ギンガ・THE・Live!   作:水卵

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今回はキリがよく4,000字ほどです。
あと、なんか色々出てきてます。


第三章:追いかけっこ

「まさか、お主がやってくるとはのう。大学の方は良いのか?」

 

「それより優先度が高いからここに来たんですよ」

 

 そう言って、久しぶりの再会であるにも関わらず、少しだけ面倒くさそうな表情を浮かべている女性。

 名前は稲森景子(いなもりけいこ )。『榊家』同様特殊な家系である『稲森家』出身の女性であり、以前リヒトが持っていたヘッドフォンの解析を頼んだことのある人物だ。現在は大学の講師をやっている。

 それにしても、まさかの来客に奉次郎は少しだけ驚いていた。

 稲森は少し棘のようなものが含んだ口調で、

 

「私が来た理由、ご存知ですか?」

 

 と言った。

 奉次郎としてはひとつ、心当たりがあるが、

 

「ふむ、どれじゃろうな。心当たりが多すぎてわからん」

 

 と言ってみる。

 見てみれば、稲森は本当に面倒くさそうな表情になった。

 

「……本当はわかってますよね? 私、回りくどいことは嫌いなんですけど」

 

「せっかく久しぶりに来てくれたのじゃ。ちょっとぐらい老人の他愛のない話に付き合ってくれてもよいじゃろ」

 

「数日前、妙な小動物の目撃情報が綺羅(き ら )家に入ってきたみたいですよ」

 

 奉次郎の言葉を無視して、稲森は本題を切り出した。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。心当たりありませんか?」

 

 稲森が述べた情報は、間違いなくハネジローのことを示している。おそらく、亜里沙たちが奉次郎の元に連れてくる途中で、人目についてしまったのだろうと思ったが、

 

「正確には、この特徴に該当する小動物の目撃情報が()()()早田(はやた )家に入りました。その翌日、この町での目撃情報が綺羅家に入り、事実確認のため私が先生のところに行くように指示を受けました。なんで私なんですかね。綺羅家の人が直接行けばいいのに。そりゃ私の方が、先生と話しやすいかもしれませんが、こっちにだって色々と用事があるのに……」

 

「……五日前に早田家じゃと?」

 

 続けて述べられた情報に目を細めた。

 亜里沙がハネジローを奉次郎の元に連れてきたのは三日前。それよりも前に、目撃情報が早田家に入った。この町にいる綺羅家でも榊家でもなく、()()()()()()()()にだ。

 

「ええ。初耳なんですか?」

 

 早田家とは、榊家同様『ティガ伝説』に関わる『特殊な家系』のひとつ──早田家の他に『(さかき)家』、『綺羅(き ら )家』、『稲森(いなもり)家』、『入間(いるま )家』があり、これらは『ティガ伝説』の時代において、『イージスの力』より能力を授かり、光の戦士たちと共に『大いなる闇』に立ち向かった一族のことである──。

 しかし現在は『ティガ伝説』の古文書を所有する榊家以外、一般の生活を送っている者が多く、昔ほど家系間の繋がりは薄くなっていた。 

 今回、最初に情報が入った早田家は、榊家とのつながりがまだ強い方であるはずなのだが、稲森が言った通り奉次郎の耳に情報は届いていなかった。

 

「初耳じゃよ。この町以外で発見されたというのか?」

 

「はい。五日前を皮切りに、音ノ木町以外で黄色い毛並みの小動物が多数目撃されています。現在、早田家、稲森家、綺羅家、入間家が総出で保護しています。きっと、その対応に追われて情報共有が遅れたのでしょう。現在は害があるかどうか不明なため、捕獲にとどまっていますが、もし『大いなる闇』復活に関係があるようであれば、即殺処分となるでしょう」

 

「なるほどのう。当然と言えば当然じゃの」

 

 即殺処分とは、穏やかでない言葉だが、それほど『大いなる闇』の復活は阻止しなくてはいけないことなのだ。

 

「はい。それで、先生。この町で目撃された小動物は、今どこにいるかご存知ですか?」

 

 真っ直ぐ、奉次郎の目を見て稲森は言った。

 

「知っておる。そしてもうすでに保護もしておる」

 

「本当ですか?」

 

「本当じゃよ。綺羅家に連絡が入った三日前にな。そして、ワシの方で何度か確認したが、闇の波動はなしじゃった」

 

「確たる証拠は?」

 

