ギンガ・THE・Live!   作:水卵

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お待たせしました。
納得のいく形にならず書いては消してを繰り返してたら年を越してしまいました。
2021年もよろしくお願いします。

それでは、第11話・第三章、どうぞ。


第三章:ギンガVSクインメザード

[3]

 

 超空間波動怪獣クインメザード。

 それが、ウルトラマンギンガの前に立つ怪獣の名だ。以前戦ったサイコメザードと似た姿をしているが、異なる点もある。黄色い複眼を持つ頭部と鞭のような両腕。腹部だけでなく、背中の襟巻きにも人面が浮かんでおり、さらに触手が四本生えている。

 その姿は、以前よりも増して悍ましい。

 襟巻きの人面は、まるで激しい怒りと憎しみを宿したような表情を形成している。ウルトラマンギンガへの復讐を果たすために辿り着いた最後の姿と言えるだろう。

 

 クインメザードは奇声を上げ、触手から雷撃を放つ。

 雷撃はギンガに直撃し、火花を散らす。膝をつくギンガ。

 そこへ、追撃の雷が放たれる。

 ギンガは右手を前に突き出し、バリアを展開。雷は銀河系のようなバリアによって無力化された。

 雷撃を防いだギンガは駆け出す。

 迎撃のため、クインメザードは両腕を振るう。それらを弾き、距離を詰めたギンガは腹部の顔目掛けてパンチを放つ。二撃目のパンチ、ミドルキック、回転の勢いを利用した裏拳など、怒涛の攻撃を繰り出していくギンガ。

 怯むクインメザード。

 頭部を掴み、押さえつけるギンガだったが、反撃に出たクインメザードによって振り解かれる。仰反るような形になり、無防備となった胸部にクインメザードの頭部が叩きつけられる。怯んだところに、鞭状の両腕が振われた。

 三撃目。胸から火花が上がり、後ろへ吹っ飛ぶ。仰向けに倒れたギンガは、体を起こそうとしたところで、伸びてきた鞭状の腕が首に絡みついた。

 

「──ぁっ!」

 

 ダメージフィードバックにより、インナースペースにいるリヒトの首が閉まる。呼吸を封じられ、酸素が失われていく。

 首に絡みついている鞭状の腕を解こうと、両腕で掴むが、鞭状の腕が振り抜かれギンガの体が宙を舞う。

 そしてやってくる、地面との激闘。

 ただでさえ補給することができない酸素が、リヒトの体から吐き出される。

 体から酸素がなくなっていき、次第に力が入らなくなっていく。踏ん張る力がなくなれば、クインメザードの振るう腕に流され続けるしかない。

 鞭のようにしなる腕。上下に激しく唸った。仰反るように背中から地面へと倒れるギンガ。

 

「ギンガさん!」

 

 戦いを観戦していた穂乃果から悲鳴が上がる。

 

「そっちを気にしとる暇はないぞ!」

 

 奉次郎からの叱咤。

 ハッとして視線を向ければ、新たな影が校舎から出てくるのが見えた。

 

「逃げるのじゃ!」

 

「この時間なら別棟や特別棟には人が少ないはずよ! そこに逃げましょう!」

 

 生徒会長として、学校のことを把握している絵里が逃げる先を提案する。時間帯を考えれば、ほとんどの生徒が各学年の教室にいた。だから、別棟や特別棟など、本校舎以外には生徒がいないと考えられるのだ。

 

「三分じゃ! 三分逃げ切ればワシらの勝ちになる! それまで身を隠すぞ!」

 

 三分。それは、リヒトがウルトラマンギンガに変身(ウルトライブ)していられる時間(タイムリミット)。どんなことがあろうと、この時間以上変身していることはない。リヒトの生命に危険が及ぶからだ。

 だから、決着は三分以内に決まる。

 戦況から考えるに、苦戦を強いられている。決着は三分ギリギリに着くだろう。そうなると、最大時間の三分間逃げ切ることが必要だ。

 だが、

 

「待って!」

 

 真姫が叫んだ。 

 なぜ止めるような言葉を発したのか。全員の視線が真姫へと向かう。

 

「どうしたの? 真姫」

 

 絵里が問い返す。

 

