ギンガ・THE・Live!   作:水卵

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第四章:行かなくちゃ

 目の前のそれが現実だと受け止めるのに、それなりの時間を有した。

 しかし、それを受け止めるまでの時間を待っていたら、命がないということもまた、本能で理解していた。

 故に、雪穂が取った行動はシンプル。

 

「わあああああああああああああ!!」

 

 叫び声をあげて固まった体を無理矢理動かすこと。亜里沙の手を取ることを忘れなかったのは、自分で自分を褒めてあげたいくらいだ。

 走る。

 とにかく走る。

 走らなければ命が危ないと本能が叫んでいる。たぶん、人生でこれほど早く走れたことはないだろうと言う速度で、雪穂は亜里沙の手を握りながら走る。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 背後から聞こえる雄叫びは空気を震わす。震える空気は雪穂の背中に伝わり、そのせいで転びそうになるがなんとか堪えて、足を前に出す。

 人気(ひとけ)がなくなった街を走るふたりは、ビルの影に隠れた。もちろんこんなので、体長60メートル以上の怪獣から身を隠せるなんて思っていない。

 それでも、隠れていればやり過ごせるのではないかという淡い望みが、体を動かしたのだ。

 

「な、なんで亜里沙たちを追いかけてくるの!?」

 

「わかんないよ!」

 

 呼吸を整えながら、混乱している頭を落ち着かせようとする雪穂だが、上から聞こえる怪獣──モンスアーガーの叫びに体が強張ってしまう。

 

「亜里沙たち以外の人も見かけないし……本当に……どうなっちゃったの……」

 

 あまりの恐怖に亜里沙の声が震えている。それでも、ハネジローを腕の中でしっかり抱えているのは絶対に見捨てない意思の表れか。

 

「……パ〜ム」

 

「大丈夫だよ、ハネジロー。きっとなんとかなるから」

 

 しかし、本当にどうにかなるのか不安だった。今でも、ハネジローを抱く亜里沙の腕は震えている。

 そんな中、亜里沙を見上げていたハネジローは何か決心したような動きをすると、

 

「……ボク、イクヨ」

 

 と、言った。

 

「え?」

 

 カタコトではあるが、はっきりとした言葉をハネジローは言った。

 

「ボクガ、狙ワレテイル。ボクガイケバ、コワイオモイ、シナイカラ」

 

「だめ! そんなことできない!」

 

「パム……」

 

「絶対、亜里沙が守るから! 絶対に──っ!!」

 

 言葉に詰まった亜里沙と同じく、雪穂もまた頭上から感じた圧に言葉を失った。

 ゆっくりと、見たくないものを無理矢理見るような動きで、ふたりは視線を向ける。

 そこには、ふたりを見下ろすモンスアーガーの姿があった。

 瞬間、ふたりの脳裏に走馬灯が走る。それはつまり、自分たちはここで死ぬのだと、判断したということ。あまりにも短い人生、まだ姉の最高のステージを見ていないのに、ここで終わってしまう。

 ああ、と嘆く間もなくふたりは死を覚悟し、

 

 

 

 突然モンスアーガーの体に炎の雨が降り注ぎ、吹き飛んだ。

 

 

 

 鼓膜を震わす爆発音。

 無数の炎を纏った隕石が、同じく炎を纏った拳と共にモンスアーガーを襲ったのだ。

 

「──?」

 

 入れ替わるように、ふたりの視界に映ったのは、赤い体に銀色のライン。そして、体にあるクリスタルを赤色に光らせた巨人。

 

「ギンガ!」

 

 ハネジローが巨人の名前を叫んだ。

 

「ギンガ……?」

 

「もしかして、お姉ちゃんが時々話して、ウルトラマンギンガ?」

 

 雪穂は姉がよく話していた〝ウルトラマンギンガ〟のことを思い出す。赤い色の体に銀色のライン。頭部、肩、胸、両腕、両足のクリスタルが特徴で、怪獣から自分たちを助けてくれた正義の巨人。

