テレビアニメ一期でいうところの終盤ですね。
第一章:白い少女
光生命体ゾグ。
それが“白い少女”の正体。
宇宙の彼方で生まれた光の集合体、と自身は認識している。だが、それはあくまで自己認識にすぎず、本当はどうやって生まれたのか自分でもわかっていない。わからないままがいい。
もしこの認識通りであるならば、宇宙の彼方で闇の集合体として生まれた“大いなる闇”と似た境遇になってしまうし、闇の対極とされる光ならば闇と敵対するのではないかと思われてしまうからだ。
自分は闇を
そもそも、善悪を光と闇などという簡単に切り分けてしまっている人間に怒りすら感じている。
なぜ光は善とされ、人類の味方と捉えられるのか。
なぜ闇は悪とされ、人類の敵と捉えられるのか。
確かに“大いなる闇”は、人類を滅亡させるために生まれた。一度地球に降り立ち、滅亡寸前まで追い込んだが、残念ながら“光の戦士たち”に邪魔をされ斃された……“光”に。
実際は別の位相空間に逃げ込み、復活の時を待っている。
ゾグは、その“大いなる闇”を復活させたかった。
善悪を光と闇に仕分ける人類。
そんな人類は、善だと信じていた光が敵として現れた場合、どんな顔をするだろうか。
それが気になった。
だが、光の存在であるゾグには“大いなる闇”を復活させることはできない。
光生命体ゾグが持つのは光の力。
ウルトラマンたちと同じ光の存在であるため、“大いなる闇”の力の元となる闇を生み出すことができない。
復活に必要なのは闇のエネルギーだ。自分とは反対の属性。
どうするかと考えてきた時、奴が現れた。
ダークザギ。
かつて“大いなる闇”とともに地球に降り立ち、人類を滅亡させようとした闇の巨人。
ふと、ダークザギとの最後の会話を思い出す。
☆★☆★☆★
ダークザギが己の力が封印されたスパークドールズを取り戻し、ウルトラマンギンガを瞬殺した。あとは、“イージスの破片”を持つ園田海未とダークザギが個人的な理由で狙っている東條希を捕えるだけ。
しかし、一条リヒトの体で目覚めた“何者”かがダークザギの前に立ちはだかった。
“一条リヒト”は二人を押し“イージスの力”が展開した光の位相空間へと逃がすことに成功。イージスの力が広げた位相空間が閉じられる。
それは二人を逃すことには成功したということ。無論、“一条リヒト”がローブ男に勝てるはずもなくその体は地に沈んだ。
ダークザギの目の前には、自分が広げた闇の位相空間がどこまでも続くだけとなった。こうなってしまっては、位相を展開していても意味がない。二人の逃げた先はわかるが、そこへ干渉することはできない。
ダークザギもまた自ら展開していた闇の異空間を閉じた。風景は現実の位相空間のものへと変わり、曇天の空が頭上に広がる。今にも雨が降り出しそうな曇天を見上げ、そしてアスファルトの上に倒れる一条リヒトを見て、数秒考えるそぶりを見せた。
そして、一条リヒトの体を担ぎ上げる。
「待て」
と、少女の声がローブ男の動きを止めた。
声がした方を見ると、“白い少女”がその場に立っていた。
「君か。何かよう?」
「そいつをどうするつもりだ」
問われ、ローブ男は答える。
「生け贄にでもしようかな」
返答を聞くと、白い少女の目が細められる。
本気か? と目で語っていた。
「本気だよ。闇に沈めて、その体を食わせる。直接闇に沈めれば、いくらウルトラマンの力を有していても、飲み込めるさ。それに──」
ローブ男は白い少女を見て、
「──君が彼の光を喰らえば、より簡単に沈められる」
と言った。
「そもそも“大いなる闇”が復活した後、君の光の力と合わせるのが僕らの目的でしょ。闇と光を合わせ、より完成された存在にする。君の前にウルトラマンの力を食わせることができれば、より強力な光が得られると思わない?」
「……そいつは、その身に宿すウルトラマンの力によって殺すことができない。沈めたところで生け贄にはならないのではないか?」
「うーん、どうだろうね……もしかしたら、意識を残したまま“大いなる闇”と一体化するかもしれない。そうしたら、彼は意識があるまま自分の世界を滅亡させることになる。これって面白いことだと思うんだ。だから君には、彼の光を吸収してほしい。根こそぎ、と言いたいけど可能な限りにと言い換えとくね」
ローブ男の顔は、邪悪に歪んでいた。
それは自ら思いついた作戦への感情か、それとも白い少女にリヒトの光を吸収するように告げたことへか。
どっちでもいいかと少女は考えたが、
「言っとくけど、今の彼、死んだと思ってたウルトラマンの意識が復活している。食べる光の量を間違えたら大変なことになるから」
「……なに?」
ぴくりと、白い少女の表情が動いた。
それは聞き捨てならない、と少女の目がローブ男を睨んだ。
