Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯♯.8『賢者という名の管理者』その3からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。


♯.9 『ROCKY&POCKY』 その1

 赤黒い炎が見える。

 それは全てを焼き尽くすように周囲を照らしながら、ただ広がっていく。

 

 ……本当に勝ちたかった……

 

 しかし、今の己にとって、そんな周囲の状況は関係なかった。

 思えば人生のほとんどを費やして何をしてきたのだろう?

 覚悟を決め、全てを投げ出し、

 持てる力を出し切り挑んだ最初で最後の賭けは、つい先ほど失敗した。

 そして奴は消え、残ったのは身も心も餓鬼に戻った、ちっぽけな自分だけだ。

 

 ……もう終わりか……

 

 周囲が赤一色だけになる。もうじき全てが閉じるのだ。

 

「御然らばです、お嬢様」

 

 終わりの業火が迫った刹那、無意識に言葉が出ていた。

 ああ、自分は多分そうしたかったのだろうと今更ながらに感じる。

 だが仕舞いだ。どんなに渇望し叫ぼうと仕舞いだ。

 求めた夜明けはあんなにも遠く、こんなにも近かった。

 まったく困る。今、解ったところで先はない。

 あとはただ舞台を降りていくだけだ。

 漆黒の奈落のような舞台の外へ、ただ。

 

 ……次の舞台があれば、もっといい役を演じたいものだな……

 

 もはや叶わぬ願いを想いながら、意識は降下していった。

 

 

           ●

 

 霧の湖の隣には巨大な洋館が存在している。

 数年前に突如として幻想郷に現れたこの建物は『紅魔館』と呼ばれ、

 悪魔が住んでいるとか、幻想郷の征服を狙っている等と噂されていた。

 今、その館に向かう影が一つ。

 青年だ。

 清潔そうな白いシャツに、黒のスラックス姿の長身痩躯の青年が館に近づいていく。

 彼の両手は手さげ袋と紙袋で塞がっており、誰が見ても買い物の帰りというように見えた。

 

 

「あ、お帰りなさい。門は異常なしっスよ!」

 

 門の前に青年が行くと、緑のチャイナに身を包んだ少女が、

 ビシッと敬礼の姿勢で彼を出迎える。

 

「お疲れ様です、美鈴。先ほど里の出店で買ったのですが、よければどうぞ」

 

 差し出された包みには三色の団子が二本あり、それを見た少女は両の拳を握り何かを叫んだ。

 

「ッシャアァァー!もちろん頂くっス!サンキュー神様!!」

 

「それはよかった。では引き続き警備を頼みます」

 

「アイアイサー!」

 

 小躍りする彼女を横間に彼は歩みを再開した。

 門を抜ければ庭園が広がり、中央には大きな噴水が鎮座している。

 その横を通り先に進むと頑丈そうな鉄扉が出迎えてくれた。

 彼は近づくと、一定のリズムでコン、コン、コンと扉をノックをし、

 その右横の何もない壁の前に立った。

 すると石が積み上げられて作られている壁の形が組み変わり、

 丁度人一人が通れるサイズの入り口となる。

 壁が完全に変形したのを確認してから、彼はそこに入った。

 

「ただいま戻りました」

 

 壁を抜けた先は広いロビーとなっており、そこでは多くのメイド達が動き回っている。

 見れば彼女等は様々な容姿であり種族も様々だ。

 妖精、妖怪、幽霊、さらに少数だが人間の姿もある。

 彼は周囲を見回し、一息ついている幽霊メイドに声をかけた。

 

「すいませんが、メイド長を見かけませんでしたか?」

 

 聞かれて、半分透き通った彼女は答えた。

 

「姐さんだったら客の相手をしてるよ。確か相手は妖精だったかな?なんか真剣な顔だったよ」

 

「面会中ですか。ありがとう、助かります」

 

「はいはい。じゃあ掃除に戻るね」

 

 直後に彼女は浮かび、天井をすり抜けていった。恐らく時計塔の担当なのだろう。

 

「さて、メイド長が取り込み中では仕方ありませんな」

 

 自分に言い聞かせるように呟き、彼は屋敷の奥にある自室に向かった。

 これから始まる仕事の為に着替えなくてはいけない。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「あまり待たせるのはよくないか」

 

 スラックスと同じ色のベストに腕を通しながら、彼は時計に目をやった。

 

 ……予定より少々遅れている……

 

 本来であれば二十分前に準備は終わっているはずだった。

 しかし、人間の里で予想外に時間が掛かってしまった為にロスが生じた。

 

 ……最近は物騒なものだ……

 

 白い手袋をはめながらそう思う。

 先ほど見た町は無残に破壊されており、

 特に中心部等は大きく抉られた様に穴だらけになっていた。

 こちらの世界であのような光景を見ることになるとは思わなかった。

 

「よし。行くか」

 

 鏡で自身の姿を確認し、壁に掛けてある鍵束と先ほどの手さげ袋を持って部屋を出る。

 向かうのは地下へと続く階段だ。

 その先に彼の生徒がいる。

 

 しばらく歩くと廊下の向こう側に鉄格子が見えた。

 そこを開け、地下へと降りると、何もない八畳位の空間が広がっている。

 

「いつもの事だが分かり辛い」

 

 そこで彼は手にした鍵束の中の一本を手に取った。

 そして正面の壁の中央にある小さな窪みに差し込む。

 すると大きな歯車が回るような音が聞こえ、壁が開いていく。

 さらに進むとすぐに次の分厚い鋼鉄の扉が待っていた。

 それを開け、先に行けばようやく最後のドアだ。

 飾り気のないそのドアは、何の変哲もない木製でプレートが一枚だけ下がっている。

 そこには『フランの部屋』と崩れ気味な文字で書かれていた。

 彼は咳払いをし、ノックを二回してから扉に向かって言う。

 

「お嬢様、入りますがよろしいですか?」

 

 しばらくしてから返事の代わりのようにノックが三回返ってくる。

 いつもの合図だ。

 

「では失礼します」

 

 ドアを開け、部屋に入った瞬間に彼の視界が揺れた。

 見れば、小さな少女が体にしがみついている。

 

「…すごく待ってたんだよ。来ないかと思っちゃった」

 

 少女は頬を膨らませ、少し怒ったように彼を見た。

 その様子に青年は困ったような笑顔で言う。

 

「申し訳御座いません。少々買い物に時間が掛かってしまいまして

 ……しかしお嬢様、いきなり人に飛びつく癖は直されたほうがいいかと」

 

 そう言われた少女は、さらに頬を膨らませ叫んだ。

 

「分かってるよ!知らない人にはしないもん!ウォルターだから……」

 

 言葉は最後まで続かず彼女は黙ってしまう。

 

「それはそれとして、今日はこれを使って授業をしましょう」

 

 彼はやれやれという調子で袋から折り紙のセットを取り出し、黙りこんだ少女に見せた。

 その瞬簡に彼女の顔が笑顔に変わる。

 

「折り紙好きー!形を作れるから好き!早くやろうよ!!」

 

「では席に着きましょう。それから授業を始めます」

 

 嬉しそうに椅子に座る少女を見ながら、彼はふと過去を思い出す。

 それは三年前、唐突に突然に思わぬ形で幕を開けた。

 彼、執事(バトラー)『ウォルター・C(クム)・ドルネーズ』の新たなる舞台の始まり…。

 

 

  

 




 というわけで今回は短めにしてみました。
何か一話くらいを見るとさっぱりしているので、あんな感じを目指したのですが難しいですね。
そんなわけで次回。
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