どうすれば花陽を助け出せるのか、実のところ真姫にはわかっていない。
今わかることは、ギンガライトスパークを使えば花陽とコンタクトをとれるかもしれない、ということだけ。
しかし、未だに向こうからの反応がないため、こちらの声が聞こえているのか不安なところである。
(たしかあの人、『心の闇』がどうのって言ってたわよね? つまりそれをどうにかすれば小泉さんを助けることが出来るはず。私の時みたいに)
真姫はキングパンドンを見上げながら思考を巡らせる。
(私の時は『夢に対する悩み』が原因だった。小泉さんの場合は、『心の弱さ』が原因なのかしら……)
先ほど花陽は『どうして私は弱いの』と言っていた。自分の場合と照らし合わせれば、おそらく花陽が怪獣になってしまった『心の闇』の原因はそれだ。となれば、今朝の自分のように誰かが彼女の『心の闇』を振り払えばいい。
『夢に悩んでいた』自分に、『答え』を教えてくれたリヒトのように、今度は真姫が小泉花陽の心を助ける番だ。
「星空さん、たぶん小泉さんは『自分が弱い』っていう思いを肥大化させられて、怪獣になってしまったはずよ」
「弱いって、かよちんは弱くないよ!」
「あなたはそう思っていても、小泉さんはそう思っていた。おそらく自分に自信がないことを『自分の弱さ』だと思っていたのね」
真姫は、一度視線を凛へと向ける。
「どうしてって思ってる顔ね。でもそういうものなの。私も経験したからわかる。どんなに小さなことでも、一度ああなってしまうと、自分でも制御できないくらいにそれしか見えなくなってしまうの。きっとあの子もそう、今の彼女は自分の心が見えなくなっているはずよ」
「それじゃ、どうやって西木野さんはここに……?」
凛の疑問はごもっともだろう。『私も経験したからわかる』という言葉から分かる通り、真姫も一度怪獣になっている。自分の『夢』に対する『答え』が見つけられず、それを利用されたことが。
しかし今はこうして、無事に『闇』から解放されている。
それはつまり、
「リヒトさんとパパの言葉が助けてくれたのよ」
「言葉が?」
「そう。二人の言葉があったから私は自分の悩みに『答え』を見つけることができた。
小泉さんを助けれるとしたら、あなたの言葉しかないわ。付き合いの長いあなたの言葉なら、きっと小泉さんの心に届くはずよ」
「凛の、言葉で」
真姫はその手に持つギンガライトスパークを凛の前に差し出す。少し戸惑った様子を見せる凛。
当たり前だ、自分の言葉で花陽を助けろと言われても、どう声を掛ければいいのかわからない。それでも、それしか方法がないのか真姫は力強く頷いてきた。それを見た凛は覚悟を決めると頷き返し、真姫の手からギンガライトスパークを受け取った。
☆☆☆
凛は一度キングパンドンを、いや、親友の姿を見る。
怪獣となってしまった親友を助けられるのは自分だけ、そのとてつもないプレッシャーに押しつぶされそうになる心を、何度も深呼吸することで落ち着かせる。
過去に陸上記録会で感じてきたプレッシャーとは全く違う、重く押しつぶされるほど体にのしかかってくる感覚。親友を助けなければ、という重圧が凛の体に重くのしかかってきた。
深呼吸を何度繰り返しても、心臓の鼓動は早くなっていき嫌な汗が流れ始める。
ゴクリ、と息を飲んだ時、凛の肩に真姫の手が優しく置かれた。
「西木野さん……」
「大丈夫、あなたならできるわ」
「……うん」
真姫の言葉を受け取ると、自然と凛の体が軽くなった。
凛は最後の深呼吸を終えると、両手でギンガライトスパークを握る。
「かよちん、凛の声、聞こえる?」
凛は優しい声音で花陽に向かって語り掛ける。
「かよちんは自分のことを『弱い』って思ってるみたいだけど、凛はそんなことを思わない。かよちんは、ちゃんと『強い心』を持ってるよ」
『……うそだよ。私にはそんな心はない』
反応があった。
花陽から返事が返ってきたことに凛と真姫は顔を見合わせ、お互いにこの作戦に手ごたえがあることを感じ取った。
向こうから反応があるということは、こちらの声が聞こえているということ。そしてやはり『心の弱さ』が今回の原因であることを証明していた。
より一層凛に緊張が走るが、ゆっくりと、落ち着いて言葉を続ける。
「うんうん、かよちんはちゃんと強い心を持ってる。
──『優しさ』っていう一番強い心を」
『優しさ……?』
「そうだよ。優しさ。
だってかよちん、学校で毎日アルパカの飼育とお花の水やりをやっているでしょ? 次の授業が体育で急がなきゃいけない時でも、毎日忘れずに、学校がお休みの日でもアルパカのお世話をしに行ってる。
これって、かよちんが『優しい』っていう証拠じゃないかな。
花とアルパカを大切に思う『優しさ』がないと、毎日忘れずにできないよ」
