ギンガ・THE・Live!   作:水卵

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第二章:彼女たちの力

 男性店員から向けられる(妬ましい)視線を無視してパーティールームへと向かっていくリヒト。すたすたと歩いて行くリヒトの手には、マイクスタンドやタンバリン、さらには黒のシルクハット(どこのかは不明)が握られており、『センター争奪戦』というよりリヒトが一番楽しもうとしている様に見える。正直言って後を付いて行く少女達は半分呆れていた。

 

「ねぇ、かよちん。凛、今凄く帰りたい」

 

「そんなこと言っちゃだめだよっ。せっかく一条さんが用意してくれたんだから」

 

 正直な気持ちを包み隠さず吐露する親友に、慌ててリヒトのフォローに回る花陽。

 なんとこのカラオケルーム、使用料金はリヒトがすべて支払うことになっており、ドリンク飲み放題にアイス食べ放題といった、正直帰るのが気まずいくらいに準備されているのだ。

 

「一条って、昔からあんな感じだったの?」

 

「はい……。こんな風にいつも勝手に何かを考えついて、こっちの了承も得ずに初めて、周りを巻き込んで」

 

「なにそれ……」

 

 海未からの答えを聞いてにこは呆れた。

 しかし海未は、今のリヒトの姿に思うところがあるのか、にこの質問に答えた後少し考えるようなそぶりを見せる。

 

「ただ、今のリヒトさんはどこか無理をしているといいますか、なんか昔とは少しだけ違う気がするんですよね」

 

「どういうことよ?」

 

「私もあまり具体的にはわからないんです。ただ、私が知っている『一条リヒト』さんと、今の一条リヒトさんのテンションでは、振る舞い方が違うというか……」

 

「あ、それ私もなんとなくわかる。なんか固いよね、今のりーくん。ことりちゃんはどう思う?」

 

「私も二人と同じ意見かな。具体的には説明できないんだけどね」

 

 どうやら、記憶喪失前の『一条リヒト』を知っている三人だけが、今のリヒトにほんの少しだけ『違和感』を感じているみたいだ。

 そして三人とも、それがどういったものなのか具体的には分かっていない。わかってはいないのだが、ほんの少しだけ、何かが決定的に違うと感じていた。

 

「おーい、お前ら何してんだよ。早く来いよ」

 

 と、先に部屋に到着していたリヒトが扉から顔を出して早く来るよう言ってきた。

 

「とにかく、今言えることはああなってしまったリヒトさんは面倒くさいですが、付いて行って後悔はしません。それは私が保証します」

 

「海未ちゃんの言う通りだよ。ああなったりーくんは穂乃果以上に面倒くさいって言われてるけど、付いて行って後悔したことは一度もないんだ」

 

「二人の言う通りよ。今のりひとさんは面倒かもしれないけれど、きっとの楽しいことが待ってるから」

 

『…………』

 

 いや、三人が容赦なく罵倒している時点で何も安心できないのですが? 

 と、一年生組+矢澤にこは正直に思った。

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 そこからはもう『リヒト・オン・ステージ』とでもいうべきか。ハイテンションで司会を務めるリヒトの進行に促され、少女達はもう半ば諦めた感じで付いて行った。

 何せ、わざわざマイクスタンドを借りて、少女達が逃げないように部屋の出入り口に立ち、パーカーをマントのようにして、さらにどこから取り出したのかわからない黒いハットまでかぶっている辺り、もう色々本気だ。

 ──どう見たってこの少年が一番楽しんでいる。

 とはいえ、『センター争奪戦』という企画に乗り気ではないとしても、カラオケに来て各々が歌う曲を聞いていれば、自然とワクワクしてくるものだ。しかも本来はみんなで同じ歌を練習しているのに対し、今回は個人の歌声が聞けるのだ。自分が歌いやすい歌声で、歌いやすい歌を歌うとなれば、普段とは違った面が見えてくる。

 中でも花陽が一番だろう。

 

「凄い。花陽ちゃんってこんな声も出せたんだ」

 

「凛ちゃんは知ってた?」

 

「知らなかったです。かよちんは普段からアイドルソングばかり聞いてると思ってたから」

 

