ギンガ・THE・Live!   作:水卵

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正直、やってしまった感はあります。


第四章:光の戦士VS闇の魔獣②

 [四章]

 

 

 南ことりは生まれつき膝が弱かった。そのせいか、あまり外で遊ぶことはなく日々流れゆく町の光景を見ていることが多かった。空を飛ぶ鳥、流れる雲、ガタンゴトンと音を鳴らし走る電車。一歩町に出てみれば流れ行く人の影、スーツ姿のサラリーマン、野良猫、新しいおもちゃを買ってもらえてうれしそうな子供たち、初々しいカップル。

 ことりは、自然と周りを見る子になって行った。穂乃果たちと出会い遊ぶようになっても、あまり自己主張はせず、一歩引いて後ろから周りを見ていることが多かった。

『観る』ことが好きだったことりは、日常生活においても花屋に並ぶお花から可愛い服、母親が読んでいるファッション雑誌、いろんなものを観ていた。それにより、元々優れていた観察力が鍛え上げられ、いつしか並外れた動体視力と空間把握能力を持つようになった。

 ダンス練習においても、穂乃果や海未の位置を自然と把握し、その動体視力から二人とのズレを修正していった。リヒトに言われた『二人を見すぎ』というのは、このことからきているのかもしれない。

 そして今、ことりの『観る』と言う力が、希望の光(ウルトラマンギンガ)のピンチを救っている。

 

「右は幻覚! 左が本物!!」

 

 ことりの叫びに、ウルトラマンギンガは迷わず左のダークガルベロスへと拳を振るう。その一撃が、本物のダークガルベロスの体力を削る。再び幻影に溶け込むダークガルベロスだったが、

 

「まだ正面にいます!! そのまま突っ込んで!!」

 

 ことりの観察力が逃がさない。ギンガは虚空へと突っ込んでいき、姿を隠していたダークガルベロスを吹き飛ばす。

 ダークガルベロスにとっても、ことりの『力』は予想外だろう。先ほどまで自分の作り出したメザードの幻影に脅え、恐怖に体を震わせていた。他の少女とは違い特別な力なんて何もないただの少女が、今、最大の壁となっている。先ほどまで脅えていたはずなのに、力強く、断固たる意志を持つその瞳で自分を睨んでいる。

 ことりのやっていることはその優れた観察力に加え、並外れた動体視力と空間把握能力。それらを駆使しダークガルベロスの動きを追っているだけ。それが、ダークガルベロスの作り出す幻影を高い確率で見抜いていた。本物と幻影の間に生まれる、動作の僅かなズレ。それがことりが幻影を見破る手掛かりとなっている。

 しかしすべてを見抜けるわけではない。相手は怪獣だ、そしてダークガルベロスは元の固体から闇の力で強化された存在。当然幻影の能力も高くなっている。

 

「えっと……」

 

 一瞬のズレを見逃してしまうことり。幻影を見抜けないギンガはダークガルベロスのタックルを食らいよろめく。ことりは叫び声を上げそうになるのを飲み込み、ダークガルベロスを凝視する。ことりに幻影を一〇〇%見抜く力はない。だが攻撃ならば、ギンガを襲う攻撃ならばことりの動体視力が一〇〇%捉えることができる。幻影はダメでも、その攻撃を見抜きギンガに知らせることはできる!! 

 

「右腕が振り上げられます! 避けて!!」

 

 振り上げられる爪をギンガはしゃがんで躱し、ガラ空きとなった腹に引き絞った右ストレートを放つ。さらに蹴りを叩き込む。

 

「反撃が来ます!! 距離をとって!!」

 

 ことりの『眼』には見えていた。攻撃を食らいながらも反撃の一撃を放とうとするダークガルベロスの動きが。同時に、ダークガルベロスが弱った様子を見せていないことに、ことりは不安を感じていた。

 それもそのはず、この空間は『闇』にとって有利な空間である。その為『闇の魔獣』であるダークガルベロスのスペックが全体的に引き上げられているのだ。加えて、ギンガは最初の猛攻以降連続した攻撃をすることができていない。ペースが完全に向こうだったのだ。

 それを今、こちら側に引き込む必要がある。その為には、海未の『光の矢』とことりの『眼』によるサポートが必須だ。

 ギンガの反撃を受けたダークガルベロスは、一度距離をとる。そしてその場でジッとし始めたのだ。

 それを見たことりは、瞬時にその意味を理解し海未へと声を飛ばす。

 

