Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

30 / 42
※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.9『ROCKY&POCKY』その1からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。




♯.9 『ROCKY&POCKY』 その2

 周囲の赤と黒に飲み込まれ、全てが閉じる。

 視覚、聴覚、感覚、そして意識も全て……。

 神などは信じてはいないので、当然死後の世界なども存在していないというのが自分の考えだ。

 だから、恐らくこのまま閉じて終わりなのだろう。

 ゆっくりと一瞬で……。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「…から、なんであたし達が担当なのよ?メイドなんて他にも腐るほどいるじゃない」

 

 声がする。

 それに少しずつだが、五体の感覚が戻ってきている。

 これはどういうことなのだろうか?

 

「実際、アンデット系の腐ってる人もいるしねぇ~」

 

 声の主は二人…いや、三人のようだ。

 いずれも軽く、高い。

 おそらく少女達だと思われる。

 

「ねえ、スター、それはジョークのつもり?」

 

「一応そうだけど、なんで~?」

 

 間が少し空いた。

 

「……全然面白くない」

 

「ひどい~!!サニー!今、ルナが私の渾身のジョークを否定した~!!」

 

 やかましいくらいに元気がいい連中らしい。

 声をかけて色々と聞きたいが、身体の自由が利かない。

 起き上がることはおろか、瞼を開けることさえ今はできないようだ。

 非常に困る。もどかしい。

 

「とにかく!忍び込んで暇潰しのはずが、

 どうして人間の世話をしなけくちゃいけないのよ~!!」

 

「しょうがないと思うな~。あの雰囲気で断ったら、即、十六分割くらいにされてたよ、多分」

 

「そうそう。ここのメイド長は、殺人鬼でマッポーめいたヤバい奴だってもっぱらの噂。

 こんな話なんてしてると、『ドーモ。ヨウセイ=サン。メイドチョ、サクヤです』

 ってな感じでオジギされて0.02秒後には生ゴミ扱いね」

 

 メイド長……その立場の人間がいるということは、ここは屋敷か何かなのだろうか?

 

「というか、不法侵入がばれたのが運の尽きだったよね~」

 

「でもなんで分かっちゃったのかな?完璧に他のメイドに溶け込んでたのに……」

 

 

「―――楽しいお話中に申し訳ないのだけれど、その人の面倒はちゃんと見てるかしら?」

 

 

 突然に気配が来た。

 一瞬でだ。

 まるで、この場に瞬間移動してきたかのようにその気配の主は現れた。

 その声は落ち着いた女性のそれだ。

 

「あわわわわ!?

 すいません!すいません!十六分割で生ゴミは勘弁して下さい!」

 

「ひいいいい!?

 妖精なので多分死なないけど勘弁して下さい!治るまで時間が掛かるんです~!」

 

「アイエエエエ! メイドチョ!? メイドチョナンデ!?

 とにかく勘弁して下さい!」

 

『お願いします!!』

 

 叫びから察するに三人はかなり取り乱しているようだ。

 

「はいはい…やっぱりあなた達に任せたのは失敗だったわ。

 ここはいいから掃除班の応援に行ってちょうだい」

 

『はい~!!』

 

 次の瞬間、ドアの開く音と同時に足音が響き三人分の声がしなくなった。

 無駄に静かになる。

 

「返事だけはいいのよね、あの連中

 ……さて、起きてはいるようだけど身体の自由は利かないようね、あなた」

 

 何故、それを……。

 

「無理はしないほうがいいわ。治療用の符で痛みは抑えてあるけど、かなりの重症だから。

 とりあえず話ができるようになったら色々教えてあげる。

 それじゃあ仕事が残ってるから、また」

 

 言葉を残し、女性の気配はやはり一瞬で消えた。

 まったくもって状況が分からない。

 ここはどこで己はどうなっているのだろう……。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 紅魔館の一室で二人の人間が話をしていた。

 一人は椅子に腰掛けたメイド服姿の女性、もう一人はベッドで横になっている少年だ。

 

