今回より、いよいよ第二部ラストエピソードが始まります。
激闘ダークザギ、始まりです。
第一章:海の守護神・アグルの力
かつて『大いなる闇』が地球に襲来した際、人類を守るべく光の戦士たちが集結した。
そして、光の戦士たちの力に感化されるように地球が生み出した光がある。
海の力を核として生み出された光の名は『アグル』。
『ティガ伝説』での戦いを終えた後は深い眠りについていたのだが、訳あって戦える力を失い『青い輝石』となってとある少女の元にあった。
そして、アグルの光はウルトラマンギンガの力を受けてパワーアップを果たす。
蘇ったアグルの光はパワーアップしており、今は絢瀬絵里の元にある。
絢瀬絵里の友を救いたいという強気思いに呼応し蘇ったアグルの力。
絵里からしてみれば、ウルトラマンの力が一つ蘇ったのだ。戦う力が増えた。この力を使えば、リヒトを助けることができる。
そう考えたのだった。
しかし──。
☆★☆★☆★
──榊家・居間。
外から戻ってきた絵里と希。二人の表情は先ほどとは打って変わって別物であった。希は少し困惑気味。絵里は何か可能性を見つけたという表情。
その変わりように奉次郎は目を丸くした。絵里に至っては虚だった瞳に強い意志の炎を灯している。絶望にに打ちのめされていた少女の姿ではない。
「……随分と顔つきが変わったのう。何かあったのか?」
「はい。希望を見つけました」
「希望……?」
奉次郎が困惑するくらいに絵里の力強い言葉が返ってきた。
絵里は頷き、そして、
「これです」
自分の右腕を前に出した。
手首には先ほどまではなかったものが備わっている。
中心に深い青色をしたクリスタルのようなもの。その周辺を金色の装飾が囲み、黄色のブレードのようなものが折りたたまれている。どこか神秘性を感じるソレ──アグル曰く名を“アグレイター”とするらしい──を奉次郎はまじまじと見つめた。
「これは……?」
「『ティガ伝説』の古文書に書かれていた『海の守護神・アグル』の力です。これとウルトラマンティガの力を合わせれば、リヒト君を助けに──」
『──無理だ』
「──え?」
刹那の瞬間、絵里の脳裏にアグルの声が響いた。
「どうしたのじゃ?」
無論、その声は奉次郎たちには聞こえていない。
突然疑問の声を上げた絵里を不思議そうに見ている。
しかし絵里は気づいていない。
「無理って……どういうことよ」
『そのままの意味だ。いくら俺の力が復活したとはいえ、それだけでダークザギに勝てる訳ないだろ』
「そんなの──」
『──やってみなくちゃわからない、なんて安いことは言うなよ。俺はダークザギと直接戦ったことがある。その上での発言だ。俺以外にティガの力があるらしいが、それだけで勝てるほどヤツは甘くない』
言葉を遮るようにして、強く否定をしてきた。
むすっとして絵里は言い返す。
「待って。私が言いたいのは『リヒトくんを助ける』よ。ダークザギを倒すなんて」
『一緒のことだ。お前が助けたい人間を助ける場合、当然ダークザギが立ちはだかる。それを越えなければ助けられる訳ないだろ。ウルトラマン二人の力だけで勝てるわけがない』
莫迦者……と実際には言われていないが、間違いなく言っているような気がする。声しか聞こえないが、こちらを莫迦にしている雰囲気が漂ってくる。
言い返したい気持ちもあるが、そこまで言われれば逆に冷静になることができる。ふぅ……と息を吐いて舞い上がっていた気持ちを落ち着かせる。
アグルの言う通り、リヒトを助けるためにはダークザギを倒さなくてはならない。あの暴力の嵐とも言える魔人を倒すことなど全く想像ができない。ここは悔しいがアグルの言う通りなのだ。
「エリチ? どないしたん? 怖い顔して」
「……ちょっとね」
ヒクヒクと唇の端が動いているのを自覚しつつも、己の右腕についているものを睨みつける。
「ちょーっと、ね」
「……?」