「追ってこない……追ってこないんです。私たちの方に来てない!」

 

 真姫の言う通り、校舎から出てきた新たな人影はこちらには来なかった。奉次郎たちの方など見向きもせず、反対方向へと足を進める。

 彼女たちが向かう先にあるのは、怪獣とウルトラマン。

 

「──まさか!」

 

 奉次郎の脳裏に嫌な予感が走った。

 それを裏付けるかのように、続々と生徒たちがギンガとクインメザードの方へと向かって歩いて行く。

 予測される最悪の展開。

 それは、阻止しなくてはいけない展開だ。

 

「希ちゃん! それをこっちに!」

 

「え? は、はい!」

 

 奉次郎は希からギンガライトスパークを受け取ると、持ってきていた錫杖の先端にくくりつける。

 駆け出した奉次郎の背中に向けて、疑問の叫び声が発せられる。しかしそれに答えている暇はない。奉次郎の考えが正しければ、ここでこの生徒たちを無力化しなければ、ギンガの敗北が決定してしまう。それほどの決定的な手が、今打たれようとしているだ。

 生徒たちの群れまで、残り数メートル。錫杖のリーチを考えれば、十分に足りる距離。

 

「──っ!」

 

 ひとりの生徒の背中が射程距離に入った。

 その瞬間、奉次郎の右腕が突き出された。錫杖の先端に括り付けられたギンガライトスパークが、生徒の背中に触れる。ギンガライトスパークの効力が作用し、力を失ったかのように倒れる生。その背中を受け止めるが、今ので奉次郎の存在に気づいた周りの生徒たちが、一斉に奉次郎に向けてスマートフォンを突き出す。それがトリガーなのだと、直感でわかった。突き出された手を弾き──、

 

「奉次郎さん! 画面も見ちゃダメ!! 見たらアウトです!!」

 

「──ぬ!?」

 

 背後から聞こえた穂乃果の声に、奉次郎は咄嗟に視線を腕の中にいる生徒に向けた。

 ギリギリ、画面から視線を外すことに成功。意識ははっきりとしている。

 錫杖を操り、迫り来る生徒たちを牽制。腕の中の生徒を地面に下ろす。バックステップで距離を空けようとするが、すでに次の生徒がスマホをこちらに突き出していた。

 

「──っ」

 

 錫杖はリーチがあるが、その反面距離を詰められると不利になる。 

 空いた左手で突き出された手を弾くが、手数では向こうの方が上。すぐに追い詰めれてしまう。

 

「奉次郎さん!」

 

 絵里の声。真姫からギンガライトスパークを預かった絵里が、援護のために飛び込んできたのだ。

 しかし、声を発したことで何人かの生徒の注目が絵里に集まる。

 スマホの画面が突き出される。視界の端でそれを捉えた奉次郎も、後ろにいる真姫も、ハッとなるが絵里は冷や汗をかきつつもそれを防ごうとはしなかった。

 画面の光が視界を埋め尽くす。

 今朝感じた、意識を貝混ぜられる感覚が絵里を襲う。

 だが次の瞬間、胸元の青き輝石が輝き、絵里を闇の魔の手から解放する。

 

「──っは!」

 

 息を吐き、意識がはっきりとしたことを確認すると、その場にいる生徒全員に向けてギンガライトスパークを振るう。

 次々と倒れていく生徒たち。ひとまず、奉次郎の方に向かってきた生徒たち全員の無力化に成功した。

 

「絵里ちゃん? どう言うことじゃ」

 

「私、これのおかげで防げるんです」

 

 胸元の青い輝石を示しながら絵里は答える。

 それを見た奉次郎はなるほど、と納得の表情を浮かべた。

 

「それで奉次郎さん、どうしてみんなの中に飛び込んだんですか?」

 

「おそらく奴は、操った生徒たちを人質にしようと──」

 

 そこへ、クインメザードの悲鳴が響く。

 視線を向けてみると、鞭状の腕を地面に叩きつけるクインメザードの姿があった。

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 鞭状の両腕によって首を絞められている。そこへ撃ち落とされる雷撃。闇の異空間故、その威力は絶大。

