・♯.7『覚悟完了』その4からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。
――夢、ひどく懐かしい夢を見ていた。
いつの事だろうか?
思い出せない…だが憶えてはいる。
「後継者は本当にあの子でいいの?」
見慣れた神社の境内で、私は隣でお茶を飲む巫女服の女性に聞いた。
彼女は白髪で左目に黒い眼帯をしている。
「何度も言わせんじゃないよ。あたしももう歳だしね、早いに越したことはないだろう」
「でも他人よ。娘に継がせるっていう選択肢はないのかしら」
その言葉聞いた彼女はフッと短い笑いを漏らしてこちらを見た。
「あたしにとっちゃ娘と同じさ。それにあの子は飛び抜けてる。まあ、身体が弱いのと優しすぎるのが欠点だが、そこら辺は四天王の連中とあんたに頑張ってもらうから大丈夫だろう」
「…いつも面倒な問題を押し付けてくるわよね、あなた」
本当にいつもそうだと思う。
「そうだったかい。でもこれで恐らく終わりさ。だから聞いとくれ、紫。この巫女の最後の厄介を」
「はあ~…一度決めたら絶対に折れない。昔から変わらないわね」
溜息を吐く私を見て彼女はいつものように響く声で大きく笑った。
「ははは、妥協なんざ、死んでも御免だ。そういうわけだからあの子を…桜華を頼むよ、賢者様」
いつだったのだろう。もう随分と昔だ。
無茶ばかりする巫女が確かに居た。
楽しく、強く、そして滅茶苦茶。
自分の事など顧みない彼女は常に傷だらけだった。
そんな巫女の最後の願いを私は守れたのだろうか。
…不意に声が聞こえてきた。大勢の声だ。
どうやら夢は終わりらしい。
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「三名様ご案内で御座るよ」
光と共に三人分の人影がその場に現れる。
「ここは…」
覚悟達の目の前には大きな家が出迎えるように建っていた。その外観はシンプルで、平均的な日本家屋というのがぴったり当てはまる建物だ。
そして、タイミングよく正面にある玄関が開く。
「ようこそ。葉隠覚悟殿に白玉楼の御二方、あなた方で最後だ」
「オッス!外の人に妖夢!……で、その小さいのは幽々子なのか?」
玄関から出てきたのは魔理沙と藍だ。
魔理沙は怪訝な表情で、妖夢の肩に腰掛けたSD幽々子を凝視する。
「あら魔理沙、あなたも呼ばれてたのね」
「どうもです」
「初対面の筈ですが、どうして名前を?」
「主から聞いているのだ。その零達の事も含めて」
「そうなのですか」
あいさつが済んだところで参式が口を開く。
「さて、それでは拙者はここで」
「ご苦労。参式、引き続き頼んだ」
「御意。それでは皆さん、また次回~」
そう言い残して音もなく参式は消えた。
「では行くとしよう。他の客人達も集まっている」
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三人が案内された広間には既に先客達が座り待っていた。
「おッ!いい刀じゃねぇか!!」
「ふむ、学生のようだ」
「早苗さん、お人形さんみたいで可愛い方がいますよ」
「…只者ではないな」
「海軍将校があんな服装だった気がする」
そこに赤い服の少女が入ってきた。少女は緑の帽子を被り、
そこから出た黒い猫耳と、スカートから飛び出ている尻尾を揺らして藍に駆け寄っていく。
「藍様、巫女の応急処置は終わりです」
「よし上出来だぞ、壱式。次は茶の準備をしてくれ」
「はい」
部屋を出る壱式と入れ替わりで、赤いベレー帽の弐式が広間に入ってくる。
「マスター、これより通常任務に戻ります」
「ああ、頼りにしている、弐式」
「了解」
言葉と同時、弐式も音もなく消えた。
そして藍以外が腰を下ろしたところで、死神が立ち上がり言った。
「さて、それじゃあきっちり説明してもらおうか、今回の件について。こんだけ外の人間呼んでどうするのさ?それにあの自称博麗の巫女ってのは何者だい?」
「ああ、それについては…」
九尾が答える前に、医者が手を挙げる。
「ちょっといいかしら。いきなりで訳が分からないんだけど、何がどうなってるの?」
さらに冥界の主も続いた。
「途中参加組なんで説明がほしいわね」
状況は動き、流れは加速しつつあった。
「ふむ、やはり情報の整理が必要だな。色々と複雑になってきているようだし…とりあえず二回目になるが、軽い自己紹介から始めないか?」
