Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.9『ROCKY&POCKY』その2からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。


♯.9 『ROCKY&POCKY』 その3

「お嬢様も困った人だわ。いきなり難しい問題を出してくるのだから……」

 

 地下へと続く階段を下りながらメイドは溜息を漏らした。

 

「デザートを届けるだけなのにやけに深刻そうだね、メイド長」

 

 後ろからはトレーを持った少年執事が続く。

 彼の手にあるトレーの皿の上には、大きめに切られたリンゴのタルトが乗っていた。

 

「間違いなく深刻よ。

 口止めされてるから詳しくは言えないけど、病み上がりの人間に任せるなんて信じられないわ」

 

「その口振りじゃあ、何かあるわけだ。なんとなくそんな気はしてたけど、不味いのかい?」

 

「そんなところよ。

 妹様はちょっと問題を抱えていてね。そのせいでずっと地下に居るわ、一人で」

 

「一人で?何故?」

 

 当主の妹の扱いではないと彼は思う。

 

「それを言うのを口止めされてるのよ。まったく厄介だわ……ただ、一つだけ憶えておいて」

 

 一呼吸置いて、咲夜は真剣な声でウォルターに言った。

 

「妹様は子供なの、本当に純粋な子供。だからそれを忘れないで」

 

「子供ね…頭の隅に置いとくさ」

 

 そして、階段は終わり、何もないただの部屋に着いた。

 

「ここからはあなた一人よ」

 

 彼女の言葉に彼は壁を見る。

 

「行き止まりのようだけど」

 

「カモフラージュしてあるの。人が間違って入り込まないようにね」

 

 咲夜が壁の一部に鍵を差し込むと、機械音と同時に壁が変形した。

 

「こいつは驚いた。この奥に妹様がいるわけだ」

 

「ええ、そうよ。それとこれを」

 

 唐突に渡された物を見て彼の表情から余裕が消える。

 

「これは……こんな物をどうしろと?」

 

 それは黒いグローブと、不思議な輝きを放つ糸の束だった。

 グローブの甲には金属板が取り付けられており、表面には読めない文字が刻まれている。

 

「お嬢様があなたにって。

 材質は呪術加工されたミスリル、グローブの方も特殊な素材で作られているらしいわ」

 

「もしかすると、この服一式もそうなのかな」

 

 聞かれて彼女は頷いた。

 

「そう、あなた専用よ。他に質問は?」

 

 なんともいえない表情をしてから、彼は首を横に振り意志を示した。

 

「これ以上は後で聞くさ。ここまで色々とありがとう、メイド長」

 

「気にしなくていいわ……気をつけてね、ウォルター」

 

了解(ヤーッ)

 

 そして彼は入り口の奥へと消えていった。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「戻ったか、咲夜」

 

 ダイニングルームにメイドが戻ると、ワイングラスを片手に彼女の主人が出迎えた。

 既にパチュリーは退席したようで姿はない。

 

「はい、ただいま……失礼ながらお嬢様、今回ばかりは度が過ぎるのではありませんか」

 

「ウォルターのことか?」

 

 言われて、咲夜は目を細めて強い口調で言う。

 

「そうです。彼は普通の人間ではないようですが、

 事前の説明もなしに妹様の部屋に向かわせるのは危険過ぎます」

 

 メイドの態度に、怒られているような感覚を感じたのか、レミリアはまあまあと手を動かした。

 

「まあ怖い顔をするでない。お主が言いたいことは理解しておる」

 

「では、何故です」

 

 問われて吸血鬼は遠い目でどこかを見た。

 

「出会いというのが必要だからじゃ、フランにとっても、ウォルターにとってものぅ……」

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「面倒かもな」

 

 二つ目の鉄扉をくぐりながら彼はぼやく。

 いくらなんでも厳重すぎると思うからだ。

 そしてまた、すぐに扉が見えてきた。

 しかし、その扉は異常だった。

 表面が所々盛り上がっており、内側からの強い衝撃で変形していたのだ。

 厄介そうだと感じつつも、彼はドアをノックし、ノブに手を掛けた。

 

「失礼します」

 

 変形した鉄扉を開けると、そこは広い空間になっていた。

 照明の類は見当たらないが明るく、壁や床、さらに天井が同じ黒と白のチェック柄だ。

 

「妹様、デザートをお持ち致しました」

 

