ゴッドイーター ベテラン新型さん   作:chaosraven

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大変長らくお待たせしました。
本編の第2話となります。


act:02 『最強連射銃使いの後継』と『途中から新型』と『最初から新型』

コウタとの基礎のおさらい訓練から数日空けた今日、俺は管制室から訓練場に神機を持って立つコウタを見下ろしていた。

 

「さて、だいぶ神機の扱いには慣れてきたと思う。今回からは出てくる模擬標的(ダミーアラガミ)は、実物と同様に動きもすれば攻撃もする。本当に危なくなった時には訓練を中止するが、そうでない限りはお前がソイツを倒し終えるまでこの訓練は終わらない。攻撃の頻度は少なく設定している、まずは目標の観察に努めろ。盾を持たない遠距離型として、決して敵のキルゾーンには近付かない、自分に近づけさせないということを意識して振舞うように」

『はい!』

 

訓練場に仕掛けられたマイクが拾ったコウタの音声が管制室のスピーカー越しに響く。訓練を担当する管制室のオペレーターに合図を出し、模擬標的(ダミーアラガミ)一体を訓練場に出現させる。

 

「良いか?目の前のアラガミを、今まで教えた事を生かしながらぶっ殺せ。始めろ」

『っ!?』

 

言うか早いか早速オウガテイルを模した模擬標的(ダミーアラガミ)はコウタへ攻撃を掛ける。尾の先から複数本の針を離れた敵に向かって撃ち飛ばす。コウタはそれを冷静に観察し、バックステップをして避ける。

 

その動きを見た模擬標的(ダミーアラガミ)はコウタを攻撃せんと歩き始める。

 

『まずは喰らえっ!』

 

ツバキちゃんが現役時代に強化しまくった神機、『モウスィブロウ』から放たれる複数の弾丸が、模擬標的(ダミーアラガミ)に向かって飛んで行く。アラガミの中では最弱の個体であるオウガテイルを模したそれが、迫り来る攻撃を避けられる訳もなく、放たれた弾丸は一つも外れる事なく模擬標的(ダミーアラガミ)の体に着弾した。

 

『うしっ』

 

コウタは初めての動く敵への攻撃が通った事に対して嬉しさの籠った声を発する。だが直ぐにハッとしたような顔をすると、表情を引き締め直すのが分かった。いくらオウガテイル種とはいえ、アサルト型の攻撃一撃でくたばる程ヤワな存在ではない。現に模擬標的(ダミーアラガミ)は、自身へ危害を加えたコウタに向けて敵意をむき出しにしている。

 

模擬標的(ダミーアラガミ)は、威嚇とも取れる叫びをあげると尾から針を打ち出す。横方向へのローリングをして回避行動をとるコウタだが、タイミングが遅かったのか、針の一部が左腕を掠る。

 

『いってぇっ! やったな!?』

 

神機を構えなおし射撃を続行するコウタ。何回か連射を繰り返し、銃から打ち出されたバレットは殆ど全てが模擬標的(ダミーアラガミ)に当たってゆく。時折模擬標的(ダミーアラガミ)による反撃はあれど、掠ったアレを除いて特に危なげもなく攻撃を回避していく。

 

そして何回かの攻撃の末、模擬標的(ダミーアラガミ)が遂にダウンする。

 

『よーし!これで決めてやる!』

 

ひたすら引き金を引いて模擬標的(ダミーアラガミ)への攻撃をしていくコウタ。だがある程度撃ち終わると同時に、銃身からバレットが射出されなくなる。

 

『あ、あれ?もしかして弾切れ!?って、うわっ!』

 

そうこうしている間に体勢を整えなおした模擬標的(ダミーアラガミ)が、コウタに向けてドシドシと歩き始める。そして自分の尾っぽを、体ごと回転させて振り回してコウタを吹っ飛ばそうとするが、間一髪のところでコウタは慌ててバックステップを取り回避する。

 

『確か、弾が切れた時はOアンプルってのを飲むんだよな...』

 

