Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。
 それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.10『WAR GAME side:red』その1からの続きです。
 先にそちらを読むことをお勧めします。




♯.10 『WAR GAME side:red』 その2

「…ちょっと、いつまでくたばってんのよ」

 

 何もないはずの自由の空で声が聞こえる。

 

「まったく!人がせっかく犠牲になってあげたんだから、いい加減に目を覚ましなさいよ!!

 この根暗!!」

 

 やかましく捲くし立てるのは不機嫌そうな表情の〝私〟だった。

 彼女は両手を組み、私の正面に立っている。

 一体何の用だろう?

 

「突然だけどね、今日で金輪際さよならよ。

 まあ色々あったけど、面白おかしくやれて満足してるわ…あのムカつく女にやられた以外は」

 

 一瞬、頭の中が白で染まった。

 〝私〟は今なんと言ったのか?

 言葉の意味は分かるが、思考が理解を拒んだ。

 

「……お別れ?嘘でしょ」

 

 そうであって欲しいというように軽く言葉を呟いた。そうでなければ困ると祈りながら。

 

「悪い冗談ならよかったわ。だけど本当に今で最後……あっけないもんね」

 

 返事は即座で味気ない。それに、何故こんなにもあっさりと言うのだろうか。分からない。

 

「あ~あ、これから結界に還らなくちゃいけないわ。あと少しで全部消える。

 あたしという人格もあたしという存在も……悔しいわね、まったく。

 でもあんたは消えない、博麗霊夢はそのままだから大丈夫よ」

 

 いつもと変わらない表情と口調で〝私〟は私を見ている。

 そこで何かが切れ、崩れた。

 最初に込み上げてきたのはどうしようもない怒りだったが、

 それはすぐに不安と焦燥に変わり、胸の辺りで叫び始める。

 

 ―――自分だけでどうすればいいの?―――

 

 巫女として選ばれた日から今日まで、常に私と〝私〟は一緒にいた。

 文字通りの一心同体、そして一人だけの心を許せる存在、それが〝私〟だった。

 彼女が消えてしまったら私は自分ではなくなってしまう。

 怖い。自分の半分が(から)になるのが怖い。

 自身の意味を失うようで怖い。

 

「大丈夫なはずがない…あなたが消えたら私は…私はどうやって生きていけばいいの!

 皆の期待には誰が答えるの!?あなたがいなくなったら私には何も残らない!!」

 

 不安は雫となって瞳から、焦燥は叫びとなって腹の底から溢れてくる。

 体裁など気にすることなく、思いのままに私はもう一人の自分に訴えた。

 彼女は困ったように微笑し、私の頭に手を置く。

 そして安心させるような優しい動きで撫でられた。

 

「まるで駄々っ子ね…大変だけどもう助けてあげられない、ごめん……でもあんたは大丈夫だよ。

 だって、いつでも手は差し出されてるから。あんたがそれに応えないだけでさ―――あれ?」

 

 次の瞬間、〝私〟の身体が光の粒となって足元から散りはじめる。

 それを一瞬だけ見て彼女は手を離した。

 

「時間か……みんなによろしく言っといてよ……いつも見てるってね。

 それと最後にお願い―――あの女に吼え面かかせてやんなさい、約束よ?

 じゃあいつかまた会いましょう。いつかまた、きっと…さよなら私」

 

 足から彼女の全てを分解するように昇ってくる光は止まらない。

 

「待って!ねえ!お願いだから、お願いだから行かないで!!」

 

 求めるように伸ばした手に感触はなく、ただ小さな光が指の間をすり抜けていく。

 青い空の中、そこにもう彼女の姿はなかった。

 そして私の身体も下へと落ちていく。

 ……目覚めたら私は私でいられるのだろうか?

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 紅魔館の地下、聞こえる声が二つ。

 

「ん~大体は分かった。

 しかし何だな、ハンサムかつクール&ワイルドな俺を人形と間違えるとは不届き千万!