 言って周囲を見回すと部屋の隅で動く影があった。

 赤と白の洋服を着た金髪の少女だ。

 彼女の手には、ツギハギだらけの熊の縫いぐるみがあり、それを大事そうに抱えている。

 ウォルターを見た少女は力なく呟く。

 

「……誰なの……」

 

「失礼しました、ウォルター・C・ドルネーズと申します。

 今日からここでお世話になる執事で御座います、以後お見知りおきを」

 

 彼がそう言って頭を下げると、虚ろな瞳が執事を見た。

 

「…そうなんだ…フランはフランドール・スカーレット…

 …ねえ、ウォルター・C・ドルネーズ……あなたは壊れない人?」

 

 刹那、彼は跳ぶ。

 直感的に危険を感じたからだ、死の気配を…。

 次の瞬間に彼が立っていた場所は崩れ、何かがめり込んだかのように沈んだ。

 

「―――どうして…どうしてみんな壊れたり、逃げたりしちゃうの…フランはただ…」

 

 そこにいない誰か達に問いかけるように彼女は囁き俯く。

 表情は見えないが、床に透明な雫が落ちる。

 そして、悲鳴のような嗚咽と見えない破壊の嵐が響き吹き荒れた。

 

 

「あああああああああああああぁぁぁ――――――――――ッ!!!!!!」

 

 

 ……確かにこれは難しいな!……

 

 トレーを入り口付近に滑らせ、執事は戦闘態勢をとる。

 装着したグローブの感触は悪くない。

 

「なんでッ!!なんでッ!!なんで――――――――――ッ!!!!!!」」

 

 少女は狂ったように叫び続ける。

 まるで何かの答えを欲しているかのように。

 その間にも破壊の嵐がチェックの部屋を蹂躙していき、

 壁も床も天井も見境なしに崩れ潰れていく。

 

 ……どうする?どうやって止める……

 

 嵐の隙間をギリギリで走りながら、ウォルターは自問自答を繰り返していた。

 相手は雇い主の肉親。

 手荒な方法は避けたいが、この状況で手段を選んでいる余裕はない。

 少しでも気を抜けば一撃で終りだろう。

 

「逃げないでよッ!!!ねえ―――――ッ!!!!!!」

 

 迫る不可視の暴力が執事を確実に追い詰めていく。

 そして遂に捉えられた。

 

「ッく!!」

 

 振り下ろされた力を防御すべく、彼は鋼線で〝盾〟を編み、正面に展開する。

 しかし、それでも威力を殺しきることはできず、強く弾き飛ばされた。

 

 ……くそッ!力も早さも足りない、せめて全盛期の身体だったら……

 

 ないものねだりと分かっていても思ってしまう現状に、彼は心の中で悪態を吐く。

 直後、ウォルターは壁に激突した。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 屋敷全体が不規則に揺れる。

 

「やっとるのぉ、なかなかに激しく」

 

 グラスを片手にレミリアは床に視線を落とす。

 その横で咲夜は不安そうに主人を見た。

 

「本当に大丈夫なのですか、お嬢様?」

 

「咲夜は心配性じゃな。わしが問題ないといっとるのだから、60%くらいは大丈夫じゃ」

 

「かなり微妙かと…」

 

「なんじゃ、信用できんのか」

 

 機嫌を損ねたような主人にかまうことなく、メイドは答えた。

 

「割と……今回も正直無理なのではと私は思っています」

 

 その言葉にレミリアはグラスの中身を揺らす。

 

「ふん、正直な奴じゃ。

 まあ、ぶっちゃけて言えば、わしも期待はしとらんがな……だがのぅ、あの男は面白いぞ」

 

「面白いですか?」

 

 問われて吸血鬼は笑いの表情を作った。

 

「ああ、そうじゃ、非常に面白い運命を辿ってきておる。

 そしてこれからもそれは続いていくように見える…本当に愉快じゃぞ」

 

「お嬢様の面白いの基準はやはり分かりません」

 

 言われてレミリアは、グラスの中身を一気に煽ってテーブルに置いた。

 

「どういう結果であれ、わしが望んでいる方向に事が進めばそれでよい。

 ……さて、執事は泣く童をあやせるのかのぅ?」

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 朦朧とする意識の中、彼は声を聞いてた。

 

「あなたも壊れちゃうの?フランは一人なの?」

 

