気づけば時刻は夕方近くになっていた。海で十分遊んだリヒトたちは別荘へと戻り、再び休息の時間を過ごすことにした。
しばらくして、そろそろ夕飯の支度をしよう、とリヒトが言った。材料を買うため近くのお店まで買い出しに行くこととなり、そこで行われたメンバー選抜。当然、この近辺の情報を持ち合わせている真姫が一番に選ばれる。
そして、真姫と話をしたいと考えていた希も志願してメンバーとなる。
ここまではよかった。周囲の視線がリヒトへ向けられていると気付いた時、希は自分が犯してしまった失態に気づいた。
リヒトも遅れて気づいたが、理解し合えるのは希とリヒトだけ。リヒトが『行かない』という選択肢を取るのはあまりにも無理な話だ。
結果、リヒトは唯一事情の把握ができる絵里に言葉を残し別荘を出た。
☆★☆★☆★
「ごめんな、りっくん」
「謝っても仕方ねぇさ。どのみちどっちかの護衛にしか回れねぇし、なら、外に出るこっちに着いて行った方がまだいいのかもしれなって考えればいいさ」
リヒトの体は一つしかない。だからμ’sが別荘に残り、買い物班と別れた時の対応方法はこれしかない。
どちらかについていって、どちらかは可能な限り迅速に駆けつける。
「さっさと買い物済ませて帰ろう。それがいい」
靴紐を結び終え、外へと出る。先に待っていた真姫はリヒトの姿を見ると、
「それじゃあ着いてきて」と言った。
「なあ、西木野。店までは距離あるのか?」
「それなりにね」
そうか、と自然と声が出た。距離があるとなると、余計に気を張らなくてはいけない。
リヒトと希は真姫の案内の元歩き出した。夕方とはいえ、季節は夏。アルファルトからの熱に自然と汗をかく。
歩き出してしばらくは無言の時間が続いた。自らを多く語らない真姫。普段は進んで会話をするのに、このタイミングに限っては無言を貫く希。そうなると、リヒトが会話を回すべきなのだろうが、このメンバーの選出が意外すぎて何を話せばいいのかわからなかった。それにリヒトの意識は基本周囲への警戒に割いている。会話を回すのは無理な話だ。
「…………ねえ、ちょっといいかしら」
並走する真姫が言った。
その言葉はリヒトと希両方に向けられている。
「リヒトさんとはさっきの話の続きだけど……」
「さっき?」
「海での話よ」
「…………」
まさか、ここで続きを話すのか? とリヒトに緊張が走る。
「希せんぱ──」「ん?」とわざとらしい希の返事が入る。
「──希にも聞きたいの。あの日のことを」
「あの日? どの日のこと?」
「私が怪獣になった日、リヒトさんと一緒にいたわよね?」
「いたよ」
希は真姫の言葉に即答した。隠すことの程ではない、と判断してのことだろう。あっさりと返答があるとは思っていなかったのか、真姫が少し驚いた表情をする。
「そんなに驚いて、意外やった?」
「……ええ。てっきり『いない』と答えると思ってたわ」
「隠す意味がなさそうやしね。それに、いると覚えてたから聞いたんやろ?」
「…………」
今度は真姫が苦い表情となった。
見透かされている、そう表情に出ていた。
「なら、希も知っているの?」
「
「…………」
(いや、何この空気こえーよ)
ただの買い出しのはずが、何かおかしな方向へ向かいつつある。
「……なあ、せめて買い出し終わってからにしないか。今答えるべきじゃないと俺は思うんだけど」
「そうやって逃げる気でしょ」
「逃げねえよ。逃げたって仕方ないだろ。今話して変な空気のまま買い物したくない。いやまあ、変な空気のまま別荘に戻るのもいやだけどよ」
真姫から向けられるジト目を交わしつつ、リヒトは少し前を歩く。
「リヒトさんが先を歩いてどうすんのよ。場所、わからないでしょ」
「じゃ、案内頼む」
「…………」
納得がいかないような表情を浮かべつつ、ひとまず先にお店に向かうこととなった。
「メニューは無難にカレーか」
「結構な大人数やから大変やね」
「だからの俺だろ。荷物持ちは任せろ」
「期待しとるよ」
真姫の望む質問ができないような空気をわざと作り上げる。
後々怒られることを覚悟しつつ、お店での買い物を先に済ませることにした。
