それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。
・♯.10 『WAR GAME side:red』 その4からの続きです。
先にそちらを読むことをお勧めします。
紅魔館裏側での攻防は突然の援軍により終わった。
人外メイド達と三妖精は通用口の手前に築かれた土嚢に寄り掛かっている。
彼女達の表情は戦闘の疲労からか一様に暗い。
「しかしまあとんでもないのが来たね、有難いけど」
「というか勝手に入れてもよかったのか?あの怪しい連中共」
「事態が事態やしケースバイケースやで、今回は」
「何はともあれ任務達成だ」
それぞれが下を向く中、河童メイドだけは顔を上げていた。
「それにしてもどこからあんなものを持ってきたんでしょう?」
彼女の視線の先に立つのは、無骨な緑のシルエットだ。
4mほどのそれは人型をしており、その頭部、
目にあたる部分はカメラのレンズのようになっている。
鉄の騎兵は銃器を構え、周囲を警戒するように頭部のターレットレンズを回転させた。
『……敵増援等、現在異常なし』
狭いコクピット内で弐式は無表情にレバーを操作していた。
今回の任務は敵の殲滅と紅魔館住人の救援だ。
この作戦には異邦人達も参加しており、自分の役割はそのサポートがメインとなっている。
〈参式で御座る、そちらの状況はどうで御座るか?
あ、ちなみにこちらは絶賛苦戦中で正直きついで御座るよ〉
計器盤上部に貼り付けてある札から聞こえてきたのは、
分身であり兄弟でもある彼女からの通信だった。
彼女も自分と同じく異邦人のサポート任務に就いており、
あちらのグループは妖怪の山の担当だ。
『こちらは戦力的に問題なし。短時間で状況は終了可能。応援は必要ですか?』
〈いや、現地の助っ人が大勢いるので多分大丈夫で御座る。
まあ、不味いときは即座に連絡するで御座るが…〉
『あまり無理はしないように。マスターが心配します』
〈ははは、主は過保護で御座るからな……では後ほど〉
そこで通信は終了した。
この任務を済ませたら、一応あちらの応援に行くべきだろうと考えつつ、
彼女は周囲の警戒を続ける。
――――――――――――――――――――――――――――
砕けた硝子と窓枠が散らばる廊下でリーダーと狂科学者は対峙していた。
「カミナだったか…暑苦しい男だな。貴様も私の邪魔をしたいらしい」
博士の押し殺した声など気にせずカミナは答える。
それが当然だというように。
「応よ」
その態度に、博士は指を噛みつつ、吐き捨てるように言葉を続けた。
「ふん、だがそんな刃物ではそいつ等は倒せんぞ?サムライギャング」
切られた程度では僵尸は無傷も同然だ。
死と呪術により硬化した肉体を破壊するのは容易ではない。
「どうだかな。そいつらを見てみろよ」
「何?」
見れば、突入と同時に斬撃を受けた僵尸の様子がおかしい。
全身を小刻みに震わせ起き上がれないでいる。
さらによく見れば、刀で切られた部分と額に張られた札から煙が上がり、
そこから身体が崩れ始めていた。
「目には目を歯には歯を…で、『外道には外道の技を』だそうだぜ。
どっかの偉い住職とかいうのが色々協力してくれたらしいが、俺はよく知らねぇ」
紅魔館へ突入する直前、弐式はカミナと忍者学園生徒達にある物を配っていた。
それは、〝とある寺の住職〟により清められた水と武装であり、
これらを使われた僵尸は強制的に
だが、カミナを含め大多数の者が説明を理解しておらず、最終的に弐式は、
『…とりあえずこれで敵は死にます』
と言ってそれらを配った。その様子はどこか投げやり気味だった気がする。
そんな事を思い出しつつ、カミナは刀の切っ先を狂科学者に向けた。
