Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.8『賢者という名の管理者』その2からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。


♯.8 『賢者という名の管理者』 その3

 昼下がりの午後、入り口が修理された香霖堂に一人の客が入ってきていた。

 その姿を見て、気だるそうにしていた霖之助はああと声を上げる。

 

「いらっしゃい。本日も教材をお探しかな」

 

 問われた痩躯の青年は頷き、店主に返事を返した。

 彼は黒のスラックスに白いワイシャツ姿であり、長めの髪は後ろで一つに縛られている。

 

「まあそんなところです。しかし今日は変わったことが多いですね」

 

 言われて霖之助は、はてと首を傾げた。指摘されるほどおかしな点があっただろうか?

 

「そうかな……例えばどんなとこ」

 

「まずは入り口。いつの間に自動ドアにしたんですか? 次に外で騒いでいる…ええとNINJA?でしょうか。最後にそこの鉄板で作ったアートですね」

 

 指摘された箇所を見回してから店主はポンと手を叩く。

 

「確かにそうだね。いや~最近色々あるんだよ、これが」

 

 その言葉を聞いた青年は、長話になりそうだと感じたのか、近くにある商品を店主に渡した。

 

「なかなか大変ですね。では、これとこれをお願いします」

 

 レジ代わりの台に置かれたのは、黄色く丸い人形と折り紙のセットであり、商品を見た店主は部妙な表情で何かを考えている。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いやね、この黄色いのは何だったかなーと思ってさ。こんなの店で扱ってたかな」

 

「とりあえず売ってもらえれば、私はそれでいいのですが……」

 

 そう言われたので、霖之助は気にしないことにして商品を彼が持参した袋に詰めた。そして台の下から取り出した使い古した電卓をいじる。

 

「悪いね。まあこのくらいで」

 

 差し出された電卓の数字を見た青年は、すぐに懐から財布を取り出し、小銭を台に置いた。

 

「随分安いようですが……こんな値段ばかりで商売になるのですか?」

 

「いいのさ、半分趣味だし。それに高いのは高いよ」

 

「それは失礼しました。ではまた」

 

 支払いが終わったのを確認し、青年は軽く笑って店を出て行く。

 

「毎度どうも」

 

 そこに入れ替わるように黒服の忍者、サスケが入ってくる。

 

「霖之助さん、今の人客ですか?」

 

 彼は先ほどの青年が気になったのか店主に聞いた。

 

「常連さんでね。湖にある紅魔館で執事をしてる……そうそう、確か彼も外から迷い込んだ異邦人なんだ。もう結構長くこっちに居るね」

 

 紅魔館の執事、それは三年くらいに前に幻想郷に流れ着いた人物だと霖之助は記憶している。

 よく買い物に来る彼とは顔馴染みであり、たまに雑談などもした。

 話によると以前も英国という国で執事をしていたらしく、その経験をかわれて紅魔館で雇われているということだった。

 

「帰らない人もいるんですね」

 

 長く居るという言葉に、サスケは驚いたようなに反応した。すると店主は、再び気だるそうに椅子にもたれ掛かり呟く。

 

「外の世界の人から言わせると、この幻想郷はいい所らしいから。まあ僕としては外の世界の方がよっぽどいいと思うけどさ」

 

「そういうもんですか……ところで、音速丸さん見かけませんでしたか」

 

 途中で思い出したようにサスケは言った。

 

「ん?音速…誰だっけ?」

 

 しかし彼は、それが誰かは理解していないようで、ただ考え込んでいる。

 

「あー、もしかしてあの人、自己紹介しなかったんですかね。まあさっきは外に置いてある自販機を見て騒いでましたし……一応説明しますと、私どもトップでして、黄色くて丸い人間離れした超生命体です」

 

 特徴を聞いた霖之助は数秒固まり、その後、申し訳なさそうに忍者に視線をやった。

 

「へ~、そ、そうなんだ。ちょっとまずいことをしちゃったな」

 

「と、言いますと?」

 

 問われた彼は目を閉じ、静かに己の行為とその対価を語った。

 非常に気まずそうに…。

 

「人身売買……178円」

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 幻想郷と大結界の狭間、八雲紫宅では二人の人物が立っていた。

 

「見せてもらった過去と現状を考えれば確かに君達は大変だ。しかし何故私がそれを手助けしなければいけない。強制的に連れて来られ、命をかけて、それも無償で……悪いが手伝えない」

 

「……」

 

 もっともな意見だと藍は内心思った。

 どう考えても彼の言い分は正しく、

 こちら側の都合だけで協力してもらうというは無理のある話だ。十分に分かっている。

 しかしそれでも引き下がるわけにはいかない。

 何故なら、それが主人の望みなのだから。

 

「それは重々承知している。だが、あなた方でなければ駄目なのだ。頼む……」

 

 ただ頭を下げ続ける藍の姿を見て、彼はなんとも居心地が悪いという表情をしている。

 その横でニトリは不安そうにただ彼の名を呼んだ。

 

「トニー……」

 

 まるで、どうすればいいと問うように河童は彼を見る。

 その視線も感じてか、トニーの表情はますます険しくなっていく。

 雰囲気は悪く沈黙がとても長く感じられた。

 

「おうおうおうッ!!!」

 

 その空気を吹き飛ばす叫びが突然広間に響き渡る。

 全員の視線が一点に集まり、その先にいる人物は立ち上がると言葉を続けた。

 