希は首を傾げるしかなかった。
「あの、絵里」
と、そこへ海未が声をかけてきた。
「ひとまず説明してもらえませんか? 私には何が起きているのはさっぱりわからないのですが……」
海未に言われて、周囲を置いていってしまっていることに気づいた。
絵里は一度佇まいを正し、改めて説明に入る。
「これは『ティガ伝説』に記されている『海の守護神・アグル』の力なの。それがついさっき復活したみたい」
「なんと!?」
「エリチの言葉はウチが保証できるで。実際にこの目でアグルが復活するとこを見たんやから」
驚く奉次郎の横で、アグルという単語を聞いた海未が再び『ティガ伝説』の古文書をめくっていた。その中に記されているアグルの記述を見つける。
「ありました。“海の守護神・アグル”。地球が海の力を元に生み出した光の戦士……古文書には戦いの後、人間たちへの干渉をやめて“スパークドールズ”と共に眠りについたと書かれています」
『ほう……ずいぶん正確に残しているじゃないか。人間は記録に残す際、いいように改変するものだと思っていたがな』
アグルの賞賛する声が聞こえた。
「これに書かれていることは事実なのかしら」
『そうだな』
「絵里?」
と、海未が言った。
その表情はまた私を置いていくつもりかと言っている。
「もしかして、私にしか聞こえていないの?」
「何がですか?」
「アグルの声よ」
「私には聞こえません」
「うちも」
「わしもじゃ」
「…………」
そこでようやく、絵里はアグルの声は自分にしか聞こえていないのだと気づいた。
『当たり前だろ。俺の力はお前が持っているんだ。周囲の人間に聞こえないに決まっている』
むすっと、改めて右手にあるアグレイターを睨む。
「それじゃあ、眠っていたあなたがなぜ
『痛い話だな』
「あなたの力を持つ者として、説明を求めるわ」
『……わかった。もし他の人間に伝えるなら、お前の口から伝えるんだな』
海未たちに声を届けることは無理なのだと、絵里は勝手に思うことにした。
『あの戦いの後、そこに書かれている通り人間への干渉をやめ、“スパークドールズ”と共に眠りについた。元々「大いなる闇」を倒すために生まれた存在だ。倒した後は無用な存在。ティガ同様に人間たちの生活に干渉し、守護し続けてもよかったが、それが逆に人間の成長を妨げてしまう可能性もある。何より、「大いなる闇」との戦いは人間たちにも深い傷を残した。元々人類を守護していたティガを失ったんだからな。光の戦士たちと距離を置きたいやつもいただろう』
ティガは元々人類を守護する存在であった。それなのに闇の波動を受け、ティガダークとなって人類に牙を向いたと記されている。
アグルにも同様の現象が起きることを危惧した人間がいたのだろう。
だから人類への干渉をやめた。陰ながら守ることにすれば、万が一人類に牙を向くことになったとしても、ティガダークほどのことにはならない。
『俺ともう一つ。“大地の力”を核として“ガイア”が生まれている。俺はガイアと共に眠っていたのだが……そこにやつが現れてな』
「やつ?」
『ああ。俺たち「光」が眠る空間にヤツはやってきた。本来なら誰も来ることはできないんだが、同じ「光」であるが故、侵入できたんだろうと考えている』
「誰なの? あなたたちの空間にやってきたのは」
『そいつの名は──』
アグルははっきりとその名を口にする。
『“光生命体ゾグ”と俺たちは呼んでいる』
「光生命体、ゾグ……」
『ヤツは光でありながら「大いなる闇」の復活を目論んでいた。そのために俺たちが管理していた“スパークドールズ”を狙ってきたんだ。“スパークドールズ”には、「大いなる闇」の力が封じられているからな。それを奪うことで、封じられている「大いなる闇」の力を解放しようとしたんだろう。奴との戦いに俺とガイアは敗れ、ほとんどの力を奪われた。スパークドールズもな。幸い、「イージスの力」の恩恵で輝石の姿を取ることで消滅は免れた。そして輝石になっていた俺をお前が手にしたというわけだ。戦えるようになった理由は、さっき話した通りだ』