 たまらず膝をつく。

 嘲笑うクインメザード。

 これ以上、奴のペースのまま行けば敗北が確定してしまう。

 状況を打破するために、首を絞められる中、ギンガは右拳を握り込む。クリスタルを白色に輝き、右腕のクリスタルから光の剣──〝ギンガセイバー〟が出現する。

 輝く剣で、首に絡みつく鞭状の腕を切り裂いた。

 

「──!!??!?」

 

 悲鳴を上げるクインメザード。

 解放されたギンガは首を摩り、インナスペースにいるリヒトは酸素を求めて呼吸を繰り返した。

 怒りに震えるクインメザードは、再び雷撃を放とうと鞭を振るう。雷撃がギンガに降り注ぐ。

 回避は間に合わない。ならばその一撃を耐えるしかない。

 雷撃を耐え抜き、ギンガセイバーを地面へと突き刺す。エネルギーを注ぎ込み、砂塵とともに衝撃波がクインメザードへと向かう。砂塵の中へ消えていくクインメザード。

 しかしここは闇に有利な異空間。闇の力に覆われている地面を伝っての攻撃は、それほどのダメージにはならない。

 では、一体何のための攻撃か。砂塵が晴れると、そこにギンガの姿はなかった。

 

 

 ──気配は上。

 

 

 見上げると、クリスタルを赤色に輝かせたギンガの姿がそこにあった。その周辺には、炎に包まれた隕石。

 

「ギンガファイヤーボール!!」

 

 降り注ぐ炎の隕石。爆発に飲み込まれていくクインメザード。ギンガセイバーによる攻撃を囮に、必殺の一撃を叩き込んだのだ。

 着地したギンガは、手応えを感じながら、しかしその目線を外すことはしなかった。

 爆炎の中から姿を現すクインメザード。

 

「……やっぱりここじゃそんなに効かないか。でも、のダメージってわけじゃないよな」

 

 必殺技を受けたにもかかわらず、クインメザードはそこに佇んでいた。しかし『ギンガファイヤーボール』はギンガの持つ必殺技のひとつ。いくら闇に有利な異空間とはいえ、ノーダメージで済むはずがない。

 ギンガは改めてファイティングポーズを取り、クインメザードを観察する。次に取る行動、次に行うであろう攻撃、何を考え、こちらの動きをどこまで読んでいるのか、それらすべてを読み取る──突如、クインメザードが声を荒げて、鞭状の両腕を地面に叩きつけた。

 その行動に、ギンガだけでなく奉次郎たちの視線も向けられる。

 叩きつけられた地面からは火柱が上がり、やがてそれは形を成す。

 青黒い体。太い尻尾と鋭利な爪を持つ両手。のっぺらぼうのような頭部と、肩のところには獣のような双頭。

 

「あの怪獣は……!?」

 

 その怪獣を知っている穂乃果が戦慄の声をあげる。

 

「穂乃果、あの怪獣のこと知ってるの?」

 

 と、絵里が訊く。

 

「私たちのファーストライブの日に現れた怪獣です。あの時も、ギンガさんとても苦戦して……」

 

 忘れもしない、穂乃果たちがファーストライブをする日に現れた怪獣。はじめの一歩を壊されそうになり、絶望の淵まで追い込まれた悪夢の根源。

 その名はダークガルベロス。ギンガを敗北寸前まで追い詰めた強敵。あの時は、穂乃果たちの援護があってようやく勝利することができた。

 そんな強敵が、今、目の前に再び現れた。

 クインメザードの戦いで、疲弊したところに。しかも今回は、海未たちからの援護が望めない。前回に比べて圧倒的不利な状況。

 リヒトの頬を一滴の汗が流れ落ちる。

 現れたダークガルベロスは、ギンガを捉えると、雄叫びをあげて走り出した。その速度はとても早い。回避する間も無く、ギンガの体が吹き飛ぶ。

 起き上がろうとするが、脇腹を蹴り飛ばされる。尻尾による追撃が襲いかかり、倒れた背中を踏みつけられる。

 何度も、何度も踏みつけられ、カラータイマーが点滅を始める。

 

「時間が……!?」

 