「降参しな。俺の仲間もそいつらを倒せる武器を持ってる。今頃はほとんど全滅してるはずだぜ。
あんたの負けだ」
「この程度で……ぐあぁぁぁーッ!?」
刹那、一瞬の輝きが走り、悲鳴と同時に博士の左腕が地面に落ちた。
痛みのあまり彼は膝を着き、切断された部分を確かめるように押さえる。
「外したか。クソッタレ」
直後に廊下に響いたのは高い声だった。
声の方向を見れば、煙草をくわえた執事姿の少年が立っている。
それを見て最初に反応したのはフランだ。
彼女は少年を見て思い出す、三年前の出来事を。
「あなたは……ウォルター?」
「はい、お嬢様。私は私です」
フランに答え、少年は視線を地面に跪く白衣に向けた。
「なかなか楽しかったよ、博士。おかげで目が覚めた」
その言葉に返すように、脂汗を滲ませた狂科学者の憎悪の叫びが響く。
「ウ、ウォルター……ウォルター・C・ドルネーズ!!!!」
――――――――――――――――――――――――――――
紅魔館正面、門での戦闘は続いていた。
「アトミックバーナー!」
自称『
激しい火炎が噴出し、対象を包み込む。
焼かれつつある僵尸は炎を払おうともがいた。
「よしッ!とどめだ!ブサイクスレイヤー!!」
叫んだパクマンが取り出したのは何の変哲もない布団叩き。
彼はそれを空に向かって意味もなく掲げると、勢いよく改造型僵尸に飛び掛った。
「イイイヤアーッ!」
両手で布団叩きの柄を握り締め、力いっぱいに振り下ろす。
「イヤーッ!」
さらに連続して攻撃を叩き込む。
「イヤーッ!」
ブサイクスレイヤーが風を切り、その度に打撃音が響いていく。
「イイイイイヤアアアーッ!」
渾身の一撃を受け、燃える改造型僵尸が吹き飛び、
同時に役目を終えたように布団叩きが砕け散った。
「Good luck―――――――――ッ!!」
勝利の雄叫びが響く後ろでは、門番ともう一体の改造型僵尸が睨みあっている。
「向こうは終わりのようっスね……じゃあこっちもギアを上げるっスよ!」
言って美鈴は大きく深呼吸し、構えを変えた。
その直後、彼女の姿が消え、いきなり僵尸の身体が後方へと飛ばされる。
「!?」
巨躯の改造型僵尸は、自身の状況を把握できないでいた。
気がつけば宙を舞っている。
しかも敵は見えず、今この瞬間もあらゆる角度から攻撃を受け続けている。
「おおおおおおおお!!」
唯一敵の声だけが聞こえた。しかしそれだけで動けない。
ただ無理矢理にダンスをさせられているような状態だ。
身体を支えることすら出来ない。
「マジカルパチュリー!あとはよろしくっス!!」
刹那、とどめのような重い蹴りが僵尸に刺さった。
きりもみしながら落ちる先には炎に包まれた僵尸がもがいている。
「……次にその名前で呼んだら、咲夜に頼んで一食抜いてもらうから憶えときなさい」
門番に舌打ちした魔法使いは、手に持った古びたバインダーを開くと、
そこから一枚の赤いカードを取り出した。
「残念だけど、今は機嫌が悪いから塵も残さないわ」
言って彼女はぼそぼそと小声で呪文をつぶやく。
すると僵尸達の足元が輝き、直径2mほどの円が数秒現れ消えた。
「……はい、終わり。さて、レミィのところに行くわよ」
結果を確かめもせず魔法使いは歩き出す。
直後、その後ろで巨大な火柱が上がった。
彼女の背中を照らす炎の中で、二体の改造型僵尸の身体が崩れていく。
それを見たパクマンは大きく笑い、魔法使いと門番を見る。
「さ~て、次も俺がどんどんやっちまうぜ。おっと惚れるなよ?俺はこれでもエル…」
しかし何かを言いかけていた彼は、文字通りその場からいきなり消えてしまう。
美鈴は驚き、慌てて隣のパチュリーに抱きついた。
「ぬあッ!なんスかッ?いきなり緑のハンサムが消えたっスよ?神隠しっスか?
