今回より、第12話スタートです。
第一章:見ていた者と今後の作戦
[プロローグ]
目の前に広がる光景に、ただ困惑するしかなかった。
──これは、現実なのか……?
何度も自分に問いかる。それほど目の前の光景は現実離れしていた。
そもそも、この部屋の扉が開かなくなっていることがおかしい。鍵は開いている。それなのにびくともしない扉。
閉じ込められた。そう判断するには十分な時間が経過していた。
唯一情報を得られるものとして、窓から見える景色がある。しかし、その景色が一番思考を困惑させる種となっていた。
いつもであれば青が広がっているはずの空は、紫色に覆われている。悍ましく、そして不気味なほどに光る紫の空。見てるだけで体の体温が奪われていきそうだ。
そんな空の下で、悍ましい顔の怪物と巨人が戦っていた。素人目でもわかる命をかけた戦い。互いが互いを殺すために振われる拳。
『────!』
怪物が咆哮する。
窓が──いや、建物全体が大きく揺れた。
鼓膜が切り裂かれそうで、頭の中に何かが入ってきて、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。そんな未知の感覚に目の前がぐらんぐらんと揺れた。
しかし、すぐにそれは断ち切られた。
光の援護を受けた巨人が体にあるクリスタルをピンク色に輝かせ、黄金に輝く光線を放ったのだ。黄金の光は怪物が呼び出した幻影の獣を、そしてこの空間そのものを破壊していく。
眩い光が収まると、窓から見るのはいつもの青い空の光景。
ほっと、気づけば安堵の息を吐いていた。
だが、
「これで終わりだと思う?」
──背後から聞こえてきた声に、心臓が跳ね上がる。
振り返ると、そこには黒いローブを着た銀髪の男と、髪も肌もすべてが白い少女がいた。
銀髪男の瞳がこちらを捉える。
「本番はここからじゃないか」
「…………」
「そう睨まないでよ。僕はきっかけを与えるだけ。やるかやらないかはあなた次第。でも、選択肢なんて限られてるよね。
──それで、覚悟は決まった?」
スッと目を細くするローブ男。
睨み返すように視線を向けると、銀髪の男はつまらなさそうな表情をする。
それらを見ていた白い少女は、腕を組みながらこちらを見て、
「お前は、本当にあいつらが廃校阻止なんてできるとでも思っているのか? 大人であるお前が、どれだけ足掻いてどれだけ知恵を振り絞っても解決できなかったことを、まだ未熟な子供がんしとげることができると、本当に思っているのか?」
と、言った。
その言葉に唇を噛んだ。
ここが畳み掛けるチャンスだと判断した銀髪男が近づいてくる。
「
銀髪男の瞳が、怪しく光るのだった。
[1]
「リヒト、ちょっといい?」
「? なに?」
風呂から上がり、コップに牛乳を注いでいるところで後ろから声をかけられた。
声の主はリヒトの母親、
リヒトと入れ替わりでお風呂場に向かったはずなのに、なぜここにいるのは疑問を感じつつ牛乳を喉に流し込むと、
「今日学校遅刻したんだって?」
予想外の言葉に、危うく吹き出しそうになった。
咳き込みつつ、口元の牛乳を拭いながら、慌てた様子で母親へ言葉を返す。
「な、なんで、どこでそれをっ?」
リヒトが今日遅刻したことは、リヒト本人とクラスメイトしか知らないはずだ。
それをなぜ、美鈴が知っているのか。
リヒトの口から今日遅刻したことは話していない。リヒトが話していないとなると、誰かから訊いたことになる。
「喫茶店にはね、いろいろな情報を話してくれる子がいるの」
その発言から、口の軽いクラスメイトが一人思い浮かんだ。父親が淹れるコーヒーが好きらしく、喫茶店の常連。
その他の各要素が完璧に近い形で犯人である可能性を上げていく。
「次会った時覚えてろよ〜」と心の中で思いながら、拳を握りしめるリヒト。
「それより、いつもと同じ時間に出ておきながら遅刻したって、どういうことかしら?」
スッと、目を細めてこちらを見てくる母。
リヒトは逃れるように視線を外し、なんとか理由をつけようと思考する。
「それは……」
ダラダラと、風呂上がりで熱った体に汗が流れ始める。もちろん熱いからではない。
