Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.6『機械化兵迷う』その1からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。


♯.6 『機械化兵迷う』 その2

 暗い…ただ暗いとしか表現できない。

 これはなんだろう。夢か幻覚か、今の自分では判断しかねる。

 まるで意識だけが深い海中を彷徨っているようだ。

 その時、光が次々と周りを通り過ぎていった。その度に自分の過去が頭をよぎる。

 子供時代、学生時代、夢、結婚、そして娘の顔……これが俗にいう〝走馬灯〟なのだろうか?

 憶えている限り自分が最後に見たものは、木箱の中で数えていた木目だった。

 なぜそんな物が最後に目に映っていたかというと、これがなかなかに厄介で説明しづらい。

 あえていうなら、動けなくなり敵に回収されたといえば間違いはないはずだ。

 そして木箱に入れられてから何日かが過ぎ電力が減ると、機械の身体は脳の保護を優先するため待機モードを取り、そこでようやく自分は眠りについたはずだった……しかし、どういうわけか今は走馬灯を見ている。

 もしかすると完全に電力がなくなって脳が死んできているのかもしれない…だとすればここで終わりになってしまうだろう。なんとも味気ない最後だ。

 千代…春子…できればお前達にもう一度会いたかった。もう一度。

 

 そして次の瞬間、大きな光が漂う意識を飲み込んだ。その時、俺は誰かを見たような気がした。

 俺の名を呼ぶ誰かを……。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「非常に興味深いサンプルね。どこで拾ってきたのかしら、てゐ?」

 

 大きな手術台を前にして、その白衣を着た女性は隣の小さな少女に話しかけた。

 

「いや、普通に門の手前で倒れてたから運んだんだけど、よくよく考えたら危険じゃね?」

 

 少女は着物姿にブーツという格好で、首にはニンジンを模っしたペンダントが付けられていた。そして頭からは白い毛で覆われた二本の耳が垂れ下がっている。

 

「今頃それをいっても遅いですよ、はい」

 

 そんな風貌の少女の言葉を聞いて口を開いたのは、同じく頭から二本の耳が生えているブレザー姿の少女だ。彼女は心配そうに白衣の女性に聞いた。

 

「師匠、動き出したらどうしましょう。私の今の手持ちでは鎮圧は難しいですよ。この前は偶然持っていた無重力弾があったからよかったですが、今回は在庫切れですし、はい」

 

 だが師匠と呼ばれた白衣の彼女は気楽に答える。まるでそんなのはどうでもいいというように。

 

「その時はその時で考えましょう。それよりも今はこれを調べるのが優先よ」

 

 女性の視線の先には服を着たロボットが横になっている。動く気配のないそれを彼女は嬉しそうに眺めた。

 

「まだちょっとしか調べてないけど本当に楽しませてくれるわ。特に頭の中身がね」

 

「どういうことですか?」

 

「簡単に説明すると、この機械に見えるのは人間なのよ。その証拠に頭部の透視図を見ると脳が確認できるわ。まあ、収められている容器のせいで若干変形しているけどね」

 

 彼女の説明を無言で聞いていた小さな少女は、手術台の上で仰向けになっているロボットにしか見えないそれの頭を、二回ほど握り拳で鳴らすように叩いて台に背を向けた。

 

「このなりで人間かよ。まったくわけが分からねえな、おい。俺は興味ないから商売にでも行ってくるぜ。ん?どうかしたのかよ鈴仙」

 

 見れば目の前でブレザーの少女が、何かを伝えたいようでよく分からない動きをしている。次第に動きは乱れて早くなっていくが、彼女にそれを理解する様子はない。

 

「何だよ!わかんねえよ!香霖堂の兄ちゃんくらい意味不明だよ!!」

 

「う、う、後ろよ!後ろ!!」

 

 たまらず叫ばれて彼女は振り返った。

 するとさっきまで横になっていたロボットが、上体を起こしてこちらを見ている。

 

