それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。
・♯.10『WAR GAME side:red』その2からの続きです。
先にそちらを読むことをお勧めします。
早朝、霧とも
普段なら小鳥達の囀りが響くこの時間だが、今聞こえる音はどれも騒がしい。
そして紅魔館の正面、全ての玄関口であるこの場所も例外ではなかった。
「ふう~、倒しても倒してもキリがないっスね」
突き出した握り拳の先、吹き飛ばされ黒い結晶となって崩れていく異形を見ながら、
彼女『
すると、白い闇の中から同様の異形が数体現れた。何度目なのだろう。
「早速おかわりっスか……この様子じゃあ、どこからか侵入されてるかもしれないっスね」
構えながら思う。主人やメイド達は大丈夫なのだろうかと。
しかし今は自分の役割を果たすしかない。
「とりあえずこの場は死守させてもらうっスよ!」
彼女は大地を蹴り、跳んだ。
――――――――――――――――――――――――――――
紅魔館の中央部、自室でレミリアは椅子にもたれ掛かっていた。
普段であれば、まだベッドで横になっているのだが今日は状況が違う。
先刻、いくつかの爆発音からそれは始まった。
襲撃。
これは間違いなく襲撃だ。
聞く限り敵は機械と怪物もどきの混成で数が多い。
非常に迷惑だと彼女は思う。
なんとなく予感はあった。しかし、想像よりも事態は深刻らしい。
「朝っぱらだというのにやれやれじゃ」
目覚めきらない頭に浮かぶのは昨日の出来事だ。
昨晩の夕食は無駄に騒がしかった。
あの音速なんたらとパックマンとかいう異邦人がフリーダム過ぎて。
とりあえず不快だったので、逆さ磔にして一晩放置してやったが……。
その際に何かが起きるということは知覚していた。
だがこうなるのは予想外だ。
「申し訳ござません。とりあえずお茶をお持ちしました」
目の前に置かれた湯呑みに口をつける。程よい熱さと強い渋みが広がった。
彼女はそれが眠気覚ましのようで心地よいと感じる。
「悪くない……ふむ、では聞こうか」
湯呑みを置き視線をメイドのに移す。
「はい。防衛メイド達は全て出しました。非戦闘要員は五番通路から脱出中です」
「ん。で、戦況はどうなんじゃ?」
「現在膠着状態が続いています。しかし敵の増援が続くようならば我々が不利かと」
報告を聞く限りこちら側が押されつつあるらしい。
まあそうだろうなと彼女は内心頷く。こちらの警備班には限りがある。
それに命の危険を感じた場合は即座に退避するように命令済みだ。
無駄に死なれても後味が悪い。
「ならばわしも出るとするか。最近運動などしておらんし、丁度いいじゃろう」
「そう言うと思っていました…ですがお待ちを。
お嬢様は戦力的にもですが、あくまで最終手段です。現状で出撃されるのまだ早いかと」
「ではしかたがない……なかなかに厄介じゃな、これは」
歯痒さを感じながらレミリアは天井を仰いだ。
――――――――――――――――――――――――――――
「予想以上に時間が掛かっている。所詮出来損ないのコピーということか」
白衣の男は手袋に包まれた指を軽く噛みながら苛立っていた。
当初の予定であれば既にサンプルを入手し、この場から離脱しているはずだった。
それがどうだろう。
投入したドローンとドーパントは未だにサンプルに接触すらできていない。
あちらを甘く見ていたという事もあるが、戦力、個々の戦力が不足している。
黒の巫女に助力を頼みたかったが、彼女とは現在連絡がとれない。
あの井坂という男も妖怪の山を襲撃中で当てにはならないだろう。
「……ヴェアヴォルフのような連中でもいればな」
「アイヤ~、なかなか困っているようネ、
呟きに答えるように声が聞こえた。
彼が振り向くと、青い髪の女が立っている。
