Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.3『忍者、飛ばされるの巻』その3からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。



♯.4 『蘇えるS/地獄への行き方』

「…てわけでさ、あたいは言ってやったんだよ。『無理ですよ、だってもう数え切れないくらい釜茹でされて来世まで再起不能になってる頃ですよ、あの罪人』ってね」

 

 三途の川を渡る小舟の中で、死神『小野塚小町(おのづか こまち)』は得意げに先日の出来事を話していた。

舟の乗客は壮年の男で、白い帽子に白いスーツ姿という幻想郷では珍しい格好をしている。彼はただじっと小町の話しに耳を傾けていた。

 

「そしたらすごい剣幕で閻魔様が怒って、『次にそういうことがあれば減給処分だけではすまされませんよ』って言われちゃったわけだ。誰にでも失敗くらいあるのにさ」

 

 話に一区切りが付いたところで男は口を開いた。

 

「…どう聞いてもお嬢さんが悪いと思うがな」

 

 その感想に小町は耳が痛いというふうに答えるが、途中でおかしなことに気づいた。

 

「まあ、その通りなんだけど、あの閻魔はもう少し部下を…ちょいと待った。なんで旦那は口がきけるのさ?死人に口無しっていうだろ」

 

 幽霊となりここに来た人間は、閻魔が許可を出さない限り基本的に言葉を話すことができない。しかし男は確かに声を出し、自分の愚痴に感想を述べた。怪訝な顔の死神に男は言う。

 

「そういうものか。生憎死んだのは初めてでな、勝手が分からん」

 

 いやいやと手を振り小町は語る。

 

「〝死〟っていうものは一回きりなんだから、二回目も三回目もありゃしないよ、地獄送りになれば別だけどさ。それより旦那はどっから来たんだい?」

 

「風都からだ。何か問題でもあるのか」

 

「旦那がいた船着場は幻想郷で死んだ人間が来る場所なのさ。だから幻想郷以外で死んだ人間は間違ってもあそこには来れない。それに聞いたことのない名前の場所だ」

 

 通常人が死ぬとその魂はそれぞれの世界の彼岸行きの船着場に辿り着くようになっている。だがこの男は知らない場所から来たと言った。小町はどうしたものかと悩んだが答えは一つしかない

 

「こうなりゃ映姫様に聞くしかないか。んん~、でもまた怒られそうだな。そういや旦那、名前は?」

 

 問われた男は死神の少女に告げた。

 

鳴海荘吉(なるみ そうきち)。おそらく地獄行きになる罪人だ」

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「では小町、あなたはその男を乗せるとき疑問を感じたり不審に思ったりはしなかったわけですね」

 

「おっしゃる通りです」

 

 彼岸に着いた荘吉は小町に連れられ、是非曲直庁(ぜひきょくちょくちょう)の管理する裁判所内の一室にいた。そこは幻想郷担当の閻魔の執務室だ。

 そこに入って荘吉は声にこそ出さなかったが少し驚いた。想像していた閻魔と部屋にいた閻魔はあまりにもギャップがあったのだ。目の前の閻魔は十代の少女そのもので小町よりも幼く見える。またその外見に反して相当な年齢らしく幻想郷の死者は全て彼女が裁いてきたと小町は教えてくれた。

 そして今この可愛らしい閻魔は怒っていた。

 

「まったく!仕事に対する緊張感が足りないからいつも何かしらのミスやトラブルを起こすんです。常日頃から責任感をもって生活していれば、あなたは今頃もっと上の役職になれるんですよ。そもそも…」

 

 小町が事情を説明してからこの閻魔はしばらく彼女を叱責していた。そこから窺えるのは、この死神がなかなかに問題児らしいということだった。舟での会話を思い出せば納得できると荘吉は思う。

 

「映姫様。今はあたいの勤務態度についての話じゃないと思うんですがね」

 

 話しが進まないうえに、自分に対しての説教が長引いてきたので小町は荘吉に目をやりつつ上司を見た。

 