☆★☆★☆★
買い物を終え、帰宅路を歩くリヒトたち。その手には買ったものが詰まった袋が握られている。もちろんリヒトの方が気持ち多い。
そして、帰宅路を歩くということは、いよいよ真姫の質問に答えなくてはいけないということ。
さて、とリヒトは気合を入れ直す。
「さあ約束の時間だ。西木野の質問に答えようじゃないか」
「…………」
「で? 何を聞きたいんだ?」
リヒトの方から切り出し、会話のペースを握ろうとする。
真姫はいよいよ訊けるとなったことで緊張してきたのか少し表情が固い。
「その……リヒトさんは」
「俺は?」
「その」真姫の足が止まる。つられて、リヒトの足も止まり、希と一緒に真姫の方を見る。
「希も知っているのよね? リヒトさんがウルトラ──」
そこまで言いかけて、真姫が止まった。
理由は単純。
真姫の耳が、希のもう一つの魂が、そしてリヒトのギンガスパークが
リヒトの体に先ほどとは別の緊張が走る。
「──なんていうか、タイミング的に良いと言えるか? それとも悪い?」
「どっちも言える状況やね」
「何、この音……」
三者三様の反応。
希が自然とリヒトの手から荷物を受け取る。リヒトを動きやすくするためだ。
リヒトはギンガスパークを取り出し、構える。
「西木野。質問の答えだけど、口で答えるより光景として答えることになるかもな。まず、一箇所に固まろう。なるべく俺から離れるな」
希が頷き、困惑しつつも真姫も従う。
敵の姿はまだ見えない。けれどギンガスパークは警告を発している。
☆★☆★☆★
ずらっとリヒトたちの目の前にヒト型の異星人が現れた。白い仮面をつけた、不気味な集団。その名称は『ヴァイロ星人』。数は10──否、周囲にはそれ以上がいると感じ取れる。
「なに……」
不気味な集団を前にして、真姫が震える。
緊張感が高まっていく中──ヴァイロ星人が一斉に口元に手を当てた。
──瞬間、空気が震える。
「──っ!」
リヒトはギンガスパークを突き出し、シールドを展開。
重い衝撃。どうやら衝撃波の類の攻撃のようだ。防ぐことには成功──したかに思えた。
鼓膜を刺激する甲高い音。全員が耳を手で塞ぐ。
リヒトは自分の失態に気づくのと同時、体が宙を舞った。
「りっくん!」
希が悲鳴をあげる。
その横で真姫がたまらずに膝を折った。
アスファルトへ倒れるリヒト。すぐさま傷の修復が始まる。しかし痛みが消えるわけではないっため、すぐには体を動かせない。
リヒトは適当にギンガスパークを振るう。斬撃が飛び、ヴァイロ星人の攻撃の中断に成功。
体の痛みがままならない中、なんとか立ち上がる。
「希! 西木野! 無事か!」
「うちは大丈夫! けど真姫ちゃんが!」
聴力が優れている真姫にとって、先ほどの攻撃は致命傷に近いもの。
しかし二人の身を案じている暇はない。ヴァイロ星人が第二の攻撃を仕掛けてくる。
すぐさまギンガスパークを振るう。斬撃は前に出た二体に防がれる。
再び降り注ぐ甲高い声。衝撃波が伴なっている攻撃に希と真姫が危険に晒される。
リヒトは迷わずギンガスパークを握る手に力を込めた。光る紋章、開かれるブレード、出現するウルトラマンギンガのスパークドールズ。
『ウルトラーイブ! ウルトラマンギンガ!』
求められるのは速攻。
ウルトラマンギンガにウルトライブしてすぐに前に出た。ドーム上のバリアを形成。衝撃波だけでなく、音による攻撃も防ぐ。
「──え? リヒト、さん?」
真姫の驚いた声。
しかし気にしている暇はない。
防いでいるだけでは状況は逆転しない。
ギンガはクリスタルを紫色に輝かせる。バリアを解除した一瞬。『ギンガスラッシュ』を放ち、ヴァイロ星人を強襲。攻撃を中断させる。
すぐに駆け出し接近。距離を詰め、格闘戦に持ち込む。パンチとキックで二体撃破。反撃の攻撃を受け止め、殴り返す。
ヴァイロ星人は現れたウルトラマンギンガを見て、一瞬たじろぐ。付け入る隙はここしかない、と判断し一気に攻撃をたたみかける。
クリスタルを赤へ。無数の火炎弾『ギンガファイヤーボール』で一気に数を減らす。
「ギンガ!!」
希の声。
振り返れば、新手のヴァイロ星人に囲まれそうになっていた。