元々芸能界で活動していた美鈴は、遅刻といったことに関して人一倍厳しい。これは一条家の約束事の一つになっており、やむ得ない理由を除いて遅刻は厳禁。学校や会社ではなく、友人間の約束事においてもだ。
遅刻とは、すなわち相手の時間を奪うこと。
よく一日の時間をお金に例えた話がある。一日は二十四時間。秒に変えると86400秒。これをお金の単位にすると86400円。
つまり人はみんな、毎日86400円口座に振り込まれ、それを使って一日の時間を買っている。どれだけ使おうと、どれだけ使わなかったとしても、翌日には必ず86400円に戻っている。
遅刻するということは、その分だけお金を消費しているのだ。これが自分だけならまだ『無駄遣い』で収めることができる。しかし、『相手』が出てくるとその相手の86400円からお金を使わせているということになるのだ。
遅刻するということは、その分のお金をドブに捨てているようなもの。誰だって自分のお金を他人に捨てられれば怒る。
だから、遅刻は絶対にしてはいけないのだ。
このことは、記憶喪失になった後も改めて教えられた。
それをわかっているからこそ、リヒトはどうするのか考えていた。
「えっと……」
視線が泳ぐ。
そんなリヒトを見て、美鈴がため息をこぼす。
「ま、次は気をつけなさいよ。受験生なんだから、変なことで成績落とさないようにね」
と言った。
もちろん、遅刻した理由は音ノ木坂学院で起きたクインメザードの事件なのだが、それを美鈴は話していない。
美鈴は自分の息子が『ウルトラマン』として人知れず怪物と戦っていることを、さらに言えば奉次郎の娘でありながら『ティガ伝説』のことを知らないのだ。これは奉次郎の教育方針であり、子供たちには『ティガ伝説』のことを教えないと決めていたらしい。
だから美鈴は何も知らない。
知らないが、親として息子が『何か』を隠していること。そして『何か』していることを感じ取っているのだろう。だから今回は目を瞑ってくれた。
そうであると、子もまた親の心を感じ取っていたのだ。
「わかってるよ」
ただでさえ、記憶喪失として迷惑をかけているのだ。せめて約束事だけはしっかり守らないとと、リヒトは思っている。
牛乳を飲み干したコップを濯ぎ片付けると、美鈴の横を通って自室へと向かう。その背中に向けて、美鈴は再度声をかけた。
「ねえ……記憶の方はどう?」
聞きにくそうに、しかし意を決して訊いてきた声。
リヒトは歩みを止めて、少し考えてから、
「……やっぱり、気になる?」
振り返りつつそう言った。
「うん。気になるわよ。息子が記憶喪失になるなんて、親としてもなかなかないことだからね。それに、追い詰められてないかなって」
「追い詰められる?」
意外なワードに、リヒトは首をかしげる。
「そっ。今の自分と、みんなが話す『一条リヒト』との違いに追い詰められてないかって。本当は結構意識しちゃうでしょ? みんなが語るリヒトの像は、今のリヒトとは遠いからね」
「…………」
それは、リヒトが常々感じ取っていたこと。記憶喪失では納得のできない『差異』を感じるのだ。
今のリヒトと『一条リヒト』の違い。無意識だとしても、違いに追い詰められているのは事実かもしれない。
まるでそれを見透かしたかのように、美鈴は表情を柔らかくして言う。
「でも安心しなさい。今の方が、親が知ってる『一条リヒト』に近いから。みんなが知っている『一条リヒト』は、リヒトが作った性格。親である私が言うんだから、信じなさい」
「リヒトが作った、性格?」
気になったワードを訊き返す。
「そっ。リヒトはね、さっきみたいに表情に出やすい性格だったの。でも、手品を始めた頃そのせいでタネがすぐ相手に伝わっちゃってね。それを解決するために、飄々とした性格を演じ始めたの。そしたら、それがだいぶ板についてきちゃってね。だから、ママたちとしては、久しぶりに前のリヒトに会えた気分がして、ちょっとだけ嬉しいの。だから、あんまり焦らないでね」
懐かしむように、今はここにいない『一条リヒト』を頭に浮かべながら美鈴は語る。
