Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.5『博麗の巫女1/楽園の管理者』その4からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。




♯.6 『機械化兵迷う』 その1

「どうやら囲まれてしまっているようだな」

 

 迷いの竹林と呼ばれる場所の奥深くで、その男は周囲を見回しながら、隣に立つ少女に話しかけた。

 少女は一般的な黒いブレザーに身を包んでおり、手にはアサルトライフル、腰には拳銃がぶら下げられていた。しかしそんなものよりも目立つのは、紅い瞳と彼女の頭から伸びている二本の耳だ。

 

「困りましたね、隊長」

 

「鈴仙さん…その隊長っていう呼び方はよしてくれないか」

 

 少女から返された言葉に彼、『三船 敬三(みふね けいぞう)』は否定の声をあげる。彼は茶色のジャケットにズボン姿だが、その全身は銀色の装甲に覆われまるでロボットのようだった。

 

「いえ、三船さんは隊長です。だって姫様が永遠亭臨時警備隊長にあなたを任命したわけですから。まあ私とあなただけしか隊員はいませんし、警備隊ができたのもついさっきですけど、はい」

 

 それに対して彼女、『鈴仙(れいせん)優曇華院(うどんげいん)・イナバ』は淡々と彼に答えさらに言葉を続けた。

 

「後ですね、私のことは呼び捨てでお願いします。気楽ですし、そのほうが性に合ってますから」

 

「……」

 

 その言葉にしばらく沈黙してから三船は顔を上げた。表情は変わらない為分からないが、やれやれといった様子である。

 

「了解した。とりあえずその件はここを切り抜けてから考えるとしよう」

 

「はい」

 

 彼らは囲まれていた。周囲からは機械の駆動音が聞こえ、竹の間からは機械の体が見え隠れしている。その数は分からないが少なくとも二人で相手をするには分が悪い。

 

「現状確認としては、敵の機械化兵に包囲されているというところだな。ただその中に未確認の型が混じっていのが気にかかる」

 

「知らないタイプですか?」

 

 問われて三船はああと答える。

 

「残念ながら。これでもそれなりに色々な機械化人間を見てきたがつもりだがあんなのは初めてだ。恐らく使われている技術が根本的に違うんだろうな。興味深いが今は突破が優先だ。俺は正面からいく、君は逃げながら敵を撹乱してくれ」

 

「了解しました」

 

 そして二人だけの警備隊は動き出した。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 同時刻 迷いの竹林、別所

 

 

「ったく、どうなってるんだろうな」

 

 棒つきの飴を舐めながら私は一人竹薮を歩く。日課の散歩を兼ねた山菜探しだ。

 見ればいつもと変わらない風景が広がっているのだが、ここ最近は妙な風貌の機械達がそこかしこでうろついており、なかなかに鬱陶しかった。

 一度邪魔だと文句を言ったが反応はなく、次の瞬間には銃弾が私を貫いていた。まったくもってどうしようもない連中だと思う。そして当然燃やしてやったが、消し炭になる前に奴らは氷のように砕けて消えた。

 

「今日はやけに静かでさ」

 

 そう、無駄に静かだ。基本的に歩くルートは同じなので違和感があればすぐに分かる。昨日までは嫌な機械音がしていた。だが今日は鳥の声さえ聞こず、風の音だけだ。これはおかしい。長いこと無駄に生きてきたが、こんなのは初めてだ。

 

「ああ~それにしてもないな」

 

 しかしない。目的の山菜がない。まあ、ここいらのは大体収穫してしまったので当然ではあるのだが。こんなにないのは珍しい。

 

「行きたかないが……金もないしな」

 

 三菜がないのはしょうがないとして、問題は金がないことだ。別に飲まず食わずであっても困りはしない。だが暇を潰すのにはどうしても金が必要だ。酒も飴も本もまともに買えやしない…とはいっても友人に借りるのは気が引けるし、化けうさぎの金貸しはぼったくりだし…やはり自力で何とかするしかないのだろう。

 手っ取り早いのは鰻屋台の手伝いだが、あそこは営業が不定期で当てにはならない。竹薮案内も収入にならなくはないが、そもそも好き好んで入ってくる人間は限られるので安定しない。そうなると範囲を広げて山菜取りをするしかないが、あまり行き過ぎると奴と出くわすかもしれないのが大問題だ。

 

「面倒くさい」

 

 本当に面倒だと思う。奴との付き合いは無駄に長いので余計にそう感じるが…厄介だ。前までなら問答無用でお互い殺しあったものだが、今はそうもいかない。何故なら、なんだかんだで奴と私は一応の和解をしてしまっているからだ。どうしてああなったかは未だに分からない。いや分かりたくない。うん、絶対だ。