ガサゴソと携帯用のポーチから自分の求めているアイテムを取り出そうと探すが、そうしている間にも模擬標的(ダミーアラガミ)は確実に獲物の元へと近づいてゆく。

 

『あった、これだ...ぐわぁッッ!?』

 

周囲への注意を散漫にした結果、コウタは必要なものを見つける事は出来たようだが、その代わりに模擬標的(ダミーアラガミ)からの手痛い攻撃をもらってしまう。訓練用の、それもオウガテイル種を模したものとは言っても、設計自体は正真正銘本物のアラガミである。

当然だが、人っ子ひとりを弾き飛ばすなんて事も簡単にできてしまう。結果、コウタは訓練場の壁まで吹き飛ばされてしまった。

 

 

「あーあー...。こりゃ周囲の状況を常に把握するってのが出来てねえなぁ。にしても、随分と派手に吹っ飛ばされちまったもんだが...」

 

一般的な神機使いなら、既に戦闘不能になってもいいほどのダメージであるはずだ。が、コウタの様子を見た所、どうもまだやれそうな感じがする。

 

「へぇ...?」

 

今この訓練を止めるよりも続けさせたほうが良さそうな気がした俺は、そのまま訓練を続行させて様子を見る事に決めた。管制用のデスクトップ機器にある非常ボタン・・・、万一の際に模擬標的(ダミーアラガミ)を緊急消滅させるボタンに右手を掛けながら。

 

 

『...へへっ、こん位でへばってちゃダメだよな...。俺は世界を守るっ、神機使い(ゴッドイーター)だもんな!!』

 

自身を奮い立たせるようにそう叫ぶと同時に、Oアンプルを神機のコアにぶっ差す。オラクルの補充をすませると容器を投げ捨て、神機を構えなおす。

 

『今度こそ決めてやるぜ!』

 

模擬標的(ダミーアラガミ)の間合いに入らないように周囲への注意を払いつつ、射撃に最適な距離を維持しながら模擬標的(ダミーアラガミ)と対峙する。先に行動したのは模擬標的(ダミーアラガミ)の方だった。

 

のっしのっしと近付いていくが、その迫力に負けじと引き金を引くコウタ。ある程度模擬標的(ダミーアラガミ)が接近すればステップをとって距離を開ける。そして再び引き金を引いてゆく。

 

突進、飛び掛かる、体ごと振り回してしっぽで攻撃、しっぽの針を飛ばす以外の攻撃法を持たないオウガテイルとの戦い。こうなればもうコウタの勝利は決まったようなものである。やがて模擬標的(ダミーアラガミ)はダウンする事もなく、そのまま断末魔の叫びをあげながら霧散していった。

 

それを見て気が緩んだのか、コウタはその場で尻餅をついて倒れこむ。

 

『ふぃ〜...。なんとか終わったけど、こんなんじゃまだまだダメだよな...』

「分かってるじゃないか。あと、戦場でそうやって気を散らしてたらあっという間に死ぬぞ」

『うわぁ!?』

 

慌てて立ち上がり姿勢を直し神機を構えるコウタ。

 

「ふむ、まずは初めての実戦形式での訓練お疲れさん。結果は上々のものだ。と言いたい所だが、訓練で妥協しても良い事は何も無い。辛口評価でお前の行動を振り返るとしよう。要点をまとめると2つ、一つは注意力の不足。もう一つは油断だ。アイテムを取り出す際にも周りの警戒を怠ってはならない、ツバキちゃんから言われただろう?それと、敵を倒し終えたからと言って近くにアラガミがいない保証はどこにも無い。さっきのように、へたり込んだ所を飛び掛かってきたアラガミに喰われて死んだ、なんて話は五万とある。くれぐれもアナグラに帰投するまで絶対に気は抜かない。その練習をしっかりしておくんだな」

『は、はいっ!』

「ではご苦労さん。今日の訓練はこれで終わり、ゆっくり休め」

『ありがとうございました!』

 

 

 

コウタが訓練場の扉へと消えてゆくのを確認し、俺は椅子に座ったまま呟く。

 