トニーの提案に皆が頷き、藍は安堵したように溜息を小さく吐いた。
「そうして貰えるとありがたい」
●
「…まあそういうわけでグレン団は幻想郷で活動中ってわけだ。よし!終わり!!」
それぞれの招かれた経緯を簡単に説明し終わったところで、藍は腰を上げた。
「ではここからは私が話をさせてもらおう。改めてになるが八雲藍だ。主人八雲紫の式神をしている。最初で申し訳ないが謝罪させてくれ」
頭を深く下げてから、式神は再び正面に視線を向ける。
「今回の件は予想外の事態の連続で…」
その時、突然襖が開いて声がした。弱弱しい声が。
「やっぱり、呼んだ本人が説明しなくちゃ意味がないわ。無理ばかりさせて悪いわね、藍」
壱式に支えられる様にして入ってきたのは、金髪のパジャマ姿の小さな少女だった。壱式と同じくらいの背丈の彼女を目にして藍は驚き叫んだ。
「主!?寝ていなければ駄目だ!!」
「もう、藍は心配性ね。ちょっと辛いけどこれくらいは大丈夫よ」
「しかし…」
「大丈夫よ。あとは任せて」
支えられながら、畳に倒れ込むように座った少女は、正面を見て言った。
「こんな状態で悪いけど、八雲紫です。三船さんと葉隠君以外は一応会ってるわね」
質問に答えたのは忍だ。
「まあ一応そうですね。でもその姿は一体?」
「ちょっと力を消耗しすぎて変化が解けちゃったの。これが本来の私。小さな女の子じゃ、相手になんかされないでしょ?だから化けてるのよ。他に質問は?」
辛そうに言う紫を見兼ねてか、カミナは勢いよく立ち上がり、本題を叫んだ。
「おうおうおう!まどろっこしい問答はすっ飛ばすとして、俺達をここに呼んで集めた理由は一体何なんだ?あんたに何か頼まれたのは憶えてるんだが、内容に関してはすっかり頭から抜けちまったぜ」
その問いかけに、紫は真剣な眼差しで眼前の客人達を見る。そして搾り出すように懇願の言葉を口にした。
「理由はただ一つ…力を、あなた達の力を貸してほしい。もう色々と不可思議な事に遭遇したと思うけど、今の幻想郷ははっきり言ってまずい状態になりつつあるわ」
「ドーパントにドローンですか」
井坂の件もあってか覚悟の頭に浮かんだのはそれだった。
「ええ。でもそれは一部でしかない。現状でもっとも厄介なのは『博麗の巫女』よ」
「あれか。しかし奴はそこのお嬢ちゃんのそっくりさんにやられて消えたぞ」
神社では確かにそうなっていたと荘吉は思い返す。
「確かに一時的には死んだでしょうね。でも時間が経てばまた肉体を再構築して、こちらにちょっかいを出してくる」
「結局何者なんだ?その巫女ってやつは」
彼女に遭遇していない三船は素直にそう思った。
「彼女は正真正銘、博麗の巫女よ…ただし数世代前のね」
「過去の巫女?」
「詳しくは後で話すわ。彼女の目的は幻想郷の浄化……簡単に言うならリセット。その目的を果たすまで彼女は決して止まらない」
「やたらと詳しいが、どうしてそう言い切れる?」
まるでよく知っているかのような説明にトニーは違和感を覚えた。
「それは彼女が結界を管理するプログラムのようなものだからよ。プログラムは命令をただ忠実に実行しようとする。だから、あの巫女の形をしたモノも、幻想郷の浄化が完了するまでは行動し続けるでしょうね」
「つまり、あの巫女をなんとかしないと不味いことになるってわけかい?」
小町の言葉に紫は首を縦に振り、重い口調で遠くを見るように言う。
「そうしなければ幻想郷は確実に滅びに向かうわ。以前そうなったようにね……」
直後、紫のパジャマから何かが飛び出して、畳に落ちた。
「動物?」
それは掌に収まるくらいのサイズの生き物だった。強いて言うなら猪に似ているそれは、畳の上で落ち着かないように動いている。
「霊獣〝獏〟よ。以前どこかの世界から流れ着いてきたの。この子には不思議な力があってね、過去を夢として見せてくれるわ」
「過去を?」
「今から見るのは遠い過去、今は御伽話として語られている物語の始まり……」
直後に獏が妙なポーズをとり、彼等の意識は飛んだ。
遠い昔、かつての幻想郷へ。
冗談抜きで遅くなりました。すいません。個人的に現在忙しいのもあるのですが、考えを文章で表すのが最近うまくいかない気がしてます。次回は戒めも込めて一週間以内にあげますので、有言実行できるかどうか判断願います。
そんなわけで次回。