それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。
・♯.10『WAR GAME side:red』その3からの続きです。
先にそちらを読むことをお勧めします。
紅魔館の裏側、小さな通用口が一つだけあるこの場所では一進一退の攻防が続いていた。
「
叫んだのは小柄な身体に似合わない大きなリュックを背負った河童メイドだった。
彼女の前には土嚢が積み上げられ、そこから大型の機関銃が突き出ている。
「こっちもだ!補給の妖精はどうしたんだよ!無駄に三人組だったろ?」
「さっき倉庫に行ったようだから、そろそろ戻ってくるはずなんだがな…」
つられるように続く声の主達はエルフメイドで、手にはライフルやグレネードがあった。
「援護がなくなると正直つらいんだけどッ!!」
「新手が厄介やで!!」
侵入者と格闘中の鬼メイドと狼女メイドが吼えた。
彼女達が戦闘を開始してからどれくらいの時間が経過したのだろうか?
状況も敵の情報もよく分かっていない。
そしてメイド長からは身の危険を感じた段階で逃げるように指示されている。
しかし彼女達はまだ戦闘を続けられる状態だ。
だからこそ、どのタイミングで戦闘を切り上げるべきなのか判断が微妙になってしまう。
この場の誰もがそうだ。
「そろそろ逃げてもええんとちゃうか?」
両手に鉄製の爪を装備した狼女は、
「まあそんな気もするね」
最初に答えたのは機銃掃射中の河童だ。
それに続いてエルフ二人が頷く。
「死ぬまで戦えとは言われてねえしな」
「実弾も切れそうだ。十分だろう」
この場にいる全員の意見は同じようだ。
周囲の敵をまとめて蹴散らした鬼は棍棒を担いで言った。
「潮時だね。じゃあ決まりで…」
と、不意に通用口が勢いよく開いた。
「遅れました~!補給です~!」
「……大盛り増し増しです」
「いやー、さすがに重かった。でも、これで万事解決だね☆」
通用口から出てきた三妖精は肩から弾帯を下げ、両手のコンテナからは銃器が顔を覗かせていた。
それを見て場の全員がオイオイと手を横に振った。
鬼メイドは溜息を吐きながら棍棒を正面に向けて叫ぶ。
「戦闘続行―――――――――!!」
まだまだ攻防戦は終わらない。
――――――――――――――――――――――――――――
「相変わらずだ、執事」
紅魔館一階の廊下で彼等は対峙していた。
一人は痩躯の黒い執事。
一人は痩躯の白い科学者。
二人の周囲は破壊された壁や窓硝子が散乱している。その中でウォルターは疑問を得ていた。
……攻撃が弾かれた?
先刻、彼は目の前の敵に対して攻撃を仕掛けた。
武器である極細の鋼線は確かに放たれ、相手の身体を切断するはずだった。
だが手にきた感覚は失敗のそれだ。
何故だろう?
「しかし、あの時は痛かった。
何しろ大事な足と、大事な腕を切られて、大事な頭も潰されたのだから
……ああ、思い出すだけで嫌な汗が出てくる」
考える執事とは対照的に、
かつてのロンドン、『
そして彼は愉快そうにウォルターに視線をやった。
レンズを通して向けられるそれには、蔑みと憎しみが込められている。
「だから、だから今度は私がお前に味わわせてやろう。身体を切り刻まれる恐怖と、大切なモノを台無しにされる絶望をな」
直後に何かが来た。
二体の僵尸。
博士をガードするように左右から現れた異形は、二メートルを超える巨躯にもかからわず、音もなく流れるような動きで執事に立ちはだかる。
「残念ながら私では役不足だ。そいつらにお前の相手をしてもらう」
「博士!待て!」
「生憎だが時間がない。まあ楽しめ、出来損ないの失敗作」
言葉を残して博士は屋敷の奥に進んでいく。
ウォルターは歯を噛んだ。
「不味いな……」
目の前の敵はただ命令通り、機械的に彼の行く手を塞いでいる。
その数は二、どちらも同じ格好であり外見上の違いは特に見当たらない。
腕を前に突き出した状態で立っているそれらは、次の瞬間同時に執事をめがけて跳ぶ。
……面倒だ。
内心そう思いつつ、彼はそれに対応する動きを作った。
まずは回避、そして後退しながら狙うのは二体の頭だ。
敵についての情報はほぼないが、グールや大抵の化け物同様に首から上を破壊すれば活動を停止させることが可能だと彼は判断する。
また全身を拘束、切断することも考えたが、先程の攻撃が防がれた事を考えここはピンポイントで攻めるべきだろう。
「いけッ!!」
ミスリルの鋼線が飛んだ。
●
「素晴らしいですわ、あの方」
少しぼやけた映像を見ながら青娥は呟いた。
彼女の周囲には幾つかの巻物が開いて浮いており、そこには紅魔館の各場所が写っている。
「惚れちゃう?」
言われて、彼女は顔に手を当てわざとらしく恥ずかしがった。
「もう!芳香ちゃんてばおませさん!……でも素敵な殿方ですわ。
他のお手伝いさん達もそうですけれど、ここの人々はきっといい素材になりますわね」
巻物に映し出される執事やメイドの動きを見て彼女は心からそう思った。
「とは言え、あの子達だってすごいんですのよ。