 穂乃果が驚きの声を発する隣で、ことりから質問された凛も花陽が悲恋曲を歌うとは思っていなかったのか驚いていた。

 普段の明るくふわふわとした彼女の声とは違い、低音で歌われる曲は自然と心に深く刺さってきた。

 得点は96点。文句のない高得点だ。

 みんなから称賛を送られ、照れる花陽は何度も頭を下げながら席へと戻って行った。

 そして次は真姫。

 これはもう語る必要はないだろう。μ’sの作曲を担当し、過去には『歌姫』と呼ばれたことのある彼女の歌声が、ビブラートやこぶし、フォールなどの加点ポイントを確実にとって行き、98点という最高記録を叩き出した。

 

「…………………………………………………………」

 

 リヒトすらも、司会を忘れて固まっていた。きっとこの時の姿を真姫は一生忘れることはないだろう。

 さて、そして次はラストの海未。

 実を言うとここまで全員が90点台を叩き出しており、さらには最高得点を出した真姫のあとということもあり、非常にやりづらいだろうとリヒトは思っていた。

 しかし、リヒトの予想とは全く逆で音程のズレは全くなく、ビブラートなどの加点ポイントはそれほど多くはないが、安定した歌唱力で歌い切っていた。歌い終わると、まだ人前で何かをすることに慣れていないのか、安堵の息を吐きながら呟く。

 

『はぁ、恥ずかしかったー……』

 

 と、言っている辺り真姫が残していったプレッシャーなど全く感じていない様子だった。

 それは歌う姿にも表れており、海未の歌う姿はとても美しく、その歌声はきれいだった。さらに作詞を始めてからはよく聞く曲でも歌詞に込められた意味を感じ取るように心掛けているからなのか、歌う海未の声には歌詞に合った感情が込められており、この場にいる全員が海未の声音の虜になっていた。

 

『え、みなさんどうかしましたか?』

 

 自分が歌終わった途端に静寂が訪れたため、先ほどの凛とした態度から一転し不安な表情となる海未。

 海未の虜になっていたリヒト達は海未が歌い終わったのだと気づくのに時間がかかった。ハッとなって海未が歌い終わったのだと気づいたリヒトは慌ててマイクを掴む。

 

『いやー、素晴らしい歌声だったよ。さすが作詞のために常日頃からいろんな歌を聞いているだけはあるね。歌詞の一つ一つに込められた「想い」が凄く伝わって来たよ。個人的には演歌とかそういうのを歌うと思っていたんだけど、どうしてこの曲を?』

 

『以前作詞のために聞いたとき、すごく心に伝わって来たんです。それで気に入ってしまって』

 

『なるほど。確かに海未の歌い方にマッチしてたからね。さて、気になる点数の方は──』

 

 全員の視線が画面へと向かい、少し経ってから点数が表示された。

 点数は──93点。

 

『93点! これは全体で四位の記録だ!』

 

「すごいよ海未ちゃん!!」

 

 海未の記録を大声で叫ぶリヒトと絶賛する穂乃果。

 これで七人全員の点数が揃い、真姫:98点、小泉:96点、矢澤:94点、海未:93点、穂乃果:92点、星空:91点、南:90点という結果となった。

 

「凄い凄い! みんな90点台だよ!」

 

 改めて全員の記録を見て喜びの声を上げる穂乃果。

 

「みんな毎日レッスンしているものね」

 

「ま、真姫ちゃんが苦手なところをちゃんとアドバイスしてくれるし、一条さんのお父さんも、怖いけどしっかり教えてくれるから」

 

「凛達みんな、気付いていないだけでうまくなってるんだね」

 

「にこ先輩も、ブランクがあるはずなのにすごいです」

 

「当然よ。これでも練習は欠かさずやって来たわ」

 

 と、各々が自分達の実力に驚く中、リヒトは結果を見ていると別の意味で驚いた。

 

(いやいや、いつも練習してるからってみんな上手すぎだろ!? なんで全員90点台なの!? ちょっと怖いよ!!)