 それがウルトラマンギンガ。

 ギンガはクリスタルの色を元の水色に戻すと、視線を雪穂たちに向けてきた。

 そして、一度頷く。

 まるで、もう大丈夫だと言っているかのようだった。

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 雪穂たちの無事を確認したギンガは、視線をモンスアーガーへと向ける。モンスアーガーはすでに立ち上がっており、敵意を込めた視線でこちらを睨んでいた。当たり前だ。突然攻撃されたのだから、誰だって怒るに決まっている。

 しかし、〝ギンガファイヤーボール〟を受けたにも関わらず、大きなダメージとなった様子がない。

 これは、相当防御力の高い相手だと判断できる。

 両者、一定の距離を保ったまま睨み合う。

 先に動いたのは、モンスアーガーだった。両腕を広げて、まるで何かの発射準備に入っているようだった。ギンガはすぐに右手を突き出し、バリアを展開。放たれた赤色光弾を防ぐ。

 しかし、バリアで防いだが、手に伝わる感触から威力が相当高いと言うことがわかった。まともに食らえば大ダメージとなるだろう。

 ギンガはバリアを解くと、すぐに駆け出した。二発目を撃たれる前に接近戦に持ち込むためだ。

 距離を詰めたギンガは、握り込めた右拳を突き出す。モンスアーガーの胴体を捕らえたが、返ってきた感触は非常に硬いものだった。

 続けて左拳を叩き込む。右手のチョップ、左ミドルキック、連続して攻撃するが、モンスアーガーの硬い皮膚によって大したダメージにはならない。

 左拳を弾かれ、反撃のために振われた腕をガードする。しかし、硬い皮膚から繰り出された一撃に、いとも簡単にガードを崩され、続く二撃目はギンガの側頭部に当たった。

 よろめいたところへの追撃。重い一撃に、ギンガは地に膝をついた。立ち上がろうとしたが、尻尾による追撃が襲い、火花をあげながらギンガは。

 倒れ込んだギンガの頭を掴み、持ち上げると、その腹部目掛けて追撃の拳。ギンガの体がくの時に跳ねる。二撃、三撃、頭部を掴んでいる手を振り、投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたギンガは、前転のようなかたちで背中から倒れる。

 体にはダメージが残っているが、長く倒れているわけにはいなかい。振り下ろされた尻尾が目の前に迫っていることに気づくと、横に転がって回避。そのまま起き上がり、体勢を立て直す。

 接近してきたモンスあーガーとの取っ組み合いになる。

 しかし力比べてはモンスアーガーに分があるため、すぐに振り解かれ、振われた腕の一撃を受けてしまうギンガ。

 続けてタックルを受け、背後にあったビルを巻き込んで倒れる。

 

「ちょっと! 苦戦してるんだけど! 勝てるの!?」

 

「が、がんばれ! ウルトラマン!!」

 

 苦戦するギンガを見て不安になる雪穂と、声援を送る亜里沙。 

 ギンガは起き上がる。しかし、モンスアーガーはすでに光弾の発射準備に入っていた。

 回避するまもなく、光弾は放たれギンガを撃ち抜く。

 二つのビルを巻き込みながら飛んでいくギンガ。大ダメージを受けた体はすぐに起き上がることができず、モンスアーガーはトドメを刺すべくギンガへと接近。

 ギンガのカラータイマーが点滅を始める。

 

「雪穂! ウルトラマンの胸がぴこぴこし始めたんだけど!」

 

「赤の点滅って、危険信号っぽいよねっ……」

 

「どうしよー! って、ハネジロー!? どこいくの!」

 

 動揺している隙を突かれて、亜里沙の腕の名からハネジローが飛び出す。

 

「イカナクチャ」

 

「だめ!」

 

 また自分を犠牲にしようとするハネジローを止めようとするが、

 

「チガウヨ。ツタエルノ」

 

 ハネジローはそうはしないと言った。

 

「伝える……?」

 

 コクリと頷くと、ハネジローはギンガの元に飛んでいく。

 

「ギンガ!」

 

 ギンガの名前を呼ぶと、ハネジローは目からホログラム映像を空中に映し出した。映し出されたのは、モンスアーガーの姿。その頭部付近をハネジローは旋回する。

 

「パム! パムパム!」

 

 ハネジローの鳴き声に気づき、そちらを向くギンガ。ギンガがこちらを向いたことがわかったハネジローは、再びモンスアーガーの頭部付近にいくと、今度は顔を使って頭部のある一部分を示す。

