Seven Fantasia 異聞東方戦記   作:丁・丁

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※この小説は二次創作やクロスが多分に含まれています。
 それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。

・♯.10 『WAR GAME side:red』 その5からの続きです。
 先にそちらを読むことをお勧めします。



♯.10 『WAR GAME side:red』 その6

 紅魔館二階窓側通路。

 普段であればメイドしか通らないこの場所で、今、厄介が起こりつつあった。

 

「ふぅ……どうしたものか」

 

 ウォルターの視線の先、

 博士(ドク)が逃走する間際に放ったバイオレンス・ドーパントの巨大化が止まらない。

 既に人の形を失い、白に赤が混じった肉塊となったそれは、

 周囲を破壊しながらさらに体積を拡大させていく。

 

「よお!加勢するぜ」

 

 執事の隣に立ったリーダーは抜き身の刃を構える。

 

「お嬢様と音速丸を助けてくれた人か…とりあえず感謝する。で、何か考えはあるのかい?」

 

「応よッ!仲間がこういうのにおあつらえ向きのすげぇのに乗ってやがる。

 弐式、やっちまえ!!」

 

 ズボンから取り出した通信用の札にカミナが叫ぶ。

 すると、外から拡声器を通したような少女の声が聞こえてきた。

 

『…了解、二人とも至急そこから下がってください』

 

 弐式の声と同時に機関砲の掃射音が響く。

 二人は急ぎ後方へと走った。

 

「早えぇ!もうちょい待ちやがれ!」

 

「ちょっと蜂の巣はカンベンしてほしいな」

 

 直後、肉塊がある場所に銃弾の雨が降り注いだ。

 外壁は破壊され、周囲に瓦礫と埃が舞い上がる。

 

『…敵は依然として健在、ダメージを効果的に与えられなかったようです』

 

 彼女は各種計器から送られてくる情報からそう判断した。

 弾は確かに全弾命中している。

 だが、強靭な筋肉により全てが弾かれてしまっていた。

 

「畜生!駄目か!」

 

「しかし、どこまで大きくなる?」

 

 二人の眼前、肉塊の膨張はさらに進み、遂には屋敷全体が揺れはじめた。

 外から状況を確認した弐式は、計器盤上部に張られた通信用札に呼びかける。

 

『…敵質量さらに増大。緊急事態です、全員速やかに屋敷の外へ避難して下さい』

 

 通信が送られた刹那、

 屋敷の窓や壊れた部分から、カミナと共に救援に来た忍者学園の生徒達が次々と飛び出す。

 彼等の手には、対僵尸(きょうし)用に清められた様々な武器が握られていた。

 

「お助け~!!」

「音速丸さん結局いないじゃん!」

「とりあえずメイド服は確保してきたよ」

「でかした!!」

 

 カミナとウォルターも壊れた窓から外へと脱出する。

 すると二人が降りた場所に忍者達が駆け寄ってきた。

 

「押忍ッ!」

「となりの人は誰です?」

「兄貴!!」

「大丈夫っすか?」

 

 わいわいと騒ぐ彼等を遮るように弐式の声が再び響く。

 その声には微かな緊張が感じられた。

 

『敵質量の増大が止まりました。

 おそらく何らかのアクションを起こすはずなので十分に注意して下さい』

 

 刹那、紅魔館の三分の一が崩れ、筋肉の繭が破裂した。

 

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「さ~て、そろそろ退散しましょうか。もう用もなくなったことですし」

 

 屋敷から離れた森の中、邪仙は広げていた巻物を閉じる。

 

「帰るの?」

 

 芳香に問われた彼女は溜息を吐き、わざとらしく顔に手を当てた。

 

「ええ、今回はもう得るものがありませんわ。

 せっかくかわいい作品達を貸し出したというのに、以外に使えない殿方で残念でしたね」

 

「期待はずれ?やくたたず?」

 

「そんな言い方をしてはいけませんよ、芳香ちゃん。

 まあ実際、能無しの腐れ蛆虫でしたけど……」

 

