Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.9『ROCKY&POCKY』その4からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。


♯.10 『WAR GAME side:red』 その1

 空が広がっていた、どこまでも青い空が。

 その中で私はただ浮いている。聞こえるのは風の音だけだ。

 もうどのくらいになるのだろう?

 時間の感覚などは分からない。

 しかし一つだけ確かなことがある。

 ……ここはとても居心地がいい。そして自分一人だ。

 ならばそれだけで十分だと心から思う。

 誰かに何かを期待されることもなければ、巫女としての煩わしい使命もない。

 ああ、とても自由だ。

 とても……。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「唸る木刀~♪一撃滅殺~♪」

 

 歌を口ずさむ少女は機嫌がいいのか笑顔だ。

 今、彼女はスケッチ中らしく、視線の先には黄色く丸い人形があり、

 手元のスケッチブックにそれらしいものが描かれている。

 

「倒せ~悪魔の~チョー・チョー原人~♪」

 

 口と手を同時に動かしながら、フランは少し前の事を思い出す。

 

           ●

 

「そういえば、お嬢様に渡すものがありました」

 

 授業後、執事はそう言って大きめの包みを彼女に渡した。

 

「何なの、これ?」

 

「雑貨屋で見つけました。開けてみて下さい」

 

「うん」

 

 包みを開くと、手足が生えたサッカーボールくらいの黄色い球体が入っている。

 触ってみると妙に柔らかい。

 

「人形かな?」

 

「ええ、恐らくその類かと。お嬢様にプレゼントします」

 

「えっ!いいの!ありがとう、ウォルター!大事にするね」

 

 はしゃぐ彼女に執事は、

 

「それと本日の宿題は美術です。その人形の絵を描いておいて下さい」

 

 と、笑顔で告げた。フランは半目で少し不満そうに言う。

 

「ええ~宿題……教材をプレゼントっていうのはどうかと思うよ」

 

「いいではありませんか。学習教材と贈り物で一度に二度おいしい、一石二鳥というやつです」

 

「それはウォルター的にでしょ。まあいいけどさ」

 

「大丈夫そうですね。それでは本日の授業は終わりにします。また明日」

 

           ●

 

 そんなわけで彼女はスケッチを続ける。最近お気に入りの歌を歌いながら。

 

「あいつが~あいつが噂の~島津超人サツマイガー~♪(肝練りッ!!)」

 

 今週もサツマイガーは大暴れだ。

 敵の司令官が命乞いをした次の瞬間には

『そういう目をしたッ!!』

 と突発的に叫び、袈裟切りで一閃。

 まったくもって痛快。しかし一緒に鑑賞している姉や魔法使いは怪訝な顔をいつもしている。

 こんなに面白いのに。

 

「ふう~、完成!」

 

 出来上がった絵を見ながら、我ながらいい出来だとフランは思う。しかし何か違和感がある。

 

「でも…おかしいような…う~ん?」

 

 スケッチブックと置いてある人形を交互に見比べ彼女は気が付いた。それは、

 

「ポーズが違う?なんで」

 

 紙の上の人形はただ座ったような姿勢で書かれているが、

 机の上のモデルは足をクロスさせており、拳も握られている。

 

「どうしてだろ?」

 

 自身で動かした記憶はない。人形にもそういった類の仕掛けはなかったはずだ。

 

「どれどれ」

 

 フランは人形を手にとって調べる。感触はやはり妙に柔らかい。

 

「ん~ん」

 

 しばらく伸ばしたり潰したりを繰り返す。しかし分からない。

 

「まあ、いいや……でも本当に柔らかいな。感触も不思議だし」

 

 気にしない事にした彼女は、なんとなく人形の頬にあたる部分を思い切りつねってみた。

 すると直後に人形が腕の中で振るえ、

 

 

「ぶるぅわぁ―――――――――――!!おい手前ら!!糞不味いじゃねえかよッ!!!」

 

 

 いきなり怒声が地下に響いた。人形が声を上げたのだ。

 

「…て、どこだ?ここは?……むッ!ハンサムなわたくしを抱いてる美少女、

 すまないが地味な量産型忍者どもを見かけなかったかね?」

 

 渋い中年男性のような声で問いかけられたフランは、

 咄嗟に黄色いそれを力いっぱいに投げ捨てた。

 

「イヤ――――――――――――――――!!!!」

 

「パポ―――――――――――――――――!!!!!」

 

 響いたのは轟音。

 全力投球された球体は一直線に壁に激突し、チェック柄の部屋が揺れる。

 そこでフランは妙な汗をかきながら我に返った。

 

「はッ!ついつい驚いてやっちゃったけどマズい…大丈夫!!」

 

 彼女はひび割れ凹んだ壁に急ぐ。

 衝突後の下には壁材が散乱し、その中で黄色い球体が仰向けに倒れている。

 

「ど、どうしよう」

 

 目の前の光景に、フランは血の気が引いていくのを感じていた。

 フラッシュバックするのは過去、自身の力に振り回され多くの人を傷つけた記憶だ。

 

「ねえ、起きてよ…ねえ」

 

 必死で呼びかけるが返事はない。

 