 

「ハネジロー、何か伝えようとしている?」

 

 と、亜里沙は言った。

 注目してみて見ると、ハネジローが何を示しているのがわかった。モンスアーガーの頭部に青い皿のようなものがあるのだ。ハネジローはそれを示している。

 ふと、亜里沙の頭にカッパの姿が思い浮かんだ。カッパは、頭にある皿が乾燥したり割れたりすると、力が出なくなってしまうらしい。つまり、そこが弱点であると言うことを、前に友人から聞いたのを思い出したのだ。

 

「ウルトラマン! 頭部の青いところ! たぶんそれが弱点!!」

 

「パム!」

 

 亜里沙の声に答えるよにハネジローが頷く。

 ギンガは、一度視線をモンスアーガーに向け、その頭部にある青色の部分を視認する。そして、ハネジローに向けて一度頷くと、体に力を入れて立ち上がった。

 まだ戦えることに驚いた様子を見せるモンスアーガーに対し、ギンガは勢いよく駆け出す。

 迎え撃とうとするモンスアーガーだったが、それよりも先にギンガが高く飛んだ。ギンガの行く末を見上げるモンスアーガーだったが、ギンガはモンスアーガーの視界から見えなくなるくらい、高く飛んでいく。

『逃げたのか?』と、ギンガの狙いがわからないモンスアーガーはそう思った。しかし、一瞬白い光が見え、急降下してくるギンガの姿を視界に捉えると、撃ち落とすために光弾を放つ。

 急降下で落下するギンガは、向かってくる光弾を〝ギンガセイバー〟で斬り落とす。そのまま、もう一度ギンガセイバーを構え直すと、頭部の青い部分目掛けて振り下ろした。

 

『──!?』

 

 剣先が青い部分に突き刺さり、モンスアーガーは今までにない声をあげる。それはまるで悲鳴だ。弱点を突かれた悲鳴。

 ギンガはそのまま空中で回転すると、モンスアーガーの背後に着地。頭部から火花をあげ、倒れるモンスアーガーを見送った。

 倒れて、動かなくなるモンスアーガー。

 

「……勝った……?」

 

 と、雪穂は恐る恐る呟く。

 

「そう……だよね……」

 

 同意する亜里沙。

 ふたりの目の前で、モンスアーガーは光となって消える。

 それは、戦いが終わったことを意味していた。

 

「終わった……終わったぁー」

 

 モンスアーガーが消えたことで、張り詰めていた緊張の糸が緩んだ。尻餅をつく亜里沙の横で、雪穂もまた大きく息を吐いて戦いの決着を見届けていた。

 一方、ギンガはその姿を消さずに、いまだにその場に止まっている。それに気づいた雪穂が視線を向けると、パタパタとギンガに近く影があった。

 

「ハネ、ジロー……?」

 

「え? どこにいるの?」

 

「あそこ! ウルトラマンに向かってってる」

 

 ギンガに向かって飛んでいく影の正体は、ハネジローだった。

 

「ハネジロー! どこに行くの!?」

 

 亜里沙が叫んだ。

 ハネジローは亜里沙の叫び声に気づくと、一度ギンガの方を見てから、こちらに飛んでくる。

 その雰囲気に、不安を感じる亜里沙。

 

「ハネジロー……どこに行くの?」

 

「…………」

 

「ハネジロー……?」

 

「ボク、イカナキャ」

 

 俯いていたハネジローは、顔を上げて、そう言った。

 

「え?」

 

「ココニイルト、メイワク、カケチャウ」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

 亜里沙の言葉を、首を横に振って否定するハネジロー。

 

「マタ、カイジュウニ、オソワレルカモ」

 

「そうなったら! またウルトラマンが助けてくれるから!」

 

「イノチガ、キケン」

 

「……それは」

 

「サヨナラガ、イチバン、イインダヨ」

 

「待って!」

 

 しかし、亜里沙の声を無視してハネジローは飛び去っていく。

 

「待ってよ! ハネ──」

 

「ハネジロー!!」

 

 亜里沙より、雪穂が大きな声でハネジローの名前を呼ぶ。その声に、飛び去ろうとしていたハネジローが止まる。 

 そして、雪穂は、ゆっくりと手を伸ばして、そっとハネジローを撫でた。

 

