ギンガ・THE・Live!   作:水卵

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第14話 ロストメモリー
第一章:記憶の運び人


 ひとりの少女が歩いていた。

 百人が百人美人だと称するであろう少女。金髪碧眼のアメリカ人。モデルの様にスタイルが良く、そしてその表情は底抜けに明るかった。

 真夏の太陽が少女の笑顔と美しい金色の髪を照らす。

 それらが少女の魅力を際立たせており、周囲の人々の視線を奪っていた。

 しかし、周囲の視線など気にする様子はなく、少女は目的地に向けて進む。

 そして、 

 

「待っててね、ライト」

 

 目的地にいるであろう人物の名をつぶやくのだった。

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 神田明神では九人の少女たちが舞っていた。

 夏の暑さにも負けない熱い思いを胸に秘め、燦々と輝く太陽よりも輝く笑顔で、今できる最大限のパフォーマンスを披露している。一眼見れば、彼女たちがどれほどの練習をしてきたのかわかるだろう。

 汗を流しながらも、少女たちは踊る。

 自分たちの『夢』を叶えるため。

 九人の少女たちは、みんな音ノ木坂学院の生徒であり、そしてスクールアイドル『μ’s』である。彼女たちの通う学校は、現在廃校の危機に瀕しており、それを阻止するべく少女たちは立ち上がった。

 彼女たちの目標はスクールアイドルの甲子園とも言える大会『ラブライブ!』に出場し結果を残すこと。そうすれば音ノ木坂学院の名前が広がり、入学希望者が増えれば廃校阻止につながると考えたのだ。それを実現させるべく、日々練習に励んでいる。

 そして、そんな少女たちを前にはひとりの少年が立っていた。

 記憶喪失の少年、一条リヒト。リヒトには昨年の十二月より前の記憶がない。アメリカでダンスを学んでいる際に何かしらの『事故』に巻き込まれ、記憶を失くしてしまった。それにより、自分がどこで生まれ、どの様に育ったのかがまったくわからない。

 リヒトの記憶は何ひとつ残っていない。何ひとつ残らずに、全ての記憶を失ってしまった。自分がどのようにして記憶を失ったのか、原因である事件の概要すらわからないのだ。

 リヒトの他に一緒に巻き込まれた少女がいたが、彼女も事件のショックから記憶を失くしてしまっていた。幸い、少女はその日だけのことだけ忘れており、今までのことは覚えていた。リヒトのようにすべてを忘れたわけではない。

 別れ際、いつか思い出したら教える、という約束をしてからもう半年以上経過していた。

 そんなリヒトがμ’sのダンスを見ているのは、ダンスコーチを頼まれたからだ。μ’s結成当初、初期メンバーである高坂穂乃果、園田海未、南ことりはダンス経験などまったくない素人。そんな彼女たちが掲げた大きすぎる目標を達成するには、一からダンスを学ぶ必要があった。

 そこで、穂乃果たちと交友のあったリヒトがコーチとなることになった。

『一条リヒト』はプロのダンサーを母親に持ち、そして自らもプロのダンサーになるべくアメリカにまで行った経歴を持つ。記憶喪失ではあるものの、ダンス技術については覚えているらしく、リヒトの指導のおかげで穂乃果たちは着実に力をつけていった。

 絢瀬絵里が加入後は、バレエ経験がある彼女がダンスの完成度を見ていたが、絵里を含めた九人の出来を判断するにはリヒトの眼が必要だった。そのため、こうして踊る少女たちに視線を向けているのだが、今日はその視線がたまに虚空を見つめている時がある。

 

(……いけねぇ。まただ)

 

 リヒトもそれは自覚していた。

 そして、こうなってしまう理由にも心当たりがあったのだ。

 

(ことりは……踊れてるな)

 