「さて、この少年のポテンシャルはどう化けるかな?」

 

誰に対してでもなく問いかけたのであった。

 

 

 

-----

 

 

 

「ふいーっ、疲れた〜」

 

今日初めて実戦さながらの訓練をして疲れたのか、コウタはエントランスのソファーに腰掛けると、大きく息をついて背もたれにもたれかかる。両腕をソファーの裏に回して、本当に大きくグテーっとなる。

 

「しっかし俺もまだまだだなぁ。さっきレインさんにも怒られたけど、本当の戦いじゃ一瞬の気の緩みが命取りだって言うし...。俺ここで上手くやっていけんのかなぁ」

 

その言葉からはコウタの内に宿る確かな不安を表していた。

 

神機使い・・・またの名をゴッドイーターとも呼ぶ彼らは、生体兵器の一種である神機を用いて、あらゆるものを捕食するアラガミと戦える唯一の存在である。しかし、いかに神機使いの特権で身体能力を強化されている(偏食因子の影響により、非投与の人体と比べて数割ほどの身体能力の向上が見受けられる)とはいえ、神機を使って戦う者のベースは人間であり、ときに油断もすれば注意が散漫になりもする。そうして命を落とした神機使いは数知れず。定年まで生きていられることが非常に珍しいとまで言われる。

 

アラガミという存在はどこまでも人に対して無慈悲であり、彼らはただただ己の本能に従い捕食を繰り返す。それを食い止めるために神機使いは命をかけてアラガミを狩って征く。

 

しかしそれを分かっていても、いざ自分がその立場になるとなかなか上手くいかないものである。「言うは易く行うは難し」という言葉がまさにぴったりの表現だ。こんな言葉を生み出した人って、本当にすごく頭良いんだな、という事をぼんやりと考えながらコウタはソファーにもたれかかっていた。

 

するとそこに背後から忍び寄る人影が。コウタの真後ろに来ると目をギラリと光らせ、コウタの(わき)目掛けてズボッと手を差し込む。

 

「うおわっ!?ってあはは!止めろっくすぐったいって!!あっはははは!」

 

謎の人物(ここではXと呼称しよう)Xは、コウタの腋だけでなく脇腹にも手を動かしくすぐり続ける。コウタはあまりのくすぐったさに身悶え、涙まで流す。しかも笑い声まで大きく響くものだから、エントランスにいる者全員がソファーに視線を向ける。

 

X「うりうり〜ここがエエんのか?ここがエエんじゃろ!?」

「や、やめって、もう保たなっあはははは!!」

「あのぉ〜、一応ここはエントランスなのでそろそろお静かにお願いします...」

 

あまりの大声による騒ぎが迷惑だと判断したヒバリが止めに入る事で、コウタへのくすぐり攻撃は終わりを迎えた。

 

「はぁ、はぁ、ありがとう、ございます、ヒバリさん」

「い、いえいえ...。ツバキさんが来る前にお止めした方が良いかと思いまして」

 

そういうとヒバリはコウタとXに向けて苦笑を見せる。確かに、アナグラの中では鬼教官で通っているツバキが現場に鉢合わせようもんなら、コウタたちは間違いなくお仕置きされてしまうだろう。主に体力トレーニングとか、反省文とかで。

 

「ありがとうございます!お陰で命拾いしました!」

「ありがと〜ヒバリちゃーん」

「元はと言えば貴方のせいですからね!?飛鳥さん!」

 

一転してツッコミの表情を浮かべたヒバリは、謎の人物Xこと飛鳥にツッコむ。

 

「にゃっはははは〜」

「「全然反省してないし!」」

 

くすぐられたことによって余計に体力を消耗したコウタはガクッと項垂れる。

 

「とにかく、エントランスではなるべくお静かにお願いしますね!」

「は〜い、にゃはっ」

「なんかすみません...」

 

ヒバリはそう言って一階にある受付へと戻る。それを見てコウタは口を開く。

 