元はそこそこ名の通った殺し屋の兄弟達でしたし…彼等を捕まえるのには苦労しましたわ」
「ん~大変だった…」
しみじみと芳香は何かを思い出している。
そんな僵尸の少女の様子を微笑ましいと思いつつ、邪仙は視線を戻した。
「さて、ここからがお楽しみですわ」
●
まずは一撃とウォルターは思った。
敵の眼前に迫った鋼線は目標に巻き付き、鋭利な糸で肉を裂くはずだ。
「!?」
だが予想は外れた。
鋼線は対象に届く寸前で何かに弾かれてしまう。
そして彼が見れば、奇怪なことに敵の胴の左右から別の腕が出現している。
「それが手品の種明かしか」
敵の隠し腕には、大振りの青龍刀と方天戟がいつの間にか握られていた。
おそらく服の下に隠していたのだろう。
先程の攻撃もこれで防がれていたのなら納得だと執事は考える。
「いきます」
再び鋼線が飛ぶ。
狙いは胴体、今度こそ相手は真っ二つになるはずだ。
しかし結果は少し違う。
彼の目の前で確かに敵は胴体から二つに分かれた。
だがそれは対象に攻撃が届く刹那、突然に。
「四体!?」
敵は二体ではなく四体だった。
二人が重なり巨大に見えていただけで、実際の身長は1m30cm程度である。
しかもそれらは不安定な重なった状態でこちらの攻撃を受け流していた。
強敵だと彼は確信する。
そして同時に自身の状態も認識した。
「……どうやら本格的に勘が鈍っているようですな」
幻想郷に飛ばされてきてから既に三年。
言い訳にしかならないが、思えば平和すぎた。
心地よくて忘れていたと思う、己が本来居た場所を。
「ッく、少し不味い」
一瞬で四方を囲まれる。
「まったく困った。アレしかないな」
直後、四方からの刃が彼を貫いた。
――――――――――――――――――――――――――――
「ちッ!倒しても倒しても復活するなんざチートだろうがぁ!!」
厨房を目指して進んでいたフランと音速丸は襲撃者と遭遇し戦闘中だ。
だが、いくら攻撃し倒しても相手はすぐに起き上がってくる。
「音速丸、そんなに無茶したら危ないよ。ここは僕が…」
「しょうがねえ、あれを使うか。フラン!下がってろ!」
前に出ようとする彼女を無視して音速丸は気合の入った叫びを上げた。
「ぬうッ!はあぁ―――――――――――ッ!!!」
すると、彼は黄色い煙と共に爆発した。
「お、音速丸?」
直後そこに立っていたのは、筋骨隆々の黄色いマッチョと化した音速丸だ。
「少しばかり疲れるが…いくぞ!!」
勢いよく飛び出した彼は、僵尸をフライングクロスチョップで倒すと、
その両足を掴んで股間に激しい蹴りをいれる。
「オラオラオラ!電気アンマ!!」
さらに周囲に立つ僵尸に背を向けて尻から突っ込む。
「キュートなヒップでくたばれいッ!」
ひたすらに彼は暴れまわる。
「音速丸!」
「何!?」
フランの声に振り向いた直後、音速丸に倒れていた周囲の僵尸が一斉に飛び掛った。
「くそ!動けねえ~!!重い~!!ぐえ~!」
多くの死人に圧し掛かられ、首領はたまらず叫ぶ。
すると筋肉ダルマだった身体が縮み、元の球体へと戻った。
そして足音が近づいてきた。
「おはよう、
廊下の奥から異形達を引き連れ現れた男は軽く会釈して少女を見た。
「あなたは…」
「ようやく見つけた。少し協力して貰いたいのだがいいかな?」
猫なで声で囁く男を凝視したフランは首を横に振り、毅然とした態度で否定の言葉を告げる。
「僕は悪い人には力を貸せないよ。それにあなたは怖い人だ」
その答えを聞いた彼は、表情を変えることなく右手を軽く上げた。
「それは残念……まあ、いい。貴重なサンプルだ、丁重にお連れしろ」
手と同時に博士の脇に控えていた異形達が動き出す。
「オイ!どこの誰だか知らねぇが、フランに手を出したらた…ぶるぅわぁ~!!」
多くの僵尸に押し潰されながらも、音速丸は無理矢理立ち上がろうともがく。
「ふむ、先程からうるさいゴミだ。さっさと処理しろ」
不満そうに博士は呟くと手を下げた。
「だ、駄目!!!」
フランが飛び出そうとした瞬間、大きな破砕音が響いた。
砕け散ったのは窓。
そして目に入ってきたのは真っ赤な赤の色。
「ふう、さすがに痛ぇな。おう、邪魔するぜ!!」
赤とオレンジのマントがはためき、
立ち上がった影は黄色い球体に群がる異形を手にある刃で切り裂いた。
「へ、思ったよりも元気そうじゃねぇか、音速丸」
その男は軽い調子で地面に転がる音速丸に視線を向ける。
「ぬぅ~!」
唸る音速丸を無視して博士は言った。
「貴様は?」
問われた彼は、腕を突き上げ人差しで天を指した。
「聞かれたからには答えなくちゃな。
螺旋の
何の因果か人助け!ただいま団員募集中!
幻想グレン団リーダーカミナたぁ、俺の事だ!!」
上へと向けられた指先を博士に向け直し、螺旋の勇者は叫んだ。
「やい!変てこメガネ!こっからは
そんなわけで一週間どころか二ヶ月ぶりになりました。
なんというか口ではどうとでも言えるので何も言わないことにします。
エタりかけてすいません。
ということで次回。