 南ことり。『一条リヒト』とは幼い頃からの付き合いがあり、先日この町で暗躍している『邪悪な魔の手』の目論みに巻き込まれた少女。

 ことりのバイト先であるメイド喫茶で起きた事件。先輩である『マイマイ』と言う人物が、ことりに対して抱いた復讐心がキッカケに始まった悲劇。

 その悲劇はなんとか解決はできたものの──いや、あれを果たして『解決した』と言っていいものなのだろうか──あの事件の中でリヒトは、ことりにウルトラマンギンガに変身するところを見られた。いや、緊急時だったため『見せた』とも言えるであろう。あの場にいた桐島アスカと美村涼は、メトロン星人によって記憶操作をされていたため、この日のことを詳しくは覚えていない。だからリヒトがギンガに変身したことも覚えていないし、あの悲劇が現実に起きたということも覚えていない。

 だが、ことりは違う。彼女は記憶の操作などされておらず、あの悲劇が現実に起きたことだと覚えている。

 リヒトが右目を潰されてもすぐに治ったこと。

 マイマイがザムリベンジャーにダークライブし、自分の命を狙ってきたこと。

 ウルトラマンギンガの正体がリヒトだったこと。

 そして、あの日以降マイマイが行方不明だということ。

 別に正体がバレたからと言って、相手がことりであるため特別なにかがあるというわけではない。しかし、『友人に正体がバレた』ということが、リヒトの心に影を落としていた。

 そして行方不明のマイマイ。これはアスカから聞いた話だ。あの日以降マイマイが行方不明になっており、同時にほぼ毎日と言っていいほど店に来ていたハットさんの姿もない。

 ハットさんの方はなんとなく想像ができる。その正体がメトロン星人であり、彼はリヒトがギンガにウルトライブする際に『白い少女』の攻撃からリヒトを守ってくれた。その時に大怪我を負い、それを癒しているのだと考えられる。もしくは、『白い少女』の手によってすでに消されてしまったか。

 そしてマイマイ。リヒトが最後に見た彼女の姿は、とても傷ついていた。自分の『好き』が破壊され、自分の居場所を自分で壊してしまった。ザムリベンジャーにダークライブした彼女を元に戻すことはできた。しかし、その心を救えたかと問われれば、それは『否』という回答になってしまう。

 救えていない。だからあの時、店に会いに行ったのだがマイマイの方から拒絶されてしまった。

 そして……最悪の展開がどうしても脳裏を横切ってしまう。

 

(あの時、一度ギンガのライブを解除して怪獣にライブするべきだったんだ。そうすれば、マイマイを話すことができた)

 

 ウルトラマンギンガのライブ時間はおおよそ三分。

 怪獣へのライブ時間は無制限。

 それを考えれば、一旦怪獣にウルトライブしてマイマイと会話する時間を作ればよかった。そうすれば、彼女の心も救うことができただろう。

 しかし、怪獣へのウルトライブは時間制限がない代わりに、ギンガに比べてダメージフィードバックが強いのだ。ギンガですら苦戦を強いられたザムリベンジャー相手に怪獣で立ち向かえば、逆にダメージフィードバックによって戦闘不能に陥りかねない。

 とはいえ、いくら考えても既に終わってしまっている。しかしこのやりきれないモヤモヤが、リヒトの集中を妨げているのだ。

 

「……はあ」

 

 ついため息が漏れてしまう。

 ちょうどそこで、μ’sのダンスが終わった。

 タイミングが悪い。

 

「りーくん、私たちのダンスそんなにダメだった?」

 

 ため息のタイミングを考えれば、穂乃果からそう問われても仕方ない。

 違うと、否定しようとしたが、

 

「というか、あんた集中して見てたの? 時々視線があっちこっちに行ってたわよ」

 

 それよりも先ににこの言葉が飛んできた。

 

「そういえば、今日は一条先輩の棘のような視線が弱々しかったにゃー」

「凛ちゃん、棘は言い過ぎじゃないかな」

 

 苦笑いをしている花陽ではあるが、彼女もまたその心の内ではいつもは重いリヒトの視線が弱いことを感じていた。

 