 目を細め一瞬だけ冷めた表情をした青娥は、すぐに笑顔を作り直し芳香を見た。

 

「さあ帰りましょう。チャンスはこれからもきっとありますわ♪」

 

「かゆうま~」

 

 ふらふらと歩き出す僵尸の少女の後を邪仙がゆっくりと追い、

 二人の影はやがて霧の中へと消えた。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

「でかいな…ガンメンみてぇだぜ」

 

 繭のような肉塊から現れたのは20mはある四本腕の巨大な怪物だった。

 かろうじて人型を保っているそれの全身ははち切れそうな筋肉で覆われ、

 身体のあちこちから金属板のようなものが突き出している。

 

「何か思い出に浸ってるようだけど、どうするのさ」

 

 半壊した屋敷を背に巨人が咆哮を上げた。

 それを見上げたカミナは、刀を振り上げ大声で叫ぶ。

 

「決まってるじゃねぇか!男は当って砕けろだッ!行くぜ野郎共!!」

 

『『オオー!!!』』

 

 答えるように数名の忍者達も手にある得物を頭上に掲げた。

 彼等の行動を見て、残りの学生達と執事はオイオイと手を振る。

 

「…馬鹿じゃないのか?」

 

『……その通り、却下です。状況をよく見て発言して下さい』

 

「じゃあどうしろってんだ?」

 

『こうれば専門家である鳴海荘吉様を呼ぶしかありません。

 その間の時間稼ぎをお願いします』

 

「…あのさ、内容的に変わっていないと思うよ」

 

「ええ~!結局、ワンダと巨像をリアルにやれと!?」

「…せめて相手が大美人ならな」

「俺、憧れてたんだ…科学特捜隊!!ワンダバ!!」

「こんな時、改造ジャージを着たアニメ監督がいれば…」

 

 式神の無茶振りに忍者達が騒ぐ中、高い笑い声がした。

 

「くくく、愉快、愉快。なかなか愉快でおめでたい連中じゃのぅ。それに無鉄砲極まりない」

 

「誰だ?」

 

 カミナに答えた声の主は少女の形をしている。

 

「ここの主人よ。

 ん?おお、ウォルター。その姿だいぶ苦戦したようじゃな。

 まあリハビリになったようで何より」

 

「お嬢様、どうしてここに?それにそのお姿……」

 

 レミリアの格好は普段と違っていた。

 いつもであれば愛用のドレス姿である彼女は今、白と黒の装甲服に身を包んでいる。

 

「なーに、試着も兼ねて最後くらいは顔を出しておこうと思ってのぅ。

 ……しかしひどい有様じゃ、当然罰を与えねば」

 

 辺りを見回したレミリアは正面に手をかざした。

 すると地面に赤い魔方陣が出現し、その中央から棺のような黒いコンテナが出現する。

 

「この衣装共々戯れに河童に作らせた特注品でな」

 

 直後、黒い長方形のコンテナが開き、中に収納されていたモノがせり出した。

 吸血鬼が取り出し手に持ったそれは、装甲に覆われた真紅の槍だ。

 

「『グングニル』、こいつは痛いぞ?まあそう感じた頃にはあの世行きじゃがな」

 

 軽く槍を振りったレミリアは、館にめり込んでいるバイオレンス・ドーパントに視線をやり、

 執事に聞いた。

 

「これだけ手酷くやられたなら、もう少し壊れてもいいじゃろ、ウォルター?」

 

「どの程度か分かりませんが、ここはお嬢様の屋敷で御座います。お好きなように」

 

 答えを聞いた主は、軽く喉を鳴らすと宙に舞った。

 

「ならばよし」

 

 暴れるバイオレンス・ドーパントを正面に見据えたレミリアはグングニルを両手で構える。

 

「全員下がっておれ、少々荒っぽいぞ!」

 

 その言葉に場の全員が後方へと移動を始める。

 

安全装置(セーフティ)限定解除、グングニル第3形態

 ……耐え切ったら許してやるぞ、木偶の坊?」

 