 責任者はどこだ!」

 

「夕飯の準備じゃないかな、時間的に」

 

 椅子に座るフランの目の前のテーブルには、音速丸と名乗った妖怪(?)が座っている。

 彼の話はなんだかよく分からないが、どうやら色々と厄介ごとがあり、霊夢が怪我をしたらしい。 非常に心配だと彼女は思う。

 

「ところでどうして君は意識がなかったの?」

 

「うむ、話せば長くなるなるのだがな。

 ……そう、あれは香霖堂とかいう店の前に来た時だった―――――」

 

 彼は語り始めた。つい数時間前の出来事を。

 

           ●

 

「ようやく到着しましたね、音速丸さん」

 

「ったく、チルノの野郎が書いた地図が適当過ぎんだよ!

 もう一歩も動けな~い!のど渇いた~!!」

 

 神社での一件の後、忍者学園一行は二手に分かれ行動していた。

 一方は神社に残り待機、もう一方は先程の状況を知らせるべく香霖堂へ。

 ちなみにチルノは『みんなに知らせないと』と言い残し、

 彼等に自作の地図を渡してどこかに飛び去った。

 

「いいじゃないですか、とりあえず無事に来れたんですし」

 

「甘いッ!今度会ったら断固抗議だ、断固!」

 

「それは置いておくとして、私は店主の方に会ってきます。

 あまり妙な事はしないようにして下さいよ、音速丸さん」

 

「けッ!餓鬼じゃねえんだから心配無用だぜ」

 

 そう言ってサスケは店に入っていった。

 すると、背後で忍者たちが何かを見つけたらしく音速丸を呼んでいる。

 

「こんな場所に自販機がありますよ!」

「ちょうど甘いの飲みたかったんだ」

「誰か小銭貸してくれよ~」

「ドクターペッパーかジャングルマンXないかな?」

 

 見れば缶ジュースの自動販売機が店の横に設置されていた。

 いくつかはコンセントが抜け止まっているようだが、動いているものもある。

 作動中の自販機のケースを覗けば、見たことのない種類の飲料が何本も並んでいた。

 パンダココア、超神水、バタービール、まロ茶、どろり濃厚etcetc……。

 

「怪しい……」

「とりあえずビールはパス」

「女の子が写ってるお茶でいいかな?無難そうだし」

「俺はココアでいいや」

 

「待てい!!」

 

 忍者たちがワイワイと騒ぐ中、音速丸が割り込んで自販機の前に立った。

 その手には百円玉と五十円玉が握られている。

 

「階級ピラミッド的にモブ忍者の手前えらより、首領で主役の俺が最初に購入するべきだろう!

 異論は認めない!!……というわけで炭酸じゃ!命の水じゃ!!」

 

 勢いのまま硬貨を入れ、彼はボタンを押した。すると、おつりと商品が落ちる音が響く。

 取り出し口から出てきたのは『がぶ飲みアムブロシアー』と表記されている350mlの缶だ。

 音速丸はすぐにタブを開けると一気にそれを飲み干した。

 

「美味いんですか?」

「それより何か臭うような…」

「あ、俺も」

「臭いな」

 

 直後、音速丸は空の缶を落としてその場で絶叫した。

 

「く、糞不味い(くしょまずい)!!何じゃこりゃ!!み、み、水ゥ~!ウォ~タ~プリーズ!!」

 

 妙な汗を全身に掻きながら、音速丸は店に駆け込んだ。

 その様子を見た忍者たちは、恐る恐る転がっている缶を拾い上げる。

 

「臭ッ!ものすごい臭いよ、この缶の中身!」

「注意書きに『塗り薬、誤飲注意』って書いてあるぜ」

「炭酸入りって表記されてて、がぶ飲みって付いてるのに!?」

「やっぱりお茶が無難だな、電撃繋がりで」

 

 店に入った彼だがすぐに限界がきた。

 全身が震え、どうしようもない倦怠感が全身を支配する。

 

「も、もう駄目だ!私の冒険はここで終わってしまった…」

 