「どういうことだ。あのウルトラマンはアメリカの戦いで死んだのではなかったのか」
「僕もそう思ってたんだけどね……もしかしたら、傷が修復されるたびに彼の意識を呼び起こしていたのかもしれない。そして今回表層に出てきた、と思っている」
ローブ男の返答を聞き、少女は呆れたように言った。
「要は貴様がそいつをボロボロにしすぎたせいだろ」
「それはそうだね。力が戻った喜びで暴れすぎた」
あっさりと認め、しかし謝罪はしないローブ男。
白い少女はより眉を顰めるが、やがてため息をついた。
「まあよい。そいつを下せ。光を吸収する」
白い少女の言葉を聞き、ローブ男は担いでいたリヒトをおろした。正確には落としたと言えるが、少女は気にするそぶりはなくリヒトの首筋に噛み付いた。
そして、すぐに眉を寄せた。
「……なんだこれは」
「どうかした?」
「濃い。濃すぎる。酔うなという方が無理だ」
「そんなに?」
「こんなもの、生け贄にしたとしても光が強すぎて反発するぞ」
「それじゃあ反発しないように吸収しといてよ」
「貴様……」
「あ、雨が降ってきた。急いでよ。人間の体をしてからわかったけど、濡れるのって意外と気持ち悪んだから」
ローブ男はそう言って、フードを被る。
そして、懐から一体のスパークドールズ──Σズイグルを取り出す。
「僕は僕の方でやらなきゃいけないことがあるんだ。彼女を迎えに行くというね。それと、もしも、もしもの話だけれど、僕が彼女たちに負けた場合──」
☆★☆★☆★
そして、ダークザギは自分が負けた時のプランを語った。
無論、そんな話をしている時はダークザギが負けるとは思っていなかった。“大いなる闇”と共に人類を滅亡に追い込んだ巨人。その実力は確かなもの。負ける可能性が低い。それがなぜ負けた時のことを話すのか不思議だった。
「──ん、負けたか」
ゾグはひとり、現実世界の位相で空を見上げた。
ワームホールから帰還する光。
それが意味することは、ダークザギが負けたということ。
「まさか、本当にお前が負けるとはな」
とはいえ、さほど大きな驚きはなかった。
圧倒的強さを持つダークザギではあるが、唯一にして最大の弱点がある。
それが“イージスの力”。ダークザギにとって最悪とも言える相性の力。それが向こうにはあり、園田海未の手にはその力の破片がある。
使い方を知らない無知ではあるが、もしその使い方を理解したのであるならば、ダークザギが打ち取られる可能性は上がる。
そして何より、一度敗北をしているからこそ、絶対の勝利はないことをわかっていたのだろう。
ゾグは、負けた時のことを語ることに対して疑問もあったが、ダークザギが必ず負けないとも思っていなかった。
負けたら、それだけの話。
「……加えて向こうにはあの女がいる。そいつを傷つけることはできなかったわけか。惚れた弱みだな」
人間でいう恋心なのか、それとも似た何かなのか。それはダークザギ自身にしかわからぬことであり、人間ではない白い少女もわからないこと。ただ、東條希の中にあるもうひとつの魂に執着していたのは確かだった。
しかし。
(いくら低い可能性であっても、奴がそう簡単に負けるとは考えられない……爪が甘いやつではないはず……)
どこか腑に落ちない。
そんなことを感じる結末。
白い少女の手には、渡された怪獣のスパークドールズがある。
だが、これを渡されたところで白い少女にはこの怪獣の力を解き放つことはできない。無理やり光を注いだところで、その力が解き放たれるかは不明。
すでに“大いなる闇”の復活は途絶えたと言えるだろう。
「──まあいい。なら、あとは好きにさせてもらうだけだ」
一条リヒトの光を吸収したことで、人間で言う泥酔状態となってしまった。しかしそれも、もうすぐで回復する。泥酔状態になるという失態は犯してしまったものの、強力な光を吸収できたおかげで力は万全になるだろう。感じる力の具合的に、回復すれば過去最高と言っても過言ではないほどの力を感じている。
これであれば、イージスの力への干渉ができるかもしれない。
光生命体ゾグには、ダークダミースパークを生み出す力はない。
それはつまり、“大いなる闇”の復活に必要なエネルギーを生み出すこと、そして集めることができないということ。
故に役割分担をしていた。
ダークザギが人間の心の闇を増幅させ、生贄にする。“大いなる闇”を復活させる手筈をし、復活させるまでがダークザギの役割だった。ここに関して、ゾグができることは何もない。
ゾグの仕事は“大いなる闇”復活後にあった。
闇の存在であった“大いなる闇”は、ティガ伝説において人類を滅ぼすことができなかった。それはダークスパークによって闇の力を分割されてしまったからだ。