「そんなことは分かっています。この話の続きは後でしますから覚悟しておくように」

 

「へいへい」

 

 軽い調子の返事を聞きながら閻魔は荘吉の方に視線を移した。

 

「さて、鳴海荘吉といいましたね。私は幻想郷を担当する閻魔の『四季映姫(しき えいき)・ヤマザナドゥ』というものです。あなたはどうしてあの船着場にいたのですか?詳しく教えてください」

 

 映姫に問われ彼は困ったような顔をした。

 

「詳しくか…そういわれても返答に困るな。俺は胡散臭い女から、あの場所にいれば地獄行きの舟に乗れると聞いて待っていただけで他のことは一切知らされていない」

 

 ふむと頷き映姫は続ける。

 

「では、その胡散臭い女とは誰ですか?」

 

 荘吉は困った顔のままだ。

 

「それも分からない。聞く前に突然消えた。まるで隙間に吸い込まれるようにな」

 

「〝スキマ〟ですか。厄介そうですね」

 

 しばらく無言で考えていた映姫は咳払いをして部下の名を呼んだ。

 

「小町、しばらく席を外してもらえますか。終わったら呼びにいきますので休憩所にいてください」

 

「分かりました。じゃあ旦那、また後で」

 

「ああ。後でな」

 

 小町が部屋を出て行くと部屋の鍵が閉められた。

 

「状況が分からないようなので、これからあなたの過去を見せてもらいます」

 

「過去?そんなものをどうやって見るんだ」

 

 すると閻魔は執務用の机から袋を取り出し、荘吉の前で中身を出した。それは手鏡のように見える。

 

「これは照らした者の生前の行いを映す〝浄玻璃(じょうはり)の鏡〟という道具、これで死の直前からのあなたを見ます。そうすれば何があったか分かるでしょう」

 

 説明を聞いて彼は素直な意見を口にした。

 

「便利だが悪趣味な道具だ」

 

 感想を聞いて映姫は語る。

 

「閻魔に求められるのは生前の行いを公平に見定め判決を下すことだけ、故にこのような道具が必要なのです。好き好んで死者の人生を見たりはしません。それこそ死者に対する侮辱ですからね」

 

 それを聞いて荘吉は申し訳なさそうに言う。

 

「失礼した」

 

「気にしなくて結構です。では始めましょう」

 

 映姫は手に持った鏡で荘吉を照らした。すると部屋の中は眩しい光に包まれ、天井に何かが映し出される。それは荘吉の最後の依頼となったあの出来事だ。

 

「…翔太郎」

 

 最初に映ったのは彼の弟子『左 翔太郎』の姿だった。それを見て少し彼の表情は柔らかくなる。

 そして再生される過去の映像は続き、とある場面で映姫は驚きの声をあげた。

 

「これは!」

 

 驚く彼女が見たものは、銀色の髑髏の怪人だった。

 その姿を見て映姫はかつて聞いた英雄の名前を口にしていた。

 

「…仮面ライダー!?」

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「はあ…まったくどうしてあたいがこんな面倒ごとを担当しなくちゃいけないんだろうね」

 

 三途の川の途中で小町は嘆いた。先ほどから彼女はああでもない、こうでもないと文句を吐きつづけている。そんな様子の彼女に荘吉は言う。

 

「それだけ上司から信用があるんだろ。悪いことじゃないと思うが」

 

「そうはいってもね旦那、あたいはどれだけ楽に仕事をやるかってことしか頭にないんだよ。それに優秀で仕事熱心な死神なんていくらでもいるんだし、わざわざさぼり魔なんか選ぶかね~」

 

 ため息を吐き小町は、つい先ほどの映姫とのやり取りを思い出す。

 

           ●

 

「小町、しばらく死神の仕事を休みなさい」

 

 映姫に呼ばれ執務室へと戻ると荘吉の姿はなく突然休暇を言い渡れた。

 

「マジですか!?いや~最近あたい働きすぎでしたしね。ありがたやありがたや」

 