「ユキ、ホ……」

 

 雪穂はハネジローの言う通りだと思っていた。ハネジローと一緒にいれば、また怪獣に襲われるかもしれない。亜里沙の言った通り、ウルトラマンに助けて貰えばいいかもしれないが、それはつまりその度に命の危険が訪れると言うこと。

 それは、ハネジローの方が辛いだろう。自分と一緒にいるだけで、命の危険が及ぶ。守ってくれる存在がいる、言い換えれば守る存在がいなくなって仕舞えばそれはもう死を意味しているのだ。

 だから、別れたほうがきっといい。

 それは、わかっている。

 

「亜里沙の言う通りだよ。ハネジロー、こんなに可愛いんだ」

 

 わかってはいるが、あまりにも突然すぎる別れだった。

 

「私も、遊べばよかったなー。

 ……名前、読んでくれてありがとう。ハネジロー」

 

 優しく、微笑んでお別れを告げる雪穂。

 

「ほら、亜里沙も。お別れ言いなよ」

 

「……やだ。亜里沙は、ハネジローと別れたくない」

 

「ハネジローの言う通りなんだよ。一緒にいると、また今日みたいな怖い思いをすることになるんだよ?」

 

「でも……」

 

「最後くらい、笑顔でお別れしよう。ね」

 

「…………」

 

 黙ってしまう亜里沙。

 そして、

 

「……また、会えるよね? ……絶対! また、会えるよね……!」

 

 雪穂の言葉に、ハネジローは顔を伏せてしまう。

 

「ハネ、ジロー……?」

 

 しかし、顔を上げてハネジローは亜里沙の元に行った。

 差し出された手に、自分の頭を当て、初めて会った時と同じように亜里沙に体を預けた。

 そして、

 

「……キット、アエル。イツカ、アエルヨ」

 

 そうひと言残して、ハネジローは飛び去っていった。

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

[エピローグ]

 

 

 あれから、二日が経った。

 亜里沙は、まだハネジローとの別れから立ち直れておらず、元気がないまま。

 今日も、榊家の縁側に立ち、ハネジローとの思い出に浸っている。

 

「……亜里沙」

 

「まだ、元気が戻らんようじゃな」

 

 亜里沙を見守る雪穂の隣に、奉次郎がやってくる。

 

「……はい。結構ショックだったみたいで」

 

「無理もない。ハネジローと遊んでいる亜里沙ちゃんは、本当に楽しそうじゃったからの。それが、突然の別れとなれば、受け止めるのに時間がかかるじゃろ。雪穂ちゃんはどうなんじゃ?」

 

「私は……亜里沙ほどじゃないですよ。あんまり遊んでませんでしたし、ハネジローに心の壁みたいなの作っちゃったましたし……ただ、できれば一緒に遊んでおけばよかったなって、思うくらいです……」

 

 

 そう語る雪穂は、どこか後悔しているようだった。勝手に自分で壁を作り、最後までハネジローと遊ぶことのなかった自分に、どこか思うことがあるのだろう。

 

「そうか……」

 

 そう言い残して奉次郎は一旦その場から離れた。

 そして廊下にある固定電話に向かうと、稲森の番号を呼び出し発信。数コールで稲森が出た。

 

「確認じゃが、全て消えたんじゃな?」

 

『はい。昨日全て確認が取れました。各家系で保護していた小動物が、全て姿を消したそうです』

 

「…………」

 

 そう、亜里沙たちの前からハネジローが去ったのと同時刻、各地で保護されていたハネジローと同じ外見をした小動物が姿を消したのだ。

 なんの痕跡もなく、突然と姿を消した小動物。あまりにも不気味すぎる。

 

『結局、正体はなんだったんですかね?』

 

「ワシにもわからん。突然現れて、突然消えた……」

 

『何かの前触れ、としか考えられないんですが』

 

「…………」

 

