ギンガ・THE・Live!   作:水卵

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先週更新できず、すいませんでした。
思いのほかシーンが上手く思い浮かばず、中々筆が進まなかったもので……。
それでは「其の3」になります。


第三章:叫ぶ想い

 ☆(矢澤にこ)

 

 

 ──痛い。

 せっかく明美を見つけて天罰を下そうとしたのに、光がぶつかってきたせいで邪魔された。操っていた怪獣は倒れちゃったし、私のいる空間も大きく揺れた。倒れるほどの揺れじゃないから別に何ともないけど、せっかくいいところ邪魔されたのは腹が立った。

 

『……まさか本当に、お前が闇に呑まれるなんてな』

 

 聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 操っていた怪獣を起こして光が落下した方を向くと、煙の中にこちらに背を向け、肩越しに見てくる巨人がいた。赤い身体に銀色のライン、クリスタルが特徴である巨人は、ゆっくりと立ち上がってこちらに振り返ると、光る瞳で私を見てくる。

 

『どうして、お前が』

 

 声は巨人から──、いいえ、巨人の中かしら。私は目を細めて巨人の中をのぞくと、光の空間に立っている一条リヒトを見つけた。朝会った時と同じパーカーを着ているけど、この雨の中傘もささずに外出していたのかびしょ濡れだった。髪から水滴が光の空間に落ちるけど、一条は気にせず険しい表情で私を見続ける。

 

『……』

 

『……』

 

 しばらくの間、私達は互いに睨み合う。

 私はどうして邪魔したのか、そう言う意味を込めて。

 向こうから感じる視線には「何やってんだ」という怒りを感じる。

 

『悪いけど、アンタに構ってる時間はないの。消えて』

 

『ふざけるな。お前、自分が何しようとしてたのかわかってるのか?』

 

『別になんでもいいでしょ。アンタには関係ない。これは私とアイツの問題なんだから』

 

『お前がその姿になってる時点で、俺は関係者だ』

 

『はぁ? 何言ってんの? 私がどんな姿になろうがアンタには関係ない、そんなこともわからないの?』

 

『確かにお前とあの子の問題に関しては無関係だ。だけどな、お前がその姿になってるとなると話が変わって来る。いいか? 今のお前は「闇」に惑わされているだけだ。「闇」に心を操られ、取り返しのつかないことをやろうとしてる。俺はそれを止めるためにここに来た』

 

『……つまり、私の邪魔をしに来たってわけ?』

 

 私がそう言うと、一条の眉間による皺がさらに深くなった。

 

『お前──!』

 

 一条が何かを言おうとしたけど、邪魔をするとわかればもう言葉はいらない。私は右手を横に振るった。それを合図に操っている怪獣の口から光線が放たれ巨人を襲うが、すぐに反応されて躱されてしまう。

 

『邪魔しないでくれる』

 

『邪魔するに決まってんだろ!! お前は人を殺そうとしてんだぞ!!』

 

 一条の咆哮と共に巨人はすぐに体勢を立て直して、高速移動で接近してきて抑え込まれてしまう。

 

『何よ……』

 

『?』

 

『何も知らないアンタが邪魔しないでッ!!』

 

 無理やり抑え込みから抜け出すと、タックルで巨人を吹き飛ばす。その衝撃は一条にも伝わるみたいで、小さな呻き声が聞こえてきた。続けて腕を振るって巨人を叩く。私の邪魔をするのなら先アンタを倒す!! 

 

 

 

 

 ☆(高坂穂乃果)

 

 

 

 

 しばらく睨み合っている様に見えた怪獣とギンガさんが突然戦いを初めて、怪獣の意識が明美先輩から離れた。その隙に志藤先輩と由良先輩が明美先輩の元に駆け寄る。

 

「明美! 大丈夫!?」

 

「明美ちゃん!」

 

「二人ともちょっとうるさい……。大丈夫だって、別に大きなけがはしてないから」

 

 明美先輩は立ち上がってスカートやブレザーに着いた汚れを払おうとしたけど、雨に濡れたせいで汚れがしみ込んでしまっていた。舌打ちをして前髪をかき上げると、ギンガさんと怪獣の方を見上げる。

 ギンガさんと怪獣の戦いは、怪獣の攻撃を避け続ける形になっていた。怪獣から繰り出される攻撃を、弾いて、躱して、ギンガさんはあくまで押したり攻撃を受け流す勢いを利用して自滅させるなど、受け身の戦い方だ。

 もしかしてギンガさん、あの怪獣がにこ先輩だって知ってるの? 