「神田明神の敷地内に入った、と言えば説得力は十二分(じゅうにぶん)にあるじゃろ」

 

 奉次郎の言葉を聞いて、稲森が目を見開いた。稲森も神田明神がどういったところか理解している。その地に入ってきたということは、闇の刺客である可能性はないということなのだ。

 

「そうですか。では──」

 

 と、そこで携帯の着信音が鳴り響く。

 どうやら稲森の持っているスマートフォンからのようで、ポケットから取り出すと画面をタップして耳に当てる。

 

「はい、稲森です……はい……はい……それは、まずいことになりましたね。わかりました、こちらで伝えておきます」

 

 では、と言って稲森は通話を切った。

 そして、

 

「先生。少しまずいことになりました」

 

「なんじゃ?」

 

「例の小動物を連れた女の子が二人、この家の裏庭から逃げ出したそうですよ」

 

 その言葉に、さすがの奉次郎も唖然とするのだった。

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 正確に述べるのであれば、亜里沙は奉次郎と稲森の会話を最初から聞いていたわけではない。亜里沙が耳にしたのは、稲森が述べた〝ハネジローの特徴〟と、〝ハネジローが殺処分される〟という言葉だけ。それ以外はあまりの衝撃に、言葉が耳に入ってこなかったのだ。

 とにかく、ここからハネジローと一緒に逃げなければいけない。

 それが立ち直った亜里沙が真っ先に思い浮かべたこと。急いでハネジローの元に向かった亜里沙は、ハネジローを抱き抱えると、その場から走り出した。

 

「亜里沙! どうしたの! どこに行くの!」

 

「わからない! でも、とにかく遠くに逃げないと!」

 

「ハネジローが殺されるって……なんで!?」

 

「奉次郎さんと女の人が会話してたの! だから、とにかく逃げないと!」

 

 もちろん当てがあるわけではない。

 ただ、とにかく逃げなくてはという想いだけが亜里沙を動かしていた。

 どれほど走っただろうか。ひとまず、榊家からある程度距離を取れたところで、ふたりは走るのを一旦ストップした。

 乱れた呼吸を整えてから、雪穂は亜里沙に訊く。

 

「亜里沙、詳しく説明して。一体何を聞いたの?」

 

「それが──」

 

「──パム!」

 

 しかし、亜里沙の答えを遮るかのように、ハネジローが声をあげた。

 

「どうしたの? ハネジロー」

 

「ウシロニ、イル」

 

「え?」

 

 うしろを振り返る雪穂と亜里沙。

 しかし、

 

「誰もいないよね」

 

 人の影は見当たらない。

 それでも、ハネジローは首を横に振って、誰かがいることを示している。

 

「……もしかして、つけられているの?」

 

「パム!」

 

 雪穂の呟きに、ハネジローは大きく反応した。

 

「誰に……」

 

「……亜里沙が言ってたハネジローを捕まえようしている人?」

 

「……! 絶対そうだよ!」

 

「あ、亜里沙待って!」

 

 亜里沙は再び駆け出した。その後に続く雪穂。チラリと後ろを振り返って見えると、確かに数人の人影が見えた。

 

(嘘っ、本当につけられてる……!?)

 

 一体どういうこと? ハネジローが狙われている? なんで? と、疑問が次々と浮かんでくる。

 しかし、それぞれに答えを見つけるには情報があまりにもない。

 

(ハネジローが元々どこかの施設にいて、そこから逃げた? それとも、珍しい小動物に目をつけた人たちが捕獲に来た?)

 

 思い浮かべたことは、どれも漫画やアニメならあり得そうなこと。普通であれば思い付かないことではあるが、ハネジローの存在を考えれば、どんなことでもあり得そうな気がしてきた。

 走り続ける雪穂と亜里沙。

 ふと、道の先に黒いスーツに身を包んだ女性が一人立っているのが見えた。視線はこちらを向いており、まるで雪穂と亜里沙を待ち構えているような姿勢。

 

「亜里沙! 曲がって!」

 

「──!」

 

 咄嗟に叫んだ雪穂の声に反応して、亜里沙は角を右に曲がる。

 

「やっぱりバレますよね!」

 

「雪穂! 今の人って──!」

 

「たぶん、ハネジローを捕まえようとしている人だと思う。とにかく、人通りの多いところを走ろう! その方が向こうも近付きにくいだろうし!」

 

