それらが苦手な方やそれぞれの作品のイメージを大事にしたい方にはあまりお勧め出来ません。
・♯.11 『WAR GAME side:blue』その2からの続きです。
先にそちらを読むことをお勧めします。
「くらえ!電撃剣・
刃が振り下ろされると同時、稲妻が落ちたような衝撃と閃光が走る。
椛の渾身の一撃が放たれたのだ。
その威力は凄まじく、周囲の地面が抉られ宙に舞う。
「ひえ~、すごい威力なんだよ!」
間近で起こった力の爆発にはたてはただ驚く。
「何を暢気なことを言ってるんですか。こっちです」
椛に手を引かれ、はたては駆け出した。
一瞬だけ振り返れば、滅茶苦茶な地面と起き上がろうとしている異形達が視界に入る。
「今のうちに行きますよ」
「う、うん」
――――――――――――――――――――――――――――
二人の天狗はしばらく走ったが、周囲の景色は変わらず緑色のままだ。
さすがに疲れてきたのか、はたては辛そうに聞いた。
「ねえ、どこまで行くの?」
「とりあえずは安全な場所の入り口までです。
あなたが一緒ではまともに戦えませんから」
ストレートな言葉。
はたては心臓を矢で射抜かれたような感覚を覚えた。
「ま、まあ確かに非戦闘系記者の私がいると大変だと思うけど、
もっとオブラートに包んでほしいな~」
「申し訳ありません。自分はそういった気遣いが苦手なもので」
悪気がないのは知っている。だから余計にタチが悪い。
「着きました。ここからは一人で行ってください」
「へ?ここ?」
椛が足を止めた場所は先程から続く風景と何の代わり映えしない場所だった。
違いがあるとすれば、大きな岩が幾つか並んでいるくらいだろう。
「新手のジョーク?」
引きつった顔で作り笑いをしたはたてとは対照的に、
椛は真剣な表情のままで岩の一つに近づいていく。
「生憎ですが、それほどの余裕は持ち合わせてはいません。
それにここも正式な入り口ではないので、出来れば使いたくはありませんでした」
岩の一部を彼女が触ると、岩の表面が開き操作パネルが現れる。
そして幾つかのボタンを操作すると、他の岩よりも大きなものが動いた。
見ればその下に、ダクトのような穴が口を大きく開けている。
「河童の抜け道の一つです。
おそらく地下のどこかには繋がっているはず……早く入って下さい」
しかしはたては動かない。ただ怯えたような表情で椛を見ている。
「どうしたんですか?無駄な時間はありませんよ」
「…お、怒ってる?」
言われた椛は視線を目の前の少女にやった。
その顔はどことなく苛立っているようにも見える。
「ある意味そうです。
この際だからはっきり言わせてもらいますが、
あなたの悪いところはすぐに他人の顔色を窺って勝手に思い込み、
そして状況や周囲が見えなくなることです」
言葉の後、彼女は左手に持っていた盾から剣を引き抜いた。
「ひ~!!ごめんなさい!ごめんなさい!ご~め~ん~な~さ~い!!」
「まったく言っているそばから……」
直後、周囲から機械の駆動音が響き、天狗の少女ははっとして周りを見渡す。
気がつけばドローンや機械化兵達に囲まれていた。
「うわ~ん!やっぱり私は外での取材とかは向いてないんだよ~!