 

「明美、逃げるよ。にこのことはあの巨人に任せて──」

 

「──アイツ、本気でアタシを殺そうとしてた」

 

 私がギンガさんの戦い方に疑問を感じている中、この場からの非難を提案した志藤先輩の言葉を遮って、明美先輩がポツリと言った。

 

「アタシ、そこまで恨まれるようなことしたっけ?」

 

「…………」

 

「たぶん、明美先輩が部活を辞めたことが原因だと私は思います」

 

 沈黙してしまった志藤先輩の代わりに、私が答えた。すると明美先輩は、何の感情も読めない視線を私に向けてきた。その瞳はどこか冷たくて、何を思っているのか読み取れない。だから私は詳しい説明を求めている、と勝手に解釈して続ける。

 

「さっき真姫ちゃんから聞いたんですけど、怪獣になっちゃう理由って『心の闇』が原因なんだそうです。悩みだったりトラウマだったり、心の闇は人それぞれで、にこ先輩の場合は明美先輩達が部活を辞めていったことが『心の闇』なんじゃないんでしょうか」

 

「……」

 

「明美先輩達が退部した時、とてもショックだったんだと思うんです。一緒に頑張って来たのに、突然部員が辞めちゃって……。その時のショックが、辛さが、寂しさが、今もにこ先輩の心の中に残っている。それがきっと、にこ先輩を怪獣にしたんだと思います。そして怪獣になったら、その『闇』が肥大化させられて、自分でも制御できないくらいにそれしか見えなくなる。ただ湧き上がってくる感情にしか従えなくて、感情の制御が効かなくなるって言ってました。だからにこ先輩はその時のショックから、明美先輩を襲ったんだと思います」

 

 私は怪獣になったことがないからわからないけど、真姫ちゃんと花陽ちゃんが言うに、目の前が真っ暗になって自分が自分じゃなくなる感覚がするみたい。

 

「……なにそれ、つまりアタシは部活を辞めたことを理由に殺されそうになったってこと? 

 ──―ふざけないで!! 部活を続けようが辞めようがアタシの勝手でしょ! なんでそんな理由で殺されなきゃいけないのよ!!」

 

「明美……」

 

「楽しんでたのはアイツだけなのよ! 周りは飽きてた、冷めてた! それに気づかないでアイツは一人突っ走って行って、そんなの付いて行けなくなるに決まってるでしょ!!」

 

 と、明美先輩達がそこまでいった時、まるでその話を聞いていたかのように怪獣が雄叫びを上げてこちらに迫ってきた。全員が恐怖で固まる中、ギンガさんが間に入って怪獣を抑える。それでも怪獣は明美先輩に噛みつくように吠える。

 怪獣から威嚇されているというのに、明美先輩は逃げないで逆に一歩前に出る。そして怪獣に、違う、にこ先輩に向けて言う。

 

「なに? アタシの言ったことの文句でもあるわけ? でも事実でしょ! アンタは周りなんて見ないでひとり突っ走ってた! こっちのことなんか全然考えてない! アタシ達はプロじゃない! プロを目指す研究生でもない!! ただアイドルが好きだっただけ!! それなのにアンタはこっちの調子なんか無視して走り続けた! 付いて行けなくなって当たり前でしょ!? 

 それだけじゃない! アタシが一番許せないのは由良のことよ! 由良が音痴だって知りながら、声が可愛いからって理由でステージに立たせて、由良が陰でどんなこと言われてたか知らなかったなんて言わせない! アンタは由良を利用したんでしょ! 音痴な由良をステージに立たせて、自分の方が上手く見えるように仕組んだんでしょ!?  

 結局は全部自分の為! 周りはアンタの飾り! アンタは一人でアイドルをやってるの! 周りなんかどうでも良くて、アンタは自分一人のため! 一人だけで満足するためにアイドルをっ──」

 

 

 

「──―にこ先輩はそんな人じゃありません!!」

 

 

 

 

『!?』

 

 明美先輩の言葉を遮るために、私は大声で叫んだ。みんな驚いて、明美先輩は私を睨むように見てくるけど、私は負けない。にこ先輩は絶対にそんな人なんかじゃないんだもん!! 