 希が声をあげた。

 カラータイマーが点滅したと言うことは、ギンガにウルトライブしていられる時間が、残り一分となったということ。

 まさに絶体絶命。

 再び蹴り飛ばされ、転がるギンガ。

 そこへ、クインメザードの雷撃が打ち込まれる。

 

「ギンガさん!!」

 

「ちょっと、これ……かなりまずいんじゃない!?」

 

「ちょっとどころやない! 何とかしないと……!」

 

 前回は、穂乃果の持つ赤き輝石の力を、海未の持つイージスの破片を使い『矢』として放つことでギンガに逆転のチャンスを与えることができた。

 しかし、今のこの場に海未がいない。イージスの破片を持つ海未がいないと言うことは、前回の援護攻撃ができないと言うこと。

 つまり、今この場でできる策が希たちにないと言うことだ。

 何かできないか、と必死に考える希だったが、ふと、視線を感じた。その視線は、クインメザードのもの。

 

「…………っ!?」

 

 ふと、希はあの時の戦いのことを思い出した。神田明神にて、ギンガとクインメザードの前の姿、サイコメザードⅡとの戦い。あの時は、光の異空間だと言うこともあってか、ギンガの圧勝だったが、希が気になったのはそこではない。その戦いで起こったある出来事だ。

 あの時のサイコメザードは、穂乃果の体に取り憑き、心の底にあった仄かな不安を肥大化せた。そして肥大化させた不安を使い、穂乃果を闇に落とそうとしたのだ。結果を言えばギンガによって阻まれ、穂乃果もまた自分の心と向き合いその小さな不安を乗り越えた。

 そしてその時、穂乃果の強い心に反応した赤き輝石の光がサイコメザードに一撃を与えていたのだ。

 

 

 そう、不安を乗り越え、赤き輝石に光を灯した穂乃果がこの場にいる。それを無視するほど、クインメザードは愚かではない。

 

 

「穂乃果ちゃん!!」

 

 クインメザードの視線が穂乃果に向けられている。おそらく、ここで逆転の手を打てるのが穂乃果だと気づいているのだろう。

 スマホによる洗脳も受けていない。間違いなく、敵から見れば排除しなければいけない存在だ。

 

 

 クインメザードが吠える。

 

 

「──っ!?」

 

 ただ吠えただけではない。鼓膜を突き破るのではないかと思えるほどの咆哮。襟巻きにある人面に口はないが、まるでそれも叫んでいるように感じる。

 そして、その叫びに連動するかのように、スマホの着信音がなり始める。いや、スマホからだけではない。校内放送のスピーカーからも、着信音がなり始めるのだ。大音量で流されるそれは、耳を塞いでいても、それを突き破って鼓膜を震わす。

 意識が混濁する。

 かき混ぜられる。

 吐き気、不愉快、自分ではない誰かが頭の中に入ってくる。

 

「希! 穂乃果! 奉次郎さん!」

 

 希と奉次郎だけではない。輝石を持っているはずの穂乃果までもが、耳を押さえながら膝をつく。

 唯一、絵里だけがかろうじて周囲の状況を伺える。もちろん気を抜けば意識は消えそうだ。青き輝石は、それを阻止するべく眩いほどに輝いている。

 そして、被害は穂乃果たちだけではなかった。

 ギンガまでもが両耳を塞いで動けずにいる。

 

「ギンガ!!」

 

 カラータイマーが点滅する中、身動きを封じられるのはかなりの痛手だ。このまま時間切れになってしまう恐れがある。

 だが、事態はそれだけでは済まなかった。

 続々と、生徒たちがクインメザードの近くに移動しているのだ。その位置は、ギンガが攻撃をすれば間違いなくその余波に巻き込まれる位置。おそらく、威力が一番小さい『ギンガスラッシュ』ですら巻き込んでしまう恐れがある。

 いや、それ以前にギンガが反撃に出ようものなら、クインメザード自ら攻撃を仕掛けそうな位置。

 つまり、人質だ。

 

「くっ……この……」

 

 インナースペースにいるリヒトは、クインメザードを睨みつける。

 しかし、クインメザードに気を取られるわけにはいかない。ダークガルベロスが飛び、空中で回転。尻尾がギンガの胸を叩く。

 この騒音は、おそらくダークガルベロスには聞こえていないのだろう。当たり前だ。クインメザードから見れば、ダークガルベロスは味方なのだから。

 ばたりと、穂乃果たちが絵里の目の前で倒れる。

 