 雪穂の作戦通り、ふたりはなるべく人通りの多いところを走った。それでも、向こうはなんとしてでもこちらを捕まえようとしているのか、曲がり角から突然現れて、ぶつかりそうになった瞬間を狙ってきた。なんとか掻い潜る亜里沙。

 

「そちらに行きました! 例の小動物は確かに抱えてます!」

 

『了解!!』

 

 次第に追っての数が増えてきている気がする。おそらく向こうで連携をとっているのだろう。これ以上人が増えると、捕まるのも時間の問題。

 加えて、全力で走っているせいか段々と亜里沙と雪穂のスピードが落ちてきている。

 

「亜里沙! 一旦どこかに隠れよう!」

 

 ちょうど、角を曲がったところで物陰に隠れることに成功した。

 荒い呼吸を繰り返す亜里沙。

 

「パム〜」

 

 そんな亜里沙を腕の中からハネジローが心配そうに見上げる。

 

「大丈夫だよ……ハネジロー。絶対に守ってあげるからね」

 

「そうは言っても……一体どうするの? あのまま奉次郎さんのところにいたほうがよかったんじゃない」

 

「……それは」

 

「少なくとも、奉次郎さんは味方になってくれたと思うよ」

 

 ハネジローを抱き抱えたまま、黙り込んでしまう亜里沙。

 

(……少し、言い過ぎたかな)

 

 もちろん、我が子のように愛ていたハネジローが命の危機に瀕したのだ。冷静な判断ができなくなる気持ちは雪穂にもわかる。きっと自分が亜里沙の立場だったら、同じ行動をしていただろう。

 だから、もっと自分が冷静な判断をするべきだったと考えてしまうのだ。

 

(こういう時、人目が多いところに行った方がいんだよね? そのほうが、私たちを追っている人も、むやみに近づけなくなるだろうし)

 

 状況を整理し、自分たちにとって少しでも良くなる選択を考える雪穂。

 追われている、ということは向こうは捕まえに接触してくるはずだ。それを防ぐには、人目の多いところに行けば、多少なりとも接触を躊躇させることができるかもしれない。

 そう考えた雪穂は早速移動しようとしたところで、

 

「──あれ? 人が……全然いない……?」

 

 周りに人が誰もいないことに気づいた。

 人っこひとりいない、まさに静寂の空間が出来上がっている。あまりにも不気味で、ぞくりと背中に嫌なものが走った。

 

(なんで! さっきまで大勢人がいたのに……!)

 

 まるで神隠しにでもあったかのように、まるで世界に自分たちだけが取り残されたように、周囲から人が完全に消えていた。

 

「……何がどうなってんのっ」

 

 悲鳴にも似た声が雪穂の口から放たれる。

 

「雪穂……空、見て」

 

「え?」

 

 亜里沙に言われて視線を空に向けると、

 

「どういう……こと……?」

 

 目の前に広がる光景に絶句するしかなかった。

 そこには、綺麗な青空などなかった。青の一面にはオレンジ色のオーロラがかかっており、下を見ればアスファルトは赤土色に変わっている。

 まるで異空間のようなその光景に、ふたりは驚きを隠せずにいた。

 

「! パムパム! パムパム!」

 

「!? ハネジロー!? どうしたの!?」

 

 突然、ハネジローが激しく鳴き始めた。亜里沙の腕から飛び出そうともがき暴れる。それを必死になって抑えようとする亜里沙だったが、更なる衝撃がふたりを襲う。

 ドンッ!! という体の芯までも揺れる振動だ。

 

「こ、今度は何!?」

 

「──っ!!」

 

 雪穂は、視界に入ってきたものを見て息を呑んだ。

 ハネジローのことを考えれば、もうなんでもありだろうとは思っていた。

 しかし、今目の前にいるのは、あまりにも予想外すぎる。こんなの誰が予想できるだろうか。

 

「雪穂……? ──え」

 

 亜里沙も遅れて気づいたのだろう。目の前にいるソレに目を見開き、驚いている。

 次第に呼吸が詰まり、膝が震えていく。

 

「か」

 

 亜里沙の口から、音が漏れる。

 ソレの体は、暗い赤色をしている。鋭い爪と牙。チラリと、頭部に青い皿のような見えた。

 

「怪獣──!?」

 

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』

 

 

 亜里沙と目の前の怪獣が雄叫びをあげたのは、同時だった。

 

 




色々出てきたやつに見覚えあったらそれは気のせいです。

感想などお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします。

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