新手のスタンド使いっスか?」
「苦しいんだけど……これはただのマグネタイト切れよ。
召喚の触媒に使ったのがなくなったのね」
美鈴を振り払いつつ、彼女は淡々と述べた。
「あの方は悪魔の類だったんスか?」
なんともいえない表情の門番の横でパチュリーは嫌そうに言葉を続ける。
「さあ?でもなんだか嫌な予感がするのよね……なんとなく」
「?」
「パチュリー様~」
そこに駆け寄ってくるきたのは赤い髪の少女だ。
彼女の頭と背中には小さな羽根があった。
「あら、小悪魔八号」
「図書館の閉鎖は完了しました。リストの本も搬出済みです」
「ご苦労様。あとは皆に合流しなさい」
「はい」
小悪魔はパチュリーに頭を軽く下げ屋敷へ走った。
「閉鎖ってどういうことっスか?」
「あなたはレミィから何も聞かされないのね」
「何の話かまったく分からないっス」
「まあいいわ。どうせあと少ししたら分かるでしょうし……あなたも来なさい」
魔法使いは急ぎ足で屋敷の中へと急ぐ。
その後ろを疑問符を頭に浮かべた門番が追う。
後に残ったのはいつもの朝、いつもの風景。
しかし、小鳥の囀りも穏やかな風もなく、何かを暗示するようにただ不気味に静かだ。
――――――――――――――――――――――――――――
「貴様!その姿は…!?」
切断された左腕を押さえながら、博士は目の前に立つ少年を凝視した。
呼び起こされる記憶は二つ。
1944年のポーランド、ワルシャワ。
そして2000年、ロンドン、デクス・ウキス・マキーネ。
どちらも鮮明に憶えている。
「あんたなら知ってるだろ?吸血鬼にとって姿形なんて至極無意味なものだと
……まあ、僕の場合は少し事情が変わるけどね」
そう言って少年は煙を吐いた。
博士はうつむき、しばらく黙っていたが、
「どうやら詰みらしい。非常に不愉快だ」
顔を上げ静かに囁いた。
その態度の変化に警戒を抱きつつ執事は聞く。
「ならどうする?」
「こうするまでだ。貴様等に特別なプレゼントをくれてやろう。
悪いがここで終わるわけにはいかない。
……私には使命がある、何よりも優先され何よりも成し遂げなくてはいけない使命がな。
奇跡の様な科学を!!科学の様な奇跡を!!いつの日にか必ず!!!」
叫んだ博士は右手を白衣のポケットに突っ込むと、何かを取り出し押した。
『バイオレンス!』
響く音声はガイアメモリ特有のものであり、次の瞬間、そこにドーパントが出現していた。
「実地試験になるが問題あるまい。まあ結果を見れないのが残念ではあるが…」
直後、博士はまた何かをポケットから取り出し操作する。
それはリモコンであり、いくつものボタンが並んでいた。
「次こそはそちらの
言葉と同時、博士の足元に〝博麗の巫女〟と同様の魔方陣が現れ、一瞬で彼の姿は消えてしまう。
「チッ!逃げやがったか!だが、あとはこいつを片付ければ…って、おい!?」
カミナの視線の先、残されたバイオレンスドーパントの全身が突然怪しく蠢いた。
そして、鋼のような筋肉を破るような勢いで身体が急速に膨張していく。
「音速丸!お嬢様と逃げろ!!」
執事は叫んでいた。
こういう場合は雰囲気で分かる。何か不味い事になりそうだと。
「お、おう!とりあえず死ぬなよ!」
音速丸は再びマッチョ化すると、フランをお姫様だっこした。
「ウォルター!!」
「フラン、心配無用です。また後ほど」
求めるように伸ばされた手を一瞬だけ強く握り、執事は倒すべき敵の方を見る。
「さあ、行くのです!」
強い言葉と同時に黄色いマッチョは走り出す。
次第に遠ざかっていく足音を背にしつつ、ウォルターは大きく煙を吐いてから煙草を消した。
というわけで半年も経ちました。言い訳無用でエタってましたね。
いろいろあったと言えばあったのですが自分の都合なんで反省です。
そんなわけで再開します。では次回。