そして、最後はリヒトを安心させるように微笑んだ。
「…………」
「それにね、記憶喪失だからってあまり遠慮しないこと。迷惑だなんて思ってないから。むしろ『大変だろうな』ってこっちが思っちゃうくらいなんだから。リヒトは自然体で、リラックスしていればいいの。
大丈夫。記憶だってそのうち戻るわよ」
「……うん、ありがと」
おやすみ、と言ってリヒトは自室に向かった。
☆★☆★☆★
自室に戻ったリヒトは机の上の置かれているノートや教科書を端に移動させ、その空いたスペースに今持っているスパークドールズを並べ始めた。
「ダークガルベロス、カオスジラーク、キングパンドン、ゾアムルチ、モンスアーガー……五体、か」
並べ終えたところで、タイミングよくスマホの着信が鳴る。
画面には『東條希』の文字。
リヒトは画面をタップして、スマホを耳に当てる。
『やっほー、りっくん元気にしとった?』
聞こえてきたいつも通りの楽観的な声に、リヒトは少しだけ面食らった。
「その様子じゃ、案外大丈夫そうだな」
『ん? 心配してくれたん?』
「まあ、規模が規模だったからな。俺も行くの遅れたし」
これはまではとは異なり、今回の騒動は学校全体を巻き込んで引き起こされた。精神的疲労はこれまで以上のものだったのではないかとリヒトは思っていただのだが、返ってきた声は微塵も感じさせないものだった。
『大丈夫やで。巻き込まれるのはいつものことやから。それに、最後は助けてくれるって、いつも信じてるんやから』
「そ、そっか」
信じている、と言われ少しだけ気恥ずかしくなるリヒト。
これではすぐにいじられると思い、本題を切り出すことにした。
「それで、どうだ? 何かわかったか?」
『何も。今日一日闇の波動は感じ取れんかった』
「……本当か?」
『本当』
「…………」
クインメザード撃破後に、ギンガスパークが感じ取った『闇の波動』。それは確かに音ノ木坂学院から感じた。
その捜査を希にお願いしたのだ。あの後ではリヒトも学校があったし、何より男子であるリヒトがなんの理由もなしに女子校へ入ることはできない。
だから、希に捜査をお願いしたのだが、返って来たこ言葉にリヒトは怪訝な表情を浮かべる。
「確認だけど、希はあの後感じ取ったか?」
『うーん……感じ取らんかったかなぁ。
ギンガスパークが感じ取ったの一瞬やったんやろ? ギンガスパークとウチじゃ感度が違うから、ギンガスパークが一瞬やったんやらウチはほぼ感じないと考えた方がええで』
「そうか……んー、気のせいだったのかな。例えば、倒したクインメザードの残滓を感じ取った、みたいな」
『それやったら、今までもどこかで同じことがあるはずやん? 今回が初めてなんやろ?』
希の問いにリヒトは「ああ」と返す。
『それやったら、まだ学校に闇が残っていると考えるべきやね。ギンガスパークは元々、神田明神に祀られていた御神体。「イージスの力」が眠る神田明神に長い間あったんだから、闇の力を感じ取ることに間違いはない、とウチは思うよ』
希の言葉を聞いて、リヒトは改めてギンガスパークを手にとる。
銀色に輝くそれは沈黙したまま。
(ギンガなら、何かわかるのか。
……でも、全然会話できないんだよな)
リヒトがウルトラマンギンガと会話できたのは、西木野真姫の件が最後だ。あの時、真姫が自分の意思で闇の力に勝つために手を出してはいけないと、ギンガが言った。あれ以来、ギンガとの間に会話はない。
ギンガはどこまで知っているのか。それを少しでも教えてほしいと思うが、こちらからの呼びかけには全然反応してくれなかった。
「……せめて狙われている人がわかればな」
『狙われている人?』
「ああ。今日のは違ったけど、敵は今まで誰かの心の闇に漬け込んでいた。だから、ギンガスパークが感じ取った闇の波動も、また誰かが心の闇を漬け込まれたんじゃないかって思ってな」
『なるほど……』
リヒトはこれまでのことを振り返ってみる。どれも闇の魔の手は、人間の心の闇に漬け込み、その闇を利用して怪獣にダークライブさせていた。