 持ち主の声に反応した槍は形状を大きく変えた。

 各部の装甲が移動し、先端部の刃がむき出しとなる。

 そしてその部分から紅い光が迸り、巨大な刃を形成された。

 

「でっけぇ!!」

 

『凄まじいエネルギーです。近づいたら消し炭になります』

 

「終わりだな」

 

 それぞれの感想を背に聞きながら吸血鬼は飛ぶ。

 

「一刀両断じゃ!!」

 

 一瞬でレミリアは加速し、対象の真上から刃を振り上げダイブする。

 バイオレンス・ドーパントはそれを防ごうと全身を丸めた防御体勢を取った。

 そして紅の刃が鋼の筋肉と激突。

 

「ふん、無駄ァ―――――――――!!!」

 

 鋼の球体を巨大な刃がまるでバターのように紅魔館ごと切り裂いていく。

 それと同時に凄まじい断末魔が霧の湖に響いた。

 

「…もう終わりか、以外に脆かったのぅ」

 

 地上に降りた吸血鬼は文字通り真っ二つになったバイオレンス・ドーパントを見る。

 すると直後にその巨体は黒い結晶に変わり砕け散った。

 

「さて仕舞いじゃ。少ししか動いておらんが疲れたのぅ~」

 

 格納形態に戻ったグングニルをコンテナに戻したレミリアはだるそうに背伸びをする。

 

「お疲れ様でした。これから人里に?」

 

「うむ。皆も向かっとる頃じゃろうしな……が、その前にそいつらに話を聞きたい」

 

 鋭い視線が異邦人達に刺さった。

 

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「……以上です。詳細は後日」

 

 弐式はこれまでの経緯と現在の状況を手短に説明した。

 

「なるほど、大方の流れは分かった。

 どうやら退屈せずにしばらくは過ごせそうじゃのぅ」

 

 納得した様子のレミリアを見て、胡坐で座っていたカミナが立った。

 

「おし!説明も終わったし、行くか、弐式。

 おう!お前等はここのボスと音速丸の所に行ってくれ」

 

 向けられた言葉に、忍者学園生徒達の一部が騒ぐ。

 

「我々置いてけぼりですか?」

「弐式ちゃんは俺が守る!」

「はあ~!?俺だし~!!」

「兄貴!捨てないでくれ~!!」

 

 それに対してカミナは、言い聞かせるように忍者達に言った。

 

「この状況じゃ人里がまた襲われるかもしれねぇ。それに大人数じゃ動きづらい。

 だから先に行って待っててくれ」

 

 その言葉に彼等は静かに頷く。

 そしてリーダーは紅魔館の二人を見た。

 

「まあそういうわけだ!じゃあな、レミリア、ウォルター!」

 

 背を向け走り出そうとした彼のマントが掴まれた。

 

「待たんか、火の玉小僧」

 

「ん?」

 

 後ろを振り返ればレミリアがマントの端を掴んでいる。

 彼女は咳払いをするとウォルターを指差した。

 

「うちの執事を貸し出す。役に立つぞ」

 

「お嬢様!?」

 

 雇い主の言葉に執事は何かを言おうとしたが、それより早くレミリアの言葉が続く。

 

「世話になった礼じゃ。ついでにもう少しリハビリしてこい。

 その姿のままでは何かと不自由じゃろう。不服か?」

 

「…仰せの通りに」

 

 命令では仕方ないというように執事は頭を下げた。

 

「じゃあ行こうぜ。覚悟と妖夢が待ってる!」

 

 そして、カミナとウォルターを乗せた装甲騎兵は高速で霧の向こうへと走り去っていく。

 見送るように微笑む紅魔館の主と数多くの忍者達を残して……。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 紅魔館襲撃と時を同じくして妖怪の山にも魔の手が迫る

 

 次回、『WAR GAME side:blue』

 




というわけでようやく『side:red』が終わりました。次回からは妖怪の山に舞台は移ります。
なんやかんやで投稿が遅くなってしまいました。未熟ですね。
そんなわけで次回。
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