「なかなかハードな人生送ってるのね、ウォルターさんは」

 

「そうみたいだ。しかし、この世界の事を考えたらそうでもないような気がするよ」

 

 彼が意識を取り戻してから、既に三週間が過ぎていた。

 傷はある程度回復し、どうにか自力で動けまでにはなった。

 この世界の概要は、目の前にいる女性、『十六夜 咲夜(いざよい さくや)』から色々と聞き一応は理解している。

 彼女はこの紅魔館でメイドのトップに立っているらしく、とても親切な人物のようだ。

 その彼女の言葉も最初は信じられなかったが、屋敷で見かける多くの人外の存在や、

 不可思議な現象がまかり通る日常に彼は納得するしかなく、今は気にならなくなっている。

 

「ところで身体の方はどう?」

 

「おかげで調子はいい。普通に歩けるし、動ける」

 

 体調は万全ではないがほぼ平常だ。しかし疑問が残ると彼は思う。

 記憶の限り、最後、彼の身体は崩れかかっていた。

 だが目覚めた彼の身体は五体満足で、特に何も起こっていない。

 それだけが分からなかった。

 

「そう、じゃあ今夜にしようかしら」

 

「?」

 

「お嬢様がディナーついでに話をしたいって前から言っていたから、

 今日あたりと思ってね。大丈夫?」

 

「それは願ったり叶ったり。こっちも助けてもらったお礼を言いたかった」

 

「OKね。格好はシャツとズボンでいいからよろしく」

 

「ああ」

 

「じゃあ、夕方ね」

 

 咲夜が出て行き、彼は目を閉じた。時間まで寝るくらしかできない。

 

 

           ●

 

 

 夕刻、メイドに案内され彼はダイニングルームの前に来ていた。

 目の前には赤い扉がある。

 

「失礼します」

 

 言葉と共にウォルターはドアを開けた。

 中は広く、天井からは立派なシャンデリアが下がっている。

 見れば中央のテーブルに人が三人確認できた。

 一人は咲夜であり、彼女はテーブルの横で給仕をしているようだ。

 そして残りの二人は席に着いている。

 彼がテーブルに近づくと、一人が椅子から立ち上がって彼を見た。

 その人物は小柄であり、見た目は十代前半の少女だ。

 彼女は薄いピンクのドレスを着ており、同じ色の深い帽子が印象的だった。

 

「来たか、待ちくたびれたぞ。わしが紅魔館当主、『レミリア・スカレーット』である!

 …なんてのぅ、はははははは!!」

 

 何がおかしいのか分からないが彼女は大きな声で笑っている。

 とりあえず彼は礼儀として挨拶をした。

 

「ウォルター・C・ドルネーズです。助けてもらって感謝してる」

 

「うむ、その様子ではだいぶ回復したようじゃ。まあ楽に座れ」

 

「では遠慮なく」

 

 言われたとおりに席に座る。

 すると咲夜が来て、空のコップに赤い液体が注がれた。

 熟成された葡萄の香りが漂う。

 

「ところで早速だが、お主ここで働かんか?」

 

 唐突にきた誘いに、彼はグラスに伸ばしていた手を戻して目線を移す。

 赤い少女と黒い少年は無言で視線を合わせた。

 

「ええと…いきなりですか、お嬢様」

 

 そこでフォローするように咲夜が言う。

 

「いきなりじゃ。わしが回りくどいの嫌いなのは知っとるだろ、咲夜」

 

「もちろん」

 

 どうやらこの館の主はストレートらしい。

 

「そういうわけでどうじゃの?待遇はそれなりで悪くはないぞ、恐らく」

 

「………」

 

 無言になるしかないと彼は思う。

 咲夜から聞く限り、元の世界には簡単に戻れるようだ。

 しかし帰ってどうなるのだろう。

 全てを裏切り欺いてきた自分には、戻れる場所などもう残っていない。

 だが未だに未練がある。だから答えられずに黙ってしまう。

 

