Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.6『機械化兵迷う』その4からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。


♯.7 『覚悟完了』 その1

 見えるのは異形の敵ばかりだった。

 周囲は民家と店が立ち並び、普段であれば騒がしくも賑やかなこの場所ではあるのだが、今は別の意味で騒々しい。

 一体、どこに潜んでいたのかと思うくらいにそれらは多いのだ。間違っても油断はできないだろう。

 住民達は、寺子屋の先生と自警団の指示で逃げたはずだが、逃げ遅れもいるかもしれない。そのことも頭に留めておく必要もある…まったく面倒な事態になってしまったものだと今更ながらに感じた。

 

「さてさて、なんか四方八方囲まれつつあるわけですが、どうしますかね?」

 

 そう言ったのは、山に住んでいるという修行中の仙人(自称)の『茨華仙(いばら かせん)』だ。包帯に包まれた右腕が印象的な彼女は身構えながら周囲を警戒している。

 

「こんな時に彼なら、気の利いた冗談をいいながら、サイコガンで敵をバタバタ倒してしまうんでしょうが、生憎もういませんしね。いやはや困った」

 

 懐かしそうに語る『彼』が誰かは知らないが、確かにこの状況には困っている。なんとか突破口を見つけなくては……。

 

「とりあえず敵の数を知りたいですね」

 

「ちょっとお待ちなさい!」

 

 自分の問いかけに答えた仙人は、左手を口元へやり、口笛を吹いた。すると、直後に聞こえたのは鷹の声だ。

 

「なるほど、上から見る限りは十体か」

 

「どういうことです?」

 

「いや聞いたんですよ、銀鷹(シルバーホーク)に」

 

 彼女が指差す方向は上で、そこには青い空が広がっている。そしてよく目を凝らせば、上空で先ほどの声の主であろう鷹が旋回していた。どうやら仙人は噂で聞いたとおり動物の言葉が解るらしい。なかなかにすごいと思う。

 

「で、どうするのですか。このまま睨み合いを続けるわけにはいかないでしょうし」

 

「そうですね……ここは何も考えず正面突破で行きましょう」

 

「え!?」

 

 自分の言葉を聞いた仙人はすぐさま驚きの声をあげた。これはちゃんと考えを伝えたほうがいいだろう。

 

「よくよく考えてみたら拙者、このように小難しくしているというのは苦手でした。なので単純にこちらから仕掛けてみてはと…」

 

 納得してくれるかと思ったが、彼女はいやいやと首を横に振っている。

 

「正気ですか?敵は飛び道具の類を使ってくるんですよ。そこに飛び込んでいくなんて、自殺行為でしかない」

 

 確かにその通りだが、この状況を打破する為には多少のリスクはしょうがないと思う。

 

「ごもっともな意見ではありますが『当たらなければどうという事はない』と、どこぞの偉い人も言ってましたし、大丈夫ですよ」

 

「えー…」

 

 根拠はないが多分問題ない。

 呆れたような仙人に背を向け、私は疾走する。

 

「では魂魄妖夢(こんぱく ようむ)、いざ参ります!!」

 

「ほんとに行ったー!!」

 

 目の前の敵は四。手前にある民家の前に鉄のカラクリが二体、その後方の飯屋に妖怪もどきが二体だ。

 それらは、飛び込んできた自分に驚く様子もなく、緩慢な動作で迎撃の動きをとる。

 私は腰にある二振りの刀の片方、長刀〝楼観剣〟に手をかけ、すれ違いざまにそれを抜き放った。

 

「ひとーつ!」

 

 まずは一体をなぎ払うように切る。続けて振りかざした刃で隣のカラクリを正面から一閃。

 

「ふたつー!!」

 

 そこで飯屋の前に立つ異形から攻撃がきた。

 身体が節のようになっているそれらは、口から何かを吐き出し私を狙う。飛んでくる物体を回避するため、地面を蹴り横へと転がった。

 直後に、先ほどまで自分がいた民家の壁が爆ぜ、破片と煙が周囲に飛ぶ。

 

「ッく!!」

 

 恐ろしい威力だと思う。しかし、なんとか避けられる。

 体勢を立て直し、再び私は走り出した。敵との距離は約10m、それを一気に駆け抜けて敵の手前でジャンプする。

 着地点は二体の間、狙うのは横一文字に一撃。

 

「まとめてよっつッ!!!」

 

 刹那、異形達は腹の辺りで真っ二つになり、地面へと崩れ落ちた。その身体はすぐに黒ずみ砕ける。

 

「まったく…以外に無茶をする人だとは思いませんでした。後ろから攻撃されたら、どうするつもりだったのですか」

 

 後方から華仙の声がし、振り向けば、彼女の足元には同じように砕けつつある異形が転がっていた。

 数は三つ、どれもカラクリで、その四肢は力任せに引きちぎられたように周囲に散らばっている。

 どんな戦い方をしたのだろうか。

 

「かたじけない。しかし、なかなか仙人殿は強いようですね」

 

「仙人ですからね」

 

 答えになっていないが、助けられたので気にしないことにした。

 

「これで七体、残りは…」

 

 そこで鷹の声が響いた。

 

「何?逃げ遅れ!?」

 