もし、光の力があれば“大いなる闇”の力はそこまで低下しなかった。
“大いなる闇”は復活後、今度こそ人類を滅亡させる。そのために光を吸収し、完全な存在となるのだ。
ゾグがすることは、ガイアとアグルが保管していたスパークドールズを奪うこと。そして、復活した“大いなる闇”に光の力を与え完璧にする。それがゾグの役割だった。
しかし、ダークザギが敗れた今、“大いなる闇”復活は叶わないと言っていい。
ならばどうするか。
人類の敵として立ちはだかり、滅ぼすだけだ。
今のゾグの力であれば、人類を滅亡させることはできるだろう。神田明神に眠る“イージスの力”に干渉さえできるだろう。
“イージスの加護”も関係ない。
終焉の光として、この世界を終わらせる。
数日後、泥酔状態から回復したゾグが向かったのは、
「──お前たちがダークザギを倒した人間か」
──音ノ木坂学院。
絵里、希、海未の前に姿を現すのだった。
☆★☆(ロストメモリー)★☆★
少年は人の笑顔が大好きだ。笑顔はプラスのエネルギーを生み、人々を活気に溢れさせていく。
少年の周りは常に笑顔で溢れていた。
きっとその多くは、人生のどん底に落ちた両親の再起が影響している。
自らの声を失い、仕事を辞めざるを得なくなった元アイドルの父。
その父の背中を必死に支え、新たな夢を共に歩むまで再起させた元プロダンサーの母。
絶望から再起したからこそ、絶望を知っているからこそ、夫婦の周りには笑顔が溢れていた。
そんな両親を見て育った少年は、それはいつしか“他者を笑顔にしたい”という夢が生まれた。それを叶えるためにさまざまな芸を身につけ、その一環として母がやっていたダンスを学ぶこととなった。
ロシアの地で出会った少女との約束。ダンスを学び、そしてプロになることを約束した少年──一条リヒトは高校二年生の時にアメリカへダンス留学をする。
元プロダンサーの母の伝手を使い、アメリカの地へ飛んだリヒト。
彼はそこで三人の友人とチームを組むこととなる。
銀髪碧眼の同年代の少年、クラウス・エルカット。
クラウスの恋人にして、日系アメリカ人のクール少女、セラ。
日本語も喋ることができるブロンドヘアーが特徴の活発少女、キャスリン・ライアン。
きっかけは、クラウスがリヒトに声をかけたところから始まる。
「ダンスチームを組もうぜ」とクラウスはリヒトに向けて言った。
リヒトは自分が声をかけられるとは思っておらず、驚いて固まった。
なぜなら、レッスンで披露されたクラウスのダンスは、プロに近いレベルのものだったからだ。同じくレッスンを受けているメンバーの中で、頭ひとつ抜けている。とてもレベルの高いもの。実際、クラウスは天才的実力を持つ子と言われていた。
そんな人物から声をかけられ、ましてやチームを組もうなどと言われるとは、当時のリヒトからすれば驚くなという方が無理な話だ。
クラウスは体のバネを生かすリヒトのダンスの実力を買っており、チームを組もうと声をかけてきたのだ。プロに近い技術を持つクラウスのダンスを間近で見られる機会を逃すわけにはいかない。そんな思いから承諾したリヒト。そこから意気投合していく。
ライバル関係、というのが二人の関係性を表すのに適しているだろう。
その時のクラウスは、すでにセラとキャスリンとチームを組んでいた。仲間に入れてもらうことで、二人とも会話をするようになっていった。
キャスリンは幼い頃日本に住んできたこともあり、唯一日本語を話せる相手としてリヒトの不安を一つ解消してくれたのだ。また、日本文化が好きなキャスリンとはすぐに打ち解け合い、アメリカでの生活をサポートしてくれた。この三人の中で一番会話量が多かっただろう。
セラに関しては、クラウスの彼女ということもあって、クラウスと会えばいつもそばにいた。ダンスの技術で会話をすることもあったが、盛り上がりすぎると嫉妬したクラウスに止められることがよくあった。
時にはライバル、時には良き友人、時には一つのダンスを作り上げるチームメイト。
それが彼らの関係。
彼らと共に過ごした期間は短かったが、一条リヒトにとって間違いなく楽しい期間だった。
だが、彼らとの楽しい時間は、ある事件を境に地獄へと変わってしまう。
10月31日のハロウィンの日。
表では、大量の子供達が失踪した事件として記録されている。
だが実際は、“大いなる闇”復活を目論むエージェントの暗躍によって大量の子供達が攫われたのだ。
“大いなる闇”復活のために作られた“次元の扉”。
もし扉の先に行ってしまえば、二度とこちらの世界に戻ってくることはできない。
ハロウィンの日に行われた大事件。
その日は一条リヒトの誕生日でもあった。
──そして、エージェントの一人『異次元魔女』によって一条リヒトが殺された日でもある。