「で、なんで俺をくすぐったんだよ?飛鳥」

「うーん?」

 

飛鳥はんーっと考える素振りを見せるとすぐに、コウタに向き直り言った。

 

「だって、コウタ君は悩んでるよりハキハキしてる方がコウタ君らしいもんね!」

「お、おう。ありがと」

 

満面の可愛らしい笑顔で言われたものだから思わず気恥ずかしさを感じるコウタ。無意識に彼女への返事も、少しだけ素っ気ないものになってしまったが。照れ隠しも含め少し俯きながらも、コウタは口を開く。

 

「まあなんていうかさ、俺今日初めて実戦形式での訓練をしたんだけど上手くいかなくてさ...。それなりに訓練には真剣に向き合ってやってきたつもりだけど、やっぱり訓練とはいえ、実際に動いたり攻撃をするアラガミってのは全然違うんだなぁって。戦ってみて改めて、自分の実力がまだまだだってことを思い知らされちゃったよ」

 

あははははと頭を掻きながら苦笑いを浮かべるコウタ。すると飛鳥はさっきと一転して少し真面目な顔を浮かべて考えこむ。顎に手を当てて考える素振りはどこぞの探偵御用達?のポーズだが、やはり顔の作りが良い人がやると格好良くて様になるなぁ、と思いながら飛鳥の言葉を待つ。

 

「いいんじゃない?だって私たちは入りたての1年生なんだし。最初から上手くいかないのは当たり前だよ。だからコウタ君はコウタ君の、私は私のペースで着実に力をつけていけば良いと思うよ。変に焦っちゃったら、それこそ簡単にすぐ死んじゃえる職場だもん...」

 

一瞬だけ哀しげな表情を浮かべたが、すぐにいつもの笑顔を浮かべながらコウタへと向き直る飛鳥。そんな彼女の表情の移り変わりに気付いたものの、触れるべきではないと判断し、コウタは励ましてくれたことに対する礼を述べる。

 

「ありがとう飛鳥!ようし、俺ももういっぺん諦めずに頑張ってやらぁっ」

「その意気だよコウタ君」

 

 

そうはいっても、今日行われる予定のコウタの訓練はすでに終わっているため、この心意気を訓練で発揮するのは明日である。なのでコウタは飛鳥に再度礼を言うと、自分の部屋に向かうためエレベーターのスイッチを押して乗り込む。

 

コウタがエレベーターに乗り込むのを見届けると同時に、入れ違いでエントランスに出てきた人がソファーへ歩いてくるのがわかる。茶色いコートを着た自身の上官であることを確認すると、その人物に飛鳥は挨拶をする。

 

「こんにちはーリンドウさーん」

「うっす。今日も訓練は順調か?って、お前に関しちゃ聞くまでもねえか」

 

わりぃわりぃと頭をポリポリと掻きながら詫びるリンドウ。この人も自分の上司なので、どうやら自分の訓練の推移は知っているらしい。

 

「一応言えば、訓練は順調でっすよ〜」

「おうそうか。でも、油断はすんなよ?気抜いたら直ぐにおっ死んじまう。レインも結構お前達には期待してるみたいだから、頑張れよ?新入り2号」

「了解でありますリンドウさん」

「おう。じゃな」

 

リンドウは飛鳥とのやり取りを終えると満足そうな笑顔を浮かべ、一階の受付まで階段を降りていく。リンドウを見送った飛鳥は、んーっと伸びをしてからソファーへと掛ける。実は、コウタが先ほどまで訓練をしていたように、飛鳥もまた訓練から上がってそのままエントランスに向かい、たまたま居合わせたコウタへ悪戯をしたという経緯がある。

 

従って彼女自身ももうクタクタというほどでは無いものの、精神的にはそれなりに疲労している。

 

「私も部屋に戻って休もうかなぁ〜...ふぁーあ」

 

あくびをしながらも区画移動用エレベーターへと向かい部屋へ戻る。関係者以外は入れないエントランスの二階部分は、また何時ものような静寂に包まれた。

 

 

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