「やらねえなら、やらねえでいいじゃねえか!半端にやってもお互い納得できる結果なんか出るわけがねえぜ!そうだろ、なあ」

 

 問いかけはトニーだけではなく全員に向けられているようだった。

 

「しかしそれでは……」

 

 口篭る藍に言い聞かせるようにカミナは言う。その目はただ真っ直ぐだ。

 

「気にすんな、トニーの分は俺がやる!足りねえならその分やってやる!それで解決だ!!」

 

「心遣いは有難いが、無茶苦茶だぞ…」

 

 言われた内容に藍はなんともいえない気分になった。

 空気が変わり、彼の表情も若干緩む。

 

「とにかく私は帰る。出口はどっちだ。この状態ではどうせ家には戻れないのだろうから、香霖堂に送ってくれ」

 

「無理強いはできない……これを」

 

 帰るという言葉を聞いた彼女は青と白で書かれた札を渡した。

 

「どう使う。呪文でも唱えるのか」

 

「それに近い。札を掲げて行く場所を叫べばいい。ただしそれは限定型なので行ける場所と人数が限られている」

 

「限定型ね」

 

 呟き、トニーは興味深そうに札を見ている。

 

「人数は五人くらいまでが限界だろう。設定してある場所はここと博麗神社、そして香霖堂だ。ある程度使えば消滅するので、使用はよく考えてからにしたほうがいい」

 

「そうさせてもらう」

 

 部屋の出口に向かう彼にカミナは言った。

 力強く、何かを期待するように。

 

「トニー、断言するぜ。あんたは絶対戻ってくる…そう絶対だ。俺には分かる!」

 

 その言葉に一瞬だけ足が止まった。

 

「どうだろうな……私には分からない」

 

 軽く手を振って鋼の男は去る。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!トニー!」

 

 部屋から足早に出て行く彼をニトリが追っていく。その直後に光が見えた。

 

「さてと、他に俺とやる奴はいるか?」

 

 その言葉に真っ先に反応し、意志を示したのは覚悟だった。

 

「手伝いましょう。あのような敵を見逃してはおけません」

 

 彼は立ち上がりただカミナを見る。

 

『それに結界の異変とやらを解決しない限り帰れんしな』

 

 怨霊の声に妖夢と幽々子が続いた。

 

「さすが覚悟殿!それでこそ武士です!!」

 

「まあ、いいんじゃない」

 

 答えを聞いたリーダは笑顔で叫んだ。

 

「よぉし!いい感じだ!よろしく頼むぜ、兄弟!!」

 

 そしてカミナは勢いよく二人の肩を叩いた。それに対して覚悟は軽く頷き、妖夢は気合の入った返事をしている。

 

「俺は保留にさせてもらおう。まずは現状を依頼人に報告しなければいけない」

 

「だね。あたいらのボスも情報不足でカリカリしてるだろうし、一旦帰るさね」

 

 次に意志を示したのは死神達だった。

 

「骸骨のおっさん、待ってるぜ!」

 

「ああ」

 

 さらに声は続き、機械の駆動音が響く。

 

「こちらも考える時間をくれ。色々と分からない」

 

「永遠亭としてもそんな感じよ。責任者は私だけど、決めるのは姫だから……それに三船さんの体の検査も終わってないしね」

 

 終わりの言葉だけ嬉しそうに医師は語った。周囲はやはりそっちかというように視線を彼女に送っている。

 

「おう、早めによろしくな」

 

「善処しよう」

 

 最後に忍が順番待ちしていたように手を挙げた。彼女の表情は暗い。

 

「私も忍者学園の皆さんの意見を聞かないといけないので……でも、私なんて役に立ちますか?」

 

 不安そうに忍は視線を落とした。

 

「自分を信じろよ、あんたは多分そこが足りねぇ。知り合いにもそういう奴がいたから分かる!!」

 

「どうすればいいんでしょう?」

 

 答えを欲する彼女に、カミナは間を置いて背を向けた。

 

「さあな。知りたきゃ、俺等と一緒に戦うこった。そしたら分かるぜ」

 

 答えを聞いて忍は力なく笑う。

 

「そういうものですか……難しそうですね」

 

 二人の会話が終わった事を確認して、早苗はカミナに声を掛けた。

 

「とりあえず私達も帰ります。この件を妖怪の山にも伝えなくてはいけませんし、神奈子様と諏訪子様の意見も聞きたいですし」

 

「そうしてくれ。まあこんなとこだよな、現状としちゃ」

 

 一通りの返答が出揃ったところで、カミナは九尾に視線をやる。

 すると彼女は、トニーに渡した札と同じものを異邦人達に差し出した。

 

「……承知だ。各自に専用の札を渡しておこう。私達……いや、幻想郷はあなた方の力を本当に必要としている。どうかそれだけは心に留めておいてくれ。ではお開きにしよう」

 

 その言葉に各自が動き出した。

 彼等は別れ、それぞれの場所に戻る。

 一時の休息を得るために、

 見えない明日を選ぶために……。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 それぞれが思いと迷いに揺れる中、

 紅の悪魔の館で最後のキャストが舞台に立つ

 溯ること三年前、燃える倫敦(ロンドン )より流れ着いた執事が一人

 

 次回、『ROCKY&POCKY』

 




 というわけでなんとか一週間です。
そんなわけで次回より、死神執事の本格的な登場になります。
待たれていた方には遅くなってすいませんという感じです。
まあ、こんな調子で次回
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