 

 ある程度の点数は予想していたが、まさか全員が90点台を取るとは思っていなかった。彼女達がスクールアイドルを初めてまだ三か月ぐらい。一年生に至っては二ヶ月ほど、にこに至ってはブランクがあるはずだ。それなのにこの点数……真姫とリヒトの父・一輝のアドバイスのおかげか、それとも彼女達の努力か才能か、どちらにせよ彼女達の力に引きつった笑みしか出てこなかった。

 

「それでリヒトさん、全員歌い終わりましたがこれからどうするんですか?」

 

 と、海未が聞いてきた。

 時間を確認してみれば、部屋の利用時間はまだ残っている。残りの種目にかかる時間を計算したとしても、ここで利用時間を全て使っても特に支障はない。

 

「そうだな……。あとはフリーでいいぜ、みんな好きな歌を歌ってくれ」

 

 ハットとマイクスタンドを片付け、羽織っていたパーカーを着なおしながら言うと、

 

「あっ、それなら私りーくんの歌聞きたい!」

 

「え?」

 

 と、穂乃果が言ってきた。

 

「そうね、私達だけが歌ってリヒトさんが歌わないなんて、少し不公平じゃない」

 

「真姫ちゃんの言う通りにゃ! 一条さんも歌ってほしいです!」

 

 真姫と凛が追い打ちをかけてくる。

 

「そうね。一条、私達の番は終わったんだから今度はアンタの番よ」

 

「りひとさん、おねがぁい!」

 

 にことことりの援護射撃も加わり、七人の少女達から「歌って」との視線が向けられる。

 

(か、勘弁してくれ……)

 

 正直、この場にいる少女達が90点台を叩き出している時点で歌いたくない──、というのがリヒトの本音だ。『一条リヒト』は歌が上手かったのか、それとも下手だったのかは聞いたことはないが、以前部屋で歌を歌っているところを母に見られた際、鼻で笑われたことを思い出し、絶対最悪なことになると予想ができた。

 それでも、少女達から向けられる視線に耐えられるはずもなく、渋々曲を探すリヒト。

 

(こうなったら、アレを歌うしかねぇ!)

 

 そしてリヒトが選曲したのは、記憶喪失後に聞いてお気に入りとなったラブソング。今現在リヒトが歌詞とメロディを覚えているのが、これしかない。

 だがこの曲、男性アーティストが歌っているのだがキーが高く、リヒトの低い地声で歌うのはまず無理な曲だ。無理やり高い声を出せば何とかなりそうなのだが、カラオケで歌ったことのないためどのぐらいのキーなのかわからない。何個かキーを下げようかと思ったが、それでは逆におかしくなると思い、大人しく原曲キーのまま予約ボタンを押した。

 画面にはリヒトが選曲したタイトルが表示され、花陽が「この曲知ってる」と言葉を漏らす中、リヒトはマイクを掴み息を吸う。

 

(大丈夫、メロディーは覚えてる。あとは声のトーンに気を付けて、歌うだけだ。大丈夫、俺の父親は元アイドルだぞ? 歌手だぞ? きっとのその才能が『一条リヒト』にも受け継がれているはず──!!)

 

 母親が鼻で笑った光景が呼び起こされるが、それを振り払いリヒトは歌った。

 そして──、

 

 

 

 

 ──―78点というその場に限っては悲惨な結果となり、一人膝から崩れ落ちたのであった。

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 場所は変わってゲームセンターのダンスゲーム機前。リヒトが企画した『センター争奪戦』の第二種目は『ダンスゲーム』であり、どうやらこれを使って勝負するらしい。

 カラオケに続いてダンスゲームとは、ゲームと言っておきながら同時にメンバーの歌唱力、パフォーマンス力がどこまで上達しているのかを調べようとしている辺り、ちゃんと考えた上で種目を決めているようだ。

 ──と、推理する海未はカラオケでの悲劇から未だ立ち直れずにいるリヒトに変わり、進行役を務めていた。進行役、といってもただ次に踊るメンバーを指名して、その結果をメモするだけであり、リヒトのようにハイテンションで進行するわけではない。あれはリヒトだけの特権みたいなものだろう。

 

「次は、凛ですね」

 

「にゃー、凛は運動は得意だけど、ダンスは苦手だからなー」

 

「何言ってんのよ。アンタの身体能力ならこれくらい楽勝でしょ」

 

「ファイトだよ! 凛ちゃん!」

 

 星空(ほしぞら)(りん)

 まず間違いなくμ’sの中で一番に体のバネがしなやかで運動神経抜群の少女。しかしどうやらダンスは苦手らしく、フォーメーション練習でも周りに比べて苦戦していることが多い。さらに彼女はこのゲーム初体験な為、不安の方が大きいようだ。