 囁くように発された言葉に、敵意や悪意は一切感じられない。先程もそうだった。

 あの少女は何かを恐れ、求め縋るように泣いている。

 それは何故だろう。

 

 ……分からないのか、子供だから……

 

 どうしていいのか分からないから泣く。

 どうしていいのか分からないから叫ぶ。

 どうしていいのか分からないから壊す。

 

 ―――妹様は子供なの、本当に純粋な子供―――

 

 咲夜の言った言葉の意味がなんとなく理解できたと彼は感じた。

 情報不足で推測の域を出ないが、

 恐らく彼女、フランドール・スカーレットは、

 自身の力をコントロールできないが為に今の不安定な状況から抜け出せないでいる。

 また、それが原因で心に恐れを抱き、虚ろにならざるをえないのだろう。

 ならばどうすればいいか、どうやって状況を変えてやればいいか、ウォルターは考える。

 

 ……しかし……

 

 どうしても足りない。

 どうしても届かない。

 力が、力があれば……そう強く思った瞬間に妙な感覚が全身を襲った。

 まるで身体が膨張し、伸びていくような感覚。

 これに近いものは一度だけ味わった事がある。

 そう、あの忌まわしい連中にすべてを売り払い手にした力、

 かつての自分、全てを賭けて死神と成り果てた自分。

 その時と同じ感覚が今、身体を支配していた。

 

 ……一体、何が、これは……

 

「あなたは、ウォルター・C・ドルネーズ?」

 

 不意にかけられた言葉で彼は自身の変化を完全に認識した。

 

「ええ、そうです。私は執事、あなたに仕えるのが仕事で御座います」

 

 立ち上がったの少年ではなく、青年だった。

 彼は全身に力を入れ、正面に力強い視線をやる。

 

「今度のあなたはどうするの?」

 

 かけられた言葉に、すぐに破壊の嵐が来るのが分かった。

 しかし彼は避けようとはしない。ただ真っ直ぐに歩き始める。

 

「妹様、どうして泣くのです。どうして叫ぶのです」

 

 執事の問いかけに少女は半狂乱になりながら答えた。

 それと同時に力もくる。

 

「だって、だってみんな壊れちゃった!

 みんな逃げちゃった!!フランは…フランはただ一緒に居てほしかっただけなのにッ!!!!」

 

 放たれる力に合わせるように、彼は両手を払うように振った。

 動きを追うようにミスリル鋼線が独特の輝きで線を描く。

 すると、その払った方向で破壊が起こった。

 

 ……いい調子だ……

 

 自身に向けられた力の起点をずらす事で、ウォルターは攻撃を弾いていた。

 無論完全ではない為に危険も大きい。失敗すれば先程の二の舞になるだけだろう。

 だが彼は足を止めることなく、嵐の中心を目指して進む。

 

「どうして止まらないの?どうしてッ!!あははははははは」

 

 今までなかった状況に、フランは半ば混乱しながら、泣くように叫び笑う。

 その様子はひどく痛ましい。

 

「何があったのかは分かりません。

 しかし、もうフランお嬢様は泣かなくていい。叫ばななくてもいい。

 何故なら、私がこれからは一緒だからです」

 

 できる限りの笑顔で、彼は少女に言った。

 必要なものは信頼だ。

 信頼こそがお互いの現状を変える唯一の要素だ。

 

「がああああああああああああぁぁぁ――――――――――ッ!!!!!」

 

 どうしていいか分からず、ただ獣のように咆哮する少女の正面に執事は立った。

 彼はしゃがみ込み、相手の目をじっと見つめる。

 

「大丈夫、大丈夫です……フランドール」

 

 そして、ただ優しく抱きしめた。

 離さないように優しく、包み込むように。

 その瞬間、少女の目から再び雫が溢れ落ちる。

 

「う、ううッ、ああああ―――――」

 

 抱きしめられて感じるのは、安堵と大きな身体の感覚だ。

 それが心に染みて涙が止まらない。

 

「もう大丈夫」

 

 改めて言われ、フランはウォルターの身体にしがみつき、大声で泣いた。

 まるで生まれたばかりの赤子のようにいつまでも……。

 

 

 




という感じで三回目です。
原作の外伝が完結する日は来なさそうですが、できれば続きが見たいですね。
まあ、ドリフ終わっても作者さんが書かなそうですけど……。
そんなわけで次回。
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