 そのまま音速丸は商品棚に落ち、意識も同時に落ちた。

 口いっぱいに広がるのは腐敗臭と吐瀉物の味に似た酸っぱさだけであった。

 

 

           ●

 

 

「というわけだ。まあいうなれば、犬も歩けば棒に当るってやつだな」

 

 やっぱりよく分からない。そう感じつつ時計を見れば、二つ針が七と十二を指している。

 

「そろそろ晩御飯か。どう紹介すればいいのかな」

 

「ありのままの僕の魅力を伝えればいいのさ~」

 

「う~ん」

 

 そう言われてもと、フランは考える。

 

「心配は無用だ、この俺の灰色の脳細胞に全て任せれば問題はない。ノープロブレム」

 

「本当に?」

 

 不安そうな少女に、音速丸はサムズアップと悪い笑顔で返した。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「あら、妹様。珍しいぬいぐるみですね」

 

 ダイニングルームに入ったフランを見たメイドは、

 抱きかかえられた黄色い球体を見て感想を漏らした。

 

「えっ!そ、そうかな!」

 

 問われた彼女は妙に慌てた様子で席に着く。人形は膝の上だ。 

 その様子に彼女の姉は、前菜をつまみつつ目を細める。

 

「それにしても、最近は人形を持ち歩く癖が治ったと思っておったが、

 …まだまだ子供じゃな」

 

「う、う~……」

 

 言われてフランは恥ずかしそうに下を向いた。

 

(……ねえ、大丈夫じゃない気がするんだけど……)

 

 小声で人形もとい、音速丸に囁く。

 すると彼は表情一つ変えずに、腹話術のごとく口を動かさずに言った。

 

(……さっき言ったようにノープロブレムだ。

 それと独り言が多いと社会的に心配されてしまうぞ……)

 

 はっとしてフランは顔を上げた。

 

「どうかしたのか?」

 

「ど、どうもしないよ!うん、なんでもない!」

 

 言って彼女は疲れたような溜息を吐いた。

 

「後はパチュリー様だけですね」

 

 時計を見れば七時二十分になりそうだ。

 

「うむ。ところで今日のメインは肉か?魚か?」

 

「ええとですね。本日のメインは……」

 

 そこで勢いよく扉が開いた。入ってきた人物を見て三人は一瞬固まる。

 

「おまたせ!トキワの森で電気鼠を探してたら遅くなっちゃった」

 

『………』

 

 扉から出てきたのは、服装こそパチュリーっぽい人物ではあったが、声は低く無駄に渋い。

 そして本人よりも背は低く、素肌が露出している部分から覗くのはメタリックな色調だ。

 

「どうかしたのかしら?就寝中に放屁でもくらったみたいな顔しちゃって」

 

 数秒してからレミリアが怪訝な顔で聞く。

 

「……誰じゃ?」

 

「パチュリーよ?頼れる七色の魔法使い!

 ちなみにチャームポイントは胸に刻まれた北斗七星!!」

 

 問い掛けに対して、パチュリーのような格好の何かは、妙な動きでポーズをとり答える。

 三人は間違いなく別人だと確信した。

 

「そこまでよ!!」

 

「あ、パチュリー様」

 

 叫びと同時に、扉から本物が息を切らしながら飛び込んできた。

 呼吸をひどく乱しながらパチュリーは偽者を睨む。

 

「まったく、人の洋服まで勝手に着て……召喚魔法の実験でとんでもない奴を引いてしまったわ」

 

 すると偽者は大声で笑い、洋服に手をかけた。

 

「うははははは!ばれちゃ仕方ねえな!これが俺のハンサム顔だ!!」

 

 直後、衣服が宙を舞い、その正体があらわになる。

 緑色のボディー、球体が連結したような手足、そして死んだ魚のような虚ろな目。

 誰が見ても機械に見えるそれは自信たっぷりに立っている。

 

「ロボット?」

 

「どこかの貯金箱みたいだのぅ」

 

 全員が微妙な空気で警戒する中、フランの膝に乗っていた彼が飛び出す。

 

「お前はッ!?」

 

「んんー?手前!!」

 