「誰か呼ばなくちゃ」

 

 彼女が動き出そうとした次の瞬間、足を掴まれた。

 はっとして見てみれば視線が合わさる。

 

「…待ていッ!とりあえず説明だ、ファントムガール」

 

 一瞬の沈黙、そして再び悲鳴と絶叫。

 

「イヤ――――――――――――――――!!!!」

 

「パポポ―――――――――――――――――!!!!!」

 

 衝撃が再び部屋を揺らした。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 夕刻、空は赤く染まりカラスの声が響く。

 香霖堂の入り口には『本日終了』と書かれた看板が吊るされている。

 店先に人影はなく、忍者達の姿も見当たらない。

 

「なるほど、なんだか大変な事になっているようだね」

 

 ガラクタが積み上げられた部屋の奥、

 比較的整理された茶の間で、森近霖之助は軽く背伸びをし正面に居る人物を見た。

 

「で、大体の事情は聞いたけど、トニーはどうしたいの?」

 

「分からない。正直考えている。だがとりあえず戦いたくはない」

 

 答えた彼は甚平(じんべい)姿で不機嫌そうに答えた。

 二人が座るちゃぶ台の上には、見慣れない文字が印刷された缶ビールや古い酒瓶、

 さらに変わった形のワインボトルが置かれている。

 

「そうか、嫌なら仕方ないね。君の好きにすればいいよ」

 

 ステンレス製のタンブラーにビールを注ぐ店主はそれ以上何も言わず、

 ただ同じ銘柄の缶をトニーに差し出した。

 渡されたビールの冷えた感触が心地いい。缶の文字は分からないがなぜか読める。

『オレモダ』というメーカーらしい。これも結界とやらの力なのだろうか。 

 

「……なあリンノスケ、根拠のない期待というものにはどう応えればいいんだろうな」

 

 プルタブに手を掛けた彼はじっと缶を見ている。視線も気分も沈んでいるようだ。

 

「難しいな。でも、結局さっきと同じになるよ。君次第、僕にはこれしか答えられない」

 

「……」

 

 会話が切れた。二人はただオレモダビールを飲んでいる。そこに軽い足音が近づいて来た。

 

「お待たせ。河童特製きゅうり三昧だよ」

 

 部屋に入ってきたにとりの両手と、

 背中のリュックサックから伸びたアームには皿が乗せられている。

 見れば緑色が非常に多い。

 

「待ってました。しかしグリーンだね」

 

「そりゃそうだよ、きゅうりメインだし。

 まずオーソドックに浅漬けでしょ、次に熟れたきゅうりのオイスターソース炒め、

 それからおなじみの河童巻きに、スペシャルなもろきゅう、

 あと外見だけきゅうりなズッキーニのソテーだよ」

 

 台に置かれていく料理を見ながら、店主は輪切りにされて並んでいる白と緑の野菜を凝視した。

 

「ああ、アリスさんがくれた野菜か。美味いのかな?」

 

「一緒に置いてあったレシピの通りに作ったから大丈夫じゃない」

 

 すると、無言で社長が箸を伸ばして食べた。

 

「…美味しいぞ。素材の味がよくでてる」

 

 その後も彼は箸を伸ばし皿の料理を黙々と食べている。それを横目ににとりは話を切り出した。

 

「ねえ、トニー。明日はあたしの工房に来ない」

 

「ニトリの?」

 

 箸を止めた彼は河童のほうを向く。

 

「うん。エンジニアの端くれとして一流の意見が聞きたいんだ」

 

 言われて即答する。

 

「もちろん喜んで行こう。君の使っている技術は非常に興味深い」

 

 先日の戦闘で見た光学迷彩やアームなどを思い出しながら彼は首を縦に振った。

 

「じゃあ決まり。午前中に迎えに来るね」

 

「ああ」

 

 約束が済んだところで、霖之助はタンブラーを片手に立ち上がった。声は明るい。

 

「とりあえず今日は飲もうよ。明日は明日の風が吹くって言うしさ」

 

 トニーはその言葉に気遣いを感じた。どうにも自分は他人に迷惑ばかり掛けてしまう性分らしい。

 だから小声で一言だけ呟いた。

 

「…すまないな」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

「では、巫女は少しの間動けないわけですか」

 

「そうなる」

 

 霧の湖のほとりに影が二つ並んでいる。

 一人は白衣、一人はスーツ。

 

「だが問題はない。許可も貰ったし好きにやらせてもらうさ」

 

 白衣の博士(ドク)は笑みを隠さずに紳士に言い放った。

 

「そうですか。ではこちらも適当に遊ばせてもらいますよ」

 

「妖怪の山に行くのか?」

 

 問われた井坂は頷いてみせる。

 

「ええ、試してみたいんですよ。ガイアメモリが妖怪とやらにも使えるかどうか」

 

「物好きな男だ」

 

「あなたもですよ」

 

 空は少しずつ黒に染まっていく。全てを覆い隠すように。

 

 

 




 はい。そんなわけで三週間ぶりの更新です。無駄に最近は忙しかったので疲れました。
今回より新章という感じになります。
そんなわけで次回。
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