 

「にこ先輩はそんな身勝手な人じゃありません! ちゃんと明美先輩達のことも考えていました!」

 

「そんなことっ──」

 

「──―希先輩が言ってました! 

 明美先輩達とスクールアイドルをやっていた時、にこ先輩毎日が楽しそうだったって。毎日笑顔で、新しい曲や衣装、みんなとのフォーメーションを授業中なのに楽しそうに考えていたって! 一人一人の特徴をノートにまとめて、適した練習法を探してたって!!」

 

「──―え?」

 

「そういえば、明美はクラス違うから知らないけど、一年生の時、よく教師に怒られているところ見たっけ。その子の言う通り、にこは毎日楽しそうにしてたよ。メンバーの特徴をしっかりと考えて、適した練習法、その人に足りないところや伸ばすべき長所をいつもノートにまとめてた。

 由良にだって、歌うのは好きだけど音痴なせいで悩んでいるのを、いつも相談に乗ってあげていた。もちろん陰でなんて言われてたのかも知ってる。だから音痴を直すために毎朝音楽室での練習にも付き合っていた。そうでしょ?」

 

「う、うん。私は歌うのが好きだから。音痴でもステージで歌うのがとても楽しかった。だからニコちゃんと毎日音痴が直るように練習してた。みんなを驚かそうって。ほかにも、体力のことだったり緊張のほぐし方とか、いろいろ教えてもらったよ」

 

「にこは由良を利用してなんていない。だってにこは、誰よりも由良の声が好きだったんだから。由良の歌声は、音痴じゃなくなれば本当にプロを狙えるレベルだって、いつも言ってた。だから由良が音痴じゃなくなれば、私達はどこまでの行けるって。音痴が直ればソロ曲を出す予定だったみたいだよ。

 明美に対してだってそう。明美は運動神経がよくて派手なものを好むから、少しロック調な曲もいくつか、衣装の方も少し大胆なのを考えてたみたい。ほら、明美一年の時からスタイル良かったじゃん? ダンスだって明美の方がダイナミックで明美の特徴を生かしてた。にこは明美が体硬いことを知っていた。だから私にまで柔軟方法を聞いてきたんだよ? 明美の柔軟性がよくなればもっとすごいことできるって」

 

 と、志藤先輩が少し笑いながら補足の説明を付け足してくれる。

 

「でも、そんなの──」

 

「明美も知ってるでしょ? にこの成績。それが何よりの証拠。授業そっちのけで考えてたんだよ、にこは……」

 

「…………」

 

「明美はさっき、にこが一人でスクールアイドルをやっていたって言ったけどさ、この話を聞いてまだそう思ってる?」

 

 志藤先輩がそう言うと、明美先輩は下唇を噛んで拳を握り込んで黙ってしまった。きっと明美先輩は、にこ先輩が()()()スクールアイドルをやっていると思っていたんだ。周りなんか見ないで、自分一人だけで。

 でも実際は違った。ちゃんと周りを見ていて、みんなが輝くように日々考えていたんだ。すごいな、私はまだ自分のことでいっぱいいっぱいで周りを気に掛ける余裕なんてない。いつもりーくんとりーくんのお母さんに助けてもらってる。周りに助けてもらってばっかりだ。私達には助けてくれる人がいるけど、にこ先輩はそれを一人でやっていた。一人でりーくん達がやっていてくれることをやっていたんだ。すごい、本当にすごいよ。だからこそ、にこ先輩がμ’sに入ってくれたら、とっても心強いと思う。

 だからギンガさん! にこ先輩を助けて──―!! 

 

『──────────────────────────!!』

 

 怪獣の咆哮がこだました。

 ギンガさんを横へとなぎ倒した怪獣は天に向かって吠えると、明美先輩に向けて進もうとするが、転がることで受け身を取り、すぐに体勢を立て直したギンガさんに阻まれる。取っ組み合いが始まるけど、攻撃の手に出ないギンガさんがすぐ弾かれる。怪獣の腕がギンガさんを叩き、タックルをして突き飛ばす。

 倒れたギンガさんに覆いかぶさるように倒れ込んだ怪獣は、そのまま馬乗りの要領でギンガさんを叩き続ける。何度も、何度も、一度点に向かって吠えた隙をついて怪獣を横にどかし、脱出する。

