Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.6『機械化兵迷う』その2からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。



♯.6 『機械化兵迷う』 その3

「なるほど…だから君達は俺が起動してからしばらく警戒していたわけだ」

 

 笹の葉の道を歩きながら、納得した様子で三船は前を見る。先に歩いているのは二人、鈴仙・優曇華院・イナバと因幡てゐだ。

 永遠亭を出てからここまで来る間、鈴仙とてゐは色々な事を話してくれた。それは詳しい幻想郷のことや、彼女らの主のこと、さらには最近起きている異変についてだ。その中で三船は二人が自分を警戒していたわけをようやく知った。

 

「ええ、三船さんが普通の方で助かりました。さっきも言ったとおり、前に偶然捕まえた機械の人は何を言っても反応なしに暴れるんでどうしようもなかったですし、はい」

 

「そもそも調べようってのが間違いだったんだよ。結局、収拾がつかなくて鈴仙が吹っ飛ばして終了だもんな、あれ」

 

 呆れたというような口調のてゐの言葉に鈴仙は乾いた笑いで答える。

 

「あはははは…はあ~」

 

 その様子を微笑ましいと思いながら三船は呟いた。

 

「他の機械化人間か」

 

 最初に聞いたときは、自分以外の機械化兵も飛ばされているのかと驚いた。しかしよくよく話を聞けば何かがおかしい。

 

「でも三船さんみたいな人はいないんですよね。大抵の機械の人は話しかけても無言で、たまに『世界ガ…』とか『排除』とかブツブツ呟いてるだけなんですよ、はい」

 

「しかも襲ってくることもあるしな。本当にわけがわかんねえぜ」

 

 機械化人間はロボットではない。基本的に思考も行動も人間のそれだ。しかし彼女達が遭遇した機械化人間はそうではないらしい。そこがやけに引っかかると彼は思う。

 

「ん…二人とも止まってくれ」

 

 何かに気がついた三船は二人を止める。

 

「へ?」

 

「客だな、おい」

 

 道の横にそれは見えた。距離は20mほど先だろうか。そこには人型をした機械がふらふらと歩いている。

 

「間違いない。あれはアメリカの機械化兵だ」

 

 胸に輝くのは星条旗のマークと所属を示す番号だ。それをもう一度確認してから三船は叫ぶ。

 

「おーい!」

 

「………」

 

「おーい!おーい!!」

 

 声は届いているはずだ。だが反応はない。まるで聞こえていないかのようにそのまま、機械のアメリカ兵は竹林の奥へと消えてしまった。

 

「やっぱり無反応でしたね」

 

「そのようだ。しかし気になるな…色々と」

 

「さっきの話ですか。私としてはなんとも答えられないですね、はい」

 

 歩いてくる途中、三船も彼女達に話しをしていた。それは自身の身体についてだ。

 

「そうだろうな。破壊された手足が起きたら直っていた…なんて言っても分からないか」

 

 幻想郷に迷い込む前、確かに彼は手足を失い動けなくなっていた。だが再起動してみれば、手足どころか無くなった装甲と衣服も揃った状態になっていたのだ。無いものがあるとすれば、教官との模擬戦でつけられた額の傷と、胸部装甲にしまってあった家族の写真だけだろう。

 

「だからこそ気になる」

 

「とりあえず気にしなくていいんじゃねえの?実際、五体満足で動けてるわけだしよ。それよりも、もっと足を動かそうぜ。こんなんじゃ神社に着くのが夜になっちまう」

 

「ふむ」

 

 そして彼らは再び前へ進んだ。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「ここが博麗神社だぜ。まあ相変わらず殺風景だな、おい」

 

 石段を登り切り鳥居をくぐった三人は境内を見回す。確かに何も無い。

 

「宴会かお祭りでもないと寂しいですからね。じゃあちょっと霊夢さんを呼んできます、はい」

 

「ああ。しばらくここで待っているよ」

 

 神社の脇の小さな民家に鈴仙とてゐは歩いていく。

 一人になった三船はなんとも不思議な気分に囚われていた。これは一種の懐かしさだろうか。このどこにでもありそうな神社を見ていると日本を思い出すと彼は思う。

 機械化人間となってからは色々な国と場所に飛ばされたものだが、ここのように心が安らぐ場所に行く機会はなかった。ハルピンの空気は重く、モンゴルの風は荒く、金華の雨は強く、タラワで見る月は赤く大きく不気味で……。

 

「千代…春子…お前達は今、どうしているだろうな」

 

 思い出すのは妻と幼い娘の顔だ。機械化人間になってからは一度も二人には会っていない。だからこそ余計に家族を意識してしまう。しかし思うところもある。

 

「だが帰ったとして俺は娘を抱けるのか?」

 

 機械の身体を得てから彼はある夢を時々見るようなった。それは日常のありふれた光景、家に帰ってから娘の春子と風呂に入る夢なのだが、そこで彼はいつも自分の手を見て目を覚ましていた。

 異質な鋼鉄の腕、それが伸びる鋼の身体…そんな自身が湯船の中で娘を抱く姿は、ある意味で衝撃的で受け入れ難いものだといつも思う。

 

「駄目だ駄目だ。せっかくここまで来たってのによ。まったくついてないぜ」

 

「残念ですが留守のようです、はい」

 

 足音と共に聞こえた声に三船は我に返る。振り向けば二人が立っていた。

 

「…不在か。まあしょうがないな」

 