ギンガはすぐに二人の元へ移動。魔の手を払う。
だが、そこへ衝撃波が襲いかかってきた。背後の衝撃。怯んだすきに両サイドから捕まれ、身動きを封じられる。
希がギンガライトスパークを取り出す。
『やめろ!』
ギンガは希に待ったをかける。
「でも!」
希がウルトライブすれば戦力は増える。
だが、リヒトがギンガにウルトライブした以上、希の持つウルトラマンティガは最後の切り札となった。迂闊に使い、しばらくの変身不能となった場合、あっという間に追い詰められる。
ギンガは力ずくで両腕をふるい、拘束を解除。拳を叩き込み、二体のヴァイロ星人を吹き飛ばす。
だが、雪崩のように襲いかかるヴァイロ星人。
ギンガ一人では対処しきれない──否、対処するほかない。
物量で攻め込んでくるのならば、こちらも物量を増やすまで。
『ギンガの力、舐めるなよ!!』
ギンガの体が二体、三体、四体へと増えていく。分身能力をフルに活用し、ヴァイロ星人を一斉に撃破する。
それがリヒトの立てた作戦。
あくまで分身であるため、それぞれに個別の意識があるわけではない。鏡に映したように、本体であるギンガと同じ動きをするだけ。だがそれだけで十分だった。
ヴァイロ星人の数は正確に把握できていない。希と真姫を守りながらとなると、多少強引にいくしかない。
光の速さを持って、ヴァイロ星人へと肉薄する。顎に拳を叩き込み、打ち上がった胴体に拳のラッシュを叩き込む。背後の気配に右足の回し蹴り。踵が脳を打ち、振り抜いた勢いで数体まとめて撃破する。
続けて、クリスタルを白に輝かせる。右腕のクリスタルより生成される『ギンガセイバー』。大きく振り抜き、さらに数を減らす。
『一気に片付ける!』
こちらが襲われたとなると、別荘組の安否も気になる。
再びクリスタルを赤く輝かせ、『ギンガファイヤーボール』で残るヴァイロ星人を倒す。
襲いかかってきたヴァイロ星人が全て撃破された。
あたりには静寂が訪れる。
だが、敵の気配は完全には消えていない。周囲の警戒を解いていないギンガを見て、希が、そして雰囲気からまだ終わっていないと感じた真姫が、張り詰めそうな緊張感の下に置かれる。
ガサッと。
背後からの音。
ギンガは咄嗟に振り返る。
そこには一体のヴァイロ星人が口元に手を当て、今にも攻撃を放とうとしている。
──無防備な真姫に向けて。
ギンガは咄嗟に真姫を庇うように前に出た。
ヴァイロ星人の攻撃を背中に被弾。
続いて上に気配。見上げれば、上空から落下してくる一体。すでに攻撃体制に入っている。
背後の一体目は二撃目を放とうとしている。
瞬時にギンガはクリスタルを黄色に輝かせた。左腕を上空へと伸ばし雷のエネルギーを集中させる。『ギンガサンダーボルト』がまず落下してくるヴァイロ星人を飲み込み、そして背後の的に向けて放つ。
二体撃破。
──三度、今度は地面が揺れた。
頭部にオレンジ色の発光物が一つ。それだけが特徴の巨大兵器。
名を『生物機械兵器バドリュード』。
上空で撃破されたヴァイロ星人が呼び出した、切り札とも言える存在。
同時にギンガのカラータイマーが点滅を始める。
時間制限が来たのではない。エネルギーを使いすぎたのだ。速攻を意識した故に大技を連発しすぎた。
マズイ、と点滅の理由を知るリヒトは思った。
しかし、バドリュードによる攻撃が始まる。残りのライブ時間はどれくらいか。
迷っている暇などない。ギンガはすぐに自身の体のサイズを巨大化させた。
その光でバドリュードの攻撃を防ぎ、残る力を振り絞って接近。腹部へ拳を叩き込み、アッパーで打ち上げる。
蹈鞴を踏むバドリュード。反撃のため、拳を奮ってくる。バックステップでかわし、二撃目を受け止め、カウンターを叩き込む。
下がった頭部を掴み、投げ飛ばす。地面を転がり、その隙にギンガはクリスタルを青色に発光。エネルギーを両腕に溜め、L字に組む。
放たれるギンガクロスシュート。
一直線に伸びた光線はバドリュードの腹部を貫き爆散するのだった。
久しぶりの戦闘パート。
難しい。
けれど、敵が敵だけにあっさりでもいいかなと。
次はハードだと思われます。