 

「ふう…」

 

 とりあえず体はふらふらと奴の縄張りに向かっていっている。背に腹は変えられないというやつだろう。

 しばらくして鬱陶しい音が響いてきた。

 

「ん?」

 

 あの機械達が何かと戦っている。しかし動きが早くて何か分からない。

 

「んん~…仲間割れか?」

 

 目を凝らしてよく見ればそれは人の形をした機械だった。他の奴と違うのは服を着ていることぐらいだろう。それにどんな理由があるのかは知らないが私にとっては関係ない。両方邪魔なだけだ。

 

「ったく、どうなってるんだろうな」

 

 私は飴を噛み砕き、その中心へと飛び込んだ。

 ああ、どうしようもなく厄介だ。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「むっ!!!」

 

 三船は突然の乱入者に驚いた。

 竹薮から彼と敵の間に入ってきたのは十代に見える少女であり、その髪は銀色で腰より長くいくつかのリボンが結ばれていた。彼女は両手をもんぺのようなズボンのポケットに突っ込んでおり、不機嫌そうにこちらと敵を見ている。

 

「君、危ない……」

 

 言いかけて三舟は言葉を飲み込む。何故なら少女の足元が突然燃え出したからだ。その勢いは強くあっという間に周囲は火の海に変わってしまっている。

 

「これは炎?どういう仕掛けだ」

 

 咄嗟の判断で彼は後ろに下がった。機械化人間にとって炎は危険なのだ。

 彼を含めた機械化された人間達は基本的に頑丈な装甲で身を固めており、通常の拳銃、機関銃程度ではダメージを与えるのは難しい。だがいくら身体がそうであっても頭部に納められた脳髄は生身のままだ。当然ボディーが高温になれば、その中で保存液ごと煮えてしまい脳は機能しなくなる…つまりは死ぬ。だから彼は下がった。

 直後に大きな火柱が上がり、敵と彼がいた場所を激しく焼いた。その中で機械化兵達は結晶となって砕け散っていく。

 

「なんだ。喋れる奴もいたのか」

 

 間一髪逃れた三船を見て少女は意外そうな顔をした。

 

「どういうつもりか知らないが俺は敵じゃない。攻撃を止めてくれ!」

 

 だがそんな彼の言葉を無視するように、彼女は左手をポケットから出すと上へと掲げた。

 

「知らないね。私はただ邪魔だから燃やすんだ」

 

 すると周囲の炎が彼女の背に集まり、まるで羽のように焔が咲いた。辺りの温度がさらに上がっていく。

 

「問答無用というわけか」

 

 仕方なしに彼は身構えた。相手は炎を自在に操る厄介な相手のようだ。近づくのも難しいが離れていても不利なのは変わらない。とりあえず逃げ回り、何か策を考えなくてはいけないだろう。

 

「さっさと燃えちまいな!」

 

「断る!!」

 

 飛んでくる火球をかわしながら彼は走り出した。炎の海はさらに範囲を広げており、あちらこちらで竹が弾ける音が響いている。

 そこである物が目に付いた。

 

「…あれでいくか」

 

 刹那、彼の右腕から、内蔵された小型機関銃が飛び出す。それは見た目こそ小型の拳銃のようであったが、性能は間違いなく機関銃そのものだった。三船は躊躇なくそれを目の前の少女に向けると狙いを定め発射した。

 

「面白い仕掛けだな。外れだけど」

 

 しかし銃弾は対象を捉えることなく竹林へと消えてしまう。だが彼は落胆していない。見ているものがそもそも違うからだ。

 

「それはどうかな?」

 

「何!?」

 

 直後に少女の後方で爆発が生じ、割れた竹が彼女へと飛んできた。それ自体はまったくダメージにはならないが、不意を突かれて動きが一時的に止まってしまう。

 彼が狙ったのは特に竹が密集して生えていた場所だった。他の竹に比べて大きかったそれらは、熱で爆ぜるタイミングもそれ相応に遅く、三船はそこに弾を当て爆発させたのだ。

 

「俺はここでやられるわけにはいかないんだ」

 

「ああ~面倒くさい」

 

 そして一瞬で距離が詰まった。少女と機械化兵は手が届く距離で対峙し、お互いの目を見て動かない。

 睨み合いはいつまでも続きそうだったが、その間を割るような叫びが響いた。

 

「ちょっ!何やってるんですかー!!」

 

 慌てた様子で走ってきたのはアサルトライフルを手にした鈴仙だ。その声に少女は視線を動かさず言った。

 