「穂乃果……」

 

 同じ輝石を持っているはずなのに。いや、これほど大音量で持続的に流されれば、輝石の効力があったとしても意識を奪われるだろう。

 

「……だ、め…………」

 

 絵里の意識も、次第に薄れていく。

 輝石の輝きがだんだんと弱まっていく。

 

(──お、──い)

 

「え? いま、声が……」

 

 絵里の脳に誰かの声が聞こえてきた。

 鮮明には聞こえていない。しかし、確かに聞こえる。この大音量の着信音が響く中、次第にそれは鮮明になっていく。

 

(──おい。聞こえるか)

 

 聞こえてきたのは、やや高圧的な男の声。

 

「だ、れ……誰、なの……」

 

(よし、聞こえているな。俺の光をギンガへ渡す。手に持つ『ソレ』に、俺の光を込めろ)

 

「込めろって……どうやって……」

 

(お前の胸にある輝石からそれに光を送ればいい。重ね合わせれば、光は送れる。あの巨人に変身している奴のこと、好きなんだろ? なら、そいつのことを強く思え。そうすれば想いは光となる。光を送るのはこっちでやる。ギンガの方へはお前が投げ渡せ)

 

「…………」

 

(急げ。洗脳を防いではいるが、この音量を聴き続ければいずれ突破されるぞ)

 

 絵里に選択肢はなかった。

 この声の主が誰なのか、そういった諸々の疑問は多々ある。しかし、この声の通りにしなければ、どのみちここでギンガは負け、自分たちは闇の手に落ちる。

 あの時体験した、闇の中に沈んでいく感覚を、ここにいる全員が味わうことになる。

 それは、阻止しなくてはいけないこと。

 絵里は手に持つギンガライトスパークと、首にかけている青き輝石を重ね合わせた。そして、リヒトのことを強く想う。

 すると、青き輝石は先ほどより強い光を放ち、ギンガライトスパークの色が海のような深い青色に変わっていく。

 

(よし、投げろ)

 

「──っ!!」

 

 絵里は力の限り投げた。

 もちろん、届くとは思っていない。しかし、まるで引き寄せられるかのように、ギンガライトスパークはギンガの元に届いた。

 

 

「──なっ? これは……!」

 

 突然、自分の元にやってきた青い光に、リヒトは驚きの声をあげた。

 光はギンガのカラータイマーを通して、インナースペースにいるリヒトの元にやってくる。ギンガスパークにその光が吸い込まれると、体にとてつもない力がみなぎった。

 

「──! この感覚は──!!」

 

 それは、異形の海で絵里とともにウルトラマンギンガになった時の感覚に近い。送り込まれた膨大な光は、ギンガの力となり、黄金の光となって溢れ出る。

 その異変に気づいたダークガルベロスが、即座にギンガに向かって走る。

 ギンガは黄金の光を纏った拳を突き出し、殴り飛ばす。

 

「……サンキュー、絵里」

 

 リヒトは一度視線を絵里の方へ向けた。絵里は不安げな表情を浮かべてこちらを見ている。

 しかし、ギンガの視線に気づくとその瞳に力強い色を宿し、頷いた。

 立ち上がるギンガ。胸の前で腕をクロスし、溢れ出る黄金の光を収縮させる。クリスタルがピンク色に輝き、闇に覆われている空間を照らす。

 クインメザードがそれに気づき、人質に攻撃を加えようとするが、

 

「──させるかよ!! 〝ギンガサンシャイン〟!!」

 

 それよりも先に黄金の光が放たれる。

『ギンガサンシャイン』。ギンガの持つ、『ギンガクロスシュート』より強力な必殺技。本来であれば、余波に巻き込まれてしまう音ノ木坂学院の生徒たちだが、『ギンガサンシャイン』の輝きは『闇』だけを撃ち抜く効果を持つ技だ。