「悩んでも無駄じゃて。お主はどうせ帰る場所もないんじゃし、この際いいではないか」

 

「!?」

 

 考えていた事を言われ、ウォルターはハッとしてレミリアを見た。

 

「別にわしは心を読んだりはしていないぞ。

 ただ、お主の〝運命〟をちょこっと覗いただけでのぅ」

 

「運命を覗く?」

 

 どういう意味だろうか。

 

「分かりやすい喩えじゃ。しかし、どうも言葉でこの力を表すのは難しくてなぁ……パチェ、説明」

 

 彼女に視線の先には長い髪の少女が座っている。

 少女の前には料理の皿といくつかの本が並んでいた。

 

「久々に宴会って聞いて期待して来てみたら、普通の夕飯なうえに、

 あなたの面倒くさい能力の解説までしなけりゃならないなんて

 …今日は厄日だわ。帰ってお茶漬けね」

 

 ぼそぼそと呟くような声で彼女は喋った。なんとなくネガティブな雰囲気がする。

 

「ぬわッ!パチェが早速ご機嫌斜めじゃ!やはり肉じゃがよりビーフシチューがよかったかのぅ?」

 

「そういう問題ではないかと

 ……パチュリー様、食後にデザートをお出しする予定なのですが、それでも帰られますか」

 

 デザートという単語にパチュリーと呼ばれた彼女が反応した。

 

「メニューを聞きたいわ」

 

「はい。本日のデザートは、リンゴのタルトのアイスクリーム添えになっております」

 

 咲夜の提示した答えに少女の目の色が変わる。

 

「や、やるじゃない。あなたが作るあれが出るんじゃ仕方ないわ、

 とりあえず簡単に説明してあげる、異邦人。

 ちなみに私は『パチュリー・ノーレッジ』。胡散臭い魔法使いよ。

 で、話は戻るけど彼女は、運命という概念に干渉する事ができる稀な能力を持ってるの」

 

「干渉、つまり人の運命を操れると?」

 

 そんな事ができるのかと思う。

 

「そこまでは無理。でもそれに近いことが限定で可能ね。

 例えば右に進んでる人間を一時的に左に行かせるとか、

 0%の確率を0.1%にするとか、

 ……実は私も的確に言い表せはしないんだけれど、

 あえていうなら、決まっている事柄に少しだけ別の可能性を持たせるって感じかしら」

 

「別の可能性を持たせる…」

 

 限定的といったが、十分過ぎる力であるのは間違いなかった。

 

「その力のおまけで、人が辿った運命をなんとなく知覚できるらしいわよ、すごく大雑把に」

 

「やはりパチェは博学だのぅ。まあそんな感じじゃ。

 で、どうする?やるのか、やらんのか、答えが聞きたいのぉ~、わしは」

 

 なんとなく答えは出ていた。そう、最初に言われた時から。

 彼は彼を必要とする場所を望み、それが今、目の前にある。

 ならば断る必要はないだろう。

 既に別れの言葉も済ませてある。あれは間違いなく聞こえていたはずだ。

 だから彼は…ウォルターは立ち上がり、目の前の少女に言った。

 力強く、真摯に。

 

「引き受けよう……これからよろしくお願いします、()()()

 

 響いた答えに彼の新しい主は笑みを溢した。

 

「よし、契約成立じゃ。でだな、最初の仕事を頼みたい」

 

「なんでしょうか」

 

「わしの妹にデザートを持っていってほしい。あやつも甘いものが好きでな」

 

「!」

 

 レミリアの言葉に咲夜は驚きの表情をしたが、それに構わず彼は聞く。

 

「場所はどちらで?」

 

 すると彼女は、人差し指で床を指し笑った。とても愉快そうに。

 

「下じゃ、暗い暗い地下、そこがあやつの部屋でのぅ……」

 

 出会いから全ては始まるという、

 彼の新たな始まりはここから。




 というわけで二回目です。短くまとめるのが難しいです
では次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。