「ダンスはダメじゃない。ため息は、俺に対してでただけだ」

「何か悩み事がある様に見えるけど、大丈夫?」

 

 絵里が心配そうにリヒトの方を見てきた。心配をかけまいと、頷いて『大丈夫だ』と返すが、

 

「大丈夫じゃないでしょ。明らかに変よ」

 

 同じくリヒトの異変を感じ取った真姫に指摘されてしまった。

 

「ことりのことをよく見てた気がするのですが」

「もしかして、先輩たちの間で何かあったりして〜」

「「…………」」

「え?」

 

 凛が目を丸くする。海未の言葉を聞いて、半分思いつきの冗談であったのに、まさかこんな反応が返ってくるとは思っていなかった。

 

「……何かあったの?」

 

 と、絵里が少し目を細めてきた。

 

「……何も、ない」

 

 事実を説明するわけにもいかず、苦し紛れの言い訳をするも説得力など皆無。

 ダンスを見る約束をしている手前、それに集中できていなかった理由を求められるのは当然のこと。なんとか納得してもらえる理由を考えなくては、と思っていると希と視線があった。そして、彼女はリヒトにだけわかるようににっこりと笑う。

 

「りっくんも見てしもたんやろ。ことりちゃんのメイド姿」

 

 希の言葉に全員が「ああ〜」と言った反応をする。

 

「ことりちゃんのメイド姿可愛かったもんね〜、りーくんも目を奪われちゃったわけですか」

 

 穂乃果がニヤニヤとこっちを見てくる。

 あながち間違いではないため、肯定せざるを得ない。

 

「……それだけじゃない気もするけど」

 

 真姫はどこか疑問が残っているのだろう。納得できていない様子をしている。

 とはいえ、不本意だが希の助け船に乗るしかないだろう。そう思って口を開きかけ、

 

 

 

「おーい! ライトー!」

 

 

 

 明るい少女の声が聞こえてきた。

 全員が声の聞こえてきた方へ視線を向ける。

 そこにいたのは、太陽の光を受けて輝くブロンドヘアーの女の子。モデルのような身長に体格、満面の笑みを浮かべてコチラに走ってくる少女。

 リヒトの脳には、疑問が浮かんだ。

 唖然とするリヒトに向け、少女は飛び込んだ。

 

「会いたかったわ! ライト!」

 

 満面の笑みでリヒトの胸にダイブした少女の登場に、μ’sは一白置いて驚きの声をあげるのだった。

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 

 リヒトはその少女に身に覚えがあった。というか、知っている相手だ。友人とも言う。

 しかし、少女がここにいることへの疑問が勝ってしまう。目の前の少女は、本来遠い海の向こうの国の少女だ。その距離を考えれば、気軽に日本へとやってくることはできない。

 それなのに今、確かに少女は目の前にいて自分に抱き付いている。肩に手を置いてみると、しっかりとした感触が返ってくる。

 

「キャス!? なんでここにいるんだよ!?」

「あら、そんなの決まってるわ。ライトに会いにきたのよ」

「いや、嬉しいけどさ……だってアメリカだろ? よく日本に来たな」

「ライトのためなら国境なんて簡単に超えるわ」

 

 満面の笑みで答える少女。

 病院で初めて会話をした時から変わっていない。いや、正確には『一条リヒト』と出会った時から変わってなどいないのだろう。

 しかし、今のリヒトは記憶喪失。少女とは病院で目が覚めた時に初めて会話を交わした。

 そう、目が覚めてた時、自分のこと何一つ覚えていない、わからない。そんな不安を拭ってくれたのが目の前にいる少女なのだ。その時点でリヒトは目の前の少女に感謝をしている。

 言って仕舞えば、今のリヒトにとって初めて会った人なのだ。心のよりどころが少女に向くのは当然のこと。おかしなことに、今のリヒトにとってみれば、μ’sのメンバーと話すよりこの少女と話す方が気が楽なのだ。

 

「あのー、りーくん? その人は……」

 