「なんだ、輝夜のとこの真面目うさぎか。今取り込み中だから後にしてくれ」

 

「鈴仙、知り合いか?」

 

 同じく視線を動かさない三船に問われて、兵隊うさぎは少女の名を口にした。

 

「この方は姫様のご友人の『藤原妹紅(ふじわらのもこう)』さんです、はい」

 

 それならばと三船は鈴仙に頼んだ。

 

「だったら彼女を止めてくれ。俺では信用できないらしい」

 

 微動だにしない二人を交互に見てから、彼女は困ったように笑いに言った。

 

「あの~妹紅さん。この方は一見すると最近出没してる機械系怪異なんですが、実際は外の世界から迷い込んできた普通の人で三船さんという方です。今は客人扱いで永遠亭に滞在中なわけでして、宿代代わりにうちの警備をしてもらっています」

 

 その言葉を聞いて二、三度三船を凝視してから妹紅は背中の炎を収めた。それと同時に周囲の炎も消えていく。そして彼女はなんともばつが悪いという顔で再度彼を見る。

 

「そうなのか?だったら最初からそういやよかったのに…悪かったね」

 

 そこで三船も構えを止めた。最初に出てきたのは安堵のため息だ。

 

「ふう……分かってもらえればそれでいいさ。特にお互い怪我もないしな」

 

 ようやく二人が落ち着いたところで鈴仙は妹紅に聞いた。

 

「ところで妹紅さん。なんでここにいたんですか?」

 

「金だよ、金」

 

 金という言葉にしばらく考えてから、彼女はポンと手を叩き答えた。

 

「山菜取りですね。でもここら辺には何もないですよ、はい」

 

「うそだろー!この前までめちゃくちゃあったぞ!」

 

 妹紅の記憶が正しければ、永遠亭側のこの場所にはかなりの量の山菜が自生していたはずだった。しかし確かに周囲を見てもそれらしいものは生えていない。あるのは焦げた竹だけだ。

 

「そうなんですが、どうもここ最近は生えているのを見ないんですよ。てゐもおかしいと言ってますし、もしかすると異変の類がここで起こっているのかもしれません」

 

 異変という単語に彼女はすぐある人物を上げた。

 

「じゃあ巫女に相談すりゃいいじゃないか」

 

「そう思って昨日神社には行きました。三船さんを元の世界に戻してもらう都合もありましたし…しかしですね、留守でいくら待っても帰ってこなかったんですよ」

 

 やれやれといううさぎのジェスチャー見て、妹紅は力なく嘆いた。

 

「……困ったもんだ。ああ~こりゃ、先生にでも借りるしかないな」

 

 肩を落とす彼女に鈴仙はすかさず勧誘を開始する。

 

「それなら妹紅さんも警備隊で働きましょうよ。それなりにバイト代は出ますし、多分」

 

「なんだそりゃ?」

 

「詳しくは永遠亭でお話しますよ。姫様も喜ぶでしょうし」

 

 にこにこしている鈴仙とは対照的に妹紅は暗い顔で足元を見ている。そして迷いとも諦めとも取れるその表情のままに彼女は呟き、歩き出した。

 

「背に腹は変えられないか…本当に面倒くさいな。とりあえず話だけ聞く。さっさと行くぞ」

 

 妹紅を追うように二人も足を進める。

 

「では隊長、帰りましょうか」

 

 呼ばれて三船は思い出した。先ほどの事を。

 

「了解だ。それとやはりその隊長っていうのは却下だ。どうも性に合わない。呼ぶときは三船で頼む」

 

「似合うのにもったいないです…でも嫌なら仕方ありません。行きましょう、三船さん」

 

「ああ」

 

 こうして三人は永遠亭に向けて歩き出した。

 そこで三船は思う。少し前まで地獄のような戦地にいた自分が、何故ここでこんな事になっているのかと。

確かに自分は南方戦線タラワで動けなくなり、アメリカ軍に回収された。だが目が覚めてみればそこは幻想郷と呼ばれる世界であったのだ。

 そう、あれは二日前のこと、待機状態から覚醒した自分の前に彼女達はいた。

 それが始まりだった。

 




 そんなわけで前回の投稿から時間が空いてしまいましたが、ロボット残党兵篇です。
この作品はなかなかにマイナーな漫画ではあるのですが、独特の世界観と絵柄が非常に面白い作品となっています。現在単行本は番外編、続編含めて七冊ほどが出ており気になった方は探してみるといいでしょう。ちなみに私としては最新刊である戦後を描いた『大昭和怪人伝』がおススメです。
では次回。
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