薄暗いところで篭って二番煎じの記事でも書いてるのがお似合いなんだ~!!」
泣き叫び自暴自棄になりかけているはたての様子に、
椛は大きな溜息を一つ吐き、それから諭すように言った。
「……色々とあれですが、自分を卑下しすぎるのもあなたの欠点ですね。
もっと自分に自信をもって生きたらどうなんですか。
きっとあなたにしか出来ない事があるはずですよ……とりあえず今は御免!!」
「う、うん?落ちる~!?」
はたてとその叫びは地下に飲まれて遠ざかっていく。
椛はすぐに入り口を閉じ、岩に偽装された開閉スイッチを破壊した。
「これでいい……さて、ここからは全力でいかせてもらうぞ!」
刃の切っ先を異形に向け彼女は身構える。
だが、張り詰めた空気を壊すように穏やかな声がした。
「いやはや、意外と怖い顔をするものですね。
はじめまして妖怪のお嬢さん」
そこの立っていたのは一体の怪物、
ウェザー・ドーパント『井坂深紅郎』であった。
「貴様は?」
問われた白い異形は、両手を広げて、仰々しく目の前の少女に告げる。
「そうですね……あえていうならば、あなたに更なる力を与える者といったところでしょうか」
――――――――――――――――――――――――――――
「よし!これでロックは完璧!誰も侵入できないよ!……まあ、あたしもだけどね」
硬く閉ざされた大型リフトの地上搬入口を見て、河童の少女は一息ついた。
――どうしたもんかな…
にとりは考える。
先程、山の各地に設置されている監視カメラを見たがどの場所も混乱していた。
通信も滅茶苦茶でまともな情報は入ってこない。
とりあえず断片的に分かっているのは敵の、
『博麗の巫女』の刺客が妖怪の山を襲撃してきているという事だけだ。
――まあ、こそこそ行くしかないか
この状況ではオプティカル・カモフラージュで姿を隠しながら行動し、
様子を見るしかないだろう。
そう考えていると、いきなり肩をたたかれた。
「やあ、にとり殿。どうもで御座る」
慌てて横を向くと、白い忍者装束の少女が視界に入る。
「びっくりしたなー、参ちゃんか」
にとりの言葉に参式は首を傾げた。
「ところで参ちゃんとは?」
「参式だから参ちゃん。深い意味はないよ。
なんていうか、そのほうが名前らしくていいかなって」
すると数秒の沈黙の後、参式は嬉しそうに微笑んだ。
「自分に名前などもったいないで御座るな…それはそうと偵察で御座るか?」
「うん、現状を把握しないとね。そっちは?」
「同じで御座るよ。
監視用『式』からの情報では色々と不足する故、自分が現地調査に派遣された次第。
そういうわけなので御一緒させていただきますぞ」
旅は道連れ世は情け…そんな言葉を頭に浮かべながら、にとりは頷いた。
「よろしくね」
「こちらこそ」
二人は周囲を警戒しつつ歩き出した。
――――――――――――――――――――――――――――
「何だと?戯けた事をぬかすな!」
白い異形の言葉に、椛は不快感を覚えて吼えた。
ウェザー・ドーパントはわざとらしく頭に手を当てる。
困ったというように。
「おやおや、よくないですね。
元気がないのも困りものですが、ありすぎるというのも考えものです。
少々大人しくなっていただきますよ」
直後、何かを感じ取った椛は盾から足元に向け何かを放った。
それは金属製の黒い円筒形の物体であり、
地面に落ちると同時に閃光が周囲を照らし、煙が周囲を覆う。
ウェザー・ドーパントはすぐに風を起こして煙幕を吹き飛ばしたが、
既に椛の姿はない。
「いいセンスです。ますます気に入りました。
貴女がドーパントになったら、どんな素晴らしいメモリが出来上がるのか楽しみだ」
――――――――――――――――――――――――――――
岩場から少し離れた場所に彼女はいた。
天狗の少女は走りながら思考を巡らせる。
どうやってあの恐るべき敵に対処すべきかと。
現状、とりあえずあの場から抜け出すことができた。
しかし次はないだろうと彼女は思う。
先程、判断は一瞬だった。
敵が攻撃の動作に入る段階で、
彼女の第六感……戦士としての勘が警告を鳴らしたのだ。
一時撤退だと。