と、そこでアグルの語りは終わった。
絵里はその内容を三人に伝える。それは今まで知らなかった情報だ。絵里を伝って知らされた新たな情報に、奉次郎もまた驚きをあらわにしていた。
「ふむ……疑問に思っとったことがあった。古文書によれば“スパークドールズ”は大地と海の守護神とともに眠りについたと記されておる。そんなスパークドールズがなぜ奴らの手にあるのか、とな。まさか敵に襲われ奪われていたとはな」
「エリチ。アグルに聞いてほしんやけど、ダークザギと一緒に“白い姿”をした女の子がおるんよ。もしかして、その子の正体が“ゾグ”なん?」
『人間に化けられるかは知らないが、そいつが人間離れの芸当をしているなら、ゾグだろうな』
「ゾグは光と言っとったな。光であれば、闇を祓う結界を抜けることもできる。ゾグの力で生み出されたのが、あの生物だとすれば、結界を抜けてそれぞれの家に侵入。ダークザギのスパークドールズの隠し場所を見つけた……」
そこまで言って、奉次郎は苦い顔をした。
「……やられたの。敵は闇だけだとばっかり思っとった」
つまり、奉次郎が話した“特殊な家系”に現れた謎の生物は“光生命体ゾグ”が生み出したもの。故に結界をすり抜け、極秘であったダークザギのスパークドールズの隠し場所を見つけることができた。
古文書にも“大いなる闇”──つまり“闇”が敵と記されていたため、敵の勢力を“闇”に限定していたのだ仇となった。
しかし、今まで人類を守護してくれていた“光”の属性を持つ存在が敵側にいるなど、誰が予想できるものか。
『なんだ? 人間もゾグにやられたのか?』
「ダークザギ復活のMVPじゃな」
「……やられたみたい。アグルたちと同じでね」
くっ、と喉の奥を鳴らしたような声が絵里の脳に響いた。
「あの……」
と、そこで海未がおずおずと手を上げた。
「なんとなくは把握できたのですが、アグルとは別に“ガイア”という光の戦士もいたと、これには書かれてあります。先ほどの話にも出ていましたけど、ガイアはどうなったんですか?」
『ガイアか? ガイアなら俺と同じ輝石の姿で人間の手に渡っているぞ』
「誰の手にですか?」
『ん? なんだ? 気づいていないのか?』
海未の更問いに対し、アグルは疑問の声を返す。
「気づいていないって、どういうことよ。私たちが知っている人なの?」
と、絵里が聞く。
『お前は会っているだろ』
「いつ?」
『お前たちが通う学校で、メザードの騒ぎが起きた時だ。互いに輝石を見せあっただろ』
「…………あの時!?」
アグルの言う“メザードの騒ぎ”とは、オープンキャンパス前日に起きた事件のこと。生徒たちのスマホが謎の着信を告げ、それを聴いた生徒たちの様子が次々とおかしくなっていったのだ。その元凶がメザードと呼ばれる敵だった。
あの時の行動を思い返すと、絵里はとある人物に自分の輝石を見せた覚えがある。その相手も同じような輝石を持っていたからだ。
その人物は──。
「穂乃果がガイアの輝石を持っているの!?」
『ああ。あの時お前は俺の輝石を見せた。その時ガイアの力を感じたからな。あの輝石がガイアで間違いないだろう』
「絵里、今穂乃果の名前を呼びましたか!?」
絵里の声を聞いた海未が驚きの声を上げる。
「……ええ。アグルが言うには穂乃果がガイアの輝石を持っているみたい」
その答えには驚くしか他なかった。
まさか、こんなにも身近な人物がウルトラマンの力を持っていたなんて。
「──! 海未。穂乃果はリヒトくんがウルトラマンギンガだってこと知っているの?」
そこで、絵里は何かに気づいたかのように海未に問いかけた。
「いえ、おそらく知りません。穂乃果のことですから、知っていたら何かの拍子に話していると思います」
「……そう……けれど、穂乃果なら──」