 故に、『ギンガサンシャイン』は『闇』であるクインメザード、生徒たちを洗脳している闇、そして闇の異空間すらもまとめて吹き飛ばしていく。

 黄金の輝きが闇全てを飲み込む。

 爆発音はなかった。

 黄金の光にかき消されるように、クインメザードは消滅した。

 戦いに勝利したギンガは、その疲労から膝をつく。

 同時に、闇の異空間が消滅を始めるのだった。

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

「……ん、ん………? ここは……?」

 

「お目覚めやね、エリチ」

 

「希……?」

 

 眠りから覚めるように、絢瀬絵里の意識は覚醒した。顔を上げると、目の前には『いいものを見れた』と言いたげな表情を浮かべている東條希。

 あたりを見回すと、そこは教室。見慣れたクラスメイトが、全員机に座っている。

 

「あれ? なんか、すっごく怖い夢を見たような」

 

「私も! でもなんでだろ、全然思い出せない……」

 

「鬼ごっこ? うーん、めちゃくちゃ走ったような気がする……」

 

 隣からそんな会話が聞こえてくる。

 

「みんな、具体的には覚えとらんみたいやね」

 

 と、希がその様子を見ながら言った。

 

「……希は覚えてるの?」

 

「もちろん。なんてたって、巫女さんやから」

 

「……それは関係ないと想うんだけど」

 

 絵里の返しに、希は笑うだけだった。

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 音ノ木坂学院の正門前。そこに奉次郎と、疲労から膝に手を置くリヒトの姿があった。

 

「なんとか、勝てたようじゃな」

 

「ああ。ほんと、絢瀬の助けがなかったら負けてた……じーちゃん、なんか援護とかできないの?」

 

「そんなことを言われてものー、ワシはお前さんと違ってただの人間じゃから」

 

 と、軽い調子でそんなことを言った祖父に向けて、孫は字と目を向ける。

 

「……いや、じーちゃんはただの人間じゃねえだろ」

 

 奉次郎を『ただの人間』と称すには、あまりにも無理がある。闇の波動を感知できる時点で、ただの人間とは言えない。

 

「つか、闇の異空間と光の異空間と、毎回なんで違うかなー。いつも光ならある程度はこっちのペースで戦えるのに」

 

「そうじゃの……ところでリヒトよ。いつまでここにいるのじゃ?」

 

「え?」

 

「お主も学校あるじゃろ」

 

「………………………………あ」

 

 リヒトは慌てて腕時計を確認。

 長い針がもうすぐで『6』を示そうとしている。

 

「遅刻じゃん! 最悪!!」

 

 帰るために、急いでギンガスパークを取り出すリヒト。

 それを空へと掲げようとしたところで、

 

「………っ!?」

 

「ん? どうしたんじゃ?」

 

「……じーちゃんは、感じなかったの?」

 

「……なんじゃと」

 

 奉次郎の視線が鋭くなる。

 リヒトは、今一度視線をギンガスパークに向けた。

 

「…………」

 

 ギンガスパークは何も反応を示していない。

 だが確かに、あの時一瞬、ギンガスパークは反応を示した。

 リヒトは、視線を音ノ木坂学院に向けながら、

 

「……まさか、まだ終わってない」

 

 と、言った。




第11話 マリオネットの館─完─ 第12話へ続く……。

○登場怪獣
超波動怪獣クインメザード

○あとがき
以上をもちまして、第11話終了です。
音ノ木坂学院全体を使ってのメザード回、いかがだったでしょうか。個人的にはやりたいことができたので満足しておりますが、もっと学校内で恐怖する展開を書きたかった……とも思っています。
第12話に続く終わり方をしていますが、次回はいよいよオープンキャンパス回。どんな怪獣と戦うのか、誰が闇の魔の手に落ちてしまうのか、お楽しみにしていただければ幸いです。
では、次回もよろしくお願いします。


○次回予告
クインメザードは倒した。しかしギンガスパークが闇の気配を感じ取ったということは、まだ闇が学校に残っているということ。真意を確かめたいリヒトだが、女子校に入れるはずもなく、希に警戒してもらうしかなかった。
そして、怪獣が出現することもないままついにオープンキャンパスの日を迎えてしまう。
動きを見せない闇の勢力。なんとかして音ノ木坂学院に潜入することに成功したリヒトは、ついに闇の波動の正体を突き止める。そこにいたのは──。

次回、運命のオープンキャンパス
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