「すまないがここは何処だ。俺の国は…日本はどうなっている」

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「とりあえずこんなところ。あなたの情報をまとめるとおそらく迷い込んだのね、この世界に」

 

 診察室で椅子に腰掛けながら、白衣の女性はクリップボードに挟まれた紙を眺め呟いた。その横ではうさぎの少女二人が緊張した面持ちで、ベッドに腰掛けたロボットのような彼を見張るように見ている。

 

「俺は夢でも見ているんだろうか…まったく信じられない」

 

 彼は自分の事をできるだけ詳しく話した。家族、大日本帝国、機械化人間、南方タラワ…そして一通りの事を聞いた彼女は、三船にこの幻想郷について語った。それを終始無言で聞いた後、彼はため息を吐き、目を閉じる。

 

「あまり深刻に考えないほうがいいわ、三船さん。習うより慣れろって言葉があるけど、ここはそういう場所。それにさっきも言ったけど博麗神社に行けば多分戻れるわ」

 

「……」

 

 だが返事はない。ただ重い空気が場に流れていた。二人のうさぎもそれに引きずられるように無言だ。しかし彼女だけは違った。彼女は背伸びをし、首を左右に回すと思い出したようにああと三船に言う。

 

「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は『八意永琳(やごころ えいりん)』。この永遠亭で医者の真似事をしているただの薬売りよ。それでこっちの大きいのが鈴仙、小さいのがてゐ。あと早速で悪いけど脳のデータを取らせてもらってもいいかしら?かな~り面白い状態になってるわよね、あなたの頭」

 

 そんな調子の永琳に鈴仙とてゐは呆れた様子でオイオイと手を振った。

 

「師匠…空気読みましょう、空気」

 

「ったく困った女医さんだぜ」

 

 二人にそう言われた彼女は不思議そうに首を傾げる。

 

「なんで?」

 

『だーかーらー!!』

 

 二人は面倒くさそうに叫んだ。

 

「フッ…」

 

 そのやりとりに彼から苦笑が漏れる。

 

「どうにも分からないが、あなたは変わった人だ」

 

 素直に三船はそう思った。いい意味で。

 

「よく言われるわ。どうしてかしらね」

 

 そして彼女は再び首を傾げてから笑った。それとは対照的にうさぎ達は大きく肩を落としている。

 

「調べたいなら自由にしてくれて構わないさ。ただ確実にその博麗神社へ連れて行ってくれ。燃料の補充もこの世界では難しそうだしな」

 

 燃料…それは彼にとってもっとも重要な問題であり、真っ先に考えることでもあった。彼女達の話では幻想郷でオイルを手に入れるのはなかなかに面倒のようで、入手はある道具屋か河童に頼むしかないらしい。

 

「OK、ぱっぱと終わらせるわ。研究室は別室なのよ。じゃあ行きましょう」

 

 彼と永琳は診察室を後にした。

 

「しかし竹がすごいな」

 

 診察室から廊下に出てまず目に付いたのは竹林だ。塀の向こう側に広がるそれは、どこまでも続いているようにも見える。一方、塀の内側には庭があり、そこかしこに多くの兎が散らばっていた。

 

「それにしても兎ばかりだ。何か理由が?」

 

 聞かれて永琳は立ち止まり、すぐに三船の方へと視線を移す。

 

「そこらへんは鈴仙とてゐに一任してるから、なんともいえないわね」

 

「そうか」

 

 しばらく彼女のあとに付いて進んでいると不意に声が聞こえた。

 

「あれ?なになにこれ誰?」

 

 見れば小豆色のジャージ姿の少女が廊下の先に立っていた。彼女は髪を後ろで一つに縛っており、三船を興味深く見ている。

 

「まったく姫様は…お客さんの前でなんて格好してるんですか。あれ程日中は普通の服を着てくださいと言ったのに」

 

「姫?」

 