『ガイアの力を復活させようと考えているのかもしれないが、それは無理だぞ』
アグルがはっきりと告げた。
「なんでよ。あなたが復活できたんだから、ガイアだってできるはずじゃないの」
『俺が復活できたのは、お前が強く「力が欲しい」と願ったのと、もう一つ理由があるからだ』
「もう一つの理由?」
『そうだ。俺はウルトラマンギンガの持つ強大な光のエネルギーを注ぎ込まれたから復活できたんだ。覚えてるだろ? お前がカオスワロガとなり、大いなる闇の生贄にされそうになったときだ』
覚えている。あの恐怖は忘れたくても忘れられない。
カオスワロガとなり、学校を破壊し、リヒトが変身したウルトラマンギンガを一度は倒した。
そして、大いなる闇の生贄になりかけていたところを助けてもらった。
『あの時だ。一条リヒトはその手に持つギンガスパークをお前の胸に突き刺した。それが運よく俺の輝石に刺さったんだ。そこから強大な光のエネルギーを送られて、俺は力を得て復活した。ガイアを復活させるには、それと同様のことを引き起こす必要がある。だが、ギンガは敗れた。ここにはいない。ガイアを復活させるだけの光のエネルギーがないんだ。エネルギーがなければ、いくら人間の強い思いがあったとしても、復活はできない』
「…………」
アグルを復活させた強力な光。それはギンガだからできたことだと言う。そのギンガが今はいない。
『それにな。ガイアが復活できたとしても、ウルトラマンが三体。それでも勝てない。ダークザギはそれほどの規格外だ』
「それじゃあどうすればいいのよ!? このままじゃリヒトくんを助けられない! それを黙って見てなさいっていうの!?」
「エリチ、落ち着いて」
『黙って破滅を受け入れるのも手だな』
「──!」
その瞬間、希の静止を振り切って絵里は己の右手についたアグレイターを剥ぎ取ろうとする。
しかし、アグレイターを掴んだ瞬間、自分の左半身が動かなくなる。ピタッと、びくともしない。まるで固定されている感覚。動かそうとしても、そもそも脳からの信号が遮断されている感覚だ。
『落ち着け』
アグルが自分の体を止めているのだとわかった。
脳に響いてくる声に焦りの色はない。
至って冷静。いや、冷酷か。
「落ち着けって……そんなのできるわけ──」
『
「──え? どういうこと?」
『ダークザギから逃げる時に感じたあの力。それが鍵だ』
アグルの言葉に一瞬にして絵里の思考が止まる。
そして、絵里はの意思ではなく勝手に左半身が動き始める。
「ちょっと! アグル!?」
体を動かしているのがアグルだと思い、抗議の声を荒げる。
しかしそれを無視してアグルは言う。
『おい、今から俺の言う言葉をそのままこの人間に伝えろ』
「ちょっと、どう言う意味よ!」
『いいから言え。お前の助けたい人間を助けられるかもしれないんだぞ』
「え?」
ただただ困惑するしかない絵里。
その様子を見ている三人も、絵里が自分の意思とは無関係に体を動かしていることにただ困惑するしかなかった。
やがて、絵里の左腕はまっすぐ“ある人物”へと向かう。
そして──、
『そこの人間。お前は、あのダークザギを相手にその生身のまま立ち向かう勇気はあるか? もちろん死ぬ可能性はあるぞ』
──海未に覚悟を問うのだった。
──続く。
次回、アグルが示す逆転の策とは──?
◯お知らせ
現在、山形りんごをたべるんご様の作品「RAINBOW X STORY」にて本作品とのコラボ編が投稿されております。
私の作品の他に星宇海様の作品「Sunshine!!&ORB」との3コラボとなっております。
なんと、ひと足さきに記憶を取り戻した一条リヒトの活躍が見ることができます。
こっちだとボロボロに負けて出てこないですからね……。
下の作品リンクより、ご覧ください。
作品リンク
https://syosetu.org/novel/224442/