語りながら凛は、毎日忘れずに花の水やりとアルパカの飼育小屋に向かう花陽の姿を思い返していた。次の授業が体育だとしても、急かす凛に笑顔で返しながら飼育小屋に向かう親友に、何度ため息をこぼしたことか。
授業の合間にはいつも小さなじょうろを持って陽気に鼻歌を歌いながら水を上げている親友。太陽の光も気にしている当たり、親友がいかに花を大切にしているのかわかる。
もちろん、凛の語りを聞いている真姫も頷いている。
「それに小学校の時、凛のスカート姿をバカにした男子を怒ってくれたんだよね。凛、とっても嬉しかったよ!! ありがとう!! かよちん!!」
満面の笑みを浮かべ、礼を述べる凛。
バカにされた友ために怒ってくれる、これほど優しさに満ち溢れた友人はそうはいないだろう。
そんな親友を持てて、星空凛という少女は幸せ者だ。
さらに、いつも内気な親友が怒ったことが大きい。きっと、その時の花陽の心には彼女の言う『強い心』があったに違いない。
優しさから込み上げてくる『強い心』が。
「だからかよちんは弱くない。優しいんだよ。優しさからくる『強い心』をちゃんと持ってる。かよちんは気づいてないけど、ちゃんと持ってるんだよ『強い心』。だから、自分が弱いとか言わないで!! かよちんは強い! 強い心を持っている子にゃ!!」
『……でも……。でも……それなら私は──!!』
「──スクールアイドルを始めてる、って言いたいのかにゃ?」
『──っつ!?』
花陽が息を飲んだのを、凛は感じ取った。
「かよちん、凛思うんだけど、『強い心』はきっとみんながもってるモノにゃ。凛も、西木野さんも、一条さんも、そしてさっき言った通りにかよちんも。みんながみんな持っているモノ。だから、かよちんに必要なのは『強さ』じゃないんだよ」
『強さじゃ……ない……?』
「そう、強さじゃない。
かよちんにならわかるはずだよ。かよちんの大好きなアイドルがその言葉をタイトルにした歌を出しているから。
そしてその歌は凛も大好きな歌だよ。
大会で記憶を更新できなくて、自信を無くした凛に向けてかよちんがくれた曲。きっとその曲を思い出せば、かよちんも『自信』を持てる。
凛が失くして自信を取り戻せたように。
二人が大好きな曲。
これで思い出せなかったら、かよちんの
最後にわざと挑発するように言う凛。
これは花陽のある性格を呼び起こすためだ。
言葉で語りかける。
それを凛なりに考え、花陽の心を、意識を呼び起こすための言葉を探すと、おのずとあるジャンルのことが浮かび上がってきた。
そしてそのジャンルは、彼女の
花陽は『自信がない=弱い』ということから『強さ』を求めた。
しかし凛は、花陽に必要なのは『強さ』ではないと思っている。
だってすでに花陽には『優しさ』という『強さ』を持っているのだから。
ならば花陽に何が必要なのか、危機的状況である今凛が直接教えるべきなのだろうが、それでは意味がないと凛は思っていた。
もしかしたら、凛がよく見る特撮番組のこういった場面に影響されているのかもしれない。
たとえそうだとしても、今は花陽に見つけてほしい。答えはすごく簡単なものだから。
そして、
『──私に足りないもの、それは──』
花陽が答えを言おうとした時だった。
耳を塞ぎたくなるビルの倒壊音とガラスの割れる音、ギンガがビルを巻き込んで倒れた音が花陽の言葉をかき消してしまった。
「ギンガ!?」
真姫がギンガの身を案じる。
凛も真姫の叫びを聞くとそちらの方に振り返り、ギンガがビルの瓦礫の中から起き上がろうとしている姿を発見し、続いて怪獣の方を探すが姿はなかった。
嫌な汗が流れるのと同時に、地面が揺れ、地中の中からパワードテレスドンが凛と真姫の傍に出現した。
怪獣が近くに出現したことにより二人は息を飲む。言い表すことのできない恐怖が二人の体を襲い、動くことができない中テレスドンの手が二人へと伸びる。その手は二人を捕まえようとしているのか、それとも握りつぶそうとしているのか、ユーカは『生け贄が必要』と言っていた以上後者ではないと思う二人だが、その手はゆっくりと二人に迫って来る。
「い、いや」
尻もちを付いてしまった真姫に凛は駆け寄る。
しかし、この現状を打破できる力を凛が持っているわけでもなく、ただ迫る手を見つめるしかなかった。
倒れるギンガが手を伸ばす中、
「いやあああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!」
真姫の悲鳴がこだました。
――果たして、花陽が見つけ出した答えとは?
――そしてギンガはパワードテレスドンに勝てるのか?
次回、いよいよ第5話のクライマックス!
サブタイトルは予想しやすいと思います(笑)
テレスドンのパワーアップの仕方にツッコミが来るのが怖いよ……(震え声)