己が進むべき道に迷う者。勇気が出せず、自分のやりたいことに一歩踏み出せない者。過去の出来事から、孤独を漬け込まれた者。自分を押し殺してでも、自分の守りたいものを守ろうとした者。
それぞれの人物を思い浮かべると、あることに気づいた。
「そういえば、結果的にだけど狙われた人物は全員μ’sのメンバーだ。もしかしたら今回もμ’sの誰かが狙われてるんじゃないか?」
『うーん、ウチが見た感じだと、誰も心に闇を抱えてそうな子はもうおらんけどな』
「他人が見たじゃ分からない、もっと深い部分に闇を抱えている子とかは?」
『……そこまでいったら、もうウチらで解決できるレベルの問題を超えると思うんやけど』
画面の向こうで希が若干引いているのがわかる。
こほん、と一つ咳払いをした。
「希から見て、今のところμ’sの中に狙われてそうな子はいないってことでいいか?」
『そうやね』
「……μ’sになる子が狙われたのか、それとも狙われた子が結果的にμ’sになったのか。いや、それだと今回はなんで学校全体を巻き込んだんだ……? 他にもまだμ’sになる可能性がある子がいるってことか?」
『狙われた理由の方はわからんけど、これ以上μ’sが増えることはないよ』
希は断言した。
「なんで?」とリヒトが返すと、希はいつになく真剣な声音で言う。
『μ’sの由来は、九柱であるギリシャ神話の文芸の女神・ムーサの英語、フランス語読みからつけたもの。だから、これ以上増えることはない』
「…………」
希の言葉には、何か力のようなものが込められていた。譲れない何か。他者が踏み込んではいけない、完成された作品。
それがμ’sだと、言葉の外で語っているように感じた。
「そっか……」
言葉に詰まってしまう。
そんなリヒトに気づいたのか、希がハッとなる息が聞こえた。
『そうや! りっくんの方は大丈夫なん? また前みたいに襲われたりしとらんよな?』
「ああ。一応、警戒はしてる。もしかしたらまだ戦いが終わってないってことだからな」
リヒトは以前、音ノ木町から離れた時にローブ男に襲われている。これはリヒトが音ノ木町から離れたことが原因であり、音ノ木町にいる間『イージスの力』から加護を受けることができる。その加護によって、敵から直接狙われるのを防いでいたのだ。
闇に対抗できる唯一の光、ウルトラマンであるリヒトが直接倒されたとなれば、闇に囚われた人を救うことができなくなる。音ノ木町から離れるのは、あまりにもリスクが大きいことなのだ。
しかし、今回は母親の美鈴が関係しているため帰省せざるを得なかった。
リヒトの両親は、リヒトがウルトラマンとして戦っていることを知らない。だから、なかなか記憶が戻らないのであれば、いい加減に休学をやめて学校に復学してほしいと言われたのだ。
リヒトだって今年は受験生。ウルトラマンとして戦う以前に、一人の高校三年生としてやらなくてはいけないことがある。そちらをやるためにも、リヒトは音ノ木町から実家の方へ帰らなければいけなかった。
それに、リヒトとしては『異形の海』の戦いでローブ男が消えているところを目にしている。戦いが終わったと、思ってしまっても仕方ないのだ。
もちろん、二度と同じ失態をしないように対策をした上で帰省している。
「じーちゃんからもお札を何枚かもらって、この前も結界を張ってもらった。前にみたいにならないように気をつけてるけど……もうすぐで俺の方は夏休みに入るから、そしたらすぐそっちに行くわ」
『そうやね……ふふっ、待ってるで』
「ああ」と返事をしたところで、リヒトはひとつ気になることが思い浮かんだ。
「そうだ。大丈夫なのか、と言えば、他の生徒たちの様子はどうなんだ? みんな、今回のことを覚えていたりするのか?」
学校全体を巻き込んだクインメザードの襲撃。いつもはギンガと怪獣の戦いが始まる時に位相が変わるため戦いが公になることはないが、今回はリヒトが駆けつけた時にはすでに闇の位相空間になっていた。
そして学校にいた生徒全員がその中にいたのだから、今回は覚えている人がいてもおかしくない。花の女子高生が、あんなものを見て話題にしないとは考えにくい。
しかし、返答はリヒトが思っていたのとは違った。