 亜里沙たちを追いかけていた綺羅家の人々は、途中で亜里沙たちを見失ったらしく、見つけた時にはもうハネジローの姿がなかったと言う。

 おそらく、その間で何かあったのだろう。しかし、何があったのかを具体的に知っているのは、亜里沙と雪穂、そしてウルトラマンギンガとなって駆けつけたリヒトだけ。

 しかし、今回リヒトはそこにしか関わっていないため、何もわからないのだ。亜里沙と雪穂に訊こうとしても、今のふたりに訊くことなどできない。

 唯一わかっていることは、ギンガスパークでもハネジローから闇の波動を感じなかったと言うこと。

 では、ハネジローは光の勢力だったのだろうか。

 ならば、なぜ姿を消したのか。

 あまりも謎が多すぎる。

 誰も、何もわからない結果に、モヤモヤを残したまま、奉次郎は受話器を下ろすのだった。

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 

 小さな光が漂う。

 まるで蛍の光ようだ。

 小さく、しかし膨大な量の光が、ひとりの少女の元に集まっていた。

 白い少女。髪も、肌も、着ているワンピースも全てが真っ白の少女。ただ一人、目を閉じて佇む少女の元へ向かって光は集まっていく。

 光は、少女の手に触れると、少女の手の中に沈んでいった。いや、正確には元の場所へ戻ったと言うべきだろう。この光は、少女が生み出したもの。自分の力の源である『光』を使いし、生み出し、生物の姿を与え、ばら撒いたのだ。

 目的は、とある人形を見つけること。

 

「ふむ……ここは違ったか……」

 

 光に探らせた映像を読み取っていく少女。カプセルから産まれ、漂い、拾われるものもあればそのままずっと彷徨い続けるものもある。拾われたものの映像を見てみれば、どこかの一般家庭やホームレスなどに拾われているものが多く、それらのものはすぐに消去した。

 ようやく、その外見を怪しむ者たちに拾われる映像を見つけた。ぶつぶつ何かを議論しているが、危険性はまだないと言うことで保護という形を取るらしい。

 こちらから言わせれば、なんとも甘い判断だ。

 しかし好都合。自由に動いて目的のものを探すことができる。

 

「……ん? ほう……これは、あの時のやつか」

 

 読み取った情報の中に、以前()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あまりにも可愛かったため、取り込んでやろうかと本気で考えた少女。しかし、それよりもこいつに拾わせるほうが面白いと判断し、少しだけ操った覚えがある。

 別に探し物は自分のためになるものじゃないため、こういった捨て駒があってもいいだろうと思ったのだが、

 

「……ふむ。ここにはないか。しかし、光を持つあの男はいないとは、つまらぬの」

 

 思わぬ産物、と言ったところか。まさか『イージスの力』を守護している男の家に忍び込めるとは思わなかった。

 しかし、ここに目的のものはない。光の男もいなく、あとは意味のない映像ばかりだった。

 ただ楽しそうに、作り出した存在と戯れている記録など意味のないもの。早々に消去する。

 改めて、必要な情報を得るために記録を読み取っていると、

 

「……ふっ、あったぞ」

 

 目的の情報が手に入り、少女は笑った。

 そして、振り返る。後ろでこの情報を待っていた者に。

 

「お前の力が封じられている、スパークドールズをな」

 

 背後にいたのは、ボロボロの()()()()()()()()()銀髪の男。

 

「そうか。では、取り戻しにいくとするか。私の力を」

 

 




第10話 小さき少女たちの冒険─完─

以上で、第10話終了です。お楽しみいただけたでしょうか。
今回は亜里沙と雪穂回ということで、ふたりをメインに書きました。1話丸々使うのは、この作品当初からの目標だったので、無事に書けてよかったです。
最後のシーン、つまりハネジローはあるものを見つけるために生み出された、ということです。原作と設定が違いますが、そもそもこの作品いろいろ設定いじってますので、お許しを……。

それでは、次回第11話。第二部が本格的に始まりますので、よろしくお願いします。

……実は主人公を一切登場させないのが目標でした。


次回予告
いよいよオープンキャンパスが間近に迫り、準備に勤しむ音ノ木坂学園。そんな中、ひとりの生徒のスマートフォンが着信を知らせる。
一方、朝の練習を終えた穂乃果の元にヒデコから「きちゃだめ」と連絡が入るが、すでに校内に足を踏み入れてしまっていた。
教室へとたどり着く穂乃果たちだったが、様子のおかしいクラスメイトたちが突然スマートフォンをこちらに向けてきて……。

次回、マリオネットの館。


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