 そして立ち上がって構えたギンガさんだったけど、怪獣の姿を見て、構えが緩んだ。

 怪獣は空に向かって吠え続けている。

 雨脚が強くなり始めた。

 その雨脚は、なんだか怪獣の涙のように見える。

 空に向かって吠え続けている怪獣の叫びが、鳴き声に聞こえて、突然ギンガさんに突撃を始めた。

 油断していたギンガさんは反応に少し遅れたけど、避けれないほどではない。なのに、ギンガさんは()()()()()()。吹き飛ぶギンガさん。

 怪獣はすぐに標的を明美先輩に移して走り出す。

 対して明美先輩はこの雨の中、静かに視線を上げて怪獣を見つめるだけ。

 間一髪のところでギンガさんが間に入ったけど、胸のタイマーが点滅を始めた。

 

 

 

 

 ☆(矢澤にこ)

 

 

 

 

『邪魔よッ! どいてッ!!』

 

『絶対にどかないっ!!』

 

『…………なんで……! なんで邪魔するの!!』

 

 私は思いっきり腕を振るった。それに合わせて私が操っている怪獣が暴れるけれど、巨人はすぐに抑え込んでしまう。

 

『……なんでっ!』

 

『お前をこの先に行かせるわけにはいかない!! そんなにあの子と話したいのなら、しっかりと自分の心を取り戻してから話せ!! 今の状態で話し合わせるわけには行けねぇんだよッ!!』

 

 私の本当の心……? 

 そんなの……、そんなの────!! 

 

『……なんで……、……なんでなのよ!! 明美!!』

 

『──―!?』

 

『なんで私を裏切ったの!? 一緒に頑張ろうって約束したじゃん!! アイドル研究部を立ち上げる時、一番最初に協力してくれたじゃん!! なのにどうして!!』

 

『お前っ、いきなり何を──!!』

 

『うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!』

 

『がッ、っつ!?』

 

『なんでなのよ!! どうしてみんな辞めちゃったの!? 私はみんなのこと、ちゃんと考えてたのに!! 三年間、みんなと楽しくスクールアイドルをやりたかったのに!! どうして!? どうしてなのよっ!! 由良が陰で音痴のことをバカにされてるのは知ってた!! だから二人で毎日練習した!! バカにした奴らを見返そうって! それなのに……、それなのにどうして由良も辞めたのよ!! あんなに頑張ってたじゃない! 諦めないで、絶対に音痴を直すって!! なのにどうして!?』

 

『……や、ざ……わ……』

 

『うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 

 

 

 ☆(3rd person)

 

 

 

 

 矢澤にこが叫び声を上げると、雨脚はさらに強くなり、遂には雷まで鳴り始めた。

 雄叫びを上げながら暴れる怪獣──ゾアムルチは何振りかまわず辺りにあるものに攻撃を始める。その行動にはさすがの少女達も命の危機を感じ、その場から離れようとするが、明美だけがなかなか動こうとしない。

 

「明美!!」

 

 奈々が明美の名を呼び、それでも動かない彼女にしびれを切らした奈々は無理やり彼女の手を取った。

 暴れるゾアムルチの姿を見たギンガは何かを察したのか、ゾアムルチの元へ移動すると、その攻撃をその身で受け始めた。

 防御などしない、ギンガはゾアムルチの攻撃を、いや、矢澤にこの『心の叫び』を受け止め始めたのだ。

 それを見ていたローブの男は、

 

「あーあ、そっちの方に転がったか。ま、元々彼女の心は『怒り』よりも『孤独』に対する『寂しさ』の方が勝っていたから、こうなることはある程度予想できたけど……。でもまあいいや。ぐちゃぐちゃな心程、より濃い『闇』を生み出してくれる」

 

 男は視線を、攻撃を受け続けるギンガに向ける。

 

「彼女の『闇』は重いよ? それを受け続けるにはもう時間がないみたいだ」

 

 すでにギンガのカラータイマーは点滅しており、残り時間が少ないことは明白だった。その時間の中で、にこの『心の叫び』をすべて受け止めるなど、不可能だ。

 もちろんリヒトもそれは分かっており、表情には焦りが見える。しかし、何か一瞬考える素振りを見せた後、覚悟を決めると一つのスパークドールズを取り出しリードする。

 その行動には、さすがのローブの男も驚いた。

 ギンガの姿がぼやけ、入れ替わるようにキングパンドンが実体化する。 

 それはつまり、怪獣へウルトライブしたということ。

 