 と、そこで穂乃果が声をかけてきた。

 見ればμ’sメンバーは置いてけぼりを喰らっていた様子。その中で、絵里だけがやや面白くなさそうな表情をしていた。

 少女もμ’sの反応に気づいたのか、リヒトから離れると少女たちの方へ向き直る。

 

「初めまして。私はキャスリン・ライアン。気軽にキャスって呼んでくれると嬉しいわ。ライトとは、そうね……とっても仲の良いチームメイトな関係よ」

「チームメイト?」

 

 と、穂乃果が言った。

 

「そう。私もライトと一緒にダンスを学んでたの。その時に一緒にチームを組んで、いろいろなところで踊ったのよ。あの時はとても楽しかったわー。それなのに、ライトったら忘れちゃってるの」

「それは……」

「ああいいの! もう謝罪は十分。あまり謝らないでほしいわ。記憶を失くしたのは私も同じだったし。それより、この子たちは? ライトの彼女?」

 

 ここでキャスはハッとして、

 

「もしかして日本のアニメ特有のハーレムを作ったの!?」

 

 キラキラと瞳を輝かせてリヒトに詰め寄った。

 

「違う」

「え〜、つまんないの」

「つまんなくて結構」

「むぅ、前までなら『もちろんだせ!』って言ってくれたのに。やっぱりライトは記憶なくなって、つまんなくなったね」

「…………」

 

 改めて感じる『一条リヒト』と今の自分のギャップ。

 子供の頃、絵里と交わした約束から思っていたが『一条リヒト』は今の自分とは対照的な性格のような気がする。聞いた話の中では、まるで別人のようにも感じてしまう話があるのだ。

 

「あ、ごめんなさい。そう言うつもりじゃなくて」

「知ってるよ。分かってるから安心しろ」

「……ありがとう」

 

 キャスもリヒトの表情が暗くなってることに気づき、慌てた様子で謝罪を述べた。もちろん、言葉通りの意味ではないと言うことくらい、リヒトも理解している。

 

「ま、てなわけで、俺が向こうで知り合った人物って訳だ。見ての通りアメリカ出身だけと、日本に住んでたこともあるらしくこの通り日本語はペラペラだ」

「よろしくね☆ そういえば、さっきまで音楽が聴こえていたけど」

「ああ、それはあれだ。みんなが踊ってる時の曲だ」

「踊り? あなたたちもダンスやってるの!?」

「は、はい。正確にはスクールアイドルをやってます!」

「スクールアイドル?」

 

 穂乃果の言葉に首を傾げるキャス。無理もないだろう。『スクールアイドル』と言う単語自体、リヒトだってここに来てから知ったのだ。日本においても、まだマイナーな方の文化だろう。

 キャスから質問を受けた穂乃果は、『スクールアイドル』について簡単な説明を行った。

 説明を聞いたキャスは、その瞳をキラキラと輝かせる。

 

「何それ! すっごく素敵なことじゃない! さすが日本ね、知らない間にどんどん魅力的な文化を生み出してるわ!」

「わかってるじゃない」

 

 にこが得意げに笑って見せる。

 

「それじゃあ、ライトもスクールアイドルをやってるの?」

「いいや、俺はやってないぞ」

「そうなの? じゃあ、どうして一緒にいるの?」

「ダンスのコーチをしてるんだよ」

「コーチ?」

「そ。今は九人いるけど、始めた時は三人しかいなくて、しかもダンス初心者だったからな」

「ふーん」

 

 キャスは改めて九人の少女たちに視線を向けた。その瞳は、まるで何かを観察しているようだ。一人ひとり、ゆっくりと見ていくキャスの瞳。一瞬、その瞳に何か別の色が浮かんだように見えた。

 しかし、次の瞬間パッと表情を明るくしてキャスは言う。

 

『うーん、いいね。それなりに鍛えられてるじゃん。よく見てるんだね、ライト』

 

 しかも英語でだ。

 

『まあな』

 

 こちらも英語で言葉を返しておく。

 