 三人は石段に腰掛けて主を待つことにする。辺りは本当に静かで穏やかだ。

 

           ●

 

「飽きた!!これから商売に行ってくるぜ。なんかすぐには帰ってこない気がするんだよな~個人的に」

 

 それから一時間が過ぎた頃、てゐは突然立ち上がり二人に言い放った。

 

「まあ構いませんが、ちゃんと夜には帰ってきてくださいよ」

 

「へいへい。じゃあな三船のとっつぁん、帰れることを祈ってるよ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 そして石段を下るてゐを二人は見送った。

 

           ●

 

「いや~なかなかに興味深いお話をありがとうございます。あ、申し遅れましたが私、新聞記者の射命丸文です」

 

 さらに一時間が経過したが巫女は来ない。代わりにいるのは先ほど空から降りてきた天狗だ。

 彼女も巫女に用件があったらしいのだが、居ないと分かるとすぐに三船に取材を申し込んできた。そして終わったのが今さっきである。

 

「それしても珍しいですね。こう何人も立て続けに外から迷い人とは」

 

「何人も?どういうことですか、はい」

 

 しかし文は質問には答えず、腕の時計を見てから鈴仙に告げた。

 

「残念ながら時間です。詳しくは近日発行予定の特別版でご確認下さい。それでは別件の取材があるので!アディオ~ス♪」

 

 次の瞬間、天狗の姿はそこになく、遥か上空に小さな影が見えた。まったくもって騒がしいと三船は思う。

 

「忙しいやつだな」

 

「あの方、毎回あんな感じなんですよ」

 

「……」

 

 鈴仙の言葉にただ三船は沈黙した

 

           ●

 

 そこからさらに待ったが、神社の主は帰ってこない。ただ時間だけが無駄に過ぎていた。

 

「もう帰りましょうか。暗くなってからだと危険ですし」

 

 さすがにもう待てなかった。

 それは三船も同じようで、すぐに返事が返ってくる。

 

「そうだな。残念だが一旦帰るしかないだろう」

 

 仕方なく二人は石段を下り始めた。辺りはやはり静かで穏やかなままだ。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「そういうわけで神社に巫女は不在でした、はい」

 

 永遠亭に帰り着いてから、鈴仙は永琳に状況を報告した。それを聞いて彼女は、

 

「残念だったわね。でもある意味Goodよ」

 

 平然とそう答えた。

 

「いやいや全然Goodじゃないじゃないですか!はい!!」

 

 いつもの事ながらこの人の考えはよく分からないと鈴仙は思う。三船もなんとも言えない様子で黙っている。

 すると奥の部屋からジャージ姿の輝夜が出てきた。彼女は三船を見て呟く。

 

「帰れなかったのね。まあ帰れるまではここに居るといいわ。いいでしょう、皆?」

 

 輝夜の言葉に二人は頷いた。

 

「はい」

 

「もちろんよ。まだまだ調べたいこともあるし」

 

 とりあえず最後の言葉は聞かなかったことにした。

 

「すまない、迷惑を掛ける。しかし燃料が問題だな。この世界ではオイルは貴重品なんだろう」

 

 やはりそれが気になると思う。なんといっても機械の身体にとっては欠かせない、人間でいうなら食事であるからだ。

 

「それならしばらくは大丈夫よ。少しくらい蓄えはあるし、さっきあなたを調べたときに種類も確認しておいたわ。まあ足りないときにはお人好し河童がいるしね」

 

 まったく対応が早いと彼は感心させられた。そして同時に感謝する。

 

「本当にすまない。改めて礼を言わせてくれ、ありがとう」

 

 深々と頭を下げる三船に輝夜が言う。

 

「気にしなくていいわよ。それよりさっき永琳と話したんだけど、あなたここに居る間は警備とかやってみない?」

 

「警備?」

 

 そこで永琳が輝夜の後に続けた。

 

「ええ。どうも最近の幻想郷は物騒だから必要だと思ってね。それに三船さんは軍人ですから適任でしょ。機械化人間に対しての対処法もバッチリだし」

 

「それはそうだが、俺は帰れるなら明日にでも帰るつもりだ。役に立つのは難しいと思うが…」

 

「問題ないわ。短時間であれそこの鈴仙に色々叩き込んでくれれば」

 

 少し考えてから三船は顔を上げて答える。

 

「ふむ。それなら引き受けよう。それしかあなた達に返せる事もないようだしな」

 

 彼の言葉に輝夜は右手を差し出して叫んだ。

 

「それじゃー三船敬三!あなたを永遠亭臨時警備隊隊長に任命するわ!!まあ、気楽にお願いね」

 

「こちらこそ」

 

 なんだか妙な事になったと思いつつも彼は差し出された手を握った。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 それが昨日の出来事だ。

 そして今、三船は永遠亭に向かい鈴仙と、先ほど知り合った藤原妹紅という少女と共に永遠亭に帰還している。

 帰ったら神社に再び行こうかと彼は思うが、その前に鈴仙に対機械化兵の講義をしなくてはいけないだろう。

 …まったくどうしてこうなったのか考えれば考えるほど分からなくなるが、今はどうしようもない。

 

「ふう…」

 

「どうかしましたか、三船さん?」

 

「いやなんでもない。意外と早く帰ってきたと思っただけさ」

 

 気を取り直して前を見れば、そこにはもう永遠亭が見えていた。

 

 




三回目です、はい。そんな感じで次回でロボット残党兵篇は終了になります。
そんなわけで次回。
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