 華仙の視線を追って見てみれば、着物姿の少女が異形達に追われ走っている。

 私はそれに見覚えがあった。『稗田阿求(ひえだのあきゅう)』だ。

 阿求とは何度かお茶を飲み話したことがある。彼女は非常に博学で、この世界の出来事を書物にすることが自分の使命だとよく言っていた。

 ただ、その佇まいはどこか儚く寂しげで、何か影を感じさせた。

 

「あれは稗田家のお嬢さん!」

 

 仙人と私は急いで走り出すが場所が離れすぎている。その間にも、阿求と異形の距離はすぐに詰まってしまう。

 このままではまずい…そう思った瞬間にそれは飛び込んできた。

 白い影だ。

 影は少女と異形の間に割って入る。

 

「そこまでだ」

 

 立っているのは白い学生服を着た眼鏡の少年で、聞こえた声は低くはあったがなんともいえない迫力に満ちていた。

 異形達は動きを一時的に止めたが、すぐに少年に襲い掛かる。

 三方向から飛び掛ってくるそれらを流れるよう動きで回避し、少年は三体の怪人に蹴りと拳を放った。

 的確に急所へと打ち込まれた攻撃に異形達は声もなく倒れる。動きは一瞬、そう一瞬だった。それで敵は倒されてしまっていた。

 

「こんなところにいたのか。探したぞ、阿求」

 

 声と共に少女に駆け寄ってきたのは青い服の女性、寺子屋の講師『上白沢慧音(かみしらさわ けいね)』だった。煙草をくわえた彼女は安堵のため息を吐いて彼女を抱きしめる。

 

「先生…」

 

 そこで緊張の糸が切れたのか、阿求は気を失ってしまう。そんな彼女を抱えたままで慧音は少年に頭を下げた。

 

「感謝するぞ、少年。礼はあとで必ず」

 

 そして慧音は走り去っていく。

 やはり彼は只者でないと素直に再確認する。なぜかといえば、私は少年を知っているからだ。

 

「覚悟殿!無事でしたか」

 

 名前を呼ぶと少年は極めて冷静に答えた。

 

「心配をかけて申し訳ありません」

 

「さっき敵の襲撃を受けてはぐれたときは、どうなるかと思いましたが、心配は無用でしたね」

 

 私と彼の遣り取りを見た仙人は、肘で私の背中を押してくる。

 

「どちらさんで?」

 

 答えたのは彼だ。

 

葉隠覚悟(はがくれ かくご)です」

 

 それだけでは不十分なので私は補足の説明をする。

 

「覚悟殿は外の世界から迷い込んだ方です。色々あって白玉楼にいます」

 

「そうでしたか…私は茨華仙。修行中の身の仙人です。どうかよろしく」

 

「こちらこそ」

 

「はあ~、しかしまあこんな状況になるとは予想外ですね。人里は不可侵というのが昔からの掟なのに…それが通じない相手とは厄介極まりない」

 

 仙人のいうとおり、人間の里は幻想郷で唯一の中立地帯であり安全地帯だ。ここでは妖怪であろうと、神であろうと、人であろうと関係なしに争いの類を持ち込む事は禁止されている。それは幻想郷が誕生してから今まで変わることなく守られ続けたルールであり絶対の掟、いうなれば最低限の約束事であった。

 

「ええ、まったくです」

 

 私も素直にそう思う。今現在、里を襲っている敵は言葉も通じなければ、こちらの常識も通じない未知の存在だ。だからこそ最低限のルールも意味がない。対応に困るという意味では厄介なのだ。

 

「気配が増えてきている」

 

 呟いたのは彼だ。

 

「分かるんですか?」

 

「風の動きが変わってきています」

 

 風という単語で、私は今朝聞いたことを思い出す。

 『零式は風を読む』

 今朝方の鍛錬で彼がそう教えてくれたのだ。詳しくは聞いていないが、彼が使う〝零式防衛術〟は視覚や聴覚のみに頼ることなく、肌から伝わる空気の流れをも情報として扱うらしい。だから見えない敵の気配を感じているのだろう。

 そこでまた空から鷹の声が響いてくる。

 

「どうやら間違いないようですね。銀鷹も確認しています。さてどうしましょうか?」

 

 先ほどと状況は変わっていない。こちらも人数は増えたが、敵は際限がないように増え続けている。

 

「覚悟殿…こんなことに巻き込んで申し訳ないです」

 

 私は謝った。いや、謝らなければいけなかったのだ。本来であれば彼は外の世界に帰っているはずだった。それがこうなったのは自分の責任に間違いはなく、なんとも胸の辺りが痛むような気がする。ちょっとした気分で人里に寄ろうとしたのが、そもそもの間違いだったと思う。

 きっと自分は浮かれていたのだ。なんとなく親近感を憶えたこの葉隠覚悟という少年と出会って…。

 そう、あれは昨晩、白玉楼の見回りをしていた時―――――――――――――――

 

 




 そんな感じで一回目になります。文章の長さってどれくらいが適当なのでしょうか?なんというか書いていけば書いていくほど分からなくなってしまいます。未熟な証拠ですね。いやはや困った。
そんなわけで次回。
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