女は白衣姿で瓶底眼鏡をかけており、左腕に『一日一膳』と書かれた腕章を着けていた。
「貴様か……何をしに来た?」
視線を合わすことなく、博士は言う。
すると女はわざとらしい身振り手振りで、
「お礼ヨ~お礼~。博士のくれた資料はとても研究の参考になったネ、
だから感謝の意味をこめてワタシのかわいい作品達を、なんと今から適当に参戦させてもらっちゃうんだヨ~!」
と言い放ち、大げさにサムズアップした。
「何だと?」
「そろそろ各所で始まるネ~。そういうわけでチャオ~」
彼が質問する間もなく女は一瞬で消えた。
●
「慣れない口調で演技するのは疲れますね。
それにしても本当に無愛想な殿方ですわ…可愛げも何もありません」
紅魔館から少し離れた林の中で、眼鏡を外しながら彼女は呟いた。
するとその傍らから声が聞こえる。
「可愛い毛?」
声の主は不思議そうな表情をしている。
それは一見すれば中華風の格好をしている少女なのだが、肌の血色は悪く、
額には不可思議な文字が書かれた札が貼られていた。
少女の様子を見て彼女『
「もうッ!芳香ちゃんはあっちと違って本当に可愛いんですから~!!」
ひとしきり少女を抱いた娘々は、一息入れて館に視線をやる。
「……さて、私達は離れて高みの見物と洒落こみましょう。
でも、どのくらい強いんでしょうね。あの館の住人達は?」
彼女の表情を見て、
「娘々楽しい?」
「もちろんですわ。こんなに楽しい暇潰しは滅多にありません。
あの人達が目覚めるまでまだ時間が掛かりそうですし、そこそこ遊んで待ちましょう」
満面の笑みで彼女は答えた。
――――――――――――――――――――――――――――
「むッ!新手っスか!」
正門で一人奮闘していた美鈴は、今までとは違う気配を感じた。
靄から新たに出てきた影は二つ。しかし先程までの相手とは明らかに別だ。
「額に札……キョンシーとは懐かしいっスね。しかも改造済みとは」
目の前の僵尸を見ていると過去を思い出しそうになるが、あの時戦った敵とは容姿が違いすぎた。
片方は巨躯で上半身が異様に肥大化しており、特に腕が丸太のように太い。
そしてもう一方はひどく痩せており、ボロボロの道袍を身に着けている。
二体の僵尸の目と口は縫い合わされ、額の札の上部も同じようになっていた。
「パワー重視に術式系……なかなかに面倒っス」
この組み合わせは苦手だと彼女は思う。
それにさらなる伏兵も控えているかもしれない。
状況的に厄介、本当に厄介だ。
とりあえずは相手の出方を窺い、防御優先で対応するしかないだろう。
そう考えていると後ろから何かを唱える声が聞こえた。
彼女が振り向こうとすると、
「はい、動かない。黒焦げになりたくはないでしょ?」
直後、後方から美鈴の両脇をすり抜けるように火球が通過する。
二体の僵尸は正確に飛んできたそれに対し、防御の体勢をとった。
刹那、火球は対象に接触し、炎が爆ぜる。
「だいぶ個性的な来客ね。混ぜてもらおうかしら」
囁くような声の主を観て門番は叫んだ。
「マジカルパチュリー!来てくれたんスか!」
「……不快な響きが聞こえたわ、帰る」
一瞬の間を置いて魔法使いは背中を向けた。
「ええ~!何がいけないというんスか!個人的にはベストなネーミングなのに!」
納得がいかないという声にパチュリー・ノーレッジは笑顔で答える。
「脳ミソ腐ってるんじゃないの?……まあいいわ、そっちの筋肉ダルマをお願いね。
こっちのシャーマンもどきは私が潰す……というわけで出番よ、緑のハンサムさん?」
呼ばれた名前に反応するように現れたのはメタリックグリーンのボディーだ。
彼はパチュリーの前に来ると、珍妙なジェスチャーを交え語りだした。
「おいおい。俺を野に放つなんて、満員電車にゴリラのつがいをぶちこむくらい危険だぜ?