「へー、面白い行動に出たね。確かに怪獣にはライブの制限時間はない。キミの体が持つ限り永遠にライブできる。でもね、怪獣はぼく達『闇』の力を宿しているんだよ? 光であるキミがそれを使うのは、()()()()()()()()()()

 

 ゾアムルチの攻撃がキングパンドンを襲う。

 もちろんリヒトは避けるなどせずにその一撃を食らうが、

 

『がっ、が、ああああああああああぁぁッッ!?』

 

 先ほど以上のフィードバックダメージがリヒトの体を襲う。

 ギンガにウルトライブしている時以上の激痛に表情を歪めるリヒト。

 ローブ男の言う通り、怪獣のスパークドールズは『大いなる闇』の力の一部が封印されている。それはつまり、今リヒトは『闇の力の一部』を使っているといっても過言ではない。光の力を使うリヒトが、相反する闇の力を使うということは、毒を受けながら戦っているようなもの。普段リヒトを守っている光が進行してくる『毒』からリヒトの体を守っているため、フィードバックダメージからリヒトを守るための光が手薄になる。

 つまり、怪獣へのライブは制限時間がない代わりにダメージフィードバックが強くなるのだ。

 もちろん何かしらのリスクがあることを覚悟していたリヒトは、先ほど以上のダメージが体を襲う中、歯を食いしばって耐える。

 

『(耐えろ、耐えるんだ! 矢澤が心に受けた傷に比べれば、寝て治るこんな傷どうってことない!! 今、アイツは自分の心で叫んでるんだ! こんなところで倒れてたまるか!!)』

 

『来い矢澤っ!! 俺がお前の悲しみ、辛さ、寂しさ、全部受け止めてやる!! そんな闇に惑わされた心じゃなくて、自分の心であの子と話せるように、お前が今までため込んでいたものすべてを吐き出せ!!』

 

 リヒトは矢澤にこのすべてを受け止める覚悟で、にこのゾアムルチの攻撃(心の叫び)をその体で受け止め続ける。

 何度も悲鳴が上がりそうになるのを飲み込み、絶対に弱いところを見せない。

 何度も膝が付きそうになるのを足に力を入れて耐える。

 何度も脳が揺さぶられ意識が飛びかけるが、気合と根性で意識を繋ぎ止める。

 傍から見ればただのサンドバック状態だ。防御もしないで敵の攻撃を受け続ける。さすがの穂乃果達も攻撃を受け続けるキングパンドンの姿を見て、胸が締め付けられるように苦しくなる。だが、それ以上に叫び声を上げて攻撃をするゾアムルチの姿の方が、心を苦しめられた。

 きっとあの叫びはにこ先輩の心の叫びだ。

 ──泣いている。誰もがそう感じていた。

 中でも耳の良い西木野真姫は、その声から感情を読み取れることができるので、人知れず一滴の涙が頬を伝っていた。

 すでにリヒトの足はふらついている。いくら時間制限がないとはいえ、リヒトの方には限界があるのだ。体を襲う強烈なダメージフィードバックに、もうすでに体がボロボロだった。

 何かしらの拍子に口の中を切ったのか血の味が広がって来る。意識がふらついて視界が回る。

 だが、まだ倒れるわけにはいかない。

 目の前で泣いている女の子の叫びを、すべて受け止めるために。

 

 

 

 

 ☆(矢澤にこ)

 

 

 

 

 ……ねえ、やっぱり私のせいでみんな辞めてったのかな? うんうん、絶対にそう。これじゃ、あいつらと一緒にアイドルをやったとしても、結局また──。

 

『それは絶対にないから安心しろ』

 

 え? 

 

『あいつらは絶対にお前を裏切らない。これは確信をもって言える。たとえお前の意識がどんなに高くても、あいつらは必ず付いて行くさ。つか、その前にあいつらの目標は「廃校阻止」だぜ? お前の志しなんか簡単に超えてくるさ』

 

 ……そうね、廃校阻止なんて普通じゃ成し遂げれないもんね。

 

『そそっ。だから、今度はあいつらの手、取ってみろよ。絶対に後悔はしないからさ』

 

 わかったわよ。

 ……その代わり、一つお願いがあるの。

 

『なんだよ』

 

 ……私の心、助けて。

 

『──了解』

 




すいません、あと一つ続きます。
続けてもよかったのですが、これ以上書くと長くなりそうなので区切りのいいココでいったん切りました。
次回こそ、第6話の最後になります。
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