「海未ちゃん!!」

 

「──っ!!」

 

 ことりからの声を受け、海未は『光の矢』を放つ。飛翔する青い光は、その瞳を不気味に光らせようとしたダークガルベロスを怯ませ阻止する。

 

「チャンスだよギンガさん!」

 

 怯んだダークガルベロスを見て、穂乃果が声を飛ばす。

 ギンガは駆け出し掴む。拳を振るい頭部を攻撃し、ダークガルベロスを持ち上げ頭部を下にし、思いっきり叩き付ける。 

 ドゴンッ!! と土埃を上げ強烈な一撃を食らうダークガルベロス。この攻撃は間違いなく大きなダメージとなったはずだ。だがギンガはここで追撃せず、ダークガルベロスを投げ飛ばしその場にとどまる。

 疑問に思う穂乃果たちだったが、希だけがその意味を理解していた。

 

(限界に近いんや。それにさっきから左腕を庇っている。早く勝負を決めないと)

 

 流れはギンガに傾いている。このまま流れを掴みたいところだが、ギンガの体力を考えると難しいだろう。

 それに、ダークガルベロスがこのまま黙っているわけがない。

 体勢を立て直したダークガルベロスは双頭の口を光らせる。青黒い火炎弾が放たれギンガを襲う。その数は計五発。バリアを展開すれば、ノーダーメジで防ぐことができるだろう。だが今のギンガは疲労しており、バリアで完璧に防げるか怪しいところだ。さらに活動限界時間が迫っているため、防御に回るとなるとその分不利になる。

 ギンガは腕を振るい火炎弾を弾くことにした。

 一撃、二撃、──だがそこでことりは気が付いた。放たれた火炎の数と、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ギンガさんっ! それは幻か──」

 

 ことりが言い終わるより先にギンガが腕を振るってしまう。幻影で作られた火炎弾はギンガの腕をすり抜け、霧のように霧散していく。

 

 ──しまった!? 

 

 インナースペースでリヒトが悪態をつくも、すでに遅い。本物の火炎弾がギンガに被弾する。火花を散らし、土埃を上げ倒れるギンガ。すぐに立ち上がることができず、いまだ倒れているギンガに迫るダークガルベロス。

 すかさず、海未は援護のため矢を放つ。青い尾を引いて飛翔する矢はダークガルベロスを撃ち抜くも、先ほどの二撃に比べて威力が衰えているのを感じた。

 

「海未ちゃん! 光が!」

 

 穂乃果の声に首だけを動かし振り返る。自分の肩に置かれている穂乃果の手、その中で輝いていた赤い輝石の光が、徐々に弱くなっていた。

 

「え! ちょっと!? 待ってよ!! まだ戦い終わってないよ!?」

 

 弱まっていく光を見て慌てる穂乃果。中身が少ないスプレー缶のように上下に振ったり、両手に包んで温めてみたり、様々な手段を用いて光が弱まるのを阻止しようとする。その成果もあってか、光は完全に輝きを失うことはなかった。

 

「そろそろ限界なんやね」

 

 そこで言葉を発したのは、今まで静観していた東條希だ。

 希は穂乃果へと近づくとその手を自分の手で包み込む。

 

「希先輩!?」

 

 突然のことに驚きの声を上げる穂乃果。

 しかし希は穂乃果の驚きを無視し、瞳を閉じてただ黙っている。「えっと……」と戸惑う穂乃果。やがて希は瞳を開け穂乃果の手を放し、穂乃果と海未、ことりを見た後、ギンガとダークガルベロスの方を見る。ダークガルベロスはギンガを踏みつけていた。カラータイマーの点滅も早くなっており、いよいよ限界時間が近い。

 ──決めるならば、一撃だ。

 ギンガはダークガルベロスの足を持ち上げ、残された力を振り絞って押し返し、自身は転がってダークガルベロスとの距離をとる。

 チャンスはここ──、そう判断する希だったが突如ダークガルベロスが無数に分裂する。

 

「──っ!!」

 