 それを聞いて小町はとりあえず喜んだがそれを遮るように映姫は続けた。

 

「話は終わっていませんよ」

 

「へ?」

 

 一瞬固まった小町を無視して彼女は言った。

 

「そのかわりに中有の道の調査をしなさい。あそこでの騒ぎは聞いているでしょう」

 

 中有の道での騒ぎ。それは二三日前から聞く、ある噂だった。

 

「一応は。確か化け物が出るってやつですよね」

 

「その通りです。それがどういうことか鳴海荘吉と共に調べてきてください。彼は生前探偵だったそうですから力になってくれるでしょう」

 

 しかし小町は素直にその命令を承服できなかった。

 というのもある規則があったからだ。

 

「ちょいと待って下さい。ここまで連れてきた死人を、また現世へ連れ出すのは禁止事項に当たるんじゃないんですか?」

 

 一度彼岸まで来た魂を現世へと戻すことは原則禁止されていた。それは是非曲直庁に属する者であれば誰もが知っているルールだ。

 

「彼の場合は事情が違うのです。先ほど他の閻魔からも了承を得ましたし、何の問題もありません」

 

 事情が違うとはどういうことかと思ったが、それよりも面倒くさい仕事を押し付けられたような気がして彼女は強い不満の声をあげた。

 

「ええ~!ほかに適任の奴がいるでしょう。なんであたいなんですか!」

 

 しかし映姫はそれより強い口調で小町に命令した。

 

「つべこべ言わずにすぐ行きなさい!これは業務命令です!彼はもうあなたの舟で待っていますよ。それと、なるべく向こうでは騒ぎを起こさないように。あくまで頼むのは調査だけなのですから」

 

 もうどうにもならないと小町は覇気のない声で上司に返事を返した。

 

「…はい、善処します」

 

 それを聞いて映姫は彼女を見送った。

 

「よろしい。ではお願いしますよ小町」

 

           ●

 

 まったくとんでもない災難だと彼女は思う。それに他の閻魔からの承認を得たという話も怪しい。あの短時間で、彼岸のルールを捻じ曲げるようなことを、了承させるだけの材料があったのかも疑問だ。だが命令である以上は従うほかない。もうどうにでもなれと小町は大きく溜息を吐いた。

 

「はあ~」

 

「何か考えがあるんだろう。あのかわいい閻魔様はなかなか切れ者のようだしな。それよりさっきの話の続きが聞きたい」

 

「ああ、愚痴ばっかりですまないね。聞いた話じゃ少し前から三途の川の手前で奇妙な化け物が出るようになったらしいんだよ」

 

 この世界には妖怪の類がいるというのを先ほど荘吉は聞いていた。おそらく幻想郷の住民は日常的に化け物を見て生活しているのだろう。だが噂の化け物は『奇妙な』と付け加えられている。つまりその怪物は幻想郷の妖怪ではない別の何かだと推測される。

 

「どんな姿か分かるか」

 

「あくまで聞いた話だけど、妖怪というには半端で人間にも見えないような奴らしいんだよ。しかも複数いるみたいでどことなく蜘蛛とか蝙蝠に似てたらしい。あとでかいトカゲの頭が歩き回ってたって話もあるね」

 

 蜘蛛と蝙蝠…それを聞いて思い出したのはかつての相棒の最後と自身の罪だった。

 

「なかなかに興味深いな。他に何か聞いているか」

 

「なんかあったかな……ああ、関係なさそうな話だけど、黒装束の怪しい男達の噂もあるよ。なんでも小さい長方形の棒みたいなものを手に持って、ふらふら徘徊してたとか」

 

「そうか」

 

 気になることが多いが後は調べてみてから考えるしかないだろう。そして気が付けば舟の前方に岸が見えていた。

 

「おっと、そろそろ到着だよ」

 

 どうやら地獄まではまだ遠いらしい。

 そんなことを思いつつ異界の探偵は死神と共に幻想郷へ降り立った。

 

 




 てな感じで仮面の探偵篇です。
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