デンジャーだぜ?そこいらの……」
「来てるわよ」
言われて振り向くと、道士型の僵尸が放った青い炎が直撃し、
妙な悲鳴を上げながらパクマンは派手に吹っ飛んだ。
「ぐわんばんッ!」
爆風の勢いで回転しながら急降下し、彼は頭から地面に落ちる。
そして数秒後、
「ウガー!!もう我慢ならん!君が泣くまで殴るのをやめないッ!!」
大気を震わせるような雄叫びと同時にパクマンは立ち上がった。
「あの目じゃ多分泣かないわね」
「知るか!
魔法使いと鋼の異邦人を横に見つつ、美鈴は自分の正面に立つ異形に叫んだ。
「さて!じゃあこっちも改めて行くっス!!」
戦闘は再開された。
――――――――――――――――――――――――――――
「なんでい!起きたら敵襲とか、昨日に続いてまったくアンラッキ~だな!
とりあえず朝ごはん!銀シャリ!トースト!もってこいや~!!」
「状況的に無理だよ。ウォルターは様子を見に出たし、他のメイドも非難してるんじゃないかな」
紅魔館地下で二人は話していた。
昨日は音速丸と彼の知人らしい『パクマン』が色々あり逆さ磔の刑にされて大変だったとフランは思い出す。
そして先程ウォルターに起こされて今の状態だ。
侵入者は妖怪でも人間でもないらしい。正直怖いと感じる。
ちなみに音速丸はいないよりましという事でウォルターが置いていった。
「ッく!腹が減っては戦はできぬというのに……よし、せっかくなので食料庫を漁りに行こうか」
「でも侵入者がうろついてるかもしれないよ?危ないし、よくない」
この場所からは自分が来るまで絶対に出ないようにと執事から言われている。
それに自分は不安定だ。まだまだ練習が足りない。
侵入者を撃退することは容易だろうが、誰かを巻き込むのは絶対に避けたいと彼女は思う。
自分の力は危険だ。
「そう深刻に考えるんじゃねえぜ。何かを得るためには、何かを失うってのが世の中の道理ってもんだ……というわけで、勇者フラン。さあ、冒険の書2を開くのです」
どうにもこの音速丸という人物は後先考えない性格らしい。
「どういう脈絡なの?
はあ~、しょうがないな、少しだけだよ。でも危なくなったらすぐ逃げるからね?」
溜息を吐きつつ、彼女は念を押すように言った。
すると彼は無駄に真剣な表情で答える。
「あいわかった。そういうわけでLet's Go !!」
「大丈夫かな……」
こうして二人は地下を出た。
――――――――――――――――――――――――――――
館の一階部分、窓際の廊下でウォルターは立ち止まっていた。
その周囲は硝子や木材が散乱し、壁や窓が壊れている。
彼の足元では機械の兵士がバラバラになり、黒い結晶に変わっている途中だ。
「やはり侵入されていましたか」
鋼線を仕舞いつつ、彼は考えていた。
フランを避難させるべきか、このまま地下で状況が変わるまで待機させるべきかと。
すると気配をと視線を感じた。それも知っている気配を。
「こんな場所で会うとは思わなかったぞ、執事」
聞こえた声には驚きが多分に含まれていた。
それは彼も同様だ。
「……博士、生きていたのか」
視線を移した先にいる人物は五体満足でそこに立っている。
記憶が正しければ自分が止めを刺したはずだ。
だがあの男は、ナチスの残党の科学者は確かに目の前にいる。
これは紛れもない現実だ。
「お互い色々と質問したい状況ではあるが、今日は別の用事があってな……
一度しか言わん、お前の雇い主はどこだ?」
投げかけられた言葉に執事は悟った。
ああ、この男は諦めていないのだと、あの狂気のままなのだと…。
ならば自分がとるべき行動は一つだろう。
「なるほど、そういう事ですか。
ならばこちらも一度しか言いません……今度は迷わずに地獄に落ちろ」
刹那、殺気と鋼線が正面に飛んだ。
そんなわけでまだ続きます。
個人的な問題で色々考えて書いているとペースが落ちまくりで困ります。
次は一週間以内で仕上げる予定なので気長にお待ち下さい。
では次回。