 しかしいざ曲が始まると、ステップは少々拙いものの優れた運動神経、反射神経を生かして逃さすステップを刻んでいく。ダンスの見た目ならば評価はいま一つだろうがこれはゲーム。上から落ちてくる矢印通りのステップを刻むゲームなのでどんなに見た目が悪くてもステップさえ踏めればそれでいい、そんな感じだ。

 また、彼女は体で覚えるタイプでしかも呑み込みが早いのか、中盤では拙かった足取りが軽やかになりつつある。終盤になればはじめほどの拙さが見受けられない。

 蓋を開けてみれば『AA』という今日一番の高評価を叩き出していた。

 

「凄いよ、凛ちゃん!」

 

「えへへ、まさか自分でもここまでできるとは思ってなかったよ」

 

「ほら、にこに言った通りじゃない。アンタは運動神経が良い、バネだってしなやかなんだからステップを覚えればもっと高い点数を狙えるわよ」

 

 花陽、にこから始まり穂乃果達からも凛へ賞賛の声が送られ、本人は照れながらも表示された結果を驚きの眼差しで見ていた。

 

「へー、すごいな、凛」

 

 と、復活したリヒトからも賞賛の声が送られる。

 

「リヒトさん、復活したんですね」

 

「まあ、まだ若干落ち込んでるけどな」

 

 と、海未に答えるリヒト。見てみれば最初はいつもより強く外に跳ねていた髪も、今では少しだけ力の無いように見える。

 

「仕方ありませんよ。あの曲は難しいですから、奇麗に歌えて凄かったですよ」

 

「ありがとな、小泉」

 

「そもそも、あの曲を選択したアンタの自業自得ね」

 

「仕方ねーだろ。あれしか覚えてねーんだから。くそっ、記憶喪失じゃなかったらもっと高得点だったかもしれないのに……」

 

『…………』

 

「おい、そこの二年生組はなぜ黙る」

 

 リヒトから視線を気まずそうに反らした二年生組。その反応から見るに、どうやら『一条リヒト』はダンスの才能はあっても歌の才能はなかったようだ。

 新たに判明した事実にショックを受けながらも、リヒトは現在どこまで進んだのか海未に確認を取る。

 

「えっと……、花陽が『C』で穂乃果が『A』、ことりと真姫は『B』か」

 

 海未に手渡されたノートを見ながら現状を確認していくリヒト。

 今度は大方予想通り、といった形だ。普段の練習においても花陽は周りに比べて疲れるのが早く、その次に体力のないことりの方は経験の差で評価が高かったのだろう。それとも彼女の並外れた動体視力と空間把握能力が良い結果をもたらしたのか、ゲーム最中のことりを見ていないリヒトには判断できなかった。

 一方で『A』を取った穂乃果の結果は納得できる。真姫もどちらかといえばダンスは得意な方ではないが、『B』を出している辺り踏ん張ったというところか。

 

「で、凛が『AA』で残すは海未だけか」

 

 普段の練習ではダンスを苦手とする凛でも、ゲームとなれば話は別なのかメンバー内で一番の高評価を出している。

 

「何気にさっきと同じ感じだな」

 

 と、少し意地の悪い笑みを浮かべているリヒト。

 先ほどのカラオケも最後に歌ったのは海未であり、その前に歌ったのは真姫だったりする。全員が90点台、しかも自分の前の人が98点という最高記録を出している中で歌うのはなかなかのプレッシャーだったろう。

 そして今回も同じで最後に踊るのは海未、そして前に踊った凛はメンバー内で最高記録の『AA』。この状況は大きなプレッシャーとなって海未にのしかかっているはずだ。

 

「えぇ。ですが、このくらいのプレッシャーは弓道の試合で何度か経験しています。別に今更動揺するほどではありませんよ」

 

 しかし当の海未はリヒトの予想とは裏腹に、凛ッとした表情でゲーム機へと行く。その姿はとても美しく、同時に彼女の中に力強い意思があることを感じられ、思わず見惚れてしまうリヒト。以前穂乃果からこの姿の海未は異性のみならず同性すらも虜にするといっていたが、正にその通りだ。