「んじゃま、ひとまず休憩にするか」

「そうやね。りっくんはキャスさんの相手をしなきゃいけへんそうやし、ウチらのダンスもまともに見てなかったもんね」

「希、言葉に棘がある気がするのだけど?」

「気のせいや。ところで、さっきから気になってたんやけど、りっくんなんでライトって呼ばれてるん?」

 

 みんながそれぞれ休憩に向かう中、希だけはその場に止まって質問をしてきた。

 

「『リヒト』って名前はドイツ語で『光』を意味する単語が由来なんだ。それを説明したら英語で『光』を表す『ライト』って呼ばれてるわけ」

「あだ名で呼んだ方が特別感出るでしょ? 私とライトはそう言う関係だから」

 

 パキッと、絵里が水分補給のために手にしたペットボトルが潰れる音が聞こえた。

 

「いや、違うだろ。なに記憶喪失の相手に刷り込もうとしてんだよ」

「んも〜、ライトだって最初は騙されてくれたじゃない」

「そうやったん?」

「…………ノーコメント」

 

 騙されてなどいない。

 目の前に自分を心配してくれる少女がいて、『私はあなたの彼女よ』と言われて半分信じかけたが、完全には信じなかった。だから騙されてはいない。

 と、そこへ新たに近づいて来る影がひとり。

 

「ねえ、キャスさん」

「キャスでいいわよ。えっと、穂乃果だっけ? あなた」

「はい。ちょっと聞きたいんですけど、アメリカでのりーくんってどんな感じだったんですか?」

「うん? それはね──」

 

 と、そこで一度リヒトを見てくる。

 

「とっても面白い人。そして、とても可哀想な人」

「可哀想?」

「だって、記憶喪失になっちゃったんだから。まあ、私もそうなんだけど……でも、記憶喪失になった原因が、ね……」

 

 そう言って、表情を暗くするキャス。

 だが反対に、リヒトは雷に打たれたかのような衝撃を感じていた。

 今、彼女はなんと言った? 先ほどの言葉に何か引っ掛かりを感じたのはなぜだ?

 

「キャスさんはりーくんが記憶喪失になった原因を知ってるんですか?」

 

 穂乃果は何気なく聞いたのだろう。

 しかしその問いかけを聞いていたリヒトは目を見開いた。

 

「キャス……」

 

 震える声で彼女の名を呼ぶ。

 

「まさか──」

 

 リヒトの視線に気づいたのか、キャスがゆっくりと視線を合わせて頷く。

 

「……うん、思い出したよ。『あの日』のこと。ライトと私が記憶を失くした日の出来事」

「本当か!?」

 

 返事を聞いたリヒトがキャスの肩を掴んで迫る。

「いたっ」と小さな悲鳴が上がるが、リヒトの耳には届いていない。それよりも、リヒトはようやく知ることができる情報の方に目が行っていた。自分が記憶喪失になった原因。それを知ることができれば、何か記憶を取り戻すきっかけになるかもしれない。ただ、それだけを考えていた。

 

「ちょっとりーくん! 落ち着いて! 痛がってるよ!」

「あ、わりぃ」

 

 穂乃果がリヒトの手を掴む。そこでようやく、キャスの表情が歪んでいることに気づいた。

 慌てて離れる。

 

「すまん」

 

 肩をさすっているキャスを見て、いたたまれなくなったリヒトは謝罪を述べた。

 すると、キャスは突然何かを思いついたようにニヤリと笑う。

 

「やーだ。許してあげない」

「え」

「怖かった。すっごく痛かった。だからバツとして思い出したことを話してあげません」

「え、ちょ、嘘だろ?」

「本気です。でも、どうしてもって言うなら──」

 

 ふと、リヒトは嫌な予感を感じた。

 そしてリヒトの予感通り、ウィンクをしたキャスの口から、

 

 

 

「私とデートしてね」

 

 

 

 トンデモ発言が飛び出すのだった。




次回、第二章:ドキドキデートとリヒトの過去に続く……。
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