『それやったら心配あらへんよ。みんなよく覚えとらんみたい。悪い夢でも見た、って感じやったなあ。まあ、中には無意識にスマホを見ないようにしている子もおったけど、今の時代にはいい薬なんやないかな』
と、面白おかしな話を語るかのように希は言った。
『覚えているのも、ウチと穂乃果ちゃんとエリチだけ。多分あの時学校にいた生徒と教師の中で、この三人以外は覚えとらんと思う。もしかしたら、様子がおかしくなったことで逆に覚えとらんことになったのかもね』
「そっか……まあ、しばらくスマホを見たくない程度に済んでいるならいいかな。覚えていたら、それこそ大変なことになっただろうし」
希の言った通り、常にスマホと共にある現代で、そのスマホから距離を置くのはある意味いいことなのかも知れない。
と、そこへ希のあくびが聞こえてきた。
「やっぱり疲れてるか?」
『そうやね。怪獣の件もやけど、オープンキャンパスに向けての最後の仕上げが結構来てるみたいや』
「いよいよだもんな。俺は見ることできないけど、頑張れよ」
『うん。頑張る』
そこで本日の通話は終了した。真っ暗になった画面に映る自分の顔を見ながら、いよいよ『運命の日』がすぐそこに来ているのだと感じていた。
記憶喪失になって、穂乃果たちと再開して、学校の廃校を阻止するためにスクールアイドルになったことを聞いて、ダンスコーチをやってと頼まれて……。振り返れば色々とあって、そして穂乃果たちの目標である廃校阻止のための、最初の壁。オープンキャンパスがもうすぐそこに迫っている。
ここで来場してくれた中学生にアンケートを取り、その結果で音ノ木坂学院の運命が決まる。
おそらく、その運命のほとんどがμ’sにかかっていると言ってもいい。もちろんそれ以外でも、さまざまな部活や団体が音ノ木坂学院を存続させるための案を考えているだろう。
だが、着々とスクールアイドルの熱が高まっている今、やはり鍵になるのはスクールアイドルであるμ’sだ。きっと今まで以上の緊張感が彼女たちを襲うだろう。
そして、
(──もし、俺が敵サイドだったとしたら、動くのはオープンキャンパスの日。ここがターニングポイントになる)
ギンガと出会った時に見た、音ノ木坂学院が壊されるビジョン。それが脳裏に浮かんでくる。
阻止しなくてはいけない未来。変えなくてはいけない未来。
敵が動くとしたら、間違いなくそこだろう。ならばこちらも、こそに合わせて準備をする必要がある。
「あー、やっぱり音ノ木坂に潜入できねえかなー。
……ワロガがあれば楽だったんだけど」
目の前に並ぶ怪獣のスパークドールズの中に、リヒトが望む怪獣の姿はない。
ワロガであれば、自身の姿を球体状に変化させることで上空から視察ができた。しかし、ワロガとの戦いが『異形の海』で行われた影響か、スパークドールズを回収できなかったのだ。もしくは、今回と同じく闇そのものを破壊することができる『ギンガサンシャイン』によって、クインメザードのスパークドールズ同様消滅してしまったか。
せめて手持ちの中で姿を変えることができる奴がいればな、と考えいると、
「……ん? 待てよ……。ギンガの時に身長を変えられたんだ。怪獣でも同じこと、できるんじゃないか……」
リヒトの視線が回収のスパークドールズに向けられる。
並べられている五体。
(もし、だ。もし怪獣にライブして、自在に大きさを変えられるなら、潜入する方法さえどうにかすればいけるんじゃないか……)
一番の問題は、女子校である音ノ木坂学院に男子であるリヒトがどうやって入るかだ。これが解決しなければ、例え怪獣の身長を自在に変化できたとしても、肝心の闇の波動の正体を探ることができない。
(いや、まずは怪獣にライブしても大きさを変えられるかを先に調べるんだ)
リヒトは五体のスパークドールズのうち、唯一人型の姿を持つカオスジラークを手に取る。
左手にカオスジラーク、右手にギンガスパーク。
いざ。ギンガスパークの先端を当てようとして、
「……外、行くべきか?」
もし巨大化してしまった場合の被害を考えて、そんなことを呟くのだった。
第二章へ続きます……。