 背筋が伸び、静かに呼吸を整え集中力を高めていくその姿は、一つ一つの行動に『美しさ』があった。

 やがて、海未の踊りが始まる。

 凛のダンスがまだ記憶に新しいからなのか、無意識に比べてしまうリヒト。いや、無意識でなくとも自然と比べてしまうのかもしれない。

 凛のダンスを『動』とするならば海未のダンスは『静』と言える。きっと彼女の実家が関係しているのだろうが、海未のダンスはどちらかといえば派手ではなく『繊細』なことに重点を置いている。選曲も大人しめのものを選択しており、正に海未らしいといえる。

 動きが少ない、と言う訳ではなく一つ一つが丁寧と表記した方が正しいだろう。

 だが、それは同時に──。

 

「(なあ矢澤、お前はどう見る?)」

 

「(何よ急に)」

 

「(海未のダンスだ。これはゲームだからいろいろ違いはあるかもしれないけど、クセは現れる。いつもお前が見ている海未のダンスと今のダンス、感じるものがあるだろ?)」

 

 小声でやり取りをするリヒトとにこ。

 にこはリヒトの言葉の意味を理解しているのか、少しの間だけ考える間を置くと、

 

「(動きが小さいわね。『START:DASH!! (スタダ)』は踊り慣れたのか感じなくなったけど、丁寧さを意識するあまり動きが小さくなってる。丁寧に踊ることは良いことかもしれないけど、それで動きが小さくなるのはダメね)」

 

 おっしゃる通り、とリヒトは思った。

 海未は動きの丁寧さを意識するあまり、動きが小さくなることが多い。踊り慣れたものはそうでもないが、初めて踊るモノや一人で踊る際は(緊張も関係しているだろうが)動きが小さくなる。

 

(ま、それでも初めての頃よりはよくなってる。この調子なら大丈夫だろう)

 

 海未のダンスが終わり、評価が『A』と表示されたところで、リヒトは一旦考えるのを止めた。称賛の声を送ろうと海未のもてぇ近づいたところで、クルリと向こうの方が振り返ってきた。

「どうした?」と疑問に首を傾げるリヒトに海未はジト目を向けて言う。

 

「リヒトさん、視線が怖いです」

 

「え?」

 

(視線が怖い? なにを言っているんだ?)と思っていると、後ろから穂乃果を筆頭に海未の言わんとしていることがわかるのか、

 

「確かに、りーくんが人のダンスを見るときの視線って怖いよね」

 

「私達はもう慣れたけど、花陽ちゃん達はまだ脅えているから気を付けてね」

 

「そうだよ。かよちんいつも『ダンス練習の時一条さん怖い』って言っているんだよ」

 

 と、次々と言われた。

 リヒトは特にそんなことを意識しているわけではないのだが、まさか視線が怖いと言われるとは……。

 

「……そうなのか?」

 

 リヒトが花陽に問いかけると、花陽は気まずそうに笑顔を浮かべたのちに小さくうなずいた。

 

「うそ……」

 

「アンタ、無意識でやってたの? ソレ」

 

 呆れたように言ってくるにこ。

 周囲から向けられる視線に逃げるように顔を背けながら振り返ってみると、彼女たちのダンスをしっかり見ようと『見る』ことに集中しているのは確かだが、まさかそんな風に見えていたとは。

 

(まあ、見すぎてた、と言われたら確かにその通りなのかもしれないけど……)

 

『…………』

 

 またも少女たちから向けられる視線。

 

「わ、悪かったよ……?」

 

 最後の方で疑問形になってしまったのは、別にワザとではない。

 謝罪をするために花陽の方を向いた時に、その視線に映った人物がリヒトの言葉を疑問形にしたのだ。

 その人物は迷いのない足取りでこちらにやってくる。

 リヒトの視界に広がる光景の中で、一点だけ浮かび上がっている人物は──、

 

 

 

 

 ──―髪も、肌も、服も、全てが雪のように白い少女だ。唯一、その赤い瞳で一条リヒトを捉えながら、少女はこちらへと歩いてくる。

 

 

 

 

 




今回の話は区切りどころが難しい。
自分の掲載方法的に一話丸々書き上げ手からの方が良くね? と思えてきた。

さて、次回其の③へと続きます。
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