 ダークガルベロスが分裂したことで、唯一のチャンスが無くなったかもしれないことに冷や汗をかく希。無数の幻影が広がり、その中に本物は隠れる。

 狙いは、ギンガの時間切れを狙っているのだろうか? それとも確実に倒す一撃を溜めているのか? いずれにせよこの幻影の中から本物を見抜けなければ勝利はない。

 ことりはその視線を必死に動かし幻影を見破ろうとしている。だが、数が多いとなると本物と幻影のズレを見つけるのは困難だ。

 ギンガも、本来ならば手数で圧倒できただろう。だが、今のギンガはカラータイマーの点滅は早く、残り時間が少ない。加えて、リヒト自身の体力もすでに限界を迎えようとしていた。ならば、多少無理してもここで決めるしかない。

 希は穂乃果たちに振り替える。

 

「ことりちゃん、見抜ける?」

 

 

 

「見抜きます!!」

 

 

 

 希の問いにことりは視線を走らせながら答える。

 

「私が絶対に本物を見つけます!!」

 

 ことりの覚悟を受け取り、希は微笑む。

 

「なら、勝負やな。一回勝負、失敗は許されない。失敗はそのままウルトラマンギンガの、ウチらの負けを意味する。勝利するには君たちの力が必要。……覚悟はできてる?」

 

『出来てます!!』

 

 三人は即答した。

 希は三人が即答したことにわずかに瞳を見開くが、すぐさま真剣な表情となって三人に作戦を伝える。

 

「ことりちゃんが幻影を見抜いたら、海未ちゃんはヤツの目を撃ち抜くんや。でも、今のままではヤツに効果はない。穂乃果ちゃんの持つ輝石が矢の光の源なんやけど、もう光が限界みたい。放てる矢も一撃が限界。外したらあかんよ?」

 

 希は海未を試すように言う。『光の矢』の源が穂乃果から伝わる光であり、その光が弱まっていることを一番理解している海未は、自分がこの作戦において重要な役割だということにプレッシャーを感じながらも、力強くうなずく。

「上等です」と答える海未を見て希は続ける。

 

「ヤツにダメージを与えるには、『光の矢』の威力を高める必要がある。そのためには三人の『絆』の強さが試されるんや。海未ちゃんの持つ『イージスの破片』は『絆』の強さによって『光の矢』の威力を高めることができる。三人の『絆』が試されるで」

 

 三人は一度顔を合わせる。

 幼い頃から一緒に遊んできた三人、今まで一緒の小学校、中学校、高校へと進学してきて、今は同じ『夢』に向かって歩みだした三人。ともに希望の光(ウルトラマンギンガ)を信じている三人。

『絆』は──、決まっている。

 三人は海未を中心として並び立つ。海未は『イージスの破片』を持つ左手を前に伸ばし、その手を左からことりが、右からは穂乃果が重ね合わせる。

 三人はまっすぐその視線を向ける。

 希は、その姿を見て微笑む。三人の姿が有無を言わせない気迫に満ちていた。

 ──後は、自分の番だ。

 希はその胸の前で両手を重ね合わせ、瞳を閉じる。自分の役目は今の作戦をギンガ──リヒトに伝えること。三人は自分たちのやるべきことに集中しているため、希の動きには気づいていない。

 

 ──りっくん。

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 光の空間に立つリヒトは左腕を押さえ膝を着いていた。いくら気迫でダークガルベロスと戦っていたとしても、体力には限界がある。先ほどまではことりのアドバイスで戦えていたものの、すでに限界を迎えていた。肩で息をするほどまでに疲弊しており、ギンガのライブ時間も限界が近づいている。次の一撃で決めたい。

 だが、左腕の痛みがリヒトの動きを制限していた。この痛みのせいで、止めの『ギンガサンダーボルト』も『ギンガファイヤーボルト』も放てずにいた。『ギンガスラッシュ』は威力が弱いため、決め手にはならない。ギンガの持つ最大威力を誇る光線も、この痛みが邪魔していた。

 何か手を打たなければ、そう思っていると。

 

 ──りっくん。

 ──希? 

 

 希の声が聞こえた。

 

 ──今から穂乃果ちゃんたちが君に逆転のチャンスを与えてくれる。必ずそこで決めて。

 ──そんなこと言われても、この左腕じゃ……。

 ──それは『私』が治すから。

 ──え? 