「……厄介だ。どうしたものか」
だが、対策を考えながら走る椛の横を何かが一瞬で通り抜けた。
遅れて暴風にも似た激しい風が吹く。
「いけませんね。勝手に居なくなるなんて」
彼女の目の前には小型の竜巻が現れていた。声はそこから聞こえる。
椛は足を止め、険しい表情で対峙した。
「何も恐れることはありません。
痛みも不安もない…ただあなたの心を開放すればいい、ガイアメモリを使ってね。
簡単な事だ」
「黙れ!!」
間髪を容れず彼女は後方に飛び、盾裏に装着してあるグレネードを投擲した。
その表面には『カワシロ』の文字とリュックサックのイラストが描かれている。
投げられたグレネードは竜巻に吸い込まれる寸前で爆発し、周囲に破片が飛び散った。
椛は盾で身体をガードしながら前方を確かめる。
「やったか!?」
視線の先、確かに竜巻は消えていた。
だがその場所には異形のシルエットが無傷で立っている。
「残念ですが効きません。
そろそろ素直になっていただくとしましょうか。
なに、痛いのは数秒ですよ。まあ死ぬほどですが…」
直後、ウェザー・ドーパントは右手を合図のように掲げた。
一瞬で椛の周囲に黒雲が出現する。
そして閃光が暗い森に走った。少女の苦痛の声と同時に。
「ぐああああッ!」
数秒の後、椛は崩れ落ちるように地面に伏した。
なんとか立ち上がろうとするが、身体に力が入らない。
完全に感覚が麻痺している。
「さあ、チェックメイトです」
彼女に近づいたウェザー・ドーパントは嬉しそうに言い放つと、手にしていたメモリを放った。
メモリはまるで意志があるように不可思議な軌道で椛に迫る。
その表面にはBのような文字がプリントされていたが、椛にそんな事を気にしている余裕はない。
ただ悔しかった。
「……無念……」
だが、メモリが椛の身体に触れる刹那、別方向から飛んできた何かがそれを遮った。
メモリは弾かれ地面に転がる。
同時に一枚のトランプが彼女の目の前に落ちた。
描かれた柄は道化師、つまり『JOKER』だ。
「待ていッ!」
そして声が響き、椛の前に影が飛び込んできた。
「……お前は…」
「乱入者とは不快ですね。何者ですか?そんなふざけた格好をして」
彼女の目の前に立った影は、ウェザー・ドーパントに気圧されながらも、
いくつかのファイティングポーズを連続して取りながら叫ぶ。
「ふ、ふん!悪党に名乗る名前はない!!しかし教えて…」
「…サスケ…お前では無理だ……逃げろ」
名乗りを考えていたであろう影は、振り返って椛を見た。
「って、いきなりばらさないで下さいよ!椛さ~ん!」
「……随分と余裕のようですが、どちら様ですか?」
水を差される形で邪魔をされた異形は、怒りを押さえつつ再び問うた。
サスケは恐怖しながらも精一杯虚勢を張り声を絞り出した。
「お、俺は忍者学園い組のクラス委員!人呼んで平成の風雲児、サスケだ!!
そこの白いの!何故俺がデンジャラス・マジシャンと呼ばれているか教えてやるぜ!!」
言い放った直後、サスケの両手にはトランプが握られていた。
その様子を見てウェザー・ドーパントは鼻で笑う。
「マジックでも見せてくれるんですか?」
「笑っていられるのは今だけだぜ!
くらえ!忍法!トランプ手裏剣・ロイヤルストレートフラッーシュ!!
そして…逃げますよ!椛さん!!」
大量のトランプがウェザー・ドーパントにバラ撒かれる。
それは一瞬であったが異形の視界を確かに塞ぐ。
その隙にサスケは椛を抱き上げ一目散に走り出した。
今は逃げるが勝ちだ。
「つまらない小細工を!」
忌々しげに異形は言った。
「お、おい。奴はその程度の目眩しでは……」
「心配御無用です!お二人さ~ん、あとはお任せしま~す!オタッシャデー!!」
トランプを払い除けたウェザー・ドーパントは新たな敵の存在を感じて空を見る。
そこには高速で降下してくる影が二つ。
「また会うとは奇遇ですね、お二人とも」
ウェザー・ドーパント、井坂真紅郎は影を知っていた。
影もまた彼を知っている。
「今度こそ逃がしません!」
「井坂真紅郎、貴様を放ってはおけぬ」
降り立った影、葉隠覚悟と魂魄妖夢は叫んだ。