 永琳の言葉に、少女は頬を膨らませ無意味に両腕を振り上げて抗議した。

 

「別に何を着ようが私の勝手じゃない!動きやすくて最高なのよ、これは!!それにジャージ女子が嫌いな男なんて存在するわけがないのよ!分かってない、分かってないわ~」

 

「八意さん、この子は?」

 

 三船に聞かれ、永琳が何かを言おうとしたが、それを遮るように少女は彼の前に出る。

 

「蓬莱山。『蓬莱山輝夜(ほうらいさん かぐや )』よ、ジンラ號っぽい人。なかなかに面白い格好だけど、なんかのコスプレ?」

 

 言われた言葉に一瞬戸惑ってから彼は答えた。

 

「こすぷれ?とりあえず俺は三船敬三という者だ。君達がいうところの外の世界から迷い込んだらしい」

 

「ふ~ん、そうなんだ。まあ暇でもあれば話を聞かせてもらうわ。じゃあ私は広大な電子の海が呼んでいるから行くわね」

 

 そして輝夜は行ってしまった。それを見る永琳はなんとも複雑な表情を浮かべている。

 

「はあ~…どうにも困ったものだわ。一応、あの方がこの永遠亭の主なんだけどね。最近は暇を持て余して堕落しているのよ」

 

「堕落?」

 

 彼女は腕を組み、大きくため息を吐いてから残念そうに彼に言った。

 

「まあ昔からマイペースで自分勝手なところはあったんだけど、道具屋で色々と余計な物を買い漁るようになってからはさらにその傾向が強くなったわね。『これがナウでヤングなおもしろかっこいいやつなのよ!!』だとか支離滅裂な事を口走ったときには、冗談抜きにロボトミー手術をするべきか悩んだわ。近頃は『マジ感動的なシーンなんすよwww』とか『犠牲になったのだ…』とか言ってるし、一昨日も微妙に傾いた姿勢で『絶対に許さないよ』とか興奮しだすし……とにかく矯正が必要ね」

 

「大変そうだな」

 

 その様子からは、なかなかに参っているというのがよく感じられる。彼女はもう一度ため息を付いてから再び歩き出した。

 

「見苦しいところを見せてしまったわね。すぐそこよ」

 

 少ししてから着いたのは、他とは雰囲気があからさまに違う鉄製の扉の前だった。

 

「しかし俺の脳のデータなんてどうするんだ」

 

「どうもしないわよ。ただ興味があるから調べるだけ。研究ってそういうもんじゃないのかしら?」

 

 言われて彼は納得する。それは彼もかつて分野は違えど研究をしていたからだろう。最初にあるのは常に純粋な探究心からきた興味だったと思う。

 

「突き詰めればそうだな。なんとなく分かるよ」

 

「さて、はじめましょう」

 

 そして彼女が扉の横にあるパネルに手をかざすと、重い音がしてから扉が自動で横へとスライドした。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 しばらくしてから二人は診察室に帰ってきた。中ではウサギ二人が待っている。

 

「終わったんですか?」

 

「ええ。これから解析ってところよ。楽しみだわ」

 

 満足そうに答えてから永琳は言った。

 

「そういうわけでウドンゲ、てゐ、三船さんを神社に送ってあげてね。あと竹林の件も忘れずに」

 

「了解です、師匠。それでは行きましょうか、はい」

 

「さっさと行こうぜ」

 

 鈴仙とてゐが診察室を出て行く。三船は永琳の方に視線を移すと頭を下げた。

 

「ありがとう八意さん。それと姫さんにもよろしく」

 

 言われて彼女はええと頷いた。

 

「伝えておくわ」

 

 そして永遠亭を後にして二人のうさぎと鋼の軍人は神社に向かった。

 

 




という感じで二回目です。最近なかなか書く時間が取れなくて更新が思うようにできません。有言実行とは難しいものです。とりあえずできるだけがんばりますのでよろしく。それでは次回。
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