 

 リヒトの目の前に光を纏った希が現れた。本来この空間には、リヒト以外の人物が訪れることは絶対にありえない。それなのに、今目の前には光を纏い半透明の希がいる。

 驚きに目を見開いているリヒト。お願い、と希がつぶやくと希から揺れるようにもう一人の『ノゾミ』が現れた。

 

 ──君は……。

 

 その少女はリヒトが『ティガ伝説』を見ているときに現れた少女だった。少女はリヒトへと近づくと、その手をリヒトの左腕に置く。少女の手から優しく溢れる光が、リヒトの腕に触れた瞬間、痛みが引いていく。先ほどまで動かすだけで激痛の走った腕には、全く痛みが残っていなかった。

 その現象はギンガの体にも表れていた。わずかに漏れていた光が消え、その傷口が完全にふさがる。

 

 ──君は、いったい何者なんだ? 

 ──『私』と『希』の願い、守ってね。

 

 少女はリヒトの質問に答えることなく、一言を告げると姿を消した。

 

 ──後は、お願いね。

 

 希は微笑みながらそう言うと、姿を消した。

 光の空間にはリヒトがただ一人取り残された。

 その腕に痛みはもうない。これなら、最大威力を誇る『必殺の一撃』を放つことができる。

 リヒトは、立ち上がりチャンスの時を待つ。

 

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 

 ことりは無数に存在するダークガルベロスに視線を走らせる。幻影と本物のズレ、それを見つけるために全神経を集中させる。先ほどまで見抜けていたのは、あくまで比べる者が一対一だったため。しかし、今回は無数の中から本物の一体を見つけなければならない。それ至難の業と言えるだろう。気の遠くなるようなこと、見つかるかどうかも怪しい状況の中、ことりは瞬き一つせずに視線を走らせる。

 穂乃果と海未も視線を走らせるが、ことりのような観察力はないため見抜くことはできない。ことりを信じ待つことしかできなかった。

 三人の緊張は極限まで張り詰められている。

 失敗の許されない大勝負。

 ギンガのカラータイマーは激しく点滅しており、いつ消えてもおかしくはなかった。その激しい点滅音が、少女達を焦らせる。

 構える海未の手が震える。

 弓道の試合の時以上の緊張に、押しつぶされそうになる中、

 

「大丈夫だよ、海未ちゃん」

 

 穂乃果の声が聞こえてきた。

 

「ことりちゃんは絶対に見抜く。海未ちゃんは絶対に撃てるよ。私は二人を信じている」

 

 穂乃果は語りかけるように言う。その言葉を聞き、海未は張りつめていた緊張が幾分和らいだ。

 ふー、と一つ深呼吸をし左手を下ろす。いつことりが見抜くかわからない時間の中、自身の集中力を程よい状態に保つためルーティンを行う。

 右手を下ろし力を抜く。全身からわずかに力を抜き、一息吐くと同時に目を伏せる。

 

 

 

 ことりは苦戦していた。いくら視線を走らせても、本物がどれだかわからない。

 ギンガの点滅音がことりを焦らす。

 

(どれなの!? 本物はどれ!?)

 

 時間がない、焦りがことりの集中力を乱していく。

 そんな時──、

 

「ことりちゃんは絶対に見抜く。海未ちゃんは絶対に撃てるよ。私は二人を信じている」

 

 穂乃果の声が聞こえ、ことりの思考に空白が生まれる。

 二人は自分を信じてくれている、そのことがことりの乱れていた集中力が再び引き締まる。

 ことりは一度、自分を落ち着けるためにふー、と息を吐き視線を一度下げる

 それが──奇跡を起こす。

 

 

 そして──、その視線がとらえた。

 無数の足の中に、動いた際に()()()()()()()()

 

 

 

「──────見つけた!! 海未ちゃん、これが本物!!」

 

 ありったけの声で叫ぶことり。海未がわかりやすいように左腕の先を自分が見つけた本物へと向ける。ことりの空間把握能力が自然と働き、距離感を計算する。

 ────瞬間、海未は視線を鋭く、全神経を集中させことりが向けた先の固体を見据える。

 垂らしていた右腕に力を入れ、矢を引く動作をする。

 三人の緊張が極限まで高まり──『想い』が一つとなる。

 

 

 

『──────────っつ!!』

 

 

 

 穂乃果はその輝石を握りしめる。幼馴染が見つけてくれたチャンス、それを逃さないためにありったけの思いを輝石に込める。

 

 

 

 光が、眩い光が、少女たちの元から飛翔する!! 