 刹那、二人はお互いの顔に拳をぶち込み、笑いながらお互いを呼んだ。

 

「ぶあッ!ばッ!がは…鉄屑ゥ(パクマン)!!」

 

「がッ!はァ、はッ!もうガマンできないってか!!駄忍者(音速丸)!!」

 

 睨み合い、対峙した両者が次の動きを作る。だが、その前に驚きに叫びがあがった。

 

「ぶるぅわぁ!!」

「タコス!!」

 

 次の瞬間、そのまま殴り合いを続けようとした二人の足に何かが絡まり、彼等は逆さ吊りになってしまう。

 

「騒がしいかと思えば、無作法なお客様のようですね。

 それに今日は来客の予定などもありませんし……返答次第では罰が必要ですな」

 

 声の主はメインディッシュが載せられたトレーを横に置き、グローブが着けられた両手を動かしている。 

 

「ウォルター!」

 

 突発的な出来事に二人は喚く。

 

「頭に血が!おい!さっさと降ろしやがれ!!」

「そこの黒執事!こっちは無罪だ!

 罰はブサイクな黄色いの限定でお願いします!プリーズダウン!パクマンNOギルティー!!」

 

 宙吊りになった彼等を見ながら、執事はなんともいえない表情で聞いた。

 

「……それにしても妙な方々ですね。ところであなた方、何処かで会いましたか?」

 

 彼には珍しく言葉に自信や確信が感じられない。

 

「なんじゃ、知り合いか?」

 

「いえ、そんな気がしただけです」

 

 多分気のせいだろうと思うことにした。似ているのは声だけだ。

 

「そうか……さて、暇じゃし尋問ショーでも開いて皆で楽しもうかのぅ」

 

「そうね。機械と人外だから、ちょっとやそっとじゃ死なないし、大丈夫でしょう」

 

 吸血鬼と魔法使いの会話に、彼等は激しく抗議する。

 

「おい!早速人権を無視するのは南極条約に違反するから止めろ!!ついでに熱々のおでんも禁止だ!!」

 

「……人権?」

 

「まったくその通り!僕らまったく怪しくないもんね~!というかフラン!救援プリ~ズ!!」

 

 音速丸が彼女に助けを求めた。フランに皆の視線が集まる。

 

「え!僕?……あのね、とりあえず下ろしてあげたら?多分逃げないと思うよ」

 

 恐る恐るフランは執事を見た。

 

「いいのですか?」

 

「うん」

 

 返事を確認し、ウォルターは指を動かす。

 すると逆さの姿勢のまま二人が落ちる。

 

「大丈夫?音速丸」

 

 駆け寄るフランに音速丸は礼を言い、料理が並んでいるテーブルに直行した。

 

「ふう~助かったぜ。各自、夕飯はこれからが本番だ!気を抜くんじゃぁない!!」

 

 パクマンも同様で、既に料理を食べている。

 

「サンキュー神様!それにしてもうめえ~!やっぱりブルジョアは違うぜ!!」

 

 この状況に、紅魔館の住人達は呆然とフランに視線を戻した。

 

「…ほ、ほら逃げてないよ」

 

 無理矢理取り繕うフランの言葉を聞きつつ、主人は笑顔で従者を呼ぶ。

 親指を下にしながら。

 

「そのようじゃな。咲夜、ウォルター…やってしまえ」

 

了解(ヤーッ)

 

「んん~?」

「ん?」

 

 ナイフと鋼線が彼等を襲う。

 広がるのはおそらく阿鼻叫喚の地獄絵図だ。

 

「やれやれ、今晩からは騒がしくなりそうじゃのぅ、色々と」

 

 見えない何かを見つめながらレミリアは呟いた。

 

 




 はい。そんなわけで今回も遅くなってしまいました。頭の中の展開を文章にするのはやっぱり難しいですね。それに長くなってしまいました…反省です。
ちなみにゲノムのドラマCDは割りと面白いので、機会があれば聞くのもよいでしょう。
声優陣も豪華ですし。
そんなこんなで次回。
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