 

 

 

 そしてその光は、本物のダークガルベロスの瞳を文字通り一直線に撃ち抜いた。

 確かな手ごたえを感じる少女達。先ほどまで放たれていた矢とは違い、明らかにダメージとなってダークガルベロスを襲っていた。

 雄叫びを上げ苦しむダークガルベロス。幻影は──消え去った。実態を持った本物が現れる。

 そして、少女たちがもたらしたチャンスをギンガは──リヒトは掴む!! 

 左腕を突き出し、重ねるように右腕を突き出す。クリスタルが青に輝き、Sの字を描くように腕を開いていく。クリスタルの輝きが増していき、エネルギーが充填される。

 左拳を右肘に当てL字型に腕を組む。

 放たれる──必殺の一撃!! 

 

 ──ギンガクロスシュート!! 

 

『いっけええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 少女達は叫ぶ。

 放たれた必殺の一撃は、眩い光線となって瞳を撃ち抜かれ苦しむダークガルベロスに迫る。

 避ける隙は──なかった。

 光の光線はダークガルベロスを貫き、その衝撃がダークガルベロスを後ろへ吹きとばす。土埃を上げ地に倒れ伏すダークガルベロスは、轟音を立てて爆散した。

 黒い煙と僅かな青い粒子が空へと昇っていく。

 あたりは一瞬、ギンガの点滅するカラータイマー音のみが響いた。

 ギンガは、ゆっくりとL字型に組んでいた腕をほどき少女たちを見る。

 

「…………………………勝った」

 

 ポツリと穂乃果が漏らす。

 

「──勝ったんだ……ギンガさんが勝ったんだ!! やったー!!」

 

 ゆっくりと、胸の奥から徐々に『勝利』が押し寄せてきた穂乃果は、ギンガの勝利を確信し大声をあげ喜ぶ。海未とことりに抱き着き、「やった! やった!」と笑顔で繰り返す。

 

「……勝ったんですね」

 

「──うん、ギンガさんの、私たちの勝利だよ!」

 

 二人も遅れてやってきた『勝利』と言う実感に顔を輝かせ喜ぶ。

 三人は右手を上げた。

 

『イッエーイッ!!』

 

 ハイタッチを交わす三人。パチン!! と言う爽快な音が響く。

 希もまた、ギンガの勝利に安どの表情を浮かべていた。サイコメザードの時とは違い、今回はギリギリの戦いだった。敵の作り出したフィールドで、敵に有利な状況での戦い。おそらく、ギンガもリヒトもすでにボロボロだろう。

 

(お疲れさま)

 

 希はギンガを見上げ、労いの言葉を送る。

 勝利の余韻に浸る一同。それほどダークガルベロスが強敵だったのだ。

 リヒトも、三回目の戦闘にしてあれほどの強敵を戦うことになるとは思ってもいなかった。体力はすでに限界を迎えており、戦いのダメージから体中が痛い。ことりと海未の援護がなければ負けていたに違いない。そしてもし、負けていたとなると……。

 

 ──やめよう。俺は勝ったんだ、守れたんだ。みんなの夢を……。

 

 リヒトは『勝利』を手にし喜ぶ少女達を見る。それを見ているだけで、こっちも自然と笑みが浮かんできた。

 だが、ことはまだ終わっていなかった。

 突如、グニャリと風景が歪み、泡が立ち始めこの空間が崩壊し始める。

 ──位相の変異が始まった。

 リヒトは直感でそれを理解すると、少女たちを守るべく動こうとするが遅かった。

 ギンガのカラータイマーの点滅が消える──すなわちタイムリミットだった。光となって消え始めるギンガ。体を動かそうにも、脱力感がリヒトを襲い動くことができない。

 

 ──穂乃果、海未……、ことり、希。

 

 薄れゆく意識の中少女たちの名を呼ぶリヒト。

 リヒトはその手を必死に伸ばすも、──ギンガは光となって消えてしまった。

 

『きゃああああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 ゴボゴボと音を立て崩壊していく異空間。

 少女たちは悲鳴を上げることしか出来なかった。




ダークガルベロスを強く書きすぎた……。
いや、元々ガルベロスってメタフィールドでもネクサスが苦戦する相手だし、これで良いのかな。
終わりまで